「すいません…急に取り乱して…。」
憚ること無く泣けるだけ泣いて、冷静になったら急に恥ずかしさが込み上げてきた。
「少し落ち着いたみたいね。大丈夫、ほむらちゃん!安心していいのよ。私も頑張るわ!」
突如ほむらが吐き出した鹿目まどかという少女への想い。ドラゴンボールの情報をほむらが納得の行く形で伝えるにはどうするのが正しいのか、中々答えが出せないでいた。ほむらの目的を知り、ブルマもまた、決意を固めたのだった。
「コーヒー冷めちゃったでしょ。新しいのいれましょうね。」
冷めきったコーヒーカップを二つ手に取り、席を立つブルマ。
「あ、孫くん!あんたの湯飲みも持ってきてくれる?」
「なんだ? オラいらねぇのに。」
ポツンと一人残されたほむら。筋斗雲にありがとうと伝えると、テーブルに移って二人を待つ。しれっとほむらの横に移動する筋斗雲だった。
まどかを救う。それを意識すればするほど、どうしてもドラゴンボールが自分の気持ちに揺さぶりをかけてくる。
不安に駆られ、二人の前でまどかの事に触れてしまったら、そこから後はもう止まる事が出来なかった。その際に知らされた、神龍という龍の神様の存在。
「シェンロン…か。また逢えたら嬉しいわね。」
この世界で…皆と一緒に…。
「なぁ、オラにももう一個くれよ。」
「あんたはダメ。」
そんなやり取りをしながらブルマと悟空が戻ってくる。はいどうぞと、小さな丸い物がほむらに差し出される。コーヒーカップに温かな茶が注がれている。ほんのり赤い、桜色の丸い塊をそっと葉っぱが包み込んでいる。
「ほむらちゃん、今日まともにご飯食べてないでしょう?甘いもの食べると元気でるから!」
確かに昼にラーメンを少し啜った程度で、それ以外はまともに口にしていなかった。
「ん、うめぇな!これ。」
ひょいと悟空が一口。風呂代わりの湯飲みで茶を飲む事など気にもしていない。
「味もへったくれもないわね、あんたは! ほむらちゃんもほら、食べてみて。」
勧められるがまま、一つ。
「パクッ…! あ、おいしい…。」
お餅の柔らかな口当たりが優しい。甘い餡と桜の葉の塩加減がちょうど良い。ゆっくりと楽しみながら、茶を含むとほのかな余韻を残していく。
「良かった。オススメって聞いたから買ってみたの。確かに美味しいわねぇ、これ。」
にこにことブルマは嬉しそうにしている。
この季節なら割りと一般的な桜餅だ。この前食べたのは何時だったか…。そう思いながら、二つ目に手を伸ばすと、物凄い視線を感じる。それをじっと見つめ返してみる。今にも口の端から涎が溢れそうだ。
「ふふっ… 悟空? 本当に神龍に会わせてくれるのかしら?」
「ん? さっき言ったばっかじゃねぇか。ドラゴンボールは7つ全部見つけるぞ。大事な願いがあるんだろ?そんときに神龍に会えるぞ。」
「そう、それは安心だわ。ありがとう、よろしく頼むわね。はいどうぞ、召し上がれ。」
「お、ありがとな!ほむらっ‼」
「もう!ほむらちゃん。餌付けはダメよ!癖に成るから。」
***
「あれ?上条君、会えなかったの?」
「何か今日は都合悪いみたいでさ。わざわざ来てやったのに、失礼しちゃうわよね。」
学校が終わり、まどかとさやかは病院にいた。同級生のお見舞いに来たのだが面会できなかった。
上条君とはさやかの幼馴染であり、秘かな想いを寄せる大事な男の子。このままいても仕方ないので病院を出る事にした。
「あ、そういえば昨日、例の転校生、雲に乗って空を飛んでたって聞いたんだけど。小さな男の子と一緒に。」
「えっ?何それ、只の噂でしょ。」
「確かにさっきちらっと聞いただけなんだけどさ。でもさぁ、マミさんと同じ魔法少女なんでしょ、あいつ。」
