アブソリュート・デュオ〜天狼〜   作:クロバット一世

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7章 禁忌の果実
45話 天峰 悠斗の《死ぬ気の炎》特別講座


「それじゃあみやび、まずはリングに炎を灯す練習をしよう」

 

「う…うん。お願い悠斗くん」

 

現在俺とみやびは人気のない森の中で特訓を行なっていた。イノチェンティの騒動で《死ぬ気の炎》を使ったみやびに俺は《死ぬ気の炎》の使い方を教える事になっていた。

二学期の《昇華の儀》で、みやびは晴れて《Ⅲ(レベル3)》へ昇華に成功した。それにより土台が出来たと考え《死ぬ気の炎》の特訓を始めることにしたのだ。

因みに俺は今回《Ⅴ》相当の力を解放するには至らなかった。今は亡き母が俺に施した《おまじない》、これにより俺は《醒なる者(エル・アウェイク)》の力を抑え込められている。ユリエに施された《位階限定(レベルリミット)》と異なるため解除に少し時間がかかっている。朔夜曰くあと少しきっかけがあれば解除できるとのことらしいのだが…

 

(もっとこいつを使いこなせないとな……)

 

自分の胸に手を当てながら俺は覚悟を決めた。

 

「悠斗くん?」

 

しばらく黙り込んでいたことに疑問を抱いたのかみやびが心配そうに見つめてきた。

 

「あぁ悪い、それじゃあ始めるか」

 

俺も気持ちを切り替え、レッスンを始めた。

 

 

 

 

 

「まずは《死ぬ気の炎》について教えるよ。《死ぬ気の炎》て言うのは簡単に言うと生命エネルギーだな。炎には主に7つ…いや、8つの属性があるんだ。」

 

「属性?」

 

「《晴》、《雨》、《嵐》、《雷》、《雲》、《霧》、《雪》…そして《大空》だ。そして炎にはそれぞれに性質があるんだ。まずみやびの属性は《晴》だったな。《晴》は《活性》って特性があって傷を癒したり成長を促したりと結構便利な属性だな。そして俺の炎の性質《凍結》って言ってあらゆる機能を停止させたり冷気を操ることが出来る能力だ」

 

そう言って俺はホワイトボードに炎の属性とそれぞれの性質を記入した。それを見ながらみやびはノートにまとめていた。

 

「よし、それじゃあ次はリングに炎を灯す方法について教えるよ」

 

そう言うと俺はポケットからリングを1つ取り出して指にはめた。

 

「リングは使用者の波動…つまり生命エネルギーが通過するとそれを高密度エネルギーに変換して死ぬ気の炎を生成出来る。」

 

そう言うと俺は指にはめたリングに炎を灯した。その炎はとても澄んだ真っ白な炎でありみやびはその美しさから目を離せなかった。

 

「そしてここが一番大事なんだけど炎の威力は使用者の波動を計る尺度である炎の純度に依存しているんだ。さらにリングの属性と使用者固有の波動の属性が一致しなければリングに炎を灯すことは出来ない。だから《晴》の炎の使い手は適正がない限り《雨》のリングに炎は灯せないってな感じだな。まぁ百聞は一見にしかず、リングをはめて見てくれ」

 

「う…うん」

 

みやびは俺に言われた通りに指にイノチェンティから貰ったリングをはめると

 

「えいっ…」

 

みやびは体に力を入れてリングに炎を灯そうとした。しかし、リングからは炎は出なかった。

 

「あれ?」

 

「みやび、力で炎を灯すんじゃない。《死ぬ気の炎》を灯すのに何より必要なのは確固とした強い覚悟だ。」

 

「覚悟……」

 

俺の言葉を聞きみやびは息を整えて静かに目を閉じた。

 

(わたしは…強くなりたい…みんなと一緒に戦えるように…わたしを絆双刃に選んでくれた…わたしの大好きな悠斗くんのために…!!)

