「グッ!!グギギギィィィ!!がアアァァァ!!!!1」
深夜の森の中に不気味な声が木霊する。周囲生き物はその声と物々しく重く湿った空気を恐れ姿を消している。
「ギギ!!ガガガァァァァ!!アァァァァ!!!」
声の発生源の近くには小屋があり、どうやら小屋の奥の洞窟の中から声が聞こえていた。
「
「おい。ここでは【リント】の言葉で話せ」
「チッ」
小屋の中には数人の男女が各々に座っていた。【グロンギ語】を話した、痩せこけた身体に白いタオルを頭に巻いた作業服の男は、ボロボロのソファーに寝転がり。【グロンギ語】を注意した大男は、柔道着のような物を着て目を瞑り椅子に座っている。
「彼女は【ゲゲル】を成功させたわ。彼女の方が貴方たちより上よ」
壁に置いてある少し錆びたドラム缶の上に乗っていた、可愛らしい紺色の学生服を着たサイドテールの中学生ぐらいの女の子はそう言うとドラム缶を降り部屋の中央に移動する。
「さて・・・次は誰がゲームをするの?」
「俺だ!俺がやるぜ!」
女の子の発言に機嫌を悪くしていたソファーの男は嬉しそうに飛び上がり椅子を壊しながら着地する。
「【ギャッラ】ねぇ~。【ガブル】はどうする?」
その発言に【ギャッラ】と呼ばれた男は先ほどの嬉しそうな顔を歪ませる。
「・・・私が行く」
「あぁ!?俺が行くって言ってるだろが!?」
【ガブル】と呼ばれた男がそう言うと【ギャッラ】は大きな声を上げる。その発言を聞いても【ガブル】は我関せずと話す。
「私はアイツの次に【メ】に上がった。次は私だ」
その話を聞いていた女の子が腕を組み考え始める。その姿を見た【ギャッラ】は更に顔を歪め抗議する。
「いや!俺だ!俺の番だ!」
「私だ」
二人は立ち上がり睨み合いを始める。何か切っ掛けがあれば殺し合う雰囲気に女の子はため息を吐く。
「アァァァァアアァァ!!!」
「アアァァ!!!うっせぇぞ!!【マドラ】!!黙らせろ!!」
その言葉を聞き【マドラ】と呼ばれた女の子は頭を抱える。
「だから【ギャッラ】、【メ】の貴方に【ゴ】の【サポウ】に意見する権利は無いわ」
「だったら!次の【ゲゲル】は俺だ!」
「いや、私だ」
「ああぁ!?」
二人また言い争いを始める。言い争いと森に木霊する叫び声をBGMに【マドラ】は考える。
(正直【ゲゲル】はどっちにやらしてもいいけど問題は【ン】。彼は飽き性だからいつ動くかわからない・・・【ゴ】に上がった【サポウ】はたぶんもう駄目だから、この二人の内どちらかを【ゴ】に上げないと・・・でもこの街で【ゲゲル】をするには【サポウ】が戦った【クウガ】は危険過ぎる・・・二人はほぼ【サポウ】と一緒ぐらいだし、ここで【ゴ】になられず死なれるとかなりマズイし・・)
思考の海に潜っているとふと二人が外に出ていく姿が見える。どうやら殴り合いで順番を決める事に決まったらしい。正直【ゲゲル】以外で殺し合いは御法度だが・・順番を決めるだけだし大丈夫だろう。そう思いもう一度思考の海に潜ろうとした時に違和感を感じる。
(ん?そういえば・・・)
違和感が気になりそちらに思考を移すと声が止んでいる事に気が付いた。この数日聞こえていた呪詛、叫び声、悲鳴が聞こえない。
(・・・流石にあの傷じゃあ無理だったわね・・)
ここに来た時点で身体の崩壊は始めっていたし、よく【ゲゲル】を成功させたと思ったぐらい気力で持っていたのだ。寧ろここまで生きれると思わなかった。
(後で処理しとかなきゃ)
死体の処理の事を考えると憂鬱だが仕方ない。【ゲゲル】を失敗した者はその代償に死体も残らず爆発四散するが【ゲゲル】以外・・・自然死した者は死体は残る。
(?)
そう考えて周囲から音が消えている事に気が付く。あの二人の音が聞こえないのだ。予想では殴り合いをしているものだと思ったが違ったのか?
ドッゴン!!!!!
「!?」
凄まじい音と共に周囲が揺れる。その衝撃でパラパラと天井のホコリが落ちてきて、寝ていた遠くの鳥達が一斉に羽ばたく音が木霊した。
(音の方角は・・・・洞窟!?)
洞窟の方から音がしたので【マドラ】は小屋を飛び出し洞窟へ向かう。
洞窟は暗く湿気が強く奥から酷い匂いと生暖かい風が吹いてくる。【マドラ】は服に汚れが付かない様に器用に奥に進んでいく。
いくつかの分かれ道を通り、奥の大広間に辿り付いた時に音の原因がわかった。
大広間と呼ばれた場所はかなり開けており100人程が入れる空間になっている。光源は光る特殊な苔で辺りに生えている為夜目が効かずとも程々には全貌が見える。
大広間には大小様々な大きさの棺が辺りに乱雑に転がっており蓋の空いている物がほんとんだ。そんな大広間の中心部分が大きく抉れていた。抉れている中心には見たことの無い棘棘の人型の【グロンギ】がいて、壁にめり込んでいる二人をじっと睨んでいた。
「・・・サ・・【サポウ】?」
私のその言葉に棘の【グロンギ】はこちらを見た。目は赤黒く光り、見られただけで心臓が止まるかと思う程の威圧感受ける。
「・・・【マドラ】・・」
その言葉と共に威圧感は消えて行き、ずっと息を止めていたことに気が付いた。
「はぁ・・はぁ・・・」
【グロンギ】最強はの称号は【ン】。私達【グロンギ】が持っている力を【ゲゲル】で徐々に開放していき、最後に【ン】と戦い勝った者が【ン】を受け継ぐ。
私は【ラ】。【ゴ】に昇格した後【ラ】の神官職に就くか【ン】への昇格を目指すかの選ぶ時にに【ラ】を目指した者。【ン】も見たこともあるし私自体【ゴ】の力を持っているが・・・
(こ、これが【サポウ】!?)
【ン】程の威圧感を最大開放していない状態で放ち、周囲の光景を見るとその攻撃力も凄まじい。【ゴ】でこれほどの力を持った【グロンギ】は見た事が無い。
「・・・グ・・」
その凄まじい力を出した【サポウ】は膝を付いた。どうやら身体は治っておらず未だ危ない状態のようだ。
「ググガァ・・」
「ググ・・・」
壁にめり込んだ二人も意識を取り戻したのか呻き声が聞こえる。ぱっと見た感じ【ギャッラ】の方がダメージが多そうだ。
まずは【サポウ】の治療する為に【サポウ】に近づく。【ラ】の神官には様々な能力があるが私の能力は傷を少し癒すことが出来る。先程までの【サポウ】は崩壊が始まっていた為効果は無かったが今の【サポウ】は効果があるだろう。
二人は後回しだ。正直【ン】を満足させる為には【サポウ】が一番だろう。この二人はスペアで【ゲゲル】をさせその間に【サポウ】を治療し準備を整え【ゲゲル】をさせる。
「・・・・・」
【サポウ】の限界をきて身体が元に戻る。その姿をみて【マドラ】は愛おしそうに髪を撫でる。