「そうみたいだけど、流石に…」
キュゥべえはどう思う?と肩に乗るそれに話し掛けると、僕にはわからないよ、と簡単な答えが返ってくる。言葉を発しはしない。出会えた特権とでも言えばよいのか、テレパシーという、少女達にとって特別感溢れる魅力的な方法で会話をする。基本的に無表情。魔法少女の契約は全てこの小動物が執り行う。魔法少女となり、魔女と戦う宿命を背負う代わりに、1つだけ願いを叶えてくれるらしい。
「ん?あそこ、何か…」
病院の壁に刺さっている小さなピンのような物がまどかの目に留まる。ピカピカと点滅を繰り返している。
「グリーフシードだ!孵化しかかってる!」
***
「あの、心配してくれるのは、ありがたいのだけれど…その、悟空はまだ良いとしても、ブルマさんまで…」
「あんな話聞いたらほっとけないでしょ‼ それに今度はちゃんと見てみたいわ!大丈夫よ。孫くんもいるし。」
「そうだぞ!心配すんな、ほむら!」
昨日あの後、今日出現するであろう魔女と魔法少女の事について話をしたのだった。それを聞いて、どうしてもついていくと言うブルマ。今は小さくなって悟空の懐に納まっている。
筋斗雲がほむらの廻りをぐるぐるしていたが、やんわりとたしなめられて、良い子にお留守番中だ。
「ん、そろそろ来るわよ!隠れて!」
ブルマがドラゴンレーダーの反応を見ながらマミの動きを追っている。少しすると、マミとまどかがやって来た。結界の中に二人が入っていく。
***
「間に合ってよかった。」
マミを無事連れて来ることができ、安堵の表情を浮かべるまどか。さやかはキュゥべえと共にグリーフシードを監視している。テレパシーを使ってマミを誘導するつもりらしい。
「無茶し過ぎ、って怒りたいところだけど、今回に限っては冴えた手だったわ。これなら魔女を取り逃がす心配も…」
まどかの後ろの人影に気づくマミ。
「え?…あっ…⁉」
まどかは現れた二人を交互に見ている。
「…昨日言ったこと忘れたのかしら。隣の子は何?用心棒でも雇ったの?」
ほむらが来る可能性は考えてはいたが、少年を連れてくるとは思わなかった。
「オッス!オラ孫悟空だ。」
場の空気などお構いなしに、いつもの挨拶を交わす悟空。ブルマが顔だけ出して、黙ってなさい!と悟空の体を中から叩く。
一方ほむらは挑発には乗らず、淡々と続ける。
「今回の獲物は私が狩る。あなた達は手を引いて。」
「そうもいかないわ。美樹さんとキュゥべえを迎えに行かないと。」
「その二人の安全は保証するわ。」
「信用すると思って?」
マミは髪をサラッと撫でたかと思うと、左手を前へかざす。
シュルシュルッ…‼
「ば、馬鹿。こんなことやってる場合じゃ…!」
廻りから延びてきたリボンに絡め取られ、縛られてしまう。
「お、なんだこれ?」
「もちろん怪我させるつもりはないけど、あんまり暴れたら保障しかねるわ。」
「…今度の魔女は、これまでの奴らとはわけが違う!」
「おとなしくしていれば、帰りにちゃんと解放してあげる。その子も一緒にね。行きましょう、鹿目さん。」
「え…はい。」
まどかはチラチラとほむらと悟空の方を気にしながらも、先を行くマミについて行ってしまう。
「待っ…くっ!」
「…なぁどれくらい待ってればいいんだ~? あ、いっちまった。」
「バカねっ!何とかしなさいよ‼ ほむらちゃんが大変じゃないの!!!!」
今度は悟空の肩まで這い出てきて耳元で叫ぶ。運良く縛られるのは防げたようだ。
「うるせぇなあブルマ! ほむら、ちょっと待ってろ。」
そう簡単に言って、体に力を込め始める。
「むんっ‼」
ブチィィ!!!
