魔法少女とドラゴン☆ボール   作:こんちわ

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最近になって知ったこと
・「ここすき」は書き手にとって非常に嬉しいシステム
・評価にコメントを付けられるという事
今更ながら皆様ありがとうございます。

やっと10話に到達できました。今回はいつもの二話分くらいの文量ありますのでゆったり暇つぶしに利用してみてください。毎度ですが、ちょっと前のお話を確認してからご覧になるのをオススメします。すいません。


其之十『ツキ』

 

―貴女はどっちなの? 佐倉杏子―

 

 

 

「……は?」

 

 

鳩に豆鉄砲とはこんな感じなのだろうか。口元からポロッと落とした事に気づく余裕すらなく。こと残念無念な一本の細い菓子。赤いパッケージのベタなアレ。だがしかし、クシャクシャに跡が付いた紙切れの上に落ちてしまっては、コロコロと動く事も許されず、おとなしく潜むに留まるのだった。

 

「…テメェ何あんな時に、のほほんと捕まってやがんだよっ!!」

 

「まぁまぁ、杏子。でも、全く気付いてなかったって感じなんだね。もちろん僕も驚いたけどさ。」

 

全く頭に無かったわけじゃない。だからこそ余計に苛立つ。ここ最近の界隈のざわめきに、俄に色めき立つバカな奴らをどんなもんかと出張ってみた結果がこのザマ。試されていたのはこちら側だった。

 

「それに、あの老人だよ。流石の杏子でも、大変だったようだしさ?」

 

さも予想通り、とでも言いたげな口振りが癪に触る。

 

「へぇ…拘束されてたって割には、何でも知ってるんだな?」

 

「そうだね。」

 

「ふん、アイツに首根っこでも掴まれてぶらぶらと覗き見してたわけだ。」

 

「凄いね杏子!その通りだよ。おかげで首が痛くてさ。」

 

「…それで、何か言ってなかったの?」

 

「うーん、会話したわけでもないからね。まぁ少なくとも今、彼女の興味は杏子、君にあるんじゃないのかい?」

 

「チッ…。」

 

「なかなか上手く行かないね、杏子。で、どうするつもりなのかな、それ。一時退却って所かな?」

 

肝心な事は言わないこのクソッタレに毒づきたい気持ちが湧いたが、正直もうどうでもいいと。一度はクシャクシャに丸めた筈の紙切れに視線を落として、そんな事を思う。

 

 

   暁美ほむら

 

 

シワのお陰で、歪に曲がった文字だらけのメモ。ご丁寧に名前まで書いてある。どうもありがとうございますだよバカ野郎。そんでもって落ちた菓子が、重要事項だとでも言いたいのか、下線を引いた様に張り付き主張してくる。

 

 

「…マジムカつく…パクッ…」

 

 

 

***

 

 

 

「おい。」

 

「えっ、どうかしましたか?」

 

「いつ帰ってくんだよアイツは?聞いてねぇのか?」

 

「いやぁ、はは、どこ行ってるんでしょうねぇ…二人とも。僕が聞きたいくらいですよ、はぁ。」

 

マミは朝から学校ヘいったきり。武天老師も家を開けている。日々積る不満を今のランチに愚痴る程、半ば投げやりな心持ちのクリリンだった。

 

「チッ…。」

 

しょぼくれた彼の姿を見て、軽く舌打ちするランチ。乱暴に銃弾をぶっ放したり、包丁片手に追いかけ回すなんて事は無く。只々時間だけが無駄に過ぎていく。あかね色に染まる空も夜の帳を下ろすべく、その成りを潜めて。

 

 

カチャ…

 

 

しんとした室内に、無機質な音が響く。外の景色をぼーっと眺めるだけのクリリンが、ふと、振り返る。

 

 

カチャカチャ…

 

 

広々とした部屋の中心に配置された家主お気に入りの三角テーブル。ランチが銃のメンテナンスを始めたらしい。コツ、コツ、と音を立てながら、小さく分解されたパーツが等間隔に並べられていく。こんな小洒落た空間には似つかわしくも無い筈なのに、不思議とハマって観えた。

 

 

「…早く帰ってこないかなぁ、マミさん。」

 

 

せめて、気持ち良く帰りを迎えてあげよう、そう思った。

 

 

ボッ…

 

 

「…そうだな。」

 

 

タバコに火を着け、大きく一息吹かすと、ぽつりと同意を呟くランチ。思いがけず会話になった事に少し驚きつつも続ける。

 

「あ、またマミさんに怒られますよ…?」

 

「…うるせぇなぁ…まったく…。」

 

グッとタバコを噛み潰し、苦い顔に煙を燻らせて、キッチンの方へと消えていくランチだった。

 

 

 

***

 

 

 

「たくっ、何処ぶらついてんのかしら、孫くんってば。」

 

「確かに、言われてみれば少し遅いですね。」

 

 

まどか達を家まで送り届ける為、悟空は筋斗雲でどひゅーんと出て行った。暫くする間もないくらいに、すぐまたどひゅーんと帰ってくるものだと思っていたのだが。

 

「もしかしたら、道に迷ってるんじゃ…」

 

「んな事ないない。どうせくっだらない事で道草食ってんのよ。」

 

「あっ、今日の晩ごはん何だったんです? 私は居なかったし、悟空のお腹の満足具合は知らないから…まさか一人でお店なんかに…」

 

「ぷっ、なんだか変な心配事ねぇ、まったく。大丈夫、流石にそれは無いわよ。」

 

「ふふっ、そうですね。まあでも、しっかり食べさせてあげたいから。」

 

「優しいわねぇ。でも、今日の晩ごはんはなんと、まだ孫くんは食べていませーん!」

 

「えっ⁉」

 

ほむらが家に帰ってきた時は、お風呂でリラックスモードという感じだったが。確かにちょうど晩飯時という時間帯ではあったが、なんとなく色々と落ち着いた後の空気感があった。

 

「…ブルマさん。私、ちょっと真面目に心配になってきました…。」

 

「あっはっは…!!」

 

「…そうよ、お腹もぺったんこだったし、悟空、お腹空いてるわ…。」

 

