【グロンギ】の襲撃から数日後。俺の身体と周りの変化を聞いて欲しい。まず俺の身体の変化だが傷の治るスピードが滅茶苦茶上がった。切り傷ぐらいなら1分もかからない。更に視力も跳ね上がった。プロボクサーも真っ青な程の動体視力に、とんでもなく遠くまで視れる視力になった。
「このプロテクター変身しなくても出るようになったね」
《ああ。これも【クウガ】のおかげかねぇ》
「たぶんね」
変身したら出てくる液体金属のような灰色のプロテクターが変身前・・生身の身体に出てきた。便利だし身を守れるからいいんだけどね。
後は・・・・
「ん?」
《なんだ?》
その日、仕事から帰ると玄関に灰色に青い蝶蝶のリボンがしてある手紙が落ちてる事に気が付いた。
「手紙・・・誰だ?」
手紙なんて今まで貰う事なんて無かったし書く事も無い・・・誰だろう?しかも部屋のポストに直接ってのかよくわからん。マンションの下にポストがあるだろう。そう思い裏返すと・・・
「・・・・は?」
《っ・・・マジかよ・・・》
裏には見たことがあるロゴと【スマートブレイン社】と書いてあった。
(・・【コア】・・)
《・・周囲には誰もいねぇよ》
俺は急いで手紙を開け、中身を見る。要約すると話がしたいから今晩ディナーでもどうですか?って事だった。
俺は壁にもたれ掛かり、そのまましゃがみ込んだ。膝が震えているのがわかる。
はっきり言って怖かった。【魔戒騎士】【グロンギ】に襲われ死にそうになったし実際に死んだがここまでの恐怖は無かった。這いよる恐怖。理不尽な恐怖では無く、底無し沼や深い海の底、に近い本能的な恐怖だ。
《・・・迎えが来たが・・・どうする?》
「・・・・」
【コア】が迎えに気が付いたみたいだが・・・はっきり言って断れない。俺にここから手紙が来る時点で俺の正体はバレている。どこだ?どこでバレたんだ?まず俺は【グロンギ】と戦った時しか変身していない。もしかしら【アンノウン】から逃げる時に?
ピーンポーン
俺の部屋のチャイムが鳴る。逃げる選択肢は無い。もしここで逃げたら一生追われる日々だろう。ここで逃げずに話を聞いてから考えた方が現実的だ。
「・・・はい」
部屋の扉を開けるとそこには高級そうな黒いスーツ姿の、目が細く不快にならない程度の笑みを浮かべた、物腰が柔らかそうな年配の男性が立っていた。
「お初にお目にかかります。私スマートブレイン社の京都支部【黄瀬 康也きせ こうや様】の付き人の【黒谷 大鬼くろたに おおき】という者です。お迎えに上がりました」
【黒谷】さんと名乗る人は綺麗な一礼をして、手をどうぞ進んでくれと言わんばかりに廊下に向ける。
(【コア】・・)
《ああ・・この爺さんはヤベェ・・・あの【グロンギ】より強ぇ》
笑顔の奥に潜む凄みと言うか雰囲気がヤバイ。あの【グロンギ】も歩き方、話し方、雰囲気で強者の余裕のようなモノを感じたが、この【黒谷】さんは立っているだけ、一礼しただけ、話しただけで威圧感が半端じゃない。
「どうかされましたか?」
【黒谷】さんは俺が一向に動かないから警戒心を上げたようで表情や話し方は変わっていないが雰囲気に変化が現れる。
じんわりと汗をかくし喉も渇いてきて緊張しているのもわかる。
「いえ・・・」
俺は震える足でゆっくりと歩き出す。玄関を出るとマンションの前に黒い高そうな車が停めてあった。
「頭にお気をつけください」
【黒谷】さんが車の後部座席の扉を開けてくれるので後ろに座る。座席が思った以上に柔らかくてでこんな状況でもテンションが少し上がってしまう。
《・・・思ったよりフカフカじゃねぇか・・》
「っ」
「どうかされましたか?」
「い、いえ・・」
(ちょっと笑わせるのやめてもらえます?)
《しゃぁねぇだろ?そう思ったんだからよ》
(これからどうなるかわからないのに呑気な事を・・・)
《わかんねぇからだよ。あの爺さんだけで俺達は勝てねぇんだ。殺す気、実験台にする気ならとっくにされてるよ》
(確かに・・)
言われて見ればそうだ。
【スマートブレイン社】とは【仮面ライダー555】に出てくるヤバイ会社で【オルフェノク】の会社だ。表向きは家電から食品まで手がける大企業だが、裏では【オルフェノク】の支援、教育、実験、捜索等を手広く行っている。社員、特に上層部はほぼ全員が強力な【オルフェノク】だ。
【スマートブレイン社】の最終目標は【オルフェノクの王】を探し出す事でその王を護衛する鎧が【ライザーズギア】・・・【仮面ライダー555】だ。
車の中ははっきり言って快適で、考え事するにはうってつけだ。金持ちの高級車乗る気持ちがわかった。
さて、考える事はいつくかある。一つは【スマートブレイン社】の目的、もう一つは俺の身の振り方だ。
目的は・・・なんだろ?俺の身体(深い意味は無い)が目的なら拉致されてるだろうしなんだろ?
