アブソリュート・デュオ〜天狼〜   作:クロバット一世

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6話 新刃戦

(……そろそろか)

 

学園内のどこからでも見る事のできるあの時計塔を見つけながら悠斗は内心で呟く。

《新刃戦(しんじんせん)》当日の夕刻、悠斗はくじ引きで決まった場所で待機していた。

周囲は木々で囲まれており、視界としてはあまり良いとは言えない。

 

「みやび、今回の闘いは講堂と違って地の利を利用した闘いもある。油断は禁物だ」

 

「うん…気をつけるよ」

 

俺の言葉にそう返すみやびの声は少し震えていた。

そんなみやびに俺は

 

ぽんっ

 

「ふえっ?」

 

軽く頭を撫でた。

 

「心配すんな。みやびはこの数日で『焔牙』の扱いもだいぶ上達してたし毎日のランニングでスタミナもついてる。だから自信を持てって。それに、いざという時は俺がいるんだし」

 

「悠斗くん…ありがとう、頑張るよ」

 

「その意気だ」

 

悠斗の言葉にみやびは嬉しそうに答えた。

そして、

 

リーンゴーン……リーンゴーン……リーンゴーン……。

 

「行くぞみやび!!」

 

「うん!!」

 

塔の鐘が《新刃戦》の開幕を告げる。

その瞬間悠斗とみやびは駆け出した。

鋭く開かれたその瞳で周囲を見回しながら、敵となる《絆双刃(デュオ)》探して。

 

しばらく森の中を走っていると、茂みの中から

 

「おりャァァ!!」

 

「くらえぇぇ!!」

 

斧とハンマーの形をした《焔牙》を振りかざした二人組が襲ってきた。…しかし悠斗は

 

「バレバレだ」

 

と、長槍を高速で振るい、二人を一蹴した。

 

「よしっ行くぞ」

 

「あ…うん」

 

みやびは悠斗の声を聞くとそのまま悠斗の後を追った。

 

しばらく歩いていると、

 

「みやび、ストップ」

 

「え?」

突然悠斗は立ち止まり目の前の木を見つめた。

そして、

 

「どりゃぁっ!!」

 

ドシィン

 

「「うわぁっ!!」」

 

どっしーん

 

悠斗の蹴りが木に炸裂して2人の男が落ちてきた。

どうやら木の上で待ち伏せしていたようだ。

 

「な……なんで……」

 

「気配が丸分かりだったよ」

 

そのまま2人は《長槍》で倒した。

 

それからも様々な手段を使う連中を倒していき、十八時を回った頃には、辺りに他の敵が見られなくなっていた。

 

「ふぅ、この辺りの敵はあらかた片付いたな」

 

「悠斗くん、これからどうする?」

 

「そうだな…今まで探してなかった校舎のほうを探しに行くか」

 

「うん、分かった」

 

悠斗とみやびはそう言うと校舎へと目指した。

 

校舎に入り、廊下をしばらく走っていると

 

 

「来たな悠斗、みやび」

 

声の方を見ると、そこには巴と梓の二人がそれぞれの《鉄鎖(チェイン)》と《大鎌(デスサイズ)》を手にして待ち構えていた。

 

「校舎に入っていきなりお前たちに当たるのか」

 

「時間が時間なだけにキミと手合わせするのは無理かと諦めかけていたが、こうしてその機会を得た事を嬉しく思うぞ」

 

「それはこっちの台詞だ。だから最初から全力で来い。俺の方も加減なんて出来そうにない」

 

「違いない…梓!!準備はいいな?」

 

「はい、いつでも構いません」

 

「行くぞみやび!!」

 

「うん!!」

 

そして闘いが始まった。

巴の《鉄鎖》が俺に向かって飛んできた。鎖とはただ相手を拘束するだけの武器ではない。しならせた鎖本体の一撃は骨など容易く砕いてしまう。しかし、同時に扱うのは至難の技だが、巴はそれをまるで自分の体の一部のように使いこなしていた。俺はその鎖をなんとか避けるが、そこに梓の《大鎌》が迫ってきた。

