なんとか無事に帰ってこれた。途中帰り道と買い物している最中身体のに付いた路地裏の臭いのせいで周囲の目が気になりメンタルをガリガリ削られてすごくしんどかった。
《いや。もっとあるだろ?》
(あったけど・・・)
バイト《餌場》からの帰り道で【グロンギ】に襲われ罠にかけたら殺されそうになって【クウガ】の力をギリギリで手に入れて復活、【グロンギ】を追い詰めるもあと一歩の所で【アンノウン】《【アギト】絶対殺すマン》に邪魔され逃げられる。
《まあ、そんな所だな》
(とりあえず風呂だ。お腹も減ってるけど風呂入りたい)
《お~お~入ってこい入ってゆっくりしろ》
家に戻り、風呂を沸かし、沸かしている最中に買ってきた食材等をしまい風呂に入る。
「あ~疲れた~なんでこんな目に遭うんだ」
《そりゃそういう運命なんだろうな》
「運命とか本気でないわ」
《ああ。マジでない》
そんなバカ話をしつつ身体を清めて食事を作ってご飯を食べる。今日のメニューは麻婆豆腐だ。
《あ~クソ。腹へった~早く作れよ》
「ハイハイ」
フライパンに多めに油を引き、潰した刻みニンニク、生姜を入れて油に味と香りを加える。
《かあぁぁ!この匂いたまらん!》
「わかる。美味しそうな匂い」
【陰我】を喰らいはじめて少ししてから【コア】と味覚、嗅覚、触覚(一部)を共有し始めた。触覚はまさかの口の中限定だ。痛みは共有せず食べた味、触感、香りだけ共有だ。
ミンチを入れて火が通ったら豆板醤やラー油で辛味と旨味を加える。
《おい、豆板醤入れすぎじゃね?》
「いやいや、こんなもんだよ」
旨味と辛味を加えたらスープを加える。スープの中身はスープの元、味噌、醤油、砂、酒をベースに作る。これらが辛味、旨味、甘味になる。
《・・・・・めっちゃ赤いぞ?》
「そう?こんなもんじゃない?」
正直な話俺達には食事は娯楽で【陰我】を喰らっていれば生きていけるらしいが人間として食べた方がいいらしく、食費がかかるが食べている。
肉を潰さないように丁寧にかき混ぜる。
《・・・やっぱり豆板醤入れすぎだって。クッソ辛そうな匂いがすんぞ?》
「大丈夫大丈夫」
ちなみに《コア》は食事が大好きで辛いものやすっぱいのが苦手な所謂子供舌だ。
煮ったら味見をする。ここで味を調えて後は豆腐を入れる。豆腐は俺は賽の目に切らずにスプーン大きめに掬っていれる。
《おいぃぃ!やっぱり超辛いじゃねぇかぁ!》
「大丈夫だって後で食べる時はそこまで辛くないから」
俺は豆腐の中までアツアツは好みじゃないので煮たったら一旦火を止め、水溶き片栗粉を少しずつ入れてとろみを出す。この時火を止めないと早く固まるし水溶き片栗粉を一片に入れたらとろみの調整が難しい。
《あ~クッソ辛そうな匂いと真っ赤なじゃねぇか・・・》
「大丈夫大丈夫」
このままだと粉っぽさが出るので弱火でもう一度煮立たせる。これで粉っぽさも消えるし味が引き立つ。煮立ったら酢を少しだけ加え酸味を出す。で・・・
「ここで山椒をたっぷりと加え器に移す。最後にごま油を垂らして完成だ!」
《やっぱり辛そうだぞ!》
俺はここで山椒を入れる。山椒大好き。凄く山椒のピリ辛と唐辛子の辛さは違うからクッソ上手い。
「麻婆豆腐は辛味、甘味、酸味等が全部入るから美味しいんだよ」
《ホントかよ・・》
米も炊けているのでテーブルに水、米、麻婆豆腐を並べて・・・
「《いただきます!》」
まずは麻婆豆腐をレンゲで掬って・・・うん!山椒のビリからで唐辛子の辛味が抑えられて丁度いい!。ごま油の香りで食欲も刺激されるし豆腐の中が程よいからパクパク食べれる。
《うっんめぇぇぇぇぇ!!!でも辛れェェェェ!!》
「うん。でも美味しいでしょ?」
《ああ。舐めてたわ。辛いが旨みがやべぇ》
「で・・これをご飯の上に少しかけて・・」
《あ~絶対美味い。それは絶対美味いわ》
うん!美味い!コツは御飯を少しだけ固めに炊く事だ。余れば焼き飯に出来るし雑炊にしても美味しい。
《いや~満足満足》
「うん。美味しかった。こうゆう辛味もいいでしょ?」
《ああ。ちょっと舐めてたわ》
食事を終えまったりする。テレビでは今日のニュースがやっていた。
『本日、夕方頃京都都内に未確認生命体が出現しました。また未確認生命体は2体出現していたとの情報もあるため近隣の皆さんは注意して・・・』
これは【アンノウン】の事か?それとも俺の事か?