《案外普通に御飯呼ばれただけかもよ?》
(ねぇよ)
ありえるとしたら俺の変身後の姿を見られて警戒されているかな?まずどうやって俺の姿と場所を特定したかだ。監視カメラ?・・・・あ。
《・・・なる程・・・それは確かにありえるな》
(ああ。確か【スマートブレイン社】は自社の人口衛生を持っているはず・・)
作中で【仮面ライダー555】が上位フォームに変身する時、人口衛生からの信号で変身していたはずだ。その人工衛星が地表の映像を記録していたなら俺の行動もわかるだろう。
つまり詰んでる・・・誤魔化し聞かないからある程度真実は話さないとマズイだろう。またこれから生きるのに【スマートブレイン社】に反抗は出来ない。
《まずは【オルフェノク】だって事は説明は絶対にいるな》
(うん。後はどう?【ホラー】は無理でも【アギト】ぐらいは言っておく?)
《いや・・・まずは中途半端な【オルフェノク】である事は伝えよう。なんでプロテクターの事は聞かれたら自分から言って全身変身は出来ないって言おうぜ》
(嘘は言ってないしね)
《ああ。【オルフェノク】で全身変身は出来ないしな》
交渉事でもなんでもそうだが人間は思ったより嘘を見抜く力がある。特に上に立つ人間はそれに敏感な人が多く受け取り方次第と言うのは重要だ。後は信用だ。ぶっちゃけ身の振り方だが【スマートブレイン社】の配下になるなら御の字だろう。最悪は実験体、時点で敵認定だな。
そんな考え事をしていたら車は街の繁華街と住宅外を抜け、企業の自社ビルが立ち並ぶビル街へと入っていった。
ある大きなビルの地下に入り、自分のマンションの敷地よりも大きなスペースの駐車場を抜け警備員が守っている更に奥のホテルの入口らしき場所が見えてきた。
車をその入口で止めるとドアを警護していたスーツ姿のドアマンが車のドアを開けてくれる。
「ようこそいらっしゃいました。どうぞ」
手を差し出してくれるのはいいが、床が真っ赤な綺麗な絨毯なんですか踏んでいいんだよな?これ後で請求とかされないよな?
《なんでそんな事を気にしてんだ》
(だって・・・)
「こちらの絨毯を進まれまして、中に入られましたら案内専用の者がいますのでご安心下さい」
「あ、はい」
ドアマンの人が俺がどうしたらわからないのを察して教えてくれる。顔を恥ずかしそうに見れば超イケメンスマイルで返された。女の子だったら惚れてる。
《恥ずかしいな》
(うっさい)
俺はゆっくりと車から降りてドアマンさんの言う通り中に入る。
《ちなみに気づいてたか?アイツらも中々強いぜ?》
(マジで!?)
【コア】に脅されながら中を見ると高そうな調度品に下品にならない程度の装飾が至る所にされていた。そして真ん中にスーツ姿のポニーテールの女性が立っていた。
「お待ちしておりました。ここからの案内を努めさして頂きます。【柿原 恵かきはら めぐみ】と申します。【黄瀬 康也様】がお待ちですので早速案内指していただきます。こちらへ」
そう言って【柿原さん】はゆっくりと綺麗な姿勢を保ったまま奥の方へ進んでいく。
《あの女も結構やるな》
(もうやだ・・・)
周りを自分より強い人に囲まれているせいか胃が痛くなってきた。はっきり言って帰りたい。
結局【柿原さん】の後を付いていく。床は凄く高そうな絨毯が引いてあり、奥に天使の装飾がされた専用エレベーターがあった。
「どうぞ」
「あ、はい」
エレベーターが空き俺が先に入り【柿原さん】が次に入り、15階のボタンを押す。
ウーン
「・・・・・・」
「・・・・・」
エレベーター内にモーターの動く稼働音だけが響く。控えめにいって凄く気まずい。
「あ、あの・・」
「はい。どうかされましたか?」
「えっと・・・今から会う・・えっと・・」
(名前なんだっけ?)