 

「うぉ!?あぶねっ!!」

 

そう言って《大鎌》を回避するが、そこに再び《鉄鎖》が迫ってきて、俺の肩をかする。そのまま梓が上段の一撃を与える。

 

巴の鉄鎖で俺の動きを封じ、梓の大鎌の強力な一撃を負わせる。見事なまでのコンビネーションだった。

 

「だけど……これならっ!!」

 

俺は《鉄鎖》を見切り一気に梓との距離を詰めようとした。

 

 

「やっぱりそうきましたか」

 

しかし、梓は笑みを浮かべ後ろへバックした。

 

「今です巴さん!!」

 

「心得たっ!!」

 

そして入れ替わる形で巴が向かってきて悠斗の《長槍》を《鉄鎖》で縛り付けた。

 

「まんまと引っかかりましたね!!」

 

そしてトドメと梓が《大鎌》を上段で振りかぶった。

しかし、

 

「それを待っていた」

 

そう、2人がある程度の距離に固まるこの時を待っていたのだ。

 

「いけっみやび!!」

 

俺の合図とともにみやびが全力で駆け出した。

まずは俺が前衛に出て巴と梓を引きつけ俺を倒すために2人がある程度固まった瞬間にみやびが渾身の突きを食らわす、これを狙っていたのだ。

そしてみやびが自身の《騎兵槍(ランス)》を超化された腕力で抱え、突撃した。

 

「巴ちゃん、梓ちゃん、覚悟ーーっ!!」

 

「しまっ…!」

 

とっさに梓は自身の《大鎌》でガードするが、みやびの《騎兵槍》を防ぎきれず、巴を巻き込んで吹き飛ばされた。

 

「「うわぁぁぁ!!」」

 

吹き飛ばされた二人はそのまま戦闘不能になり、俺たちの勝利となった。

 

(いい一撃だ!)

 

内心でみやびに称賛の言葉を送る。

みやびが毎日走っていた事を俺は知っていた。雨が降っていようが一日も休む事なく走っていたみやび。そんな彼女の努力と積み上げてきたものへの自信がこの重たい一撃を生み出している。それを俺は知っていた。だからこそみやびに憧れ、彼女の力になりたかったのだ。

 

「や、やったよ悠斗くん。勝ったよ!」

 

「みやびのおかげだよ」

 

「…え?」

 

「今回の作戦はみやびの存在があったからこそ出来たんだ。本当にありがとう」

 

「悠斗くん…」

 

みやびは俺の言葉に頬を少し赤くして微笑んだ。

 

「二人とも大丈夫か?」

 

俺たちは戦闘不能になった巴と梓に聞いた。

 

「ああ、なんとかな。しかしまんまとやられたよ」

 

「はい、まさか私たちの罠を逆に利用されるとは思ってもみませんでした。…互いの弱点をそれぞれの強みでカバーする、良い絆双刃ですね」

 

「当たり前だ。みやびは俺が選んだ絆双刃だぞ」

 

その言葉に、みやびはさらに顔を赤くした。

 

「そんじゃ俺たちは先を行くよ。じゃあな」

 

「ああ、頑張れよ」

 

「…応援しています」

 

そして、俺たちは先を急いだ。残っている中で特に厄介なのはあとはトラとタツの絆双刃と透流のユリエの絆双刃である。どちらにせよ油断できない。そんなことを思っていた時だった。

 

 

 

「ぐっ……があぁあああああああああああああああっっっ!!」

 

 

 

 

上階よりトラの絶叫がひびいてきた。

俺とみやびは一度視線を交わすと二人は駆け出し、巴たちも声に気付いたらしくこちらに向かってきていた。

四人で上階を目指して駆け出す。

 

「悠斗、今のは!!」

 

「分かっている!!急ぐぞ!!」

 

俺たちが階段に近づくと

 

「なっ、これはどういう事だよ……」

 

一番近い階段は無惨にも破壊され、上の階に登る事が不可能となっていた。

 

