魔法少女とドラゴン☆ボール   作:こんちわ

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予定より随分遅くなりました、すいません。今回は少し長めです。それではよろしくお願いいたします。


其之六 それぞれの日常

「やっぱりここが落ち着くわねぇ。大変な一日だったわホントに。」

 

「お疲れ様でした。」

 

確かに大変な一日だった。お菓子の魔女との戦いに始まり、亀仙人達とのまさかの遭遇。最終的には敵対していた筈の巴マミに、家に招待されるという急展開。

ようやくほむらの家に帰って来てコーヒー片手に一息ついていたところ。付け合わせは昨日の残りの桜餅。

 

「なぁ、ブルマ。」

 

「亀仙人までこっちに来ちゃうなんてね。ほむらちゃんもビックリしたでしょ?」

 

「なぁ、ほむら。」

 

「ええ、でも本当に素晴らしい方ですね。天下一の武天老師様。物凄いお力を持っていらっしゃるわ。悟空のお師匠様ですものね…あっ…」

 

「おっ! 亀仙人のじいちゃんか? オラの…」

 

「いいから! あんたはその服を何とかしてきなさいっ‼」

 

見滝原マンション銃乱射事件の後、何度話し掛けてもほむらが一切取り合ってくれないのだった。

渋々ながらもブルマに従い、穴だらけの服を着替え始める悟空。その後ろ姿からは困った様子がはっきりとみてとれる。

 

「ふふっ、ちょっと意地悪すぎたかしら?」

 

「いいのよ、孫くんにも乙女の気持ちってものを少しは理解してもらわなきゃね。」

 

「そうですね。…まぁでも、そろそろ許してあげようかしら。」

 

「そう? 甘いわねぇ、ほむらちゃんは。」

 

帰りの道中、今日のまどかだけでなく、既にほむらが被害にあっていた事実を聞かされたブルマは怒り、悟空を叱りつけた。いつもの様にブルマに対しては、余裕寂々の悟空だったのだが、ほむらの全く口を聞かない静かな怒りは流石に堪えたようだ。

 

「ごめんな、ほむら。」

 

着替え終わるなり、おずおずとほむらの元までやって来て素直に謝る悟空。あら、とブルマがぽつり。

 

「もうあんな事しない?」

 

しっかりと目を見て悟空に問う。

 

「うん…約束するぞ。」

 

「そう…じゃあ、許してあげる。」

 

「ホントか⁉」

 

「えぇ、本当よ。それから…今日は食事に行けなくて悪かったわね。明日一緒に行きましょうか。お腹いっぱい食べていいわよ。」

 

マミの家で菓子に茶にと持て成しを受けたのだが、悟空の胃袋を満足させるには至らない事はわかる。でも、それ以上を悟空が求めなかった事も知っている。お行儀よくしていたのだ。約束通り、帰りに何か食べるなり買うなりしていこうかと考えていたのだが…言えなくなってしまっていた。晩ごはん抜きとは流石に可哀想だ。

 

「ほむら、ありがとう。 オラ腹減ったの我慢するぞ!」

 

いつものほむらに戻ってくれて一安心の悟空。

 

「良かったわね、孫くん。」

 

そう言いながら、スッと桜餅を悟空の方へと滑らせるブルマだった。

 

 

***

 

 

「おっはよー!」

 

元気よく後ろから声を掛ける。今朝は少し家を出るのが遅れてしまった。前の二人が振り返ると、こちらに気付いて手を振ってくれる。

 

「まどかっ、おそーい!」

 

「おはようございます。」

 

さやかの横で丁寧に挨拶をかわす少女がいる。彼女の名は志筑仁美。おしとやかで、容姿端麗なお金持ちのお嬢様だ。いつもこの三人で仲良く登校している。

 

「そうそうまどか、また仁美ラブレターだってさ、モテモテ美少女は羨ましいねぇ。」

 

仁美にラブレターなど今さら珍しい話でもない。

 

「いいなぁ。やっぱり私も一通くらい…」

 

とはいえ、一度くらいそんな話の中心にいてみたいと思ってしまうのも、乙女心と言うものなのか。

 

「いやいや~まどかだって素敵な出会いがあったじゃないか~立派な男の子とさ!」

 

「まどかさん!本当ですの⁉ 」

 

「ち、違うよぅ!」

 

いきなり何を言い出すのか。否定する声も上擦ってしまう。

 

