魔法少女リリカルなのは〜聖王少女と禍具(ワース)〜 作:八雲一家
ここは、第97管理外世界……通称『地球』。
そんな星のとある小さな国――日本で、とある盗賊の組織のグループが暗躍していた。
「おい、例の物は手に入れたか?」
「へへ。ご覧の通りですぜボス」
ボスと呼ばれた男の手に渡されたのは黒い頑丈そうなアタックケース。その中身には黒い粉が入った小さなカプセルの入った瓶がぎっしりと詰められていた。まるでそのカプセルは飲み薬である薬品の様な形をしているが、その中身は真っ黒の粉が入っており、良くないものだと1発でわかる代物だった。
「クックックッ……これさえあれば金には困らねぇ。おいとっととずらかるぞ! "奴"に気が付かれる前にな!」
ボスと呼ばれる男はそのカプセルを見て不気味に笑うと、少し焦るように部下達に撤退する様命ずる。
「なにをそんなに怯えているんですかい?ボス。もしかして、例の噂の人物ですか?」
部下の1人が少し焦っているボスに向かい質問した。質問されたボスは、少し何かを考える仕草をしたあと口を開く。
「……ああ、最近巷で噂の奴、通称"白銀の処刑人"。そう呼ばれる奴は、噂によると殺し屋らしい。俺らの様な裏で暗躍している奴らの命を屠ってきた。殺す時、闇夜に輝く白髪をはためかせながら、まるで処刑人の如くその命を奪っていく姿から付けられた二つ名だそうだ。
容姿についてだが、数々の噂によるが、年老いた老人だったり、ガタイのいいマッチョな男だったり、髪の長い女だったり、女の様な姿をした男だったりとその容姿は多彩だ。……だがな。そんな謎だらけの奴だが一つだけ共通点はある。いまの話で気づいた奴もいるだろう。奴に共通点があるそすればそう――白髪だ。
しかもただ白い髪ってわけじゃねぇ。それは雪の様に白く透き通っていて毛先につれて青みがかっているらしい。」
そう語るボスの顔は青く気分がとても悪そうだった。それを聞いた部下達はそんなボスの様子に自分達も不安な気持ちになり顔を少し青くする。
「…………まぁ、所詮は噂だ噂!誰が流したかもわかんねぇしな。それによくよく考えれば噂とは言えそんな多彩な姿を持ってるやつなんだ。不確定な噂だし、そもそも本当に存在するかもわかんねぇ奴だしな! そんな不安がることもねぇよ!だからお前ら、安心しろや」
ボスは先程まで青かった顔がまるで嘘のような明るい顔をし部下達にそう告げる。
「そ、そうっすよね! そんな変なやつがいるわけがねえよな!」
「だな、そんな噂をいったい誰が流したんだ?すぐに嘘だってバレるだろうに」
「どうせ噂好きの奴が流して俺らみたいな奴らが怯えているのを見て楽しんでいるだけだろうよ。そういう奴ほど長生きなんてしねぇんだ」
「まったくな。もしも噂が本物だったとしてもよ? 俺たちなら返り討ちにできるだろう。なんたって泣く子も黙る大盗賊団『アルベノール』なんだからよォ! そうだろみんな!」
『そうだそうだ!』
『アルベノール万歳! アルベノール万歳!』
アルベノールと呼ばれる盗賊団の組員達はまるで宴をしているかのように騒いでいる。その声はうるさくすぐにバレそうだが、ここは人気のない森の奥地にある廃墟の一角。そう人が立ち入る場所でもなく、森の周りにも人が住んでいるような街や村もない。まさに人々に忘れ去られし場所。盗賊団の様なゴロツキにとって秘境の様な場所でもある。
大盗賊団といっても、ただのゴロツキ達の集まり。自衛隊崩れや人生の落ちこぼれ、又は犯罪を犯し逃げているもの、もしくは一度ムショに入ったが出所してまた犯罪を犯している者などなど……その経歴は様々だ。バックには国も下手に手出し出来ないような大きな組織も絡んでおり、大なり小なりのヤのつく人達の様な"その道のプロ"もおり、ただのゴロツキ達の集まりだが世界中で暗躍しているテロ組織のひとつでもあるのだ。
「さぁ、無駄話はここまでだお前ら。手に入れるもんは手に入れた。とっととずらかるぞ」
『了解、ボス!』
ボスが叫ぶと男達は黒のアタックケースを持ち運んでいく。中には大きなダンボールの様な箱もありそれを複数人で運んでいる。恐らくだがそのケースの数は軽く100を超えているだろう。
男達は順調に物を運び来た道を進んでいると、ふと1人の男が口を開いた。
「そう言えば田中、中山はどうした? あいつ一緒じゃなかったのか?」
田中と呼ばれた男は首を傾げていた。
「そういえば見てないな……まぁ、トイレでも行ってるんだろうさ。あいつ尿漏れ近いし」
笑いながら田中はそう告げる。その言葉に納得したのか笑いなが男は言う。
「そういえばそうだったな! 忘れていたぜ」