「だから、大丈夫だって。晩ごはんの約束は、ちゃんと孫くんにしてあるから。」

 

「あっ…良かった、少し安心です。」

 

「ふふふ、今日はもうお家でゆったりしましょうよ。ピザ取ってあるから、ね?」

 

 

 

***

 

 

 

「寒くねぇか?まどか。」

 

「ううん、あったかいよ。ありがとう悟空くん。」

 

「そうか。」

 

「うん。」

 

「……なぁ、あれってやっぱりお月様なんか?」

 

「えっ? うん、そうだよ。何時もより大きく見えるの不思議。ちょっと近いからかな。」

 

「ふぅん。ずいぶんと細い月だなぁ、ハラでも減ってんのかな?」

 

「あっはは、かも知れないね。ふふっ、なんだか私もお腹空いちゃったなぁ。」

 

「おっ、じゃあ一回戻るか?ブルマがビザとかってもんを頼むとか何とか言ってたぞ。」

 

「……ふふっ大丈夫、ありがとう。私は帰ってパパの作ってくれた晩ごはんを食べなきゃ。」

 

「そうなんか…あぁそうだな、ブルマもたまには早く返してやれって言ってたし。」

 

「ふふふ、悟空くんもピザが待ち遠しいでしょ?」

 

「あっ、それだ!…ってこれ言うなってブルマに言われてたんだった…まどか、内緒にしといてくれ。」

 

「ふふ、どうしようかな〜?」

 

「頼む、じゃねえとオラ、またサボテンを尻にブッ刺されちまうっ!!」

 

「あははっ!! それは大変だね。もう、しょうがないなぁ。ふふ、内緒にしてあげる。」

 

「まどかっ! ありがとう!!」

 

「ふふっ…あっ、そうだ悟空くん、今度…」

 

 

 

***

 

 

 

明日のバイトは休みたいと申し出たら、ならん!の一言で片付けられた。

 

「おう、…調子はどうだ?」

 

声を掛けつつ開かれた扉の向こう側、武天老師に縋り付くマミの姿がちらりと見えた。

 

「マミさ…!!」

 

 

バタンッ…!!

 

 

ギロリと鋭く目でいなされる。急に閉められた扉のお陰か、ランチが運んだ紅茶の豊かな香りも吹き飛んで、ポツンと一人取り残された。

 

「はぁ……なんで俺だけ…。」

 

漏れ聞こえる中に啜り泣きが混ざっていた。マミの心の内を想うも、何も出来ないまま時間だけを消費して。結局自分がどうしたいのかも解らないまま。

 

 

…ガチャ…

 

 

「一体どこだ!!そのクソガキッ!!ぶっ殺してやるっ!!!!」

 

 

 

***

 

 

 

「一枚頼んで二枚無料ってこれ利益取れてるのかしら。」

 

割引キャンペーンのこれ以上無い有効活用術。そんなブルマが手際よく大量のピザをテーブルに並べていく。

 

「ほむらちゃん、ほら、これなんか美味しそうよ。たくさん種類あるし、ちょっとお得な気分になるわね〜。」

 

 

「みんな誘えばよかったわ。…あっ。」

 

 

豪勢なピザを前に、角が立つ様な言い方をしてしまった。少しバツが悪そうな顔を向ける前に、ブルマがこちらを先に捉えていた。

 

 

「ふふっ、ほむらちゃん良かったわねぇ。」

 

「えっ…?」

 

 

「今日ね、家にやって来たまどかちゃんの顔を見たら、あっ、もう大丈夫なんだなって思ったもの。」

 

「…!!」

 

 

「あれからずっと、やっぱりおかしかったわ、ほむらちゃん。でもちゃ〜んと、さやかちゃんを連れて帰ってきた。あの時私、嬉しかった。」

 

「ブルマさん…。」

 

 

「ふふっ、ほむらちゃんも良い顔してたわよ〜。だから、いい? ちゃんと廻りをよく観て。何が起きても、どーんと構えていればいいの。」

 

めいっぱい胸を張り、腰に両手をたたえ、力強い笑顔を向けるブルマ。

 

 

「そりゃあもう、地の果てだろうと、はたまた時の最果てだろうと、私、ついて行くんだから。」

 

 

ああ、この人には敵わないな…と思っていたら、勢いよくバシバシと肩を叩いて座らされた。

 

「ハイ、今日はもうパ〜っとやるわよっ! さっ食べましょ!孫くん帰って来ちゃったら、それはもう運の尽きよ、私達の分す〜ぐ無くなっちゃうんだから!…ふふっ。」

 

 

 

***

 

 

 

明日も朝早くから忙しいのは変わらない。床についたものの、泣き腫らすマミの顔が浮かんで寝つけなかった。仕方がないのでリビングに出てみたら、本日二度目のタバコのニオイがした。

 

「あの、武天老師様、換気扇のとこにしとかないと、明日…」

 

「ふむ…それに意味があると良いがのぅ。」

 

いきなり喫煙者が二人に増えた。この世界は思いの外、喫煙者が片身の狭い思いをするようで、それは家の中でも変わらないようだった。ただ、それを取り締まるマミの姿は厳しくも笑顔にあふれて。楽しそうだった。

 

「それは…」

 

「…声を聞く。わしらがすべき事はそれだけでよい。」

 

見抜かれたのか、見透かしてなのか、どちらにせよ急にそれらしい事を言われたところで、あまり響いて来ない。

 

「…どれ、クリリンよ。時に、かめはめ波の鍛錬はどうなっておる?ちゃんと教えた筈じゃが。」

 

 

 

***

 

 

 

「ふあぁぁ…。」

 

 

むにむにゃと目を擦りながら体を起こした。凄く良い夢を見た気がする。夢うつつの中、一つ一つ整えようとしていたら、

 

「まどか〜?」

 

彼女を現実に引き戻す声がする。最近の帰りが遅い事に注意を受けたばかりだったし、心配させてしまっている。それが朝からこれでは。元気よく答えて今日も一日頑張ろう。

 

「はーい!」

 

 

 

***

 

 

 