「そうなんだよ仁美~。昨日ね…その子ったら、まどかの…」

 

「まぁ!」

 

「…ハレンチでしょ?私だって…」

 

ニヤニヤとまどかの方を見つつ、仁美に話し掛けるさやか。昨日のあの一件の事で面白おかしく、からかうつもりなのだろう。

 

「もう!さやかちゃん‼ あの子はまだ小さいんだから、そういう…」

 

「まどかさん!そんなところを触られましては、もうその人のところへお嫁にいくしかありませんわね!」

 

「えぇ⁉ 仁美ちゃん⁉ 急になんて事…」

 

「あはは、ごめんまどか!ダメだよ仁美。だってまどかは私の嫁になるのだ~!誰にも渡すものか~‼」

 

 

***

 

 

「おじいちゃん、ランチさん!戸締まりだけしっかり頼みますね!それじゃあ、いってきまーす!」

 

「はい、いってらっしゃい。気をつけるんじゃよ!」

 

「いってらっしゃ~い!」

 

元気良く駆けていくマミを見守る亀仙人とランチ。そこにクリリンの姿はない。ただの居候ではならんと、亀仙人が昨日のうちに牛乳配達のアルバイトを申し込んだのだ。色々と面倒なこの世界でのやり取りも、家庭の事情という理由でなんとか了承を得た。牛馬の如く働かせてくだされと伝えてある。

 

「はぁ…」

 

配達業者にはこんな小さな子がと心配された。しかし、業者より速く、大量に仕事をこなすクリリンは直ぐに十分な信頼と期待を勝ち得たのだった。

こっちに来てまでこんなことをしなくてはならないのかと不安を漏らしながら帰路についている。

 

「あら?クリリン君!」

 

「あっ!マミさんじゃないですか‼」

 

「もう牛乳配達終わったの?」

 

「私にかかれば、これくらい大したこと無いですよ!給料も明日から出来高が着くみたいですよ!」

 

「やったじゃない! これからも頑張ってね。よし、今日は帰ったら何か作って上げるわ。楽しみにしててね!じゃ、学校行ってくるから、またね!」

 

「あ、ありがとうございます‼……やっぱり…いいなぁ。よし‼ 頑張るぞ!」

 

 

***

 

 

「さぁお弁当の時間だ~!」

 

午前の授業が終わり、学生は皆活気付く。

 

「あ、さやかちゃん!マミさんと先に屋上行っててくれないかな?」

 

「ん?どうしたの。まぁいいけど、早く来てよね。」

 

「うん!わかった。」

 

ランチタイムは屋上で過ごす事が多い彼女達。今日は何やらまどかに考えがあるようだ。さやかが教室を出るのを見届けてから、席を立つ。

 

「一緒にお弁当食べよう!ほむらちゃん!」

 

「えっ…⁉」

 

まどかがこちらの方へ近付いて来たのは知っていたが、自分に用があるとは思っていなかった。

 

「いい…けど…」

 

「じゃあ決まりだね!」

 

サッとまどかに手を取られ、あたふたしてしまう。

 

「あっ、待って。」

 

「えっ? やっぱり嫌だったかな…」

 

「違うの、今日お弁当持ってきてなくて。先に購買に行かなきゃ…」

 

「あ…ホントだ!ごめんね、焦っちゃって。」

 

勢い良く手を取ったものの、肝心のほむらは何も持っていないのだった。

 

「まどか…ありがとう、誘ってくれて。」

 

「うん。ほむらちゃんとお話ししたかったんだ!ふふっ、じゃあ先に購買行こっか。」

 

 

***

 

 

「そういうことだから、とりあえずは今わかってるボールを探しに行こうかなって。」

 

腹を空かせた悟空を使って、更なる資金調達をしてきたついでにマミのマンションに寄ることにしたブルマ。応対してくれたランチが別人の様で驚いた。

 

「ほむらちゃんにも話してあるから、マミちゃんのサポート、頼んだわよ。」

 

「うむ…」

 

このところずっと真面目モード中の亀仙人。

 

「ブルマよ、お主は魔法少女の存在をどう捉えておる。」

 

「捉えてって…変な質問ね。そりゃあ不思議だし驚いてるわよ。それに、魅力的ね。ドラゴンボールを知った時と同じくらいには。」

 

「そうか…その、ほむらちゃんの事はどこまで知っておる。随分信頼を寄せられているように見えるのじゃが…」

 