ハハハと笑う二人の男。
――ドチャッ
「……え」
誰の声かはわからない。それは急に現れた。――いや"落ちてきた"と言うのが正しいかな。突然の自体に思考がフリーズしている男達。
列の中央に落ちてきたソレが何かはわからない。そう、強いて言うならば肉塊。辛うじて人の姿を保っている"何か"だ。
しばらくフリーズしていた男達はそこで初めて気づいた。それが"何なのか"を。
「―――っ!?」
「いったいなんだ!何がおきた!」
「わ、わかりません。きゅ、急に上から落ちてきたとしか……」
パニックになる男達。先程まで和気あいあいとしていた空気は無くなり、恐怖と焦りで乱れてている。
「……お、おい。このバッチ、それにこの服と帽子。中山の持ってたやつじゃ…」
パニックにおちいっている中 1人の男がそう呟く。
辛うじて人の形を保った肉塊の近くには血が付きボロボロになった服と帽子が落ちていた。服には男達と同じバッチが付いており帽子にも同じ物が付いている。バッチは自分でアレンジすることもでき、その中山と呼ばれる男はその1人だった。
「ま、間違いねぇ。こいつは中山のだ! だ、だがあいつはまだ――」
「いやまて、アイツはいつからいなくなった? 少なくても彼処を出発する時まではいたはずだぞ。そこから休憩は挟まずに歩いてきている。何よりここは列になっている中央に近い場所だぞ?誰にも気が付かれずにはぐれるなんてありえねぇ」
そう話すのは先程まで笑いあっていた二人の男。田中と長谷部である。男達のいる場所は中央よりの後ろだ。まだ背後には多数の同じ仲間がおり、一人で出歩いていなくなっても気がつかないなんて不可能なのだ。だがしかし、現に中山はいなくなっており、まだ戻って来ていない。もし仮にもこの肉塊が中山だとしたら…………
「―――おい、てめぇら。戦闘準備だ武器を構えてろ。この森、何かいるぞ」
ボスが、先程とはうって代わり真剣な顔でそう告げる。部下達もこの急な自体にたいし警戒始める。
「即座にこの森を抜ける。何者かは知らんが嫌な予感しかしない。――少し走るぞお前ら!」
『はい、ボス!』
そう言いボスとその部下達は森を抜けようと走り出した。
―――そう、これからが地獄の始まりとは知らずに
――――――――――――――――――――――
あれから何分、いや、何時間が過ぎたのだろうか。辺りは日が落ち暗くなっている。ボスと部下達は森を抜けようと必死に走った。ただ来た道を懸命に。……しかし、走れど走れど森から抜けられず、まるで迷宮に迷い込んだかのようにグルグルグルグルと同じ所を走っているような感覚さえ覚えてくる。
そして何より、時間が経つにつれて、一人また一人と部下がいなくなっていく。最初、このアタックケースを受け取りに廃墟へ向かった時には100人近くいたはずの部下はもう十分の一にまでしかいなくなってしまった。
「……くそっ! なんだってんだよこの森わよォ! ふざけるなよ!?」
ボスは苛立ちげに側の木を蹴る。強く蹴ったのかドンッと音がし木が揺れた。
しばし休憩を取ろうと休んでいた広場で10人を切った部下達の顔には疲労が見て浮かぶ。しかし、それよりも濁った目が目立った。それもそうだろう。自分達の気がつかぬうちに一人また一人と仲間が消えていくのだから。そう、まるで神隠しにあったかのように。
「……なぁ、田中よ。どうして俺たちはこんな事になってるんだろうな。いつも通りの仕事をして、いつも通りの日常をいつも通りに過ごすはずだったのに…なんで……」
「知らねぇよ! 俺だって訳が分からねぇんだ?! そもそも中山が死んでから全ては始まった、そう、全てな。そこから一人、また一人と……まるで神隠しにでもあっているみたいだよちくしょう!」
そう言った先程まで笑いあっていた二人、田中と長谷部を含めた他の部下達の顔にも疲労の色が見られる。だが、そんな彼らの所へ何者かがよる音がした。
「誰だ!」
ボスがそう叫ぶ。ボスが叫んだ方向は薄暗い森の中。その中でも一際暗闇が広がる場所から『パキリ…パキリ……』と音がする。その音は各自にこちらへと近づいて来ていた。
「…………っ」
ボスと部下達は何者かが来るであろう暗闇を凝視する。その足音は明らかに人が踏む音だったからだ。少なくても四足歩行の動物ではないのは確かだ。
その音はより大きく聞こえてき近づいて来ているのは明らかだった。
――そして、ようやくその姿は現れた。
「…………お、女の子?」