「目玉焼きには、お醤油ですか?それともソースをかけますか?はいっ中沢君!」

 

「えっ、えっと…どっ、どっちでもいいんじゃないかと…。」

 

 

どちらというよりは、どうでもいい話を聞き流しながら、度々やって来る眠気と向き合う努力を続ける暁美ほむらの姿があった。

 

「…ん、ふぁ…。」

 

何とかあくびを堪えつつ、なんの気なしに外の景色に視線を移す。穏やかな春の心地。差し込む柔らかな日差しが寝不足を理由にさせてはくれない。

 

本来ならば、春の陽気に当てられて、居眠りする余裕など有るわけもなく。さやかは魔法少女になったし、マミは今日、学校には来ていない。ただ、頼る人がすぐ側にいてくれる、という事実が、彼女のこんな貴重な姿を見させてくれる要因だったりするのかもしれない。

 

 

「すぅ…すぅ…」

 

幸い今日は半日授業であるし、昼からマミの様子を見に集まる手筈にはなっている。朝っぱらから移動教室なのは面倒だったが、全面ガラス張りで開放感たっぷりな作りの校舎には感謝すべきかもしれない。こうして、うつらうつらとしながら、春の空などぼんやり覗き見しつつ、ゆったり時を過ご…

 

 

「ぶっっっ…!!?? ゲホッ、ゴホッ…‼」

 

 

「……あ、暁美さん⁉ 大丈夫ですか?」

 

ゆったりする時は一瞬で吹き飛んだ。身振り手振りで、あたふたと。ちょうど人差し指を一本立てて、頭の横に持ってきた拍子に担任から声を掛けられてしまい、ピタリと硬直したまま、顔から火が出た。それはもう真っ赤っ赤だった。

 

 

「かっ、鹿目さん、連れてって、保健室…!!」

 

「ほ、ほむらちゃん…!?」

 

「あっ、あたしも…!!」

 

 

逃げるように、飛び出すように、教室から出て行った三人。小さな雲が空を舞う。キラキラと細い霞をかけながら。

 

 

 

「おっす!」

 

 

「おっす!じゃないわ悟空!? 一体どうしたの、何かあったの?」

 

「いやぁ、ブルマに追い出されちまってよ、ははっ。」

 

筋斗雲にあぐらをかいたまま、少々申し訳なさそうに頬をポリポリとかいている。なんとなく事の予想はつくけれど。

 

「さやかに貸したやつ、取ってこいとか言うんだよな。ブルマが貸してやれって言ったくせによ。」

 

ミクロバンドを装着し、まどかの手のひらにぴょんと飛び乗る昨日のさやかを思い出す。何だかイラついたので、危ないからこっちと、ひょいと掴んで悟空の懐にむんずと入れてやった。あっ、じゃあ私もと、もがくさやかを見ながら言うまどかに対しては、その必要はないわと、ちゃんと未然に阻止しといた。

 

「あ〜はいはい。悟空、大変だったわね。でもどうして、ここがわかったの? 教えてくれるかしら…まどか、さやか?」

 

単純に、ブルマにうるさいからと追い出されたんだろう。この所忙しそうにしてるし。でも、詰めるべきは、悟空じゃない。ほむらの失態の原因は、確実に後ろの二人なのだから。

 

「いや、あのね、ほむらちゃん、その…」

 

「いやぁ〜ホント何でだろうねぇ…悟空の鼻が利くってのは恐ろしいねぇ…」

 

「まったく…!!どうせ昨日あなたが連れて遊びにでも来たんでしょう!?」

 

「あ、あはは…その通りっ、流石は名探偵ほむらちゃん!」

 

「ふざけないでっ!」

 

「おう、なかなか楽しかったぞ。ありがとなっ、さやか。」

 

「ほら、悟空もこう言ってるし、そんなに怒らなくてもいいじゃん。それに、結構面白かったよ、さっきのあんたの即興ダンス。真っ赤な顔してさっ?」

 

 

「 …う、うぅ…‼◎%♨×$☆ଘ♡ଓ#▲※!!!? 」

 

 

「はははっ!ほむらのやつ、茹でダコみてぇになってら。にしてもおもしれぇや、ははっ!」

 

「ふふっ、そうだねぇ。うん、ホントに良かった。ありがとうね、悟空くん。」

 

「?」

 

授業を抜け出し、サボりをキメて、屋上でダベる。ハチャメチャで貴重な学校生活を体験出来たのは良いとして、取り敢えず保健室には行っとかないとマズい事になるのは残念ながら忘れている。

 

 

「あっ、そういやまどか、お月見ってのはいつやるんだ?」

 

 

 

***

 

 

 

「いやぁ~マミさんにも見せたかったねぇ、あんたの慌てっぷりをさぁ。ねぇ、まどか?」

 

「ふふっ、確かにね。あんなほむらちゃん見たことなかったもん。」

 

「…あ、言っておくけど、来週の掃除、私とまどかは、やらないわよ。全部あなたのせいなんだから、責任取りなさい。」

 

「はぁ〜? 意味わかんないし。まぁいいや、まどか、二人で頑張ろっか?」

 

「ダメよ、まどか…!?」

 

「あ、あはは…」

 

予定通り昼から皆でマミの様子を見に来た。雑談に花を咲かせる彼女らであるが、昨日のことには触れない様にと、事前に亀仙人から釘を刺された。

 

「で、実際どうなのよ?」

 

「そうじゃな…色々と入り乱れてはおる様ではあるが、マミちゃんにとって、想うべき相手である事に変わりはないようじゃよ。」

 

「…そう。」

 

「それは、あの子にとっても同じ事ではあろうと思うがの。」

 

「何を言ってやがる。いきなりモノをぶっ放す様な奴だぜ?そんなわ、わけ…へ…へ、ヘブシッ…⁉」

 

よく言えますね、なんてツッコミは心の中にとどめておいて、一人静かに裏方に徹するクリリン。

 

「悟空、ほれ。」

 

「お、サンキュー。」

 

ソファの端っこにちょこんと一人の悟空は、お茶請けにと渡された菓子の包みを剥がすと、ひょいと口に放り込んだ。

 