 

ポゥッ

 

その瞬間、みやびのリングから黄色い炎が出た。

 

「うわぁ…」

 

「よし、第1関門『リングに炎を灯そう』は成功だな。よくやったなみやび」

 

そう言うと俺は優しくみやびの頭を撫でた。

 

「えへへ…」

 

「さて、それじゃあ次は匣(ボックス)兵器の使い方について教えてみるか」

 

そう言うと俺は腰から手のひら大のサイコロ状の匣を取り出すと

 

「開匣!!」

 

リングの炎を匣へと流し込んだ。すると、匣が開き中なら白い炎の灯った小さなナイフが数本出てきた。

 

「これは匣兵器って言ってな。この中にはこいつみたいな《死ぬ気の炎》を動力源に動く道具が入っている。武器だったり医療用の道具だったり、あとは動物だったりな」

 

「動物?」

 

「そう、《死ぬ気の炎》で動く動物、《匣アニマル》だ。いわば自分のパートナーって感じだな。例えば…こんな風にな」

 

そう言うと俺の首のチョーカーが光り白銀の鎧に覆われた白い狼が出てきた。

 

「こいつが俺の相棒のガロだ。ガロ、みやびに挨拶だ」

 

「ガウッ!!」

 

俺がそう言うとガロはみやびに近づき尻尾を振りながら吠えた。

 

「えっと…よろしくねガロちゃん」

 

みやびも恐る恐るガロの頭を撫でるとガロも体を擦り寄せてきた。

 

「ガロもよく懐いているみたいだな。さて、みやびの匣は…っとそうだ、確かみやびってイノチェンティから匣貰ってなかったっけ?」

 

「ええっと…これ?」

 

みやびは以前イノチェンティから貰った匣を取り出した。

 

「そうそうそれそれ、試しにそれに炎を注入して見なよ。その穴にリングを当てて炎を注入すれば何か出てくると思うから」

 

「うん」

 

みやびは丸い穴へと炎が灯ったリングを押し付けた。

 

すると

 

ボシュッ

 

音とともに匣が開き中から黄色い炎の塊が出てきた。

炎の塊は次第に形を作っていき…

 

「きゅ〜」

 

耳と尻尾に炎が灯った生き物へと形を変えた。それは大きな耳と尻尾を持った小さな狐のような生き物だった。

 

「これは確か…フェネックって生き物だっけ?」

 

「この子がわたしのパートナー…」

 

「きゅう?」

 

フェネックは首を傾げながらみやびを見つめて尻尾を振った。

 

「可愛い…よろしくねキュウちゃん」

 

みやびは匣から出てきた《晴フェネック(フェンネーク・デル・セレーノ)》ことキュウちゃんを抱きかかえると優しく頭を撫でた。

 

「しかしフェネックか…どんな能力なんだろうな」

 

俺はみやびの新たな力に関心を抱いた

 

 

 

 

 

 

 

「どれにしようかな……うーん、ここは……」

 

十五種類ものパスタを前に、今日はどれを食べようかと頭を悩ませる。昊陵(こうりょう)学園の学食は毎月ビュッフェの一角にコーナーを作り、フェアを行っているのだが、今月のフェアはパスタだった。もちろん一つに絞らなくてもいいのだが、一ヶ月もあるのだから日毎に別のものを食べた方が飽きが来なくていい。結局、散々悩んだ挙げ句にトマトとアサリを使ったボンゴレロッソを皿に盛り付けた。

 

「悠斗くんはボンゴレロッソにしたんだ。ふふ、それも美味しそうだね」

 

いつものテーブルに着くと、先に席についていたみやびが、俺のパスタを見て言う。

 

「みやびは明太子クリームにしたのか。種類が多いとやっぱり悩むよな」

 

「うん。どれも美味しそうだから悩んじゃったけど」

 

「まあフェアは一ヶ月続くし、食べられなかったなんてことはないだろうけどな」

 

俺たちの食事はほとんどが学食だからだ。

俺はみやびの向かいの席に座り、食事を始めた。

 

「うん、美味しい♪」

 

パスタを口に運び、みやびは幸せそうに呟き、浮かべた笑みからも美味しさが伝わってきた。

 

「悠斗、隣いいか?」

 

すると、そこへ透流も合流した。透流の皿にはカルボナーラが盛り付けてある。

 

「……ボンゴレがボンゴレ(あさり)のパスタを…」

 

「いったら殴るぞ」

 

「悪い、もう言わない」

 

それはいっちゃあかん奴だ。

 

 

 

 

 

「ほう、みやびは明太子クリームで天峰はボンゴレロッソ、九重はカルボナーラにしたのか」

 