「悟空…!あなたっ…」
魔力を帯びた拘束のリボンを、いとも容易く破ってみせる。感嘆の表情で見つめるほむら。その間に悟空がリボンから解放していく。
「ふぅ、これでいいぞ!」
「あ、ありがとう、悟空。」
「ほむらちゃん!大丈夫⁉」
「大丈夫です。心配かけてすみません。これくらいのロスなら何も問題は無いです!行きましょう。」
「キュゥべえ!グリーフシードの状態はどう?大丈夫?」
キュゥべえに確認を取るマミ。魔女の誕生はまだ暫くかかると聞いて安心する。しかし、今日のマミの意気込みには凄まじいものを感じる。
「今日という今日は速攻で片付けるわよ。」
魔法少女に変身し、使い魔を倒しながら進んでいく。まどかの手を優しく取って仲良く、奥へ奥へと。戦うマミの表情はとても晴れやかで、自信に満ちている。
結界の様相もまた、変化していく。
結界の出来た場所が影響するのか、病院の雰囲気を基調としたものから、最深部へと近づくに連れて、魔女の特徴、個性を表すものが強くなるのだろうか。何故だかドーナツやマカロン、ケーキなどの菓子の類いが山のようにある所へと変貌を遂げた。
「お待たせ。」
さやかとキュゥべえの待つ結界の最深部へとたどり着いたマミとまどか。無事に出会えた喜びを分かち合う。
「はぁ、間に合って良かったぁ。」
さやかが安堵の声を漏らす。すると何やらまどかが不安な顔をして話し掛けてくる。
「さやかちゃん…あのね、さっき…」
少し遅れてほむら達も結界の最深部へ辿り着いた。
「なんだか、旨そうなもんがいっぱいあるぞ‼」
「何これ、全く魔女が出てくるような場所には見えないわね。」
「取り敢えずここで待機よ。私はいつでも行ける様にしておくから。」
「オラはどうすりゃいいんだ?」
「これは魔法少女の戦い、私の戦場なの…。そうね、危なくなったら、さっきみたいに助けてくれると嬉しいわ。」
悟空に優しく語りかけ、凛とした表情で動向を監視する。
「わかった。…なぁほむら、これ食ったらダメなんか?」
ドーナツとマカロンの山の影に隠れているほむら達。悟空にとってはに廻りに食いもんが大量にある最高の状況だが、一応魔女の結界という事で、ほむらにお伺いを立てるのだった。
「食べてはダメ。帰りに皆で美味しい物でも食べに行きましょう。だからちょっと我慢して、静かにしてて。」
「もう孫くん! ほむらちゃん、ごめんね。あんたねぇ、そんなに食べたいならずっとここに居たら?あそこに家だってあるじゃないの。」
そう言いながらブルマが指差す先に、小さな家がある。チョコやクリームで可愛らしく装飾が施されてあるのか、子供が見たら喜びそうな仕上がりのお菓子の家。壁には文字の様なものが描かれてある。バースデーメッセージなんて事はないか。
「食いもんの家か~いいかもな!でも、オラ住むんならほむらん家のが良いや。ん⁉」
食いもん食べ放題は魅力的だが、悟空にもそれなりの理想があるらしい。どうやら気になることもある様子。
「クンクン…うーん、なんだかオラ甘い匂いばっか嗅ぎすぎて鼻がバカになったんか⁉ …んなことあるわけ…クンクン…? 他にも…ホントけ⁉ やった!なんか見たことあるなと思ってたんだ‼」
実に嬉しそうな顔でお菓子の家を見ている悟空。今日一番の笑顔がこぼれる。
「なに一人で興奮してんのよ? やっぱり気に入ったの?」
「一緒に居た?空を…雲なんて無かったと思うわよ。」
「絶対そうですって!マミさん、間違いないですよ!」
「さやかちゃん、でも…あんな小さな子にそんな…」
「気をつけて!出て来るよ!」
ほむらと悟空の話題に注力するばかりの三人に、キュゥべえが魔女の出現を警告する。それを受けて、マミが態勢を整える。