「…この紅茶、淹れたのクリリンだろ?」

 

「そうだよ。なんか文句でもあるか?」

 

「いや、なかなかうめぇぞ。」

 

「そうか、ありがとな。茶葉が良いやつ使ってるからだろ。」

 

「ふぅん…そういうもんなんか。」

 

「…そうだよ。」

 

二人静かに事の成り行きを見守るのだった。

 

皆、複雑な思いを載せつつ、今日に臨んでいたのは間違いなかった。それこそ様子見という風にならないように、明るく、優しくいつも通りにマミと接していた。それについてはお互い様だったようだが。互いの心遣いが互いに有難いと思う。

 

「暁美さん、今日はどうもありがとう。」

 

「ええ。…調子良さそうで安心したわ。明日も楽しみにしてるから。じゃ…。」

 

「うん。じゃまた明日ね。」

 

「なによ、あんたもう帰るわけ?」

 

「はぁ…あなたと違って私は忙しいのよ。」

 

「この薄情者〜。」

 

「…あなたこそ病院行かなくて良いの?それは仲良くリハビリするのではなくて?」 

 

「うっ…いいんだよ、たまには一人のほうが。もうこの時間じゃ面会…」

 

「ふっ、この薄情者…じゃあね。」

 

「なんだと、この〜!! まどか〜」

 

「まぁまぁ、さやかちゃん。ほむらちゃんも、だめだよ〜。」

 

和気あいあい、なのだろうか。なんだかんだではあるが、皆、ハリのある良い表情をしているように見えた。

 

 

 

***

 

 

 

「ふふ、本当に来てくれるとは思ってなかったわ。」

 

「へっ、別にどっちでも良かったんだけどなアタシは。」

 

「いいえ、感謝しているわ、貴女に。」

 

「…で? 何を話そうって言うんだい、アンタ。」

 

「…私からのお願いと忠告。」

 

「そんな事は聞かなくてもわかるよ。手ぇ出すなって事だろう?」

 

「ある意味ではそうね。じゃあ来てくれたお礼に一つ、教えてあげる。…今から二週間後、ワルプルギスの夜が見滝原に来る。」

 

 

通称、ワルプルギスの夜。舞台装置の魔女。その性質は無力。回り続ける愚者の象徴。歴史の中で語り継がれる謎の魔女。この世の全てを戯曲へ変えてしまうまで無軌道に世界中を回り続ける。

 

 

「…何故そんな事知ってる? 根拠は?」

 

「…私達は奴を倒す。ただ貴女には、こちら側に付くか、ただの傍観者となるかを選択して欲しい。元々、風見野の魔法少女であるのだし。」

 

「…だから、なんでわかんだよ、そんな事。以前にもこの街にワルプルギスが来たなんて話は聞いてないよ。」

 

「統計…とでも言っておきましょうか。まぁ別に信じなくてもいいわ。ただ、邪魔されたくないだけ。そして貴女にも、犠牲になって欲しくはない。」

 

「あらら、お優しい事で。それはありがたいねぇ。」

 

「…真面目に聞いて。それに、このままだと貴女、巴マミに殺されかねないわよ…!」

 

「…ケッ、望むところだ。舐めてんじゃねえ。」

 

「だから、それを辞めて。あの人は強い、そして…同じくらいに脆い。貴女もよく知っている事でしょう?」

 

「…どういう意味だ。」

 

「言葉通りの意味よ。だから、戦いをけしかけるような事は避けて。それは貴女が昨日、叩きのめした魔法少女についても同じ。」

 

「あぁ、あの青い髪の新米ねぇ。」

 

「…美樹さやか。貴女にとって覚えておいて損はない筈よ。」

 

「あら、そうかい。でもさぁ、あの様子じゃ二人ともアタシの顔見た瞬間、向こうから飛び込んで来るんじゃねぇの?」

 

「だからっ…!こうして、話をしているのでしょう?」

 

 

 

***

 

 

 

「…であろう? ポポよ。」

 

「…みんな頑張ってる ほむらも ほら…」

 

「そうだな。では、やはり彼女が…」

 

 

 

***

 

 

 

「…ドラゴンボールってのは? アンタの口から聞かせておくれよ。」

 

「ふふ、もう既にキュゥべえに教えてもらったのではなくて?」

 

「あぁ、そうさ。そんなもの信じられないってよ。」

 

「まぁ、そうでしょうね。…だから、貴女が選ばれた…。」

 

「…イヤな言い方するもんだな?」

 

「……でも、恐らくこれはそんな浅はかなモノじゃない…。」

 

 

…ブゥゥン…

 

 

うわっ、こんな近くで初めて見た。なんだこ…

 

 

「ふふっ、そんなにジロジロ見つめてもまだ願いは叶わないわよ。」

 

「チッ…別に今ここで、これを粉々にしてやっても良いんだぜ?アタシは。」

 

「…するつもりなら、こんな事にはなっていないでしょう? そもそも私達なんかにそんな事が可能とは思えないわ…。」

 

たちの悪い奴だと心底思う。こんなもんワザワザみせやがって…。平気な顔して説明してやがる。ホント、けったくそ悪い。

 

「こっちが五星球で、こっちが六星球。ちなみに五星球を見つけたのはまどかだけど、恐らくあなたが倒した魔女の結界内にあったものよ…。」

 

「…フン、そんなもんにご熱心なのはアンタらくらいのもんだろ。アタシにゃ関係無いさ、興味ねぇ。」

 

「あら、そう? じゃあ見つけたら届けてくれると嬉しいわ、よろしく。」

 

「ケッ、…あほくさ。」

 

視線を預けたまま、暫し無言の時を過ごす。話すことなんてもう特に無い。帰りゃいいのに何をしているのか、自分でもよくわからなくなってきた。

 

「…色々と揺れるのはわかるわ。私だって同じ様なものだったし…。」

 

「…当たり前の話だろ。アタシら魔法少女には、特に…そんなこと…」

 

「そうね、なにかしらの証拠でもある訳じゃない。ただ…私はもう、貰い過ぎたのよ…。」

 

「…何をだ? わけわかんねぇ。」

 