俺たちが舌鼓を打つ中で、みやびの隣へ橘が腰を下ろす。

 

「うん。巴ちゃんは柚子胡椒にしたんだね」

 

「……ん?昨日も同じじゃなかったか?」

 

「うむ。こちらへ来て初めて食したが、非常に好みの味でな」

 

「俺には肉ばっかり食べるなとか言うくせに……」

 

透流がぼそりと呟き、痛いところを衝つかれたとばかりに橘から笑みが消える。

 

「べ、別に構わないではないか。キミとは違って、私はバランスよく栄養を摂るようにしているのだからなっ」

 

確かに、彼女のおかずを載せた皿には、肉、魚、野菜といろいろ種類が豊富だ。

 

「ふんっ、貴様は橘に毎食見繕ってもらった方がいいんじゃないのか」

 

と少し呆れた声で会話に参加してきたのはトラだった。

 

「……ふむ、それもいいかもしれんな」

 

「同意しないでくれ……」

 

頷く橘に、透流は力無くツッコむ。

 

「一体どうしたの?」

 

そこへトレイを手にしてやってきたリーリスが、不思議そうに首を傾げる。

橘が簡潔に説明すると、黄金の少女はぷっと吹き出した。

 

「それなら、あたしと一緒に昼食を摂れば解決じゃない。透流が満足するだけのお肉をサラに用意させるわよ。……あ、もちろんあたしたちの部屋で、ね♪」

 

「リーリス。キミは九重にバランスのいい食事を摂らせたい、という私の話を聞いていなかったのか……?」

 

額に手を当て、疲れたように橘が言うもーーー

 

「あら、夫の望むものをっていうのは妻の務めだと思わない?」

 

「夫婦じゃないからな」

 

「人前だからって照れなくてもいいのよ、透流」

 

「ふんっ、無駄話してないで早く食べたらどうだ」

 

バカバカしいとばかりに言い捨て、トラは真っ黒な麺ーーーイカスミパスタを口にする。

 

「へぇ、トラはイカスミにしたのか。どんな味なんだ?」

 

「味付けはペペロンチーノに近いが、もっと濃厚な味だと思っていい。程よい甘みにトマトと唐辛子、にんにくによる多重ーーー」

 

「一口くれ」

 

長くなりそうと思ったのか透流は話を遮りつつ要望を出す。確かに訊くよりも、一口もらったほうが話が早い。

 

「仕方のないやつだな。一口だけだぞ……」

 

不満げに言いつつも、トラはくるくるとパスタをフォークに巻き付ける。

 

「お、サンキューな。こっちのも食うか?」

 

透流はパスタの巻き付いたフォークを、トラは自身が差し出したフォークと交換しーーーぱくりと互いに一口で食べる。

 

「……………………。」

 

それをみやびは羨ましそうに見たあと、

 

「ゆ、悠斗くん。あーん」

 

俺に向かってパスタを巻きつけたフォークを向けてきた。

 

「みやび…/////あーん♪」

 

俺は少し照れながらもパスタを頬張った。

 

「うん、おいしっ」

 

俺はフォークに自身のパスタを巻きつけ、

 

「はい、みやびも」

みやびに差し出した。

 

「う…うん/////」

 

みやびも恥ずかしがりながらもパスタをパクリと食べた。

 

「えへへ、恥ずかしいね」

「あ、あぁ」

 

改めて少し恥ずかしくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すり鉢状という特異な形の広間で行われている《666(ザ・ビースト)》の幹部会議では次のプロジェクトについての話し合いがされていた。

 

「それでは次の議題だが____来るべき日のための果実だが、ある程度の数が揃ったことを報告させてもらおう。試験をいつから開始するかは貴方に任せるよ、《第四圜(ジュデッカ)》」

 

「今宵からだ」

 

《666》において《第一圜(カイナ)》の称号を持つクロヴィスの言葉に、メドラウトはどう猛な笑みを浮かべ、告げた。

 

「さあ始めるぞ____《禁忌ノ禍稟檎(プロジェクト・マルス)》をな!!」





みやびの位階を原作より早く昇華しました。

みやびの匣アニマルのキュウちゃんのデザインはポケモンxyのフォッコがモチーフです。
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