アブソリュート・デュオ〜天狼〜   作:クロバット一世

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8話 楯の意味

あの夜から三日ほど経ったとある夜。

 

 

「ーー以上が《新刃戦(しんじんせん)》の記録です」

 

 

悠斗によって《牙剣(テブテジュ)》を砕かれ、月見 璃兎が倒れ伏したところで男ーー三國が映像を停止した。

 

「くはっ。わざわざ動画を見せてまで皮肉らなくても、結果報告だけでいいだろーが」

 

悪態を吐いたのは、先程の映像で透流やユリエ、そして悠斗と闘っていた璃兎だった。

 

「百聞は一見に如かず、というものです。何より君の報告は大雑把過ぎですからね」

 

「へいへい。わるーございましたっと」

 

まったく悪びれずウサギ耳を揺らす璃兎に三國は溜息混じりに首を振る。

 

 

「それにしても、本気で殺しにかかるとは……もしものことがあったら、いったいどうするつもりだったんですか」

 

「……構いませんわ。私が現場の判断にお任せすると言ったのですから」

 

ここで初めて口を開いた主へと、三國と璃兎は視線を向ける。

その先で座すのは漆黒の衣装(ゴシックドレス)を身に纏った少女ーー昊陵学園理事長・九十九朔夜だった。

 

「過酷な環境で芽吹く種子(シード)こそ、美しき花を咲かせると私は考えていますわ。それに彼が参加している限り死者が出る事は万が一にもありえませんもの」

 

「…天峰 悠斗か」

 

「ボンゴレは元をたどれば自警団が始まりだった組織。沢田 綱吉はその頃のボンゴレに今のボンゴレを戻そうとしている。そんな彼の守護者が目の前で傷付く仲間を見殺しにするはずがありませんもの。」

 

かつて《新刃戦》を前に、自分に任せると気分次第では殺してしまうかもしれない、と笑みを浮かべた璃兎。その際、朔夜が口にした言葉を一言一句違い無く口にされ、三國は頭を下げて謝罪した後、話題を先程までの映像の件に戻す。

 

「しかし、驚きましたね。まさか《Ⅲ》を倒してしまうなんて」

 

 

三國の驚きも無理はない。

通常、《位階(レベル)》は一つ上がると数倍の能力超化される。

故に2ランクも差がつけば、一人はもちろん二人掛かりだったとしても絶望的な戦力差が生じる。

 

「それに関しては当然でしょう。天峰悠斗はこの学園に来るより以前から生死を分けた闘いをしてきたのだから。それに彼の《死ぬ気の炎》はボンゴレの中でも希少な《雪「しかし、驚きましたね。まさか《Ⅲ》を倒してしまうなんて」

 

 

三國の驚きも無理はない。

通常、《位階(レベル)》は一つ上がると数倍の能力超化される。

故に2ランクも差がつけば、一人はもちろん二人掛かりだったとしても絶望的な戦力差が生じる。

 

「それに関しては当然でしょう。天峰悠斗はこの学園に来るより以前から生死を分けた闘いをしてきたのだから。それに彼の《死ぬ気の炎》はボンゴレの中でも希少な《雪の炎》なのだから」

 

《雪》…他の7属性の炎に比べ遥かに数が少なく、特定の血脈にしか存在しないと言われる未知の炎、その力は強大で初代ボンゴレボスのジョットは己の守護者が使うその力を解析し己の奥義を生み出すきっかけにしたとも言われている力とも言われている。

 

途中で飽きてきたのか璃兎は欠伸をしそれを見て三國はため息を吐いた。

 

「……さて、これでアタシの仕事は終わったわけだがーーこれからどーすりゃいい?」

 

張り詰めた空気がようやく弛緩し始めた頃、璃兎が朔夜に問う。

 

「ご自由に、ですわ。璃兎、貴女の望むままに……」

 

「自由ねぇ……。くはっ、それならーこのままでいいか」

 

「わかりましたわ」

 

「……よろしいのですか?月見君を残すとなると、我々との繋がりに彼らが、特に天峰くんが気付く可能性もーー」

 

「理由などどうとでもなりますわ。彼らには確かめる術などありませんのよ、三國。天峰 悠斗の勘は確かに良いけど勘付いたところで確証のない段階ではどうもしませんもの」

 

くすくすと朔夜は妖しく笑う。

その笑みに、決定に、これ以上の意見は許されないことを知っている三國は頷くだけだった。

 

 

「ではそのように」

 

 