「それはヒミツ。ふふっ…。」

 

「へっ、なんだそりゃ…。」

 

 

 

***

 

 

 

「なぁ悟空、おーい!」

 

「なんだ?オラ、ベーバキューで忙しいのに。」

 

「暇だろ!ちょっとは手伝ってくれよ。それにバーベキューだ!」

 

一人片付けに勤しむクリリンが声を掛ける。明日のメインイベントの話で、皆と盛りあがる悟空が羨ましかった訳ではないはずだ。昨日、意を決して魔法少女について知りたいと武天老師に頼み込んだ。結果、意外にも武天老師はすんなりと応えてくれた。今まで感じていた疎外感はなんだったんだと思うほどに。

 

「オラもよく知らねぇぞ。」

 

そんな前置きをしながらも、悟空は語り始めた。武天老師の話を聞いて思う所はたくさんあった。ただ、こうして彼女らの一番近くにいる、自分とほぼ同じ境遇の筈の悟空はどう思うのか、話をしたかった。出来るだけ小声で頼むぞと付け加えるのは忘れずに。

 

「よくわかんねぇけど、生きが良くて元気なら大丈夫みてぇだ。じいちゃんが好きなピチピチってやつだな。」

 

「ははは、なんだよそれ。まぁでもあってるか。」

 

「あ、でも魔法だけはあんまり使わせねぇほうが良いぞ。あれはあんまり良い力じゃねぇニオイがする。」

 

「お前、そんなことにも鼻が利くのか?」

 

「うん?…違うけどよ、クリリンも感じねぇか?ほむらが魔法使うときなんてよ…」

 

「俺、魔法使うとこ見たことないんだ…。」

 

「うーん、じゃああれだ、ソウルジェル。」

 

「ジェム、だろ?なんでドロッとしてなきゃいかんのだ。」

 

「あぁ、それだ。あの玉っころでパーッと変身するんだ、そんときに…」

 

「穢れ、だろ? 使い過ぎると、な…。」

 

「いやその、なんつうか…まぁ見たことねぇんだもんな。」

 

なんだろう。お前わかってねぇなって感じの言い方が、少し胸をついた。

 

「それによ、あれ、飯食えば治るってもんじゃねえらしいからな。」

 

「だから、その為のグリーフシードだろ?そりゃあ使わせないに越したことはないけどさ。大体、飯食えば治るって悟空くらいのもんだぞ?あの年頃の子は色々あるの!」

 

「ふぅん…。そうか、そうだな。クリリンがしっかりやってりゃマミも喜ぶだろうしな!」

 

「そうだろう? 悟空、なかなか口が上手になってきたじゃないか。」

 

「まぁ、マミの事よくみてりゃその内わかると思うぞ。オラ、クリリンはそういうの得意だと思う。」

 

「…ははっ、そうか。ありがとう悟空。俺、頑張ってみるよ!」

 

 

 

***

 

 

 

「もう出てきて大丈夫ですよ、ブルマさん。」

 

「ぷはぁっ…!」

 

「暑かったですか?ふふっ、すいません。」

 

パタパタと手を扇ぎながら元のサイズに戻るブルマ。相手の出方によっては危険を伴うというのに、そこをブルマが押し通した。直接的では無いにしろ、件の彼女を観れたのは大きい。これも律儀にミクロバンドを返却してくれたさやかのお陰か。

 

「大丈夫よ〜。思ってたよりと盛り上がってたわねぇ。」

 

「そうですかね?」

 

「ふふっ、そうよ。…杏子ちゃんだっけ、やっぱり色々あるのねぇ。」

 

「ええ、あの子にとって嫌でも興味を抱かずにはいられない状況だもの…。」

 

「…うん、でもきっと大丈夫だと思うわ。まぁキュゥべえには筒抜けになっちゃうだろうけど。」

 

「…でも、それももうあまり意味は無いわ。これからも、これまでもね…。」

 

「ふふっ、そうね〜そりゃそうだわ。」

 

なんだか嬉しそうなブルマが不思議だった。

 

「あっ、そういえばブルマさん、ツキですよ、月が無いって話!」

 

なんだか嬉しそうなブルマが困り顔になった。

 

「…月はあるわよ、ね、ほむらちゃん…?」

 

なんでこの流れからこんな話にと、思いながら誤魔化しにかかるも無駄だと悟った。つんのめる様に身を乗り出して、ほむらの顔が迫って来るのだから。

 

「あっちの世界の話ですよ。皆で風見野に行ったときに聞きましたよ?無いじゃなくて、無くなったんですよね?あったんですよね?ウサギも居たって悟空も言ってたし。それにブルマさん、次の満月はいつだって気にされてましたよ?」

 

あんな普通は信じられん話をよくもまぁはっきりと覚えて。

 

「それが、今日ですね…」

 

正直そこまで大した話じゃないけど、面倒が無いわけじゃないし…。

 

「…悟空が…」

 

一応、孫くんのシッポ…いや、あの時は…

 

「…まどかも楽しみにしてて…」

 

そうよ、でもなんで…

 

「…巴さんの為にもなるかなって…」

 

…満月の夜、か…。

 

「…そしたら先に巴さんがBBQの提案を…」

 

暫くの間の月齢は確認済みだし、特に問題ないわ。

 

「…ちょっと嬉しくなって…」

 

別に今、言う必要は無いし、言わないほうが…良いわよね…。

 

「…嬉しそうなブルマさん見てたら…」

 

理性の無い化物になる、なんて…。

 

「…みんなでお月見しましょう!ブルマさん!」

 

あ……。

 

 

 

***

 

 

 

「ほむら 嬉しそう」

 

「良い事だが…お月見か…。」

 

「満月 向こうの月でも なる?」

 

「どうだろうな? こればかりは…」

 

「お月見 できると良いな ほむら…」

 

 

 

***

 

 

 

「…月を破壊した?…方法は?」

 

「…あれよ、かめはめ波よ。ハァーってこう、ね? 物凄いやつ。」

 

「カメハメハ…では武天老師様ですか?」

 

「…違うわね。ジャッキー・チュンって人。まぁこの人もじいさんだけど。」

 