「どうしたのよ? あなたよりは詳しい筈よ。まぁ、ほむらちゃんも、隠してる事…というか、言いにくい事はまだあるみたいだけど、その辺りは上手く聞き出せたらいいかなって。」

 

 

***

 

 

「でね、おじいちゃんったらクリリン君に…」

 

「はぁ。」

 

「牛乳配達のアルバイト、今日からしてるのよ。それから…」

 

「へぇ。」

 

マミのマシンガントークは一向に終わる気配を見せない。

昨日今日会ったばかりの、そう関係が深いとは思えない人達と一緒に暮らし始めたマミが心配なさやか。しかし彼らの事を嬉しそうに話す姿を前にしては何も言えず、只々相づちを打つばかり。

 

「お待たせ~!」

 

「まどか遅かったじゃ…あっ!」

 

「あら…暁美さん。」

 

手を引かれて、まどかの後ろから現れたのは暁美ほむら。

 

「お、お邪魔するわ…。」

 

詳細を知り、足取りが重くなるほむらを大丈夫!大丈夫!とまどかが引っ張ってここまで来た。

 

「今日もみんなで楽しくしたいなって、思っちゃって。」

 

まどかがそう言うと、マミが優しく微笑み返す。みんな一緒の楽しいお弁当の時間の始まりだ。

 

「あんたさぁ、それだけ?」

 

「挨拶が足らなかったかしら?」

 

「違うよ!そのパン一個で足りるのかって聞いてるの!」

 

購買で買ってきたのは小さな焼きそばパン一つだけ。女の子の食事だとしても少し寂しくはないか。

 

「あぁ、そういうこと。大丈夫、これで十分よ私は。」

 

簡単な包みを剥がしながら答えるほむら。さやかは小さくため息をついてから、

 

「別にケンカしにきてんじゃないんだから…青海苔ついても知らないぞっ!」

 

と自分の弁当箱から唐揚げが刺さった小さな串を掴み、ほむらの焼きそばパンに突き刺した。

 

「唐揚げも美味しいよ、たぶんだけど。」

 

「あ、ありがと。」

 

「さやかちゃん、優しい!」

 

「暁美さん、良かったわね。」

 

「で、マミさんお弁当忘れちゃったんですか?何も持ってないから気になってたんですけど。」

 

さやかも少し気恥ずかしいのか、マミに話題を振る。

 

「やっぱり気になっちゃったかしら、ふふふ。」

 

やっと聞いてくれたと言わんばかりに、マミが皆の前に手を出して、とある物を見せつける。

 

「何ですか、これ?」

 

「みんな一度は見た筈よ。もう、しょうがないわね…」

 

 

ボンッ‼

 

 

という音と共に煙が辺りを覆う。煙が晴れると目の前に可愛らしいランチセットが現れた。

 

「どうかしら? 凄いでしょう!ポイポイカプセルよ。おじいちゃんに借りたの。」

 

「ビックリした~。」

 

「魔法じゃない…ですよね。」

 

「たくさんあるから、みんなもどうぞ。今日のお弁当、なんとランチさんが作ってくれたのよ!」

 

「ランチさんって、あの…?」

 

ランチさんと聞くと、包丁をかざしてクリリンを追いかけ回していた凶暴な金髪の女性が頭に浮かぶ。

 

「あの人が料理上手なんて意外ですねぇ。」

 

まどかとさやかは当然として、ランチの事はほむらも詳しくは知らない。ぶっきらぼうでおっかないのは見た通りだろうが、わりと物静かでクールな印象を受けたのも事実。料理上手とはもちろん意外だが。

 

「巴さん、良かったわね。でも…ポイポイカプセルじゃなくてホイポイカプセルよ、ホ・イ・ポ・イ。」

 

「えっ⁉ そうなの?」

 

「私はブルマさんから色々とね…。」

 

「ふ、ふぅん…暁美さんも詳しいみたいね。でも流石にこれは知らないと思うわよ。実はランチさんって…」

 

悟空一派と関わりを持つという共通点が、二人の会話を珍しくも弾ませるのだった。

 

「マミさん嬉しそうだねぇ、まどか。」

 

「うん、そうだね。生き生きしてるよね、マミさん。」

 

 

***

 

 

「ほむらまだ帰って来ねぇのかな。」

 

「あんたねぇ、何回同じ事言えば気が済むのよ!大体ねぇ、ほむらちゃんが帰って来たって晩ごはんはまだなんだから!」

 