《覚えてねぇよ》
(マジか・・)
「・・・【黄瀬 康也様】でしょうか?」
「・・はい・・・どんな方ですか?」
「そうですね。私どもからすれば恩人です」
「・・恩人ですか?」
「はい。詳しくは【黄瀬 康也様】からお伺い下さい」
話をしているとエレベーターが止まり、扉が開くと街を一望出来る大きなラウンジになっていた。【柿原さん】は俺を奥の方へと案内してくれる。
奥には短髪黒髪のメガネにスーツ姿の中年男性と先ほどの執事の人が立っていた。恐らく中年男性が【黄瀬 康也】だろう。
「本日は来ていただき、ありがとうございます。私が【スマートブレイン社 京都支部代表】の【黄瀬 康也】です。どうぞよろしくお願いします」
そう言って【黄瀬さん】は綺麗な一礼をした。目は優しそうで見た感じこの中で一番弱そうだ。強さ=上ではないのかな?
「ささ。どうぞ座って下さい。直ぐに料理の方を始めさせますので。ここの食事は美味しいですよ」
「そ、そうですか・・」
(なんか思ってたのと違う・・)
《だな。なんか普通の食事みたいだな》
俺は【黄瀬さん】の正面の椅子を【柿原さん】に引かれたのでそこに座る。そして【黄瀬さん】が座り、執事の人は【黄瀬さん】後ろへ。【柿原さん】は俺の後ろに立つ。
「・・・・」
「そう緊張なさらないで下さい。と言っても難しいでしょね。では食事前に少しお話をしましょう」
【黄瀬さん】は笑みを浮かべながらそう言った。見れば余り特徴の無い顔をしていると思ったが目の色が左右若干違う左が少し金色に見える。
「私共【スマートブレイン社】の事はどこまでご存知ですか?」
「・・・・手広く事業を拡大している大企業・・」
「はい。その通りです。そしてもう一つの顔を思っています。それが【オルフェノク】の為の会社です」
「・・・【オルフェノク】・・」
「死んだ人間が新たに進化した存在を我々は【オルフェノク】と呼んでいます。ああ。大丈夫ですよ。ここにいる者は皆、その【オルフェノク】です。貴方を含めて」
【黄瀬さん】はそう言うと変身した。見た目はトカゲとクワガタを足して2で割った様な姿でギョロリとした目と灰色の身体が特徴的だった。
(やっぱり気付かれてるな)
《まあ、ここまでは予想通りだな》
「・・・驚かれないんですね」
「あ、いいや。十分ビックリしましたよ」
《こっのバカが》
(やってしまった・・)
【黄瀬さん】は人間体に戻るとこちらをじっと見た。どうしよう・・・そうだ!
「じ、実は【オルフェノク】に付いては少し知っていました」
「ほう。誰からお聞きになりましたか?」
「それは・・化物から・・」
「・・化物ですか?」
「はい。ある日、仕事帰りにいきなり襲われてある工場で戦いました。その時にその化物からある程度聞きました」
どうだ!【グロンギ】にある程度聞きました。確認しようにも、あの【グロンギ】を見つけ出して確認するしかない。そんな事まず不可能だ。これで誤魔化せるはずだ。
「そうですか。あの化物に・・お体の方は大丈夫ですか?一応お仕事をされているようなので食事に招待したのですが・・・よければ当社の【オルフェノク】専門の医療班を・・」
「だ、大丈夫です!全然大丈夫です!超健康体です!」
「そ、そうですか・・」
【オルフェノク】専用の医療班・・・絶対に断る!
《解剖はマジ勘弁》
(だな。流石にこの身体を見せるワケにはいかない)
俺の身体は【オルフェノク】【アギト】【ホラー】【クウガ】の特性が全部中途半端である為【オルフェノク】の専門家が調べたら一発でおかしいとわかるだろう。
「しかし相当お強いのですね。あの化物・・【グロンギ】を追い返せるなんて」
「ははは・・・・・は・・・・は」
今なんと言った?【グロンギ】?なんで知っている?
《落ち着けよ。顔に出ると突っ込まれるぞ?》
(あ、ありがとう・・)
危ないところだ。俺一人ならもう露見していただろう。しかしなんで知っていたのだろう?
《恐らくでいいか?》
(ああ。頼む)
《確か原作【クウガ】で【グロンギ】についての九郎ヶ岳遺跡の石碑があってそれを調べてるはずだ。でその後【アギト】でも一応【グロンギ】の対策班として【SAUL】があった。つまり【SAUL】はそれなりに【グロンギ】について調べている。その情報を【スマートブレイン】は知ったってところか》
(なるほど・・・確かにありえそうだ)
「それほどお強いのでしたら大丈夫だと思いますが、本題に入りますと我々の仲間になりませんか?」
「・・・仲間ですか?」
(遂に来たな)
《ああ。本当の戦いはこれからだな》
(・・・・言いたかっただけだろ?)
《ああ》
さて、どうしよう?色々キャラ出したが全部伏線回収出来るかな?
とりあえず作中の強さは素体ホラー<グロンギ<主人公<アンノウン<オルフェノク=ホラー名前あり ですかね。たぶん