「そう、ですか…。」

 

「そう、だけど…。」

 

「その人、天下一を決める大会で悟空と戦ったていう?」

 

「そ、そうそう!かめはめ波で月をぶっ壊して、なんとそのまま孫くんに…あ、イヤ、そうじゃなくて、その…。」

 

「優勝、したんですよね? ジャッキーのじいちゃんに負けたって悟空が嬉しそうに言ってたもの。世の中には強いやつがいっぱいいるんだっ、って…。」

 

「………。」

 

 

なんか思ってたのと全然違う。

 

なんか淡々としてる。

 

なんかしんみりしてるし。

 

 

一体なんだったのさっきまでの勢いは。もうこうなりゃヤケクソで、月、ぶっ壊しちゃったんだよね〜なんて言ったら、どっひゃ〜!!とか言って見たことない反応するのを期待してたのに。自分一人だけ焦って損した気分。

 

「で、その、お月見なんだけど…」

 

そんでもって、こっちの話はどう話そうか。ちょっとデリケートだし…あぁもう気が滅入るわ…

 

 

 

どひゅ〜〜〜〜ん

 

 

 

「あら、悟空!おかえりなさい。」

 

「おう、ただいまだ、ほむらっ!」

 

 

 

「…………ウソよ。」

 

あぁ、よりによって一番面倒くさい時に帰ってきて…もう、ホント全部ウソにしてよ…。他にも大変な事でいっぱいなのに、こいつときたら…絶対明日もみんなで楽しくやるんだから!とりあえずこの話は一旦ストップしといて…あぁ、でもこのバカが要らんことを言ってたり…ん?もしそうなら、ほむらちゃんからなにかある…?こんなに嬉しそうにしない…?いや、どうだろう、あぁもうぐちゃぐちゃだわ、気にし過ぎなのかな、私…

 

 

 

「おう、そうだブルマ!お月見やるぞ!ははっ!」

 

 

 

……ピキッ

 

 

 

***

 

 

 

「姉ちゃ、ね〜ちゃ〜」

 

「は〜い、お姉ちゃんはここだよ~。」

 

鹿目まどかの弟、タツヤ。元気いっぱいの三歳児。大好きな姉の元へと歩く、歩く。

 

「はい、ぎゅ~う!」

 

歳の離れた幼い弟を優しく抱き締めた。

 

「姉ちゃ、どうったの?」

 

「えっ…? あっ、ごめんね、タツヤ。はい、もう一回、ぎゅ〜〜う!!」

 

「キャッ、キャッ!!」

 

心を覗かれたような、そんな気がした。

 

「ないしょにしといてね?タツヤ。」

 

「ないしょ。ないしょ〜。」

 

ギュッとした時に重なった、昨日は思い出せなかった、あの夢。

 

「二日連続だなんて…どうしちゃったのかな私…。」

 

 

 

***

 

 

 

「さっさと獲ってきて!もう!私達は寝不足なんだから!」

 

「なんだよ。だから昨日獲ってくるって言ったのに。」

 

「ああそうね!昨日行ってきてくれてたらどんなに良かったかしらねホントに!」

 

「生きの良いのが良いのか悪いのか、オラなんだかよくわかんなくなってきたぞ。」

 

はっきり言って悟空はとばっちり食らったみたいなものだった。カンカンになったブルマではあったが、一度振り上げた拳を下ろすタイミングを完全に見失い、結果こんな感じに。褒めてあげたい気持ちもどこへやら。

 

「あっ、悟空これを…」

 

「なんだこれ?」

 

「ふふ、美味しいお魚のメモ。」

 

「おぉそうか!ありがとなほむら!」

 

「ほら、カプセルも忘れては駄目よ。」

 

そもそも何でこんなやり取りが行なわれているかというと、BBQの魚介担当を任されたからである。わざわざ獲りに行くなんて、そこまでしなくてもという話ではあるのだが、にこにこ笑顔のマミと張り切る悟空がなんだか微笑ましくもあった。

 

「ほむら、うめぇのとってきてやっからな!」

 

「うん、でもホントに一人で大丈夫?悟空。」

 

「大丈夫よ、ほむらちゃん。ほらっ!早く行った行った。」

 

「そっか。ふふ、悟空は強いものね。はい、いってらっしゃい!」

 

「そうだぞ、ほむら。じゃあ行ってくる。」

 

筋斗雲にひょいと飛び乗ると、雲ひとつない晴天目掛けて、天高く飛び立って行った。瞬く間にその姿は見えなくなって。筋斗雲がどうだとか、細かい事をブルマは何も言わなかった。二人並んで同じ空を見上げ、大きく伸びをしながら、あくびした。

 

「ふふっ…今日学校じゃなくて良かったわね。」

 

「ええ、まったくです。ふふ……」

 

昨日とある、切ない、哀しい話をきいた。…形見の四星球、か。

 

「ねぇ、ブルマさん。」

 

「ん?」

 

「何故、悟空は神龍に願わないんでしょうか。」

 

「……いつもの、よくわかんねぇってやつじゃないの?イヤ、違うか…ふふっ。」

 

「ふふっ…そうですね。」

 

出来ることならおじいさんに会わせてあげたい。こんな私には何も出来ないけれど。でもいつか、こんな私でもあなたの役に立たせてもらえるかしら。

 

 

 

***

 

 

 

「では、行ってまいります!」

 

「いってらっしゃ〜い!頑張ってね〜!」

 

「これ、クリリンよ。」

 

「えっ?」

 

「マミちゃんをよろしく頼むぞ。くれぐれも無理をせんようにな。引くときは引けばよい。」

 

「…はいっ!!」

 

「よし、いってこい!」

 

 

 

***

 

 

 

「えらく機嫌がいいじゃないか杏子。何か良いことでもあったのかい?」

 

「へっ、うるせえな。どうでもいいだろそんな事。確かにいい日にはなるかもね。」

 

「それは良かったね、良い一日になるといいね、杏子。」

 

「それはどうも。あ、それと、今日はついて来ないでくれる? ま、アンタには言っても意味ないか。」

 

 

 

***

 

 

 