《いや、お前の事じゃね?【アンノウン】の出現場所は違う場所だったし》
「あ~確かに」
【グロンギ】は街中に出てきたからニュースになってたが【アンノウン】は町外れの廃工場だ。確かにニュースでは京都都内って言ってたな。
「まさか俺が未確認生命体厚かになるなんて・・・」
《まあそんなこともあらぁな》
「ねぇよ」
翌日、仕事終わりに仕事先の結界を改良する。結界は紙に俺の血で魔界文字を書いた呪符を建物に設置して発動していた。この方法は【ホラー】の術式を使い、【アギト】等の力で発動していたので【魔戒騎士】に探知されなかったが・・・
「【アンノウン】には探知されるよね」
《ああ。奴らの探知能力はピカイチだからな、今までよく探知されなかったな》
「運が良かったんだね」
どうしようか?安全に【陰我】を喰らう為には【ホラー】の力を隠す結界が絶対に必要だ。【ホラー】の力は【魔戒騎士】に、【アギト】の力は【アンノウン】を呼び寄せてしまう。【クウガ】の力は結界なんて張る事は出来ない。
《【魔戒法師】の力ならどっちも大丈夫なんだがな》
「確か【魔戒騎士】の技術職だよね?」
《近からず遠からずだな》
【魔戒法師】とは筆、札、僕等のアイテムを作ったりアイテムで【ホラー】と戦う人達らしい。あの喋る指輪も【魔戒法師】が作ってるらしい。
《【魔戒法師】には【ホラー】を閉じ込める結界なんかも作り出せるからそれを使えば【魔道輪】に探知されずに【ホラー】の力を使えるのに・・》
「まあ、無いものをねだっても仕方ないよ。とりあえずあるもので何とかしなきゃね」
どうしよう?逃げられた【グロンギ】もどうなるかわからないしこのまま力を付けずに生活するのは非常に怖い。
「先輩。どうしたんっすか?そんな隅に座って?」
職場の結界を張っていた場所に長く居すぎたみたいで、後輩に声をかけられてしまった。
「ん?ああ、ちょっとな。俺はそろそろ帰るけどお前はどうする?」
「あ~俺はもう少しここでゆっくりしてくっす。最近物騒なんで気を付けて帰ってくださいよ」
「ありがとう。じゃあ、お疲れ」
「お疲れ様です」
これで今の俺の強くなる方法は無いわけだが・・・なんか仕事をやめた感覚というか喪失感がある。
《あってもおかしくねぇよ。【陰我】を喰う事が出来なくなったんだ。これからどうする?》
(ん~やっぱり人は襲えない。どうにかして結界を張る方法を探そう)
《だな。人を襲うのもいいが、俺はパチンコ屋があってたな》
帰り道は今まで使っていた道を変え違う道から帰る。あの騒ぎで行き難いもあるけれど、あの【グロンギ】に待ち伏せされるのが怖い。
《しっかしどの道を通っても変なヤツはいるな》
(まあね)
今【コア】が言ってるのはブンブンと騒音を立てながら走るバイク数台だ。
《アイツらなら死んでも大丈夫じゃないか?》
(気持ちはわかるけど・・・)
騒音は迷惑以外の何者でも無いので嫌いだが喰い殺すか?と聞かれればNOだ。
無事、襲撃されずに帰ることが出来た。毎度襲撃されても困るがぶっちゃけこの街には【魔戒騎士】【グロンギ】【アンノウン】が居るからそれなりの確率でヒットしそうだ。
《まあ、【グロンギ】は集団で行動するからこの街に相当数いるかもな》
【グロンギ】には階級が存在すると同時に【ゲゲル】を管理する神官職の【ラ】。主に技術班で主に【ゴ】の武器を造る【ヌ】がいる。前回の【グロンギ】は【メ】。【ゲゲル】を監督する【ラ】は確実で、もしかしたら上位の【ゴ】、その武器を造る【ヌ】もいるかも知れない。
部屋に戻り今日はソース焼きそばを作り、美味しく頂く。
《あ~ソースの香ばしい匂いと濃い味がうめぇぇ》
「うん。キャベツもいい感じで美味しい。そういえば、あの【グロンギ】はどうしたんだろう?」
《あ~死んでんじゃね?あの蹴り攻撃で相当ダメージがあるからな》
「もぐ、そうか。もぐもぐ、なら新しい【ゲゲル】が始まるかもね」
その時、適当につけていたテレビのニュースから緊迫したようなアナウンサーの声がする。
『本日5時頃、京都市の立体体育館に未確認生命体が現れました。当時、巡業で訪れていた大相撲所属の力士が多数襲われ・・・』
《あ~噂をすればってやつだな》
「・・・うん」
【仮面ライダー】界の中でも【グロンギ】は中々酷い設定だ。人類を【リント】と呼び【リント】を殺すゲーム【ゲゲル】をする。作中の中でも【リント】に歩み寄る【グロンギ】は殆ど居らず、残虐な性格を持つものが多い。
《狩りに行くか?》
「・・・」
ぶっちゃけあの時・・・【グロンギ】を蹴り殺そうとしたのが不思議で仕方ない。やっぱり俺は【グロンギ】に殺されそうになった事で殺そうとしたのかな?殺人犯は殺していいって理論は余り好きでは無かったが自分で体験した事で変わったのかな?
《どうする?俺はどっちでもいいけど》
「俺は・・・」