「せっかくのとこ悪いけど、一気に決めさせて…もらうわよ!」
魔女の降り立った脚長の椅子を、逆手に持ったマスケット銃のグリップ部分で叩きつけ、バランスを崩させる。よろけて落下してくる魔女本体に今度は直接、フルスイングで思い切り振り抜き、遥か彼方へと殴り飛ばし、更なる猛攻を畳み掛ける。
ふわふわひらひらと浮遊するそれは、とても魔女と言えるような外見をしていない。
キャンディの包み紙にペンでキュッキュッと描かれた様な円らな瞳。小さな体にサイズの合わない大きなマント。生まれたての赤ん坊。お人形さんみたいなお菓子の魔女。何をされても無表情。どんな味なのかまではわからない。
***
「わんつーわんつー」
サングラスをかけた老人が涎を垂らしながらリズムに乗りテレビ画面にかじり付いている。
「今日の献立は何ですか?」
「市場で買ってきたお魚よ。」
「えっ⁉ またフグじゃないでしょうね…。」
「新鮮だからお刺身がオススメって聞いたの。確か、カワハ…ハ…ハ、」
「!!!」
キッチンの方から何か聞こえてくる。すると老人がテレビの前から離れ、部屋の外へと出ていく。
***
「ブルマ‼ ありゃ多分亀仙人のじいちゃん家だ‼ みんないる!」
「えっ、何で⁉ 亀仙人⁉」
お菓子の家の扉が開いて人が出て来た。辺りをしきりに見渡している。
「ほら!じいちゃんだ! お~い!じい~フガッ!」
「静かにして!」
騒ぐ悟空の口を手で押さえながらも、視線をマミから外すことはしない。一方的に続いていたマミの攻撃が終局へ向かう。
「ティロ・フィナーレ!」
天高く舞い上がらせた魔女に止めの一撃が放たれ、リボンが体を縛り上げていく。さやかとまどかが声をあげて喜んでいた。
魔女は体が縛られたことで反動が押し上がるように頭部へ抜けたのか、口が大きく開いていく。そのまま顔全体を裏返しに剥がすかの様に。
…にゅるっ…
開きった口の中から、元の大きさとは比較にならないほどの巨大な黒い物体が姿を現す。魔女の標的は当然の如く、マミ。一瞬の静寂と緊張が一帯を飲み込む。
「あ……」
「フガッ⁉」
「ひぃ…‼」
「か」
「あぁ…」
「め」
「やべぇ‼」
「は」
「くっ‼」
「め」
波ァーーーーーー!!!!
老人の手が光輝いたかと思った次の瞬間には、光の塊が魔女を捕らえ、爆発飛散する。
尤も、それを確認出来たのは悟空とほむらだけだったが。
カチッ―
砂時計の流れが止まる。
世界の全ては白と黒の二色に染められる。
暁美ほむらは時を操る魔法少女。時間停止の能力を持つ。
強襲する魔女からマミを助けるべく、時の流れを止めたほむら。白黒の世界を一人、ただひたすらに進む。
―あれは…⁉―
老人の手元に大きな光の塊がある。その塊の中心から鋭く長い光が魔女目掛けて発射されている。
悟空がじいちゃんだ!などと騒いでいたが、特に気に止めていなかった。恐らくその人だろう。また自分の与り知らぬ不思議な事が起きているのだと自覚する。
マミに視線を戻すと、今度はさっきまで隣に居た少年が目に飛び込んでくる。
―えっ⁉―
時間を止める直前に地を蹴るような音がした。まさかこの一瞬でここまで来たというのか。近づいてよく観ると左手で懐のブルマを庇いつつ、必死の形相で前を目指している。
悟空の側を通りながらマミをサッと捕らえる。反応が何かあるかと思っていたが、特にそんな様子はない。素早く地に降ろす。
カチッ―
「…な、何が起こったの…?」
マミは腰を抜かし、その場にへたり込む。ほむらの能力に気づいてはいないようだ。
「命拾いしたわね、巴マミ。」
「え…⁉ あなたが助けてくれた…の?」
「……私じゃないわ。あなたを救ったのはあの人よ。感謝なさい。」