「えっ、マミちゃん居ないの?なんで?」

 

「どうしても用意しないといけない物があるからってクリリン君と買い出しに行ったみたいです。」

 

「あら、クリリン君と?珍しいわね。まぁ時間には余裕あるし大丈夫か。」

 

「で、さやかは?」

 

「さやかちゃんは、先に病院…」

 

「男の所ね。まったく…。」

 

「もう、ほむらちゃん言い方…まぁ、本当は昨日行きたかったみたいだし、そんなにね?」

 

「わかってるわ。だからこそ余計によ!」

 

「あはは…」

 

「いや〜私もどっか良い男いないかなぁ。」

 

「え? ブルマさん彼氏さん居るって…」

 

「何処の世にもロクデナシは居るものよ、まどか、あなたは特に注意してね?」

 

「う、うん…。」

 

ちょっぴり興味が湧いたまどかであった。

 

 

 

***

 

 

 

「よーし、こんなもんか!」

 

満足げに戦利品を手に取るスッポンポンの孫悟空。

 

「…ちょっと物足りなかったかな?」

 

大量の魚介類か、周りにプカプカ浮いてる被害者達の事を指しているのか判断はつかなかった。あ、サメはいらないからねとブルマに言われたようで、それは容赦なく。フカヒレは高級品なのに。

 

「よっと、じゃあまとめて帰るとすっか!」

 

 

 

***

 

 

 

「マミさん家ってやっぱり凄いですねぇ。お部屋でBBQ出来ちゃうなんて。」

 

「でしょう? でも私達も、あれから結構頑張って準備したのよ〜うふふ。」

 

「色々ありがとうございます。私もお手伝いしますからよろしくお願いします、ランチさん!」

 

「ふふっヨロシクね〜。このトマトいいわねぇ、鮮やかでとっても美味しそうよ。ありがたいわ、まどかちゃん。」

 

BBQの準備は着々と進行中。なんだか凄い設備と大量の食材の数々。更には、ここに悟空の獲ってきた魚介類が加わる事を考えればそれはまた凄い事になりそうだ。

 

 

「やっぱり…そうですか。」

 

「そりゃあちょっと災難じゃの、流石の悟空でも。ほっほ。」

 

「だって、孫くん自身は知らないんだし、まーた楽しそうにバケモノが出るんだぞっ!なんて言って…あれこれ勝手に突っ走られても困るじゃない。ほむらちゃんに確認しないわけにはいかないわよ…。」

 

「うむ…そうじゃの。でもまさか、お月見がしたかったとはのぅ…。」

 

 

―オラのじいちゃん、そいつに踏まれてペッチャンコになって死んじまったんだ。こっちじゃ出たりしねぇよな?―

 

 

「突然何を言い出すのかと思ったものじゃ…。まぁやり方はいくらでもあるじゃろうよ…。」

 

図らずも、自分の一番弟子の死因を知ることになった武天老師であったが、悟空の成長を純粋に嬉しく思う。孫悟飯も同じ想いであろうと。

 

「マミちゃんが帰ってきたら、伝えてあげてくれるかな、ほむらちゃん?それは喜ぶじゃろうよ。」

 

「ええ…私も凄く楽しみにしてますから。」

 

悟空は何も言わなかった。いつもと変わらずあのまんまだった。一緒になって楽しく話をした。内に秘めた優しさに気づく事も無いままに。ブルマが言っていた事を思い出す。もしかするとあれは彼にとって唯一残った心のしこり、得体の知れない何か、なのではなかろうかと。

 

「…悟空。」

 

満月の夜に現れる大猿の化物と、世界に絶望を撒き散らす魔女か、確かに…ね。

 

「早く帰ってきてね…。もう寄り道しちゃだめよ…ふふっ。」

 

あのツンツン頭をめいっぱいにおさえて、よしよししてあげるから。

 

 

 

***

 

 

 

「あら? 上条さんなら、確か昨日退院したわよ。ねぇ?」

 

「ええ、リハビリの経過も順調だったから予定が前倒しになって…」

 

「そ、そうなんですか…」

 

 

 

***

 

 

 

「タコはクリリンにやるか。あっでもほむらかな。うーん…茹でたやつがほむらで、クリリンにはそのまま食わせりゃいいか!まんまだしな。」

 

のほほんとくだらない独り言を乗せたまま、空の旅時は続く。

 

「おっ、見えて来たぞ!わかりやすくてこりゃ良いや。ホントさやかのお陰だなぁ。それっ、筋斗雲っ!」

 

見滝原の大きなビル群の中に、さやかが教えてくれた病院が見えた。どひゅ〜んと、めいっぱいに筋斗雲を飛ばす。

 

「おっ? あれは…」

 

 

 

***

 

 

 

―どうして?―

 

―昨日って、あたしが行かなかったから?―

 

―でも…―

 

 

「なんで連絡くれないの〜?」

 

 

―えっ?―

 

 

「…って感じかい?」

 

「あ、あんた…!!!」

 

 

―やめて…―

 

 

「そもそもアタシ連絡先知らなかった〜!とか、そんな笑えないオチじゃないよねぇ?」

 

「あ、あんたに、あんたなんかに何がわかんのよっ…!!??」

 

「……ホントにそう思うのかい…!?」

 

 

―頼むから…―

 

 

「で、どうするつもりなのさ、会いもしないで帰るのかい?この家の坊やなんだろ?アンタの起こした奇跡、ってのは。」

 

 

―イヤ…―

 

 

「あらら、確かに良い音色だねぇ。こんな表まで響いてきてら。奇跡の音色、とでも言えばいいかい?」

 

 

―言わないで…ききたく、ない…―

 

 

「愛しの彼の演奏がまた聴けた、それはそれは満足な事だねぇ。でも一体どうしたのさ、ココへ来てからずっとそんな顔してさ?」

 

 

―ヒッ…―

 

 

「…まったく、たった一度の奇跡のチャンスをくっだらねぇことに使い潰しやがって。」

 

 

―そんな、こと…―

 

 

「…ち、違う、違うもの、く、くだらなくなんて無い…!! あ、あた、あたしは…あたしは、ただ…」

 

