書き始めてすぐに筆止まって放置して……。
自分の飽き性がホント嫌になります。
~~前回までのあらすじ~~
穂乃果達と出会い共に時間を過ごしていった正司。
鬼たる父の姿に憧れ、いつか自分に鬼になると意気込む
彼の元に、ことりの母からある話がされた。
それは穂乃果達3人が進学予定の音ノ木坂学園に、テスト生
として入学して欲しいと言う話だった。
正司はその話を聞き、学園へと入る決意を固めたのだった。
正司が音ノ木坂にテスト生として入学し、既に1年が経過した
新年度、春。
そんなある朝、朝霧で少し冷えた、まだ少し暗い町中を一人の
ジャージ姿の青年が走っていた。
それは、穂乃果達と多くの時間を過ごしながらも自分の夢のために
今まさに努力を続けている青年、戸田山正司だった。
かつての幼さはすっかり消え、今では祖父、戸田山登巳蔵に
似た端正な顔立ちのイケメンとなっていた。
やがて正司はいつものランニングコースから帰ると、手早く
シャワーで汗を流してから制服に着替え、家を出た。
正司「それじゃあ、行ってきます」
母「気を付けてね」
玄関まで見送りに来てくれた母に一礼すると、家を出る正司。
彼はそのまま学校へ………ではなく幼馴染の穂乃果の家に向かった。
歩く事数分。
『ガラガラッ』
正司「おはようございま~す」
近所である穂乃果の家、和菓子屋『穂むら』に辿り着いた
正司は躊躇う事無く、準備中と書かれた札が下がった入り口を
開け、中へと入った。
穂乃果母「あら正司君、おはよう」
そして中に入ると、丁度穂乃果の母が箒で中を掃除していた。
正司「おはようございます。穂乃果はまだ?」
穂乃果母「相変わらずの寝坊助よ。お願いできるかしら?」
正司「はい」
頷くと、靴を脱いで店の中を通って穂乃果の部屋へと向かう正司。
その途中で……。
雪穂「あ」
穂乃果とも違う制服姿の少女、穂乃果の二個下の妹である
『高坂 雪穂』と廊下で遭遇した。
正司「あ。おはよう雪穂ちゃん」
雪穂「お、おはようございます正司さん!」
と、顔を赤くしつつも挨拶をする雪穂。その様子を見つつも
彼女の隣を通って穂乃果の部屋に向かう正司。
そんな彼の後ろ姿を見つつ雪穂は……。
「ハァ。私も正司さんみたいなイケメンに毎朝起こして
貰いたいな~」
なんて、一人愚痴りながら下に降りるのだった。
一方、穂乃果の部屋の前に到着する正司。
『コンコンッ』
正司「お~い穂乃果~。朝だよ~。穂乃果~」
部屋の扉をノックしつつ呼びかけるが、反応は無い。
「穂乃果~。朝ですよ~」
もう一度呼びかける正司。しかし反応は無し。
「う~ん。……あ、穂乃果~。朝ごはんが出来てるよ~」
しかし、三度反応が無い。
そして……。
「はぁ。穂乃果~。入るよ~」
と、以前から起こしに来ている正司は、穂乃果の母からの言葉で、
『3回声かけても起きてこなかったら、部屋に入っても
良いから』
と言われていたのだ。これまでは何度も声をかけるだけで
何とか穂乃果を起こしていた正司。普段は3回も声をかければ
中から返事が返ってくるのだが、今日はそれも無い。
正司としては、既に何度も足を運んだ部屋なのだが、寝ている女子の
部屋となると、彼にとって難易度が跳ね上がるのだ。
『寝てる女の子の部屋に入るのって、色々まずいよね。
おじいちゃん』
そう頭の中で呟きつつも、ドアノブを捻って部屋の中へと
入る正司。そして案の定、部屋の隅の置かれたベッドの上では
穂乃果が寝息を立てたまま眠っていた。
躊躇いつつも、そんなベッドに近づく正司。
「お~い、穂乃果~?」
ベッド近くに立ち声をかけるが……。
穂乃果「むにゃむにゃ……う~ん。もう和菓子は勘弁して~」
何やら変な寝言を言って起きない。
それを見た正司は……。
正司「ハァ。……穂乃果~、朝ですよ~。起きなさ~い」
ため息をついてから彼女の肩をポンポンと軽く叩いた。
と、ここでようやく……。
穂乃果「う~~ん。雪穂~、後5分~」
そう言って正司の方に顔を動かし、瞼を擦りながら
ゆっくりと目を開ける穂乃果。
しかし……。
正司「違う違う。俺だよ、正司だよ穂乃果」
穂乃果「ふぇ?」
まだ寝ぼけたまま、呆けた声を出した穂乃果は、上半身を