「悠斗!!次に近い階段はこっちだ!」

 

苛立ちを顕にしている俺に巴が声をかける。

破壊された階段を一度睨んだ俺は巴と梓、そしてみやびの後を追うように駆け出した。

 

 

 

多少の遠回りをしつつも三人は最上階の廊下へと到着すると同時に床に倒れ込んだ二人の影を見つけていた。

 

 

「酷い傷だな……。今から手当をするからみやびも手伝ってくれ」

「う、うん」

 

血たまりのできた床に倒れ込んだ二人ーートラとタツの傷を見て巴が忌々しげに呟くも、すぐさまみやびに声をかけ、二人の手当を開始する。

呆然と立ち尽くしていたみやびも俺の言葉で我に返り、手伝いに回る。

その時、俺は暗い廊下の奥から聞こえてくる声と金属音、そして確かな殺気に気づき、《長槍》を顕現して、

 

「橘、梓、後を頼む」

 

「悠斗?」

 

「奥で誰が闘ってる。俺はそっちのヘルプに行くけど、何かあったら大声を出してくれ。すぐに戻る」

 

「二人の手当と悠斗が駆け付けるまでの時間稼ぎは任せてくれ」

 

「き、気をつけてね、悠斗くん!」

 

「幸運を祈ります」

 

 

 

頼もしい巴の声と心配するみやびの声と無事を祈る梓の声を背に、俺は戦闘が行われている方へと駆け出す。

俺が戦闘の傷跡の残る暗い廊下を突き進んでいるとその突き当たりに徐々に見えてきたものがあった。

扉のない教室。その中で背中を預け合う《絆双刃》。そしてその《絆双刃》の銀色の少女にも劣らない速さでその二人に襲い掛かる影。

一瞬で俺の中のスイッチが切り替わる。模擬戦から実戦へと。

 

「させるかぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

銀色の少女が教室の角へと吹き飛んだその瞬間に教室へと飛び込み俺は《長槍》を影へと全力で撃ち込んだ。

影の手に持っていた武器が偶然俺の突きと影の体の間に入り込み、運良く一撃を防御するが盛大に銀色の少女とは逆の方へと吹き飛んだ。

 

「透流、ユリエ、無事か!?」

 

「俺は何とか……。ユリエは!?」

 

「ヤー、私も透流と同じです」

 

全身に擦り傷を負っているが、致命傷に繋がりかねない深い傷は負っていなかった透流とユリエは俺の言葉に頷きつつ答えた。

 

「くはっ……なかなか速いじゃねえか天峰 悠斗。いや、ここは《天狼》と呼ぶべきか。流石はイタリア最大のマフィア、ボンゴレファミリーの守護者なだけあるなぁ」

 

殺気に満ちた声が聞こえ振り返ると

 

「月見……璃兎」

 

巻き込んだ机を吹き飛ばしながら立ち上がった月見 璃兎が《牙剣(テブテジュ)》を肩に担いで凶悪な笑みを浮かべていた。

 

「やっぱりてめえ、裏の人間だったか」

 

「…その様子じゃある程度は睨んでいたようだな」

 

「テメェから裏社会の匂いがしたからな。それで、どうしてあんたが二人を襲ってる?」

 

俺の中の感情が怒りに変わりつつある。その感情を抑えつつ璃兎に問いただした。

 

「仕事だ仕事。有望そうな新人を始末するだけの簡単なお仕事さ」

 

そんな俺をあざ笑うかのようにヘラヘラと璃兎は笑って答えた。

 

「なるほどな……。雇い主について喋る気は?」

 

「あるわけねぇだろ」

 

ああ、もうだめだ……もう我慢の限界だ

 

「なら遠慮は要らないな」

 

「ああ、遠慮は要らないぜ!!少しでも長くアタシを愉しませてくれよっ!!」

 

「愉しませる気はねぇよ…」

 

俺の怒りは限界を超えた。

 

 

 

 

 

 

「テメェは俺が倒す!!!」

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