そう否定しつつ、ほむらは老人を指差す。
「あれ?ほむらおめぇいつの間に…へんなの。あっ、そうだ!じいちゃ~ん‼」
ほむらが自分より先に居ることに疑問をもった悟空だったが、亀仙人の事が気になるようだ。
「良かった…。私、マミさんが…本当に良かった…‼」
「マミさん、マミさん、安心して下さい!もう大丈夫です。」
まどかとさやかがマミに駆け寄って、泣いて喜んでいる。
「…あなた達、魔法少女に憧れるのはよしなさい‼ 巴マミ、あなた…死んでたわよ‼ 魔女との戦いは魔法少女の宿命‼ 友達感覚で一般人を巻き込む事は止めなさい‼」
わざと直接的な言葉を使い、強く、冷たく言い放つ。
マミとまどかが下を向き落胆している中、さやかだけは、立ち去るほむらをじっと見つめていた。
「うん…? 何とか間に合ったようじゃな。ふぃ~。」
何か違和感を感じていた亀仙人だったが少女が無事なようで安心したようだ。
「じいちゃん!お~い‼」
見覚えのある少年が駆け寄ってくる。
「じいちゃん!いやぁ~オラ会えると思ってなかったぞ~‼」
嬉しそうに亀仙人に話しかけまくる悟空。実に騒がしい。
悟空と亀仙人の元に向かいながら、二人のやり取りを観察していたほむら。どうやら安心して良さそうな雰囲気に見える。
「わかった、わかった悟空!ちょっと待て、お主…ん?」
魔女の結界が消失し、元の様相を取り戻す。
「魔女の結界が消失したんです。」
「魔女じゃと?」
「私は暁美ほむらという者です。先ほどはどうもありがとうございました。」
「あぁ!いやいや、礼には及ばんよ。当たり前の事をしたまでじゃ。」
「何よ、イヤに丁寧ね!ほむらちゃん!気をつけなさい‼」
今までじっと悟空の懐に隠れていたブルマが、顔を出す。
「隠れてようと思ってたのに…!ほむらちゃんに変なことしたら許さないわよ‼」
元の大きさに戻りながら亀仙人に忠告する。
「ブルマか⁉ 一体何をしたんじゃ⁉ …あぁそうじゃ、悟空!お主達はこの子と知り合いなのか? わからん事が多すぎるわい。」
「ほむらはオラの友達だ。じいちゃんかめはめ波打つんだもんな。巻き込まれねぇとは思ってたけど、ちょっと焦っちまった!」
「…あの光線の様なものは、カメハメハというのですか?」
「ほう、あれが分かっておったとは‼ なかなか…むぅ…。」
「何?またスケベなこと考えてんじゃないでしょうね⁉」
「まどか、あの男の子でしょ?」
「そうなの、ほむらちゃんと確かに一緒に居た…。」
「ねぇマミさん!あんまり関わらないほうが…。」
「そうにもいかないわ、あの人が私達を助けてくれたのは間違いないみたいだし…。ねぇキュゥべえ?」
「わけがわからないよ。」
彼女達がこういった反応になるのも仕方ないのかもしれない。ほむらとは元より敵対しているし、噂の少年もいる。その少年からピョンと飛び出したかと思いきや、急に大きくなった少女を見たときには、まどかがウェヒヒ⁉と変な声すら出していた。そして助けてくれたという人物は、アロハシャツを着て、亀の甲羅を背負い、サングラスをかけたファンキーなじいさんなのだから。
「あの…すいません…。」
マミが恐る恐る亀仙人に声をかける。まどかとさやかは傍らに寄り添いながら不安な表情を浮かべている。
「ブルマさん、ほら、彼女の胸のとこ…」
「あ!ホントだ…」
「お? あれドラゴン…フガッ⁉」
またしても口を塞がれる悟空。今は余計なことを言われては困る。
「悟空、お願いだからドラゴンボールの事は喋らないで…!」
耳元でヒソヒソと頼み込む。悟空がフガフガ言いながらも頷いている。亀仙人は体をプルプル奮わせている。
「ええのーーっ!!!」
「ひぇっ⁉」
マミ達は驚いて一歩後ずさる。