起こすと欠伸をしてから正司の方を向いた。
「……。あ~、本当だ。おはよ~ショウ君」
と、まだ寝ぼけているのか、ぽへ~とした笑みを
浮かべながら挨拶をする穂乃果。
しかし……。
『……ん?あれ?ここ、私の部屋。私、
起きたばっかでショウ君が目の前に……。あれっ!?』
「ッ!」
その時、ようやく男子である正司が部屋に居た事に気付いて、
穂乃果は笑みを浮かべたまま体温計のように下から順番に
顔を赤くしていった。
そして……。
「うわ~~~!」
彼女の悲鳴が響いた。
「ななな、何でショウ君がここに居るの~~!?」
『ガバッ』と慌てて布団をかぶり直す穂乃果。
正司「あ、えっと、扉の外から声かけても起きなかったし、
それでその、部屋に」
対する正司もどこか恥ずかしそうに彼女から視線を逸らし、
赤くなった頬を指で掻く。
やがて……。
「えっと、じゃあ俺外に出てるから。時間も押してるから
早くね」
と言って、そそくさと部屋を出て行く正司。
それを見てから、やっと布団から出てくる穂乃果。
穂乃果『ままま、まさかショウ君に寝顔見られた?!
ッ~~~!恥ずかしい、恥ずかしくて死にそうだよ~!』
しかし彼女はまだまだその事で悶えていた。
それから数分後。
ようやくの事で平静を取り戻した穂乃果だったが……。
『あれ?そう言えばさっき時間がどうのって……』
そう思いつつ時計に目をやる穂乃果。そして……。
「うわ~~~~~!遅刻だ~~~~!」
そう叫び、玄関先に居た正司はその声を聞いて苦笑するのだった。
その後、制服に着替えた穂乃果と共に学校に向かう正司。
更に途中で……。
ことり「あ、穂乃果ちゃ~ん、ショウく~ん」
先に来ていたことり、海未と合流した。
正司「おはよう。海未、ことり」
穂乃果「二人ともおはよ~」
海未「おはようございます二人とも」
ことり「おはよう」
と、挨拶を交わすと4人揃って歩き出した。
「それにしても、今日はちょっと遅かったね。
何かあったの?」
穂乃果「え?!あ、いや、え~っとその~」
海未「大方、正司が起こしに行った時点でも穂乃果が
寝ていたのでしょう?」
顔を赤くしながらの言葉に、ため息交じりに呟く海未。
正司「あ、あぁ、まぁ、そんな所かな~」
対して正司もさっきの事を思い出して顔を赤くしていた。
ことり「なんだか二人とも顔が赤いけど、どうしたの?」
穂乃果「べ、別に~!何でも無いよ~!」
と、聞かれて咄嗟に呟く穂乃果。彼女としては、あの事を
話したくなかったようだ。
「そ、それよりほら~!急がないと遅刻するよ~!」
そう言って、話題を変えながら駆け出す穂乃果。
ことり「あ~!待ってよ穂乃果ちゃ~ん!」
そして3人は慌てて穂乃果の後を追ったのだった。
そして歩く事数分。
4人は音ノ木坂の近くまでやってきた。周囲には
他の女生徒の姿もあるが、男子生徒の姿だけは、
正司ただ一人だった。
生徒「あ。見て、戸田山先輩よ」
「ホントだ」
と、やっぱり男子であるからか目立ってしまう正司。
彼成りに、音ノ木坂に通う事は慣れたがこの状況だけは
相変わらず慣れていなかった。
正司「ハァ。何で今年1年女子だけなんだ。結果的に
男子が俺だけって」
と、その事で何度目になるか分からないため息をつく正司。
それに気づいて彼の方を向く3人。
ことり「そっか。共学化にするって言うの、失敗しちゃって
1年は女子だけなんだよね?」
海未「何でも、共学化のための募集に男子が規定数
集まらなかったため、だそうです」
と、何故1年が女子だけなのか理由を呟く二人。
穂乃果「それって、男の子が集まらなかったって事だよね」
海未「はい。何でもこの近くに有名校の兄弟校として
男子校が出来たとかで、殆どの男子はそちらに
流れてしまったそうです」
正司「確か、音ノ木坂は3年が3組、2年が2組、
今年の1年は1組だけだっけ?」
ことり「なんだか、どんどん生徒が少なくなっていくね」
と言う話題に、ことりと海未がどこか寂しそうな表情を
浮かべる。それを見た正司が。
正司「大丈夫だって。生徒が減ったからって急に学校が
無くなる訳じゃないし、みんなが居れば俺は
学校が楽しいって思えるし、今は良いんじゃないかな?
