アブソリュート・デュオ〜天狼〜   作:クロバット一世

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48話 星夜に誓う

ベラドンナに関しては橘の意見のとおり今後も様子を見ていこうという結論を出したところで、俺たちは昊陵学園まで戻って来た。石造りの巨大な門を潜り、寮へと向かうその途中____

 

 

 

 

「ん?」

 

「どうかしたの、悠斗くん」

 

「こんな時間なのに、妙に人の姿が多いなと……」

 

二十三時を過ぎているというのに、敷地内には人影がうろうろとしていた。

 

「あー天峰くんたちだー」

 

人影から聞き慣れたのんびりした声で名を呼ばれる。俺たちに声をかけたのは吉備津だった。隣にはバニーメイド(冬仕様)がいる。

 

「おつかれさまー、九重くん、みやびちゃんたちもー」

 

「くはっ。夜遊びにお疲れも何もねえーーーいや、夜遊びだからこそお疲れってか?」

 

「ただいま吉備津、どうしたんだ?」

 

月見はろくでもないことを言ったのでスルー。

 

「今日はふたご座流星群なんだー、理事長が、たまには息抜きするのも大事だからって、今日は門限を一時までにしてくれたんだよー」

 

そういえばそんな話を聞いていたっけ

 

「……息抜き、ね」

 

性格同様のんびり口調な吉備津の説明に、リーリスはぽそりと呟く。

 

「悠斗くん、せっかくだしわたしたちも息抜きしない?」

 

「ついでに息だけじゃなくて穂高に別のものも抜いてもらうってのはどうよ?」

 

「そうだな。せっかくだし俺たちもこのまま一緒に流星群を見るか」

 

みやびの誘いに頷いていると

 

「続けざまにスルーしてんじゃねえよ《天狼》‼︎」

 

「相手をして欲しいんなら、そのいかがわしい発言をやめろ」

 

月見が怒鳴り、俺はため息を返した。

 

 

 

 

 

 

夜空に光の軌跡が流れると、その都度どこに見えたといった声が周囲から聞こえてくる。

そして____くちゅんっと可愛いくしゃみが、右手側の隣に座る少女から聞こえてきた。

 

「大丈夫かみやび?」

 

「う、うん。ちょっと寒いけど大丈夫だよ」

 

みやびは少し寒そうにしながらも笑いながらそう答えた。

 

「…………………。」

 

俺は自分のコートを脱ぐと

 

「みやび、これ着なよ」

 

みやびへと渡した。

 

「え………でもそれじゃあ悠斗くんが………」

 

「大丈夫だよ、俺はボンゴレ雪の守護者だぜ。寒さなんてなんてことないよ」

 

「でも…」

 

みやびは少し考えると

 

「じゃ………じゃあ………」

 

「みやび?」

 

「一緒に使おう?」

 

「え…………でも…………」

 

突然の言葉に俺は顔を紅潮させた。

 

「……………だめ?」

 

………………ヤバい、可愛すぎる

 

「…………わかった」

 

そう言うと俺たちは体を寄り添いあい俺の大きなコートをいっしょに羽織った。

 

「「………………///////」」

 

体が触れ合い時折みやびの髪が俺の頬に触れた。

 

「……………あったかいね/////」

 

「……………あぁ/////」

 

それ以上、俺たちは言葉を交わさずに流れる星をただ見上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ふわぁ……ぁ……」

 

早朝は新能力の開発をしていたため翌日は思いっきり寝不足になっていた。朝が辛いのはもちろんだが、昼食後はそれ以上だ。

 

「あ……ふ……」

 

再びこみあげてきたあくびを噛み殺す。土曜の今日は既に授業も終わり、皐月へ向かうのは夕方からということもあって、俺は微妙に時間を持て余していた。しかし、波のように繰り返し押し寄せてくる眠気に、少しだけ昼寝をしてからでもいいだろうという結論に至る。

 

(それに天気もいいしなぁ……)

 

十二月だというのに今日は気温が高く、十月くらいの暖かさだという話だ。外の芝生に踏み入り日当たりのいい場所で横になると、より太陽の暖かさを感じられる。心地よさを感じながら目を瞑ると、意識はあっという間に落ちていきーーー

 

 

 

 

それから、どれくらの時間が過ぎただろうか。一瞬のような気がするし、かなり長く寝ていたような気もするが、ともかく俺の意識は外部からの刺激によって揺さぶられた。刺激と言っても強烈なものではなく、少しばかりくすぐったいといった程度のものだ。

 

(風……か……?)