そう、そこにいたのは一人の女の子。まだ2桁に達したばかりの小学生程の身長の女子だった。お尻まであるだろうその長い髪は白くまるで汚れを知らない純白の様な色。しかし、毛先にかけて薄く水色になっていた。瞳は綺麗な黒紫色をしておりまるで、全体的に幻想的な雰囲気を放っている美少女だ。
その姿を見た男達は安堵した。ただの少女。見た目も非力そうな美少女で自分達の脅威でないと判断したからだ。
……だが一人、ボスだけは冷静に考える。
「(まてよ?なぜここにこんな少女がいる。この森に迷い込んだのならまだ分かる。だが、残念な事にこの森周辺に集落や街はなく、駅の様なものもない。あるとしたら森を出てから3㎞も離れた場所に車が通る道があるぐらいだ。しかしあまり通ることも無いためか、この時間帯はとくに少ない。だからこそ…だ。こんな時間、ましてやこんな場所に子供が迷い込むなんてありえない………………ん?)」
ボスは微かな月明かりに照らされる少女を見た。少女は確かに美しい。それこそ見惚れる程に。……しかし、少女の服には僅かながら赤い何かが付いている。最初は模様の様にも見えたが違う。明らかに後から付いたものだ。それも、微かながらも鉄の匂いもする。
「(……いや、まさか、これは?!)」
そう、ボスは気づいてしまったのだ。――それが血だと言うことに。
ボスは確信する。この目の前にいる少女こそ、いまの状況を作り出した張本人であるということに
「お前ら! いますぐ逃げるぞ?!」
ボスは叫ぶ
「――え?」
部下達はその声に反応しボスの方へと向いた。
……しかし
―――ズバンッ
ズル…ベシャ……
何かを切る音と遅れて何かが落ちる音が聞こえてくる。
そこへ視線を向けると……仲間の内、3人の首と身体が無くなり、地面へ倒れていた。
「――ひ、ひぃ!?」
「何がおき――」
ズバッ!
また一人、首が無くなる。そこでようやく部下達は気づいた。目の前の少女が殺ったという事実に。
少女の右手には巨大なナタが握られていた。そのナタには先程切り殺した者達の血がついているのだろう。赤く染まり血が地面に滴り落ちている。
それを見た男達は恐怖に陥った。
「ぎゃぁぁぁ!」
「に、逃げろォォォォ?!」
「殺されるぞ!早く逃げるぞ!?」
慌てふためきパニックになる男達。ボスは懸命に逃げるぞと叫ぶが、声が届いていないのか動かない者や、パニックになり木にぶつかる者もいる。
そんな中、少女はポツリと言う。
「十一番機構、裂式波山態《鮫の歯(“The teeth”)》 禍動curse/calling (カース・コーリング)」
少女手に持ってたナタが青く光ると、今度は両刃の巨大な鋸へと変化していた。
「…………消去、します」
ブンッ!
少女は手に持っている鋸を投げる。鋸はクルクルと回転しながら残りの部下達を切り裂いていく。鋸の取手の部分には菱形の物が鎖のように繋がっており少女の右手にある四角形の黒い鉄箱のような物に繋がっていた。どうやらその鎖で操っているようだ。
「…………残りは、あなた、だけ?」
少女は途切れ途切れになりながら、男――ボスを見る。少女の顔や服には血がベッタリと付いておりとても恐ろしいものだった。
「き、貴様っ!一体何が目的なんだ!なぜ、俺たちを殺す。答えろ!?」
ボスは焦りながらも後ろの腰に隠し持っていた拳銃を掴む。
「理由?……わからない。ただ、殺せと言われた。それだけ」
少女はコテンっと首を傾げながら答えた。
「そうか……なら、死ねぇぇ!!」
バキューンッ!
男は拳銃を撃った。解き放たれた弾丸は少女の心臓を目掛け飛んでいく。弾丸は少女の命を奪おうとするが……
―――ガキィィィン…
少女の手に持つ鎖が、弾丸を軽々と弾き防いだ。
「……二十番機構・斬式大刀態《凌遅の鉈》禍動(カースコーリング)」
常に無表情だった少女は、また何かを呟く。すると、鋸はまた形をかえ最初の巨大な鉈へと姿へとなった。
少女は鉈を大きく振り上げ、無表情ながらその"赤い瞳"で男を見る。
そして男―ボスはそこで初めて確信する。目の前の人物を……
「まさか…お前は……」
―――白銀の処刑人
そう呟くのを最後に、男は命を絶たれた。
暗闇に煌めくほどの白銀の髪を持ち、言葉を紡ぐと幾多の武器へとその変え、その命を奪ってゆく。まるで幻想的な宝石の様に綺麗な黒紫色の目が血のように染まったような赤い目に変わりし時、命は散りゆく。
武器は処刑器具の様な物もあれば、拷問に使われる物もある。そんな拷問処刑器具を操り白銀の髪を靡かせながらその命を屠る姿を人々はこう読んだ。
―――白銀の処刑人と
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わかる人にはわかっちゃう姿。