不謹慎かもしれないけど、おかげで俺は3人と
同じ学校に通えてる訳だし。俺はその、穂乃果や海未、
ことりと一緒に居られる時間が好きだから」
と、正司が頬を赤くしながらそう伝えると、穂乃果達は
瞬く間に……。
『『『ボボボッ!』』』
そんな音がしそうな程、顔を赤くした。
傍目にも十分イケメンの域に到達している正司。加えて、それを
引き立てているのが制服の上からでも分かる鍛えられた肉体。
そして、何よりも困っている人を見捨てず真摯に接する心優しい性格。
彼を人から慕われる人物足らしめる条件は既に揃っており、
何よりこれまで近くで接してきた穂乃果達にとって、正司は
一番身近な男子だ。身内の贔屓目から見てもイケメンの彼に
そんな風に言われたとあっては、ましてや『好き』と言う単語が
混じっていたのでは、顔を赤くするな、と言う方が無理な話だ。
穂乃果「そそそそ、そっか~!あはははっ!
わ、私もみんなと一緒に居られるのは好きだよ~!
あはははは~!」
『ってぇ!何言ってるのショウ君!私すっごい恥ずかしいよ!
いや、でも嬉しいって思ってる私も!
あ~う~!今更今朝の寝顔見られたのも思い出して
3倍恥ずかしいよ~!』
海未「は、破廉恥です!こんな人の往来のある場所で、その、
すすすす、好きだなんて……」
『うぅ、何故正司はいつもこう、そうやって面と
向かって恥ずかしい単語が言えるんですか?!
それを聞くこっちの身にもなってください!』
ことり「そ、そっか~。私もみんなと一緒に居るの
すっごい楽しくて好きだよ~」
『はう~!ショウ君、そんな事言われちゃ、私は……』
と、各々顔を赤くしながら、表面上は平静を装いつつ内心は
荒れに荒れている3人だった。
その後、4人は顔を赤くしつつも学校へと向かった。
しかし、4人の話題に上がっていた生徒数減少の話は、4人
――特に共学化のためにこれまで努力していた正司にとっては最悪の
形で――の前に再び現れた。
それは……。
『音ノ木坂学院廃校』と言う物だった。
廊下でその張り紙を前にする4人。
穂乃果「う、嘘ッ!?」
ことり「廃校って……!?」
海未「つまり、学校が無くなる、と言う事ですね」
正司「……そんな」
と、三者三様の言葉を口にする4人。
穂乃果「あぁ……」
正司「ちょっ!?穂乃果!?」
その時、不意に穂乃果が後ろに倒れ、丁度彼女の後ろに立っていた
正司が咄嗟に支えた。
海未「穂乃果!」
ことり「穂乃果ちゃ~ん!」
すぐに二人も声をかけるが、返事が返ってこない。
穂乃果「わ、私の……。私の輝かしい高校生活が……!」
そして、穂乃果は何やら目じりに涙を浮かべつつそんな事を
言うと気絶してしまうのだった。
正司『……気絶するほどショックだったのかな?』
その後、正司はそんな事を思いながら穂乃果をおんぶして、
海未達と一緒に保健室へと運んだ。
『コンコン』
「失礼しま~す」
そう言って入る正司。
琴子「あぁ、君か?おや?貧血かい?」
彼に気付いてそちらを向くなり、おんぶされている穂乃果。
正司「いや、実はその、ついさっき廃校の用紙を見てたら
倒れちゃって」
琴子「は?……まぁ良いや。とりあえずそっちのベッドに
寝かせといてあげなさい。えっと、正司君達の
クラスの担任は……山田先生か。あの人には
こっちから連絡しておくから、君達は教室に
戻りなさい」
正・こ・海「「「はい。失礼します」」」
と言って3人は保健室を後にした。
そんな廊下では……。
海未「あの、正司は保険の石田先生をご存知なんですか?