 

髪を撫でられた感触に、まどろみの中で思う。風にしては少々強く、けれど優しい感じではあったが。

 

「……悠斗くんの髪、凄くサラサラしてるね…銀色でとても綺麗だし…」

 

遠くから何かが聞こえてくるような気がする。

 

「悠斗くんがいつもわたしの頭を撫でてくれる時…すごく嬉しいんだよ…」

 

また何かが聞こえたような。

ふわり、また髪に何かが触れ、それがくすぐったく、けれど心地いい。

 

(あ……れ……?)

 

髪への感覚から、別の心地よさにも気付く。後頭部が何だか妙に柔らかい。それに、頭の位置が高くなっているような気もする。そう、まるで枕を使っているような感じだ。

 

(なんだろう、この感触……)

 

目を開ければ手っ取り早いことくらいは理解できるが、このまどろみを今しばらくは堪能したいのでーーー手を伸ばし、触れた。

 

「ひゃうっ⁉︎」

 

《それ》に触れた瞬間、さっきよりも近くで何かが聞こえた。

 

(声……?いや、それより……この感触はいったい……?妙にすべすべしてるけど……)

 

さわさわと枕のような何かに触れ続けると、柔らかいだけじゃなく、すべすべで曲線を描いていることがわかる。

 

「や、んんっ……あ、ひうっ……くすぐった……あ、んんっ、だ、だめ……」

 

すべすべした何かはどこまで続いているのだろうかと手を動かしていった先で、指先に何かが引っ掛かった。

 

(布……?)

 

伸縮性のある布で、それはすべすべの何かを覆っているようだと手を動かしていくとわかる。

 

(どうして覆ってるんだ……?こんなに肌触りがいいのに……)

 

不思議に思いつつ、布の内側へ手を差し込んで行く。

大きく、丸い。何だ、これは。

 

「あっ……ゆ、悠斗くん、だめっ……あ……まだ、早いから……ふわっ、ぁぁ、ぁ……」

 

(だめ……?まだ……早い……?」

 

決して大きくはないというのに、動揺からくる震えた声が耳に届き、意識が浮き上がってくる。

何故かはわからないが、今すぐ目を覚まさなければという焦燥感に駆られて。

うっすらと目を開けーーー俺は理解し、混乱に陥った。

 

みやびに膝枕をして貰いながら、彼女のスカートに手を突っ込んでいるという状況に。いや、スカートに手を突っ込むどころか、下着に手を突っ込み、みやびのお尻を触っていた。顔が真っ赤にし、涙目になりつつも両手で口元を押さえ、大きな声をあげないようにしている様が視界に飛び込んで来た瞬間、眠気が一気に吹き飛ぶ。

 

(なぁっ⁉︎お、俺は、みやびの、撫でて、えぇえええええっっ⁉︎)

 

驚きとともに俺の手が止まりーーー

 

「ふ……はぁあああああ……」

 

直後に長く、そして妙に艶かしい吐息をみやびは漏らした。

 

「は、ぁ……びっくりした……。まだ胸がどきどきしてる……。悠斗くん、何か夢でも見てたのかな……?どっちにしても、今のは黙っておいた方がいいよね……」

 

との呟きからみて、どうやら俺が目を覚ましたことには気付いてないらしい。俺はと言うと再び目を閉じ、必死に脳内で現状の整理をしていた。

 

(昼寝をしていて、いつの間にかみやびに膝枕をされていて、それに気付かずにみやびの……お、お尻を揉んで……。ど、どうしたらいいんだ、俺……?)