そろそろほむらが帰って来ていい頃だが、どちらにしても約束の晩ごはんまでは時間がある。今日は比較的満足のいく腹具合の筈なのだが。この様子では犠牲になった料理店も形無しといったところか。

 

「飯を食うだけでクリリンより稼ぐとはのぅ。まぁ待っておれ、もうすぐ帰って来るわぃ…ん?」

 

朝から仕事に出掛けたクリリンが可哀想になるレベルの金額を稼ぎだす悟空。誰にでも出来ることではないだけに天晴れと言うべきなのか。ほむらに用がある亀仙人も一緒に、彼女の帰りを待っているのだった。

 

「ただいま帰りました。」

 

「お!帰って来たぞ!」

 

亀仙人の言う通りほむらの声が聞こえてくる。悟空が喜んで迎えに走る。

 

「お?」

 

「あ…お、お邪魔します…。」

 

「パンパンしてごめんな。」

 

「パン……い、いいよもぅ。ビックリしちゃっただけだから、謝らなくてもいいんだよ…悟空くん。」

 

思い出すのも恥ずかしいのだが、悟空を見るとどうしても思い起こされてしまう。

 

「偉いわ、悟空。」

 

「ほむら!晩めし行こうな‼」

 

「そうね、私も楽しみよ。」

 

「…うん、ほむらちゃんは本当にいいお姉ちゃんだよ。」

 

 

***

 

 

「良く来てくれるわよね、あの子。」

 

「助かるわ、難しい患者さんだしね。励ましになってくれてるといいんだけど。」

 

「その辺りは大丈夫でしょう。それにあの子以外にもお友達はいるみたいよ。この前も、ほら…」

 

「そうね、あら?意外とやり手なのかしらね。ふふっ。」

 

「まぁでも、あの年頃だとねぇ、色々ありそうで心配は心配かなぁ。」

 

 

***

 

 

「…凄いね、ほむらちゃん。」

 

「いつものことよ。はい、焼けたわ。」

 

「あ、ありがとう。」

 

お昼に誘ってくれたまどかを夕食に招待したほむら。さやかとマミも誘ったのだが都合が悪く、残念ながらこの場には居ない。あまり遅くなるのも良くないと、早めに入店することにした。

 

「うんめ~‼」

 

「こりゃ、悟空!それはわしが…」

 

焼けた肉が瞬く間に消え去っていく。悟空は家の稼ぎ頭だからと、ほむらが言っていた意味を理解するまどかだった。ちなみに今日は食べ放題制。ブルマにオススメのお店を調べてもらっていたのだ。

 

「私達はゆっくり落ち着いて食べましょ。」

 

「武天老師様、どうぞ。」

 

「ありがとうほむらちゃん。…うむ、うまいの!」

 

「ほむらちゃん、そっちはいいからしっかり食べて!まどかちゃんも、ほらっ!」

 

気をとられてばかりの二人に沢山食べるよう促すブルマ。そんな事を何度か繰り返しながら、騒がしい夕食の時間が過ぎていく。

 

「あの、ドラゴンボールって探すの大変なんですか?やっぱり。」

 

「うーん、レーダーに反応あるやつは状況によるけど、そこまで大したものでも無いわね。」

 

「ほむらちゃんも探すのかな?」

 

「えぇ、もちろんよ。」

 

「そうなんだ。あのね、よかったら…私も手伝わせて貰えないかな。」

 

あれだけ敵対していたマミとほむら。今の関係が築けているのはブルマ達のお蔭だと、まどかはそう感じていた。実際はきっかけになった程度で、しっかりと繋ぎ止めたのはまどか自身の力が大きいのだが、彼女は気付いていないだろうし、そんな事を思いもしない子だ。

 

「私、ほむらちゃんに迷惑かけてばっかりで…こんな私でも何か、何か出来たらって。みんなの役に立てたら嬉しいなって…思って…。」

 

 

***

 

 

「マミちゃんは本当にお菓子作るの上手ねぇ。将来はパティシエかしら?」

 

「パティシエだなんて……無理ですよ。私はみんなが喜んでくれるだけで十分ですから! これからはもっと料理の方も勉強しないと。ランチさん、よろしくお願いしますね。」

 

牛乳配達を頑張るクリリンの為に作ったのはシフォンケーキ。何時でも手軽に食べられるように、小さなカップシフォンにした。皆にお裾分け出来るくらいたくさん作った。

 