「あ……助けていただき、本当にありがとうございました…。」
頭を下げるとそれの主張はスゴいものがある。
「!!!…いやいや、こっちが感謝をしたいくら…」
凝視しているとそこへキラリと光る物がある。これは…。
「ありゃ?その玉はわしが持っとった物と同じ…」
「え⁉ これの…ことでしょうか?」
「ほぅ、星の数まで一緒じゃわい。うむ、確かにわしが持っ…」
「これが何か知ってるんですか⁉ お爺様‼」
急に反応がガラッと変わり、マミが目を輝かせている。ブルマとほむらが固唾を飲んで見守る。
「⁉…あぁ、その、悟空とブルマって娘が、そこの…ハイ!私も、実は詳しいんです!ハァイ‼」
「あ…あのスケベジジイ‼」
正直なところ亀仙人はドラゴンボールが何なのか良く分かっていなかった。悟空達が集めていたくらいの事しか知らない筈だが…目の前で体を弾ませながら、ぐいっと近づいてくるマミにあっけなく敗北するのだった。しかもブルマが詳しいのだと指差してくれるというおまけ付き。
「やっぱりお詳しいんですね⁉ あぁ、嬉しいわ‼ 美樹さん、鹿目さん‼」
「良かった…ですね、マミさん!」
「すごい人だね…。」
「良くないわよ…! 全くやってくれたわね…。」
マミが見つけたドラゴンボールの事については最後に何とか言って貸してもらうか、こちら側の都合の良い形に言いくるめてしまえば何とかなるだろうと、ほむらと話していたのだった。
御守りとして大事にしてくれる分には対した問題は無い。只の玉ではないと、これ以上の興味を持たれる事だけは避けたかった。
「どうしましょう、ブルマさん…。」
ドラゴンボールに興味津々なマミと、マミに興味津々な亀仙人。このまま放っておくわけにもいかないだろう。
「というかここ病院でしょ?仕方ないわね…。」
ブルマが廻りを気にしている。今はちらほらとしか人がいないが、どこをどう見られたかもわからない。
「ちょっといい、亀仙人さん? とりあえずこんなとこじゃあれだし、どっか場所を移さないと、色々面倒よ。ほら、あの家もカプセルでしょう?何だかすっごいうるさいけど…。」
ちょっと離れた所にお菓子の家に変貌を遂げていたカメハウスがある。何だかドッタンバッタン騒がしい。
「何だてめぇ!このやろー‼」
「ぎえぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
扉が開いて人が飛び出してくる。つるつる坊主頭の少年と、少年を追いかける金髪の女。手には包丁が握られている。
「ありゃ! おっかないときのランチちゃんじゃったか‼」
日も沈みかけた空の下、クリリンの悲鳴が響き渡っていた。
(後書き長くなります。内容の変更点もあります)
前回、予約投稿でミスをして中途半端な状態でお読みになられた方々、申し訳ありません。今回もやらかしてしまいました。すぐに削除したので、見られた方は少ないと思いますが。
内容の変更点とは、悟空の口調についてです。
基本的にドラゴンボールは原作漫画基準で考えています。ですがアニメの「オッス!オラ孫悟空だ」は定番かなと思い、使いました。アニメ版は訛りが強いですよね。私は余り言葉が訛らない、標準語多めの少年孫悟空が、子供っぽくて可愛らしくて好きです。これからはそこを変えたいなと思います。内容の雰囲気がガラッと変わることは無いと思うんです。多分あんまり変わりません。勝手ですいません。読んでて変だなと感じられましたら、好きなように変換してお読みになってください。本当にすいません。それでもいいよと思われる方は是非続きも読んでいただけたら嬉しいです。
ご意見ご感想お待ちしております。最後までお読みいただきありがとうございました。