やがて気配を一つだけ残し、室内は静寂に包まれる。

闇の中、唯一残った少女は、豪奢な椅子に深く体を沈ませていた。

長い沈黙の後、朔夜は僅かに口角を上げる。

すべてが動き出した事を悟り、その中に自身の席がある事を感じて。

 

 

「宴の始まり、ですわ……」

 

 

その宴の終焉がどのような結末を迎えるのか、それは人の遺伝子を操作するという禁断(神)の領域に存在する朔夜にもわからない。

人である以上、未来などわかるわけがない。

故に黒衣の少女は呟く。

 

「願わくば、我が道が《絶対双刃》へと至らんことを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いな透流、急に呼び出して」

 

「悠斗か、どうしたんだこんな時間に?」

 

深夜、俺は透流を連れて夜の校舎の屋上に呼び出していた。

 

「ちょっとお前に聞きたいことがあったんでな」

 

俺は買っておいた缶コーヒーを透流に渡すと自分の缶コーヒーを開けて飲み、

 

 

 

 

 

 

「……透流、お前ひょっとして…誰かに復讐でも考えてんのか?」

 

「……っ!?」

 

悠斗の言葉に透流は驚きを隠せずにいた。

 

「なっなんでそれを…」

 

「その様子だと当たりか……いやな、お前って少し前の俺を見ているようだったからな…」

 

「少し前の悠斗?」

 

俺は静かに目を閉じ…過去を振り返る

 

 

 

父が病で死んでから2年過ぎた頃のある日、俺の住んでいた村はたった1人の男に滅ぼされた。母は俺を隠し扉に匿い…男に殺された。

それから俺は1人頼れる人もいない中、力を求め森で、スラム街で、裏社会で闘い続けた。

透流の中にあるものはあの日俺が持っていたものと同じだったのだ。

そして目を開き、静かな声で

 

 

「透流、復讐なんかやめろ」

 

 

透流の復讐を否定した。

 

「…なんだと?」

 

「復讐なんかやめたほうが良いって言ってんだ透流」

 

「…なんでお前にそんなことを言われなきゃいけねーんだ」

 

俺の言葉に苛立ち、透流が詰め寄ってきた。

 

「…俺は復讐に身を投じた奴らを沢山知ってる。マフィアの非道な実験の実験動物にされた奴に真実を隠され続け運命を知り怒りに身を投じた奴、愛するものを失った憎しみから仲間を裏切った奴。俺はそんな奴らを知っている」

 

俺は骸、XANXUS、Dスペードのことを思い出しながら言葉を続けた。

 

「…そいつらにはそいつらなりの信念があったし、それを否定する気はない。」

 

「…だったら!!!」

 

「でもお前に復讐なんて合わない」

 

そう、透流に復讐なんて似合わない、なぜなら…

 

「お前は自分が思っている以上に優しい奴なんだよ。そんなテメーに復讐なんか似合わない」

 

悠斗は透流の目を見ながらそう言った。

 

「悠斗…」

 

「だいたい《楯》でどうやって復讐すんだよ」

 

「………?」

 

悠斗の言葉に透流は疑問を浮かべた。

 

「透流、テメーに宿題だ。なんでお前の焔牙が《楯》」なのか考えてこい。それが分かればお前の本質が嫌でも分かるからよ。じゃあな、おやすみ」

 

そう言うと、悠斗は部屋に戻っていった。

 

「なぜ《楯》なのか…か」

 

透流のそんな声が星空の下に聞こえた。

 

 

 

 

「…それで隠れているつもりか?」

 

「…っ!?」

 

悠斗は柱の後ろに隠れているその影に向かって言った。

 

「…気づいていましたか」

 

「まあな、それで俺になんかようか?」

 

「ヤー、さっきの透流との話を聞きました」

 

「…それで?」

 

「私もトールと同じーー《復讐者(アヴェンジャー)》です」

 

ユリエの言葉に悠斗はため息をつくと、

 

「ユリエ、さっきの俺の話を聞いていたなら何度も言わねえよ…ただ、お前も復讐が似合うとは思えない…」

 

「悠斗…」

 

「そんじゃ俺はもう寝るよ。また明日。」

 

「…おやすみなさい」

 

こうして悠斗は寝室へと戻っていった。悠斗が空を見上げると、綺麗な月が見えた。そして、

 

「なんつーか、らしくねーことしたかな?けど、やっぱりほっとけねーよ」

 

 

 

 

『キミはもうオレの友達じゃないか!!だから…関係ないとか言うなよ!!』

 

「あいつも、多分同じことを言うだろうしな…」

 

裏社会の人間として、一人でなんでも解決しようとしていた昔の俺、そんな自分を友達と言って絶望から救ってくれた『彼』のことを思い出していた。

 

 

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