何やら親しいようでしたが?」
正司「え?」
ことり「うん、なんだか旧知の仲って感じだった」
と、どうやら先ほどの二人のやり取りに疑問を持ったのか
それを口にする二人。
正司「あ、あぁその事か。実は石田先生と俺の両親が
知り合いでさ。前に何度か会った事があるんだよ」
ことり「あぁ。それで」
海未「成程、そう言う事でしたか」
と、納得する二人。内心正司は……。
正司『流石に、鬼に関する事は言えないよな~。ゴメン、二人とも』
と、内心冷や汗を流しながら二人に謝るのだった。
その後、教室に戻った3人は集まって話をしていた。
海未「それにしても、廃校ですか。正直、1年の時の共学化の
話を聞いた時はもしやと思いましたが……」
ことり「やっぱり、この事が関係してたの?」
正司「うん。その廃校を止めるために共学化に向けた動きが
あって、色々やって、今年度の1年で男子生徒も
募集したんだけど……」
海未「規定数まで男子が集まらなかった。と言う事ですか」
正司「そしてその結果が今朝の発表の通り、なんだろうなぁ」
頬杖を突き、ため息を漏らす正司。
「けど、廃校かぁ」
そう呟き、もう一度ため息をつく正司。そこへ。
『ガラッ』
教室の扉が開いて、何やら深刻そうな表情で穂乃果が
戻って来た。
ことり「ほ、穂乃果ちゃん。大丈夫?」
穂乃果「うん……」
彼女は頷きそのまま自分の席に座るが、
3人からはどう見ても大丈夫には見えなかった。
「学校が無くなる。学校が、無くなる」
そして、顔を両手で覆うと何やらブツブツと
つぶやき始める穂乃果。
正司「これ、結構重症だね」
ことり「穂乃果ちゃん、すごい落ち込んでる。
そんなに学校好きだったなんて……」
海未「違います。あれは多分、勘違い
してるんです」
ことり「勘違い?」
『バンッ!』
次の瞬間、穂乃果が机を叩いて背を起こす。
それに正司達が驚く。
穂乃果「ど~しよ~!全然勉強してないよ~!」
涙目でことりの机にすがりつく穂乃果。
ことり「え?」
正司「何がどうなって勉強の事に?」
首をかしげることりと正司。
穂乃果「だって、学校無くなったら別の高校
入らなくちゃいけないんでしょ!?
受験勉強とか、編入試験とか!」
海未「やはり……」
ことり「穂乃果ちゃん落ち着い――」
穂乃果「ことりちゃんと海未ちゃんとショウ君は良いよ!
みんなは良いよ!そこそこ成績良いし!