「それにしてもおじいちゃん、遅いなぁ…。」

 

学校から帰って来たら、亀仙人はいなかった。ドアを開けたらお帰りなさいと言ってくれると思っていたのに。

ケーキが出来上がるまでに帰って来てくれたらいいかと気持ちを切り替えるもそんな事は無く。その後はランチが作る夕食を一生懸命手伝った。それでも亀仙人は帰って来ない。冷めきった一人分の夕飯がテーブルにぽつんと残されていた。

 

「マミさん、ブルマさんと一緒なんだから、そんなに心配しなくても大丈夫だと思いますよ。」

 

「そうなんだけど…でも…」

 

学校でほむらに夕食に誘われた。何だか色々と言っていたが、要約するとお昼のお礼がしたいという事らしかった。でもクリリンとの先約があったし、申し訳なく思いながらも断った。その彼女と関係の深いブルマと共に亀仙人は家を空けていた。

 

「やっぱり暁美さんも一緒…なのかなぁ…。」

 

 

Prrrrrrr…

 

 

最初は固定電話に走るランチをぼーっと見ていた。電話が鳴るなんて珍しいなと思いながら…。

 

 

***

 

 

「さて…ほむらちゃん、ちょっとよいかのぅ。」

 

焼肉店での夕食を終え、ほむらの家に帰って来た。まどかは皆で丁重に送り届けた。軽い休憩を取った後、当初の目的を果たすべく亀仙人が動き始める。

 

「ソウルジェム…と言ったか、ほむらちゃんのを見せてはくれんかな。」

 

「…いいですけど…どうかしましたか?」

 

マミに何か聞いたのだろうか。不思議に思いながらもソウルジェムを指輪から元の姿へと戻す。

 

「やっぱり綺麗ねぇ、素敵…でも、どこか少し…」

 

「汚れたのか?あんまり光ってねぇな。」

 

以前見た時より少し輝きが鈍いような感じがする。筋斗雲の上で寝っ転がっていた悟空もやってきてストレートな感想を言い放つ。ブルマ達の反応を見ながら、亀仙人が続ける。

 

「ありがとうほむらちゃん、グリーフシードは持っておるかの?」

 

「……今は、その…」

 

質問に素直に答えるなら、持っているが正解だろう。グリーフシードは魔法少女が得られる報酬。魔法少女の、魔法少女だけのモノ。

 

「ほむらちゃん…これを。」

 

「えっ…」

 

亀仙人から小さな黒い球体を渡される。細い矢が鋭く球体に突き刺り、串刺しにされている様に見えなくもない。

 

「マミちゃんが喜んでおったよ。暁美さんがくれたと。まだ使えると言っておったから、こっそり拝借してきたんじゃ。」

 

「でも、私には必要なかったから…」

 

「…ほむらちゃん、あの時魔法を使ったのじゃろう。わしにはわかっておるよ。」

 

「…!!」

 

何故こうもあっさり見抜かれてしまうのか。ここまで簡単に自分の能力を見抜いた者はいない。

過去に廻った時間の中で、自ら全てをさらけ出した事も有ったが…理解される事は余り無かった。悪戯に不安を煽るだけで、結果、誰も望まぬ未来を繰り返してきた。誰も未来を信じてくれはしなかった。だからこそ、昨日の武天老師の言葉は心に響いた。

先程から二人もこちらを静かに見つめて、次の言葉を待っている。ソウルジェムとグリーフシードの詳細については…出来るだけ上手く誤魔化したい。真実を打ち明け、心配させたくはないのだ。彼らと一緒ならば、魔力の消費は最小限に抑えられる筈。だから今まで通り、ひっそりと処理すればいい……今は、まだ…

 

「…然るべき時は、今じゃと、わしは思うよ。」

 

「武天老師様…‼」

 

「…ったく強引なんだから。でもね、ほむらちゃん、ちゃんと話して欲しいわ。必ず力になれるから。何があっても私がしっかり受け止めてあげる! ね?」

 

ソウルジェムにそっと触れながら、ほむらの手を両の手で優しく包み込む。

 

「ブルマさん…」

 

「オラもいるぞ!大丈夫だ、ほむら。心配すんな!」

 

ピョンと筋斗雲の上に立ち、笑顔を見せる悟空。初めて会った時から変わらぬ、あの無邪気な笑顔を。

そう、彼らは変わらない、出会った時からずっと…。私を信じて、優しく見守ってくれる。当に決意は固めた筈ではないか。ならば…

 