 

あぁ、やり過ぎたかな。ホント早く出て来いよ、あのバカ。

 

 

「魔法ってのはね、徹頭徹尾、自分だけの望みを叶える為のもんなんだよ…。」

 

 

―コレがあたしの望んだ願い、希望だもの―

 

 

「他人のために使ったところで、ロクなことにはならないのさ、巴マミはそんなことも教えてくれなかったのかい?」

 

「…あっ」

 

 

―美樹さん、あなたは彼に夢を叶えてほしいの? それとも、彼の夢を叶えた恩人になりたいの?―

 

 

「…マ、マミさんは…あたしを…あたしの…」

 

 

なんだよ、まだ要るってのか、酷え奴だな。まったくよ…

 

 

「あいつらのとこへ帰るでもなく、こんなとこまで来てウジウジ、ジロジロと…いつ答え合わせするんだい?」

 

 

―なんで、どうして…あたしは…―

 

 

「はぁ、なんなら今すぐ乗り込んでいって、坊やの手も足も二度と使えないぐらいに潰してやりな。アンタなしでは何もできない体にしてやるんだよ。そうすれば今度こそ坊やはアンタのもんだ。」

 

 

―も、もう…やめて、言わないで、あたしは…―

 

 

「…身も心も全部、ね…?」

 

 

―ヒッ…―

 

 

それが本当の、とまでは言わねぇさ。だから…

 

 

 

ビュン…!!

 

 

 

「さやかっ、大丈夫か!?」 

 

「…あ、…えっ…?」

 

「チッ…何でテメェみてぇなガキが先に出てくんだよ。めんどくせぇ…。」

 

「おめえ、さやかをいじめんな!!」

 

「いじめてねぇよ。諭してやっただけだ。ホラ、殴ったり蹴ったりしてねぇし。お前もずっと見てたんだろ?アタシ変身すらしてねぇってのにさぁ。こんな真っ昼間からそんなことしねぇよ。」

 

「…さやか、本当か?ホントに困ってねぇのか?」

 

 

ウソだよ、殴りまくりの蹴りまくりさ…えぐれて戻らねぇかもしれねぇ。…この前みたいにはいかねぇかも、な…。

 

 

「…う、うん、大丈夫だよ。あ、ありがとう悟空…」

 

「って、さやかっ!おめえフラフラじゃねえか!」

 

 

こっちの坊やは大したもんだな…。

 

 

「…おい、シッポのクソガキ、これやるから、そいつ連れて離れてろ…。」

 

「なんだこれ? オラこんなもんいらねぇぞ!!」

 

「ふん…アタシのお気に入りだ。」

 

 

うんまい棒知らねぇのかよガキが…笑えるわホント。

 

 

「おい、テメェの大事な後輩こんなにされて、なんで出て来ねぇ!! 聞こえてんだろっ!? マミっ!!」

 

 

 

***

 

 

 

「うん…わかったわ。」

 

―そんな顔しないで…―

 

「いいの、心配しなくても、大丈夫。」

 

―だから、ね…?―

 

「ほら、連れてって…。」

 

―私、なんでこんなに冷静なのかしら…―

 

「一緒に、いきましょう。」

 

 

 

***

 

 

 

そうだな、昔っから甘いんだよ、アンタはさ。

 

そうね…

 

そいつをアタシから守れなかった…。

 

そうね…

 

アンタの一番嫌がるやり方だっただろう?

 

そうね…

 

だったら…?

 

そうね…もう…赦せない。あなたも、私も…

 

…そうだな、マミ先輩。

 

 

 

***

 

 

 

何でこんな事になった?

 

あとから悔やんでも悔やみ切れないだろ?

 

皆になんて言うつもりなんだ?

 

マミさんとあの子を一緒に連れてくるって大見得切っただろ?

 

根拠の無い自信を無理やり縫い付けて、頑張ってるとでも言ってほしかったのか?

 

あれこれ馬鹿な事を頭に浮かべて。一体何がしたかったんだ…?

 

結局、俺は、俺は何も出来なかった…!!

 

 

 

***

 

 

 

「…マミさん? マ、マミさん!? なんで急に、どうしたの?マミさんっ!!」

 

「…おい、マミ。どうした……!? ウソだろ、おい…。コイツまさか死ん、で…? おい、マミっ!?」

 

 

 

「あんなに歪みあってたのに、流石だね杏子。さやかと仲良く二人切りでさ?」

 

 

 

「…二人じゃねぇだろっ!! わざとらしいんだよ、このクソッタレがっ!!!」

 

「…ああ、痛いなぁ、首が千切れちゃうじゃないか。その子はつるつる頭で可愛らしいけど、魔法少女じゃないだろう?」

 

「舐めてんのかテメェ!! マミに何しやがった!? 早くもとに戻しやがれっ…!!!」

 

「む、無理だよ。マミはあの子と一緒に飛んで行ったじゃないか…」

 

「…テメェ…!!!!」

 

 

…グキッ……!!

 

 

柔らかい何かと一緒に砕ける鈍い音…。なんだか妙に響きやがる…放り投げたら全部一緒に消えてくれたらいいなと。何でこんな事、思う?

 

 

「あ…あぁ…い、いやぁ、もう、い、嫌ぁぁああアアア!!!!」

 

「…さ、さやか…おい、しっかりしろ…頼む、頼むから…。」

 

 

あぁ消しても、消しても、消えてくれねぇのか…何だよコレ…。

 

 

「もう、駄目じゃないか杏子。でも、仲間が増えて良かったね。今日は良い一日になりそうかな?」




お読みいただきありがとうございました。ちょっとシリアスな感じになって来ましたが、今回は先にオチを決めてから(悩みましたが)そこにどう繋げるかで書いてました。まどマギ見てる方は知ってるだろうから、こんな感じにしてみようかなと。
話も長くなりすぎたので、展開や文量を削除したりしてます。クドすぎるなと感じたので。少しわかりづらい、読みづらい感じになってると思いますが、何かありましたら出来る範囲でお答えしますので、ご意見ご感想等、お待ちしております。今回もありがとうございました。
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