でも私は~~!」
戸惑い、更には泣き出してしまう穂乃果。
海未「だから落ち着きなさい。私達が卒業
するまで学校は無くなりません!」
穂乃果「え?」
見かねた海未の言葉に、穂乃果は疑問符を
漏らすのだった。
その後、お昼休み。4人は校庭の一角にある、
木陰に作られた丸いベンチに並ぶように
座ってお昼を食べていた。
ことり「学校が無くなるにしても、今居る生徒が
卒業してからだから、早くても3年後だよ」
穂乃果「良かった~!いや~、今日もパンが旨い!」
そう言ってパンをかじる穂乃果。しかし……。
正司「……」
3人の傍らで、真剣な表情を浮かべ、口を横一文字に
して、無言を貫いていた正司。
海未「?正司、どうかしましたか?」
そして、彼の深刻そうな顔を見て隣に
座っていた海未が声を掛けた。
穂乃果とことりも彼の方に視線を向ける。
「何か思い詰めているように
見えましたが……?」
正司「いや、その。……結局、俺のやった事って、
意味があったのかなって、思って」
そう言うと、彼は自分の右手を見つめる。
「俺がここに来た目的って、共学化に
向けての事だったのに、結局それも
出来なくなったし。……何だか、
自分のやってきた事を否定される
結果になったみたいで、ちょっとね」
最後の部分を、正司は濁して呟いた。
ことり「ショウ君」
海未「そうですね。……廃校が決定している
のであれば、来年からは新たな生徒を
募集する事も無いでしょうから、
今年の1年は、卒業まで後輩がいない
事に……」
穂乃果「そっか」
そして、彼の話を聞き3人もどこか悲しそうな
表情を浮かべる。
『学校が無くなるって、そう言う事
なんだよね。……それで、良いのかな?』
穂乃果は、密かにそんな事を考えていた。
そこへ。
???「ねぇ?ちょっと良い?」
不意に人影が近づいてきた。制服のタイの色から、
相手が3年生である事に気づいて、立ち上がる4人。
現れたのは、金髪のポニーテールと青い瞳が
特徴的な、いかにも異国人やハーフと言った
出で立ちの少女、『絢瀬 絵里』と、黒髪をツインテールにした
少女、『東條 希』だった。
穂乃果「だ、誰?」
正司「生徒会長さんと副会長さんだよ」
小声で話す正司と穂乃果。
絵里「南さん、それと、戸田山さん」
正・こ「「は、はい」」
絵里「南さんは理事長の娘だし、戸田山さんは
理事長自身が推薦されたテスト生だったわね?」
ことり「は、はい」
正司「確かに、そうですが……」
絵里「理事長、何か言ってなかった?」
何か、とはつまり廃校の事だ。
しかし……。
ことり「いえ、私も今日知ったので」
正司「俺もです。廃校の件は、今朝発表されるまで
聞いていませんでした」
二人とも、絵里が望む情報は持っていなかった。
絵里「そう。……ありがとう」
希「ほな~」
そう言って4人に背を向け歩き出す二人。
穂乃果「あの……」
しかし、その二人を穂乃果が呼び止める。
「本当に学校なくなっちゃうんですか?」
絵里「……あなた達が気にする事じゃないわ」
彼女の質問にそう答えると、絵里と希はどこかへ
行ってしまった。
その後
穂乃果「入学希望者が定員を下回った場合、廃校に
せざるを得ない、って発表にはあったよね?」
正司「そうだね。逆に言えば、定員を超えれば、
廃校にならない、って事だと思う」
穂乃果「だよね!つまり、この学校の良い所を
アピールして生徒を集めれば良いんだよ!」
そう、話をしながら穂乃果たち4人は学校の資料を
読み漁ったり、敷地内を歩き回っていた。
正司「けど穂乃果、その肝心の良い所って、
何かあるの?」
穂乃果「え~っと、歴史がある!」
海未「あぁ、他には?」
穂乃果「他に!?え~っと、伝統がある!」
海未「それは同じです」
その後、教室に戻る4人。
正司「歴史がある。ってのは分かったけど、
それだけで人が集まってくれるとは
思えないし。何か、人の関心を引く
ような出来事や人、設備があればな~」
海未「人々の関心を引く、ですか?