「悟空、ありがとう……よく見てて…」

 

グリーフシードをソウルジェムに近づけ始めるほむら。すると、ソウルジェムの濁りがじわじわと集まり、黒い靄となる。そしてグリーフシードに吸い取られる様に消えていく。

 

「こうして、魔力の消費で溜まった穢れをグリーフシードに吸いとらせるんです。」

 

「お!綺麗になったか? ピッカピカだな!」

 

「穢れ、か…元通りって感じかしら?」

 

紫色の綺麗な宝石の様相を取り戻す。ほむらの手の中で輝くソウルジェムを見て、亀仙人が満足そうに頷いていた。

 

「魔女が落とす卵みたいなものなんです。穢れの処理に有効なんですけど、扱いには注意しないと。吸い過ぎると魔女が羽化してしまうから。今回は巴さんの見立て通り大丈夫でしたね。」

 

「せっかくやっつけたのに、また最初からってのも困るものねぇ。」

 

「あんなのが出てくんなら闘えて嬉しいけどな!オラがやっつけてやるぞ!!」

 

「…頼もしい限りね、悟空。」

 

本題はここからだろう。今までの話ではほむらがここまで言い淀む理由にはならない。

 

「そして…魔力の消費によって溜まっていく穢れですが、要因は他にもあります…。精神的な…心の変動。それが本人にとってマイナスの方向へ転じた時、ソウルジェムが濁り始める。」

 

手元のソウルジェムに目を落とすほむら。そのソウルジェムとグリーフシードを交互に見ながら悟空が疑問をぶつけるのだった。

 

「う~ん、なんか二つとも似てるな!見た目はあんまり似てねぇんだけど…感じが…その、そっちの搾りカスみてぇなやつとよ、同じような感じがするんだよな。」

 

グリーフシードは全体的に黒いフォルムに銀色の模様が入り、メタリックな冷たい印象を受ける。エネルギーに満ち溢れたソウルジェムとは真逆のような。

 

「……よくわかったわね。フフッ…」

 

ほむらは軽く笑う。ぐっと空気が張り詰めるのを感じた。

 

「全てを拒絶したくなるほどの絶望を感じる過程で徐々に魔法は使えなくなる。そしてどす黒く濁ったソウルジェムは…新たなる魔女を産み出す…!!」

 

「魔女を!? それって…」

 

「肉体は只の抜け殻となり、絶望を振り撒くだけの存在と化す…」

 

「なん、と…!!」

 

「どういう事なんだ?オラよくわからねぇ!! 魔女になんのかこれも!?」

 

「大丈夫よ、悟空…。私は魔女なんかにはならないから、絶対!約束するわ…。」

 

 

***

 

 

「核心に近付いてきたか…。」

 

「ほむら… よく 言った… 」

 

「そうだな……。」

 

 

***

 

 

「…日常生活を送るだけでも、穢れは少しずつ溜まっていきます。肉体を維持するために…。」

 

「そんなっ!!そんなのあんまりよ。魔女を狩り続けなきゃ、いつか必ず魔女になるってことじゃない!!」

 

逃げ道は無い。いわゆる少女の憧れである魔法少女とは全くの別物であることを突き付けられる。

 

「マミちゃんはこの事実を知らんのじゃろう?」

 

「ええ。巴さんは特に不安定…だから武天老師様もこちらに来られたのでしょう?」

 

「うむ…まさかここまでの事とは思うておらんかったが、マミちゃんは…確かにのぅ…。」

 

昨日の喜ぶマミの姿が頭に浮かぶ。彼女は少し感情の起伏が激しいきらいがある。そんな子にこの事実を叩き付けたらどうなるか…

 

「…この家に電話はあるかね?」

 

「そうね、連絡はいれてあげた方が良いわ。聞かなきゃいけないことはまだあるしね…。」

 

 

Prrrrrrr…

 

 

「もしもし…あ、ランチちゃんかな?わしじゃ、遅くな…ん?あぁマミちゃ…」

 

「おじいちゃん‼ 今どこにいるの⁉」

 

「つっ…‼ い、今はブルマ達とほむらちゃんの…」

 

「やっぱり…そうですか…。」

 

「……いやぁほむらちゃんには悟空が世話になっとるから。師匠として弟子の様子を見ないわけにはいかんしの、ほっほっほ。本当はマミちゃんに美味しいケーキでも焼いてもらって、ゆっくりしときたかったんじゃが…。」