 

と混乱しそうになっていたそのときだった。

 

「みやび、そのような場所で何をしているのだ?」

 

「_______っ⁉︎」

 

混乱する俺の思考を寸断する凛とした声。

 

「あ、巴ちゃん」

 

新たに橘が現れたおかげで、俺は起きて謝るという選択が失われたことを察する。

 

「む?天峰では、ない、か……」

 

あきらかに動揺していくのがわかる口調からして、みやびが俺に膝枕をしている様に気が付いたのだろう。

 

「なるほど、キミたちは恋人同士なんだ。恥ずかしがることはない」

 

「あはは……」

 

橘の言葉にみやびは恥ずかしそうにしていた。

 

「ではこのような場合、私はお邪魔虫とならぬよう早々に立ち去るべきだな」

 

「と、巴ちゃんっ……!」

 

慌てるみやびに橘は笑い、あと三十分ほどしたら起こしてやってくれと言い残して去っていった。

 

「もう、巴ちゃんってば……。でも________ありがとう」

 

感謝の言葉を呟き、俺の頭をそっと撫で始めるみやび。

 

「あと三十分だって、悠斗くん。短いけど、ゆっくり休んでね」

 

起きられるような雰囲気じゃなくなった______けれど

 

「ごめん、みやびっ‼︎」

 

「え?え……?えぇえええええっ……⁉︎」

 

飛び起き、橘を彷彿させる土下座。事情を説明し、寝ぼけていたからと言っても許される行為じゃないと謝る。

 

「あの……。顔を上げてくれないかな、悠斗くん……。土下座はちょっと……」

 

「あ、ああ……」

 

「正直に話してくれてありがとう。……でも、その、すごく恥ずかしい気持ちでいっぱいだから、黙っててくれた方が嬉しかったかも」

 

「う……」

 

俺は選択を誤ったようだ。

 

「重ね重ねごめん……。どんなお詫びをすればいいのやら……」

 

「……………」

 

沈黙が怖い。

 

「えっとーーーさっきの巴ちゃんとの話も聞いてたんだよね……?」

 

「あ、ああ……」

 

「じゃあ、お詫びとして……こ、今度、もう一度させて貰える?」

 

何をだろかと訊いてみると、みやびは自身の膝を指した。それがどういう意味を持っているのかがわからないほど、流石に鈍くない。

 

「みやびがそれでいいなら……」

 

「う、うん……。もう一度、ちゃんと悠斗くんに膝枕したいかなって……」

 

「えっと……頑張ります……」

 

はにかんで頬を朱に染めたみやびに、俺は気恥ずかしさから奇妙な受け答えをしてしまうのだった。

 

 

 

 

 

クリスマスまで、数日と迫ったある日の夜________

 

(悠斗くんがいない間に少しでも進めないと……)

 

みやびは悠斗のためにマフラーを編んでいた。

大好きな恋人へのプレゼント、そう思うと頰が紅潮していく。

 

コンコン

 

「……だれ?」

 

ガチャリ

 

みやびが不思議そうに扉を開けると

 

「あの……みやびさん……」

 

「梓ちゃん?」

 

そこには恥ずかしそうに梓が立っていた。

 

「実はみやびさんにお願いがありまして……」

 

 

 

 

「マフラーを?」

 

「はい……」

 

梓が言うには彼女は巴にマフラーを編みたいそうだ。

 

「巴さんは……自分を騙してあんなに傷つけた私を許してくれたばかりか……これからも私と一緒にいたい、共に歩んでいきたいって言ってくれたんです……だから……そんな巴さんに感謝の意を込めてマフラーを編みたいんですがうまくいかなくて……みやびさんならと思ったんです……でも……」

 

梓は少し後ろめたそうにしていた。

 

「みやびさんにあんなことをした私が何を言うんだと思いますが……どうか……」

 

「うん、いいよ」

 

梓が顔を上げるとみやびが優しい顔でそう言った。

 

「み、みやびさん……」

 

梓は感極まってポロポロと涙を流した。

 

「じゃあ一緒に作ろうか」

 

「はい……ありがとうございます……」

 

梓とみやびはそのまま一緒にマフラーを編み始めた。

 

 

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