何かありましたっけ?」
ことり「さっき調べたけど、部活動では良いとこ
見つけたよ」
穂乃果「ホント!?」
ことり「と言っても、あんまり目立つのような
のは無かったんだ。ウチの高校の
部活で最近一番目立った活動と言うと……」
そう言ってことりは穂乃果と正司に手にしていた
書類を見せるが……。
「珠算関東大会6位」
正司「ん~もう一声」
ことり「合唱部地区予選奨励賞」
穂乃果「それってスゴいの?」
ことり「最後は~、ロボット部書類審査で失格」
海未「それ、スゴいと言える事と言えるの
でしょうか?」
結局、注目の的になりそうな物は無かった。
穂乃果「う~~。ねぇショウ君。何かショウ君に
出来る事無い?ショウ君、運動神経良いから
運動部入れれば大会とか普通に行けると
思うけど……」
正司「確かに、俺は体力とかそっちには自信
あるけど、部は全部女子部だから男の
俺が入る訳には行かないよ。それに、
今からじゃ成績を残せるかどうか……」
正司がすまなさそうに言うと、穂乃果もどこか
俯いてしまう。そして……。
穂乃果「私、この学校好きなんだけどな~」
ことり「私も好きだよ」
海未「私も……」
正司「俺もだよ」
穂乃果の、呟くような言葉に3人が頷く。
そしてその後4人はそれぞれの帰路についた。
「ただいま~」
帰宅し、玄関で靴を脱ぐとリビングへと向かう
正司。
母「あら、お帰りなさい。今日はいつもより
遅かったわね」
リビングに入ると、彼の母が夕食の調理を
していた。
正司「うん、ちょっと、ね」
そう言うと、正司はソファに腰を下ろす。
「あのさ、お母さん。実は……。
音ノ木坂の廃校が、決まったんだ?」
母「え?」
驚き、疑問符を浮かべた彼女は手を止めると
彼の方へと歩み寄る。
「それ、本当なの?」
正司「うん。今朝、南さん、理事長さんから
直々に発表があった。来年度、新入生が
規定数に届かなかった場合、生徒受け入れを
止め、在学生の卒業と同時に学院は廃校。
って」
母「そう……」
静かに語る正司に、彼女も残念そうに相槌を打つ。
正司「結局、俺には何も出来なかった」
そう言うと、彼は俯いたまま鞄を持ちソファ
から立ち上がり、自分の部屋へと向かおうとする。
正司がリビングを出て行こうとした時。
母「正司っ」
彼女が正司を呼び止めた。
「何かを成す事に無駄なんて一つも無いわ。
あなたが今までしてきた事を無駄と
思うのなら、やり方を変えなさい」
正司「やり方を、変える?」
母「そうよ。『これまで』がダメだったのなら、
『これから』を考えなさい。良いわね?」
正司「……うん、わかった」
そして、夜。
「これまで、してこなかった事。これから、
出来る事。……俺に、俺たちに出来る事
は……」
ベッドに入ったまま、天井を見上げ考える正司。
その時。
『PLLLL!』
近くに置いてあったスマホが振動する。体を
起こし、スマホを取る正司。
「電話、穂乃果から?」
電話の相手は彼女だった。すぐに通話ボタンを
押す正司。
「もしもし?穂乃果?」
穂乃果『あ、こんばんはショウ君。今って、
大丈夫?』
正司「あぁ、大丈夫だよ。……どうかした?」
穂乃果『うん、実は、学校の事なんだけど……。
雪穂、音ノ木坂受けないって。学校
とかでも廃校の事噂になってるって。
それでね、言われたんだ。私達に
どうにか出来る問題じゃない、って。
ショウ君は、どう思う?』
正司「……確かに、一個人や数人で解決
出来る問題じゃ無い」
穂乃果『……そう、だよね。やっぱり、
私達で学校をどうにかするなんて……』
電話の向こうから、諦めや自虐のような言葉が
聞こえてくる。しかし正司は……。
正司「それでも、何かをやるのなら、俺は、
『何かをしてから』後悔したい」
穂乃果『え?』
正司「問題が大きいから、どうせ自分たちには
何も出来ない、なんて言って背を向けて、
後でこうしてれば、って後悔する
くらいなら、自分の全力を出し切った
上で後悔したい。……お母さんに
言われたんだ。これまでがダメだった
なら、これからを変えれば良いって」
穂乃果『これからを変える。……ありがと
ショウ君。ちょっとすっきりした』
正司「そっか、なら良かった。……穂乃果、
俺も頑張るよ。俺たち4人の学校は、
俺たちで守ろう」
穂乃果『うん!そうだね!』
正司「それじゃ……」
穂乃果『うん、また明日』
そう言って、二人は電話を切った。
そして、正司はしばし真剣な表情で
スマホを見つめていたが……。
正司「俺は、俺に出来る事を探して
やるだけだ」
そう言うと、彼は机に座り、電気を付け
未使用のノートと鉛筆を取り出し、更に
パソコンを立ち上げると、音ノ木坂の
歴史や卒業生の中に有名人が存在
しないかなど、とにかくデータの収集と
それの書き出しを始めた。
その後。
『PLLLL!』
再びスマホが振動し始めた。
『ん?また穂乃果?』
「もしもし?穂乃果?」
再び掛けてきた彼女に首をかしげながら
電話に出る正司。
穂乃果『あ!何度もごめんショウ君!