 

「あら…。本当にケーキ焼いてあるのに…もう…。」

 

まだ耳鳴りがしている。嘘も方便とはよく言ったもので、努めて普段通りの亀仙人を演じる。嘘と言うわけでもないのだが。

最初こそ慌てたマミの様子が伝わって来て不安なほむらとブルマだったが、割りとうまく対応する武天老師を見て少し落ち着く。

 

「なんと!そうじゃったか、こりゃあ惜しいことをしたのぅ。急に家を空けて悪かったと思っとるよ。誠に申し訳なかった。必ず帰るから、遅くなる事を許してくれんかな。なかなかほむらちゃんが離してくれんのじゃよ!ほっほっ。」

 

最後にボロが出たようだ。後ろでほむらの体がピクッと動く。それを見たブルマが、要らんことを…!と恨み節。

 

「…わかりました、ちゃんと帰って来てねおじいちゃん。それで、暁美さんはいるかしら?ちょっと変わって欲しいの。」

 

「あ、あぁほむらちゃんのことかの?わかったよ、今すぐ変わろう。」

 

「えっ?」

 

「あ…」

 

 

***

 

 

「あたしは…どうしたいのかな…。」

 

ほむらの誘いを断るのは少し勇気が必要だった。恐らく彼女も同じ様な心持ちだったろうに、悪いことをした。

それでも会いたかった。ばつの悪さを誤魔化し、病院へと走った。彼好みのCDを手にして。

 

「恭介…。」

 

いつもと変わらぬ笑顔を向けてくれて安心した。でも昨日の検査の結果については聞けなかった。イヤホンを片方ずつ分けあい、一緒に聞いた曲の内容はよく覚えていない。

二人きりの穏やかな時間。時折外を見やる彼は、こちらの視線に気付くと、あぁごめんね、さやか。と謝る。その空虚な瞳が少し気になった。

 

 

ヒュッ―

 

 

カーテンが風で揺れている。窓を開けたままだった。確かに少々肌寒い。

 

「願いが叶う…か…。」

 

窓を閉めながら、夜空に目をやる。今日も見滝原には綺麗に星が輝いている。

 

「どうしたんだい、さやか? 元気がないじゃないか。」

 

「えっ!?」

 

パッと振り向くと、赤い目をした小さな白い動物が、さやかを見つめていた。

 

「キュゥべえ! もう、ビックリさせないでよっ。」

 

「それは悪かったね。」

 

「でもキュゥべえが家に来るなんて珍しいね。マミさんに相手してもらえなかったんでしょ?あはは。」

 

「そうだね。マミは僕よりあの人達に興味があるみたいだよ。」

 

少しでも妬いて見せれば可愛いものを。残念ながらキュウべえにはそんな感情は無いのだ。淡々と聞かれたことに答えるだけ。

 

「…あのさぁキュゥべえ。マミさんが持ってる…あの人達が言ってた、ドラゴンボールってやつの事、本当だと思う?」

 

「さぁどうだろうね、僕にはよく分からない。でも、もしあの話が本当だったとしても、全部集めるまでに、どれだけの労力と時間がかかるか考えてみなよ。簡単にはいかない筈さ。それに願いはあの人達が叶える予定だよね。さやかじゃない。それとも彼らがいなくなった後に一人で探す気かい?」

 

「それは…そうだけどさ。」

 

「そんな不確かな物に頼るよりは僕と契約を交わした方が現実的だと思うよ。さやかだってもう十分に見てきたじゃないか。…叶えたい願いがあるんじゃないのかい?」

 

「………。」

 

「僕なら、今この場でどんな願いだって叶えてあげられるよ!」




投稿が遅れてしまい、すいません。遅くてもGWまでにはと考えていたのですが…。
今回は日常パートを多くとり、学校は購買もあるという設定にしました。亀仙人は「気」を感じとる事が出来ます。原作に描写はあるので。各話のタイトルを原作からいじって持ってくるのが難しい所です。
さやかの一人称は「私」なのか「あたし」なのか。どっちも使っていた気がするので、いわゆる有名なセリフ以外は「私」で大丈夫でしょうか?
それと、魔女になる穢れの説明はこれであっているか不安です。違和感がなければよいのですが。
最後までお読みいただきありがとうございました。ご意見ご感想お待ちしております。
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