実は明日の朝、付き合って欲しい事が
あるんだけど……』
正司「ん、わかった。で、どうしたの?」
穂乃果『実は……』
一夜明けた、翌朝、早朝。
朝早く、穂乃果の母が店先の花に水をやっていると……。
正司「おはようございます」
そこに制服姿の正司がやってきた。
穂乃果母「あら?おはよう正司君。どうしたの
こんな朝早くに」
正司「えっと、実は穂乃果と約束があって……」
穂乃果母「え?あの子がこんな朝早くに?」
と、彼女が疑問符を浮かべていると……。
『ガララッ』
店の扉が開いて穂乃果が出て来た。
穂乃果「行ってきま~す!って、ショウ君!
あれ!?交差点で待ち合わせの約束じゃ……」
正司「ごめんごめん、ちょっと気になってたから
来てみたんだ。それより、行く所が
あるんでしょ?」
穂乃果「そうだった!」
と、二人で会話していると、雪穂の部屋の窓が
開いてそこから彼女が顔を出す。
「雪穂~~!これ、借りてくね~!」
そう言うと、歩き出す穂乃果。
正司「それじゃあ、失礼します。雪穂ちゃ~ん、
またね~」
穂乃果の母に一礼し、雪穂に手を振ってから
彼女の後を追う正司。
一方の二人は、娘(姉)がこんな早起きしたことに
愕然としていた。のだが……。
雪穂「って、言うか……」
『私寝起きの顔正司さんに見られた~~!』
そのことがもっと気になる雪穂だった。
その後、穂乃果と正司の二人は街の一角を目指していた。
二人の目的は……。
正司「『UTX学院』か~」
目的地の名前を呟く正司。今、二人はその
UTX学院を目指していた。
穂乃果「うん、正司君は知ってる?」
正司「まぁね。そこのスクールアイドルがたまに
テレビ出てるから、名前くらいはね」
穂乃果「スクールアイドルって、何?」
正司「学生なんだけど、アイドルで活動
している人たちの事だよ。そして、
UTX学院のスクールアイドルは
テレビにも出演するくらいの有名人
だからね」
穂乃果「そんなに注目されてるんだ」
正司「うん、だから学校としての注目度も
段違い。昨日の朝さ、男子が来ない
理由で有名校の兄弟校として
男子校が、って話したの覚えてる?」
穂乃果「うん。覚えてるけど。……あ!
まさか!」
正司「そう。そのまさか。姉妹校がUTX学院
なんだ。UTXは女子校だけど、学校
としての注目度は関東1なんじゃない
かな?そんなのの兄弟校として
男子校が出来たから……」
穂乃果「男子はみんなそっち行っちゃって、
私達の学校を共学にするだけの
男子が集まらなかった、って事?」
正司「恐らくね」
話をしながら歩いている二人。しかし、
そんな二人の視界に一つの建物が見えてきた。
「見えた。穂乃果。あれがUTX学院だよ」
そう言って、正司が指さしたのは……。
穂乃果「え?えぇぇぇぇぇぇっ!?」
企業ビルと見まがうばかりに巨大なビルだった。
「え!?えぇっ!?あれが学校!?
どう見ても会社のビルじゃん!」
正司「そう。規模で言えば、もはや学校
なんてもんじゃないよ」
驚嘆の表情を浮かべる穂乃果と、半ば呆れる
ように呟く正司。
そして二人は学院の生徒達の通学風景をガラス越しに
見ていた。
穂乃果「す、すごっ!?何アレ!?駅の改札みたい!」
正司「……設備も最新。人数も千人なんて軽く超える
マンモス校。はっきり言って、音ノ木坂とは
正反対だよ」
と、その時。
近くから女性の黄色い悲鳴が聞こえてきた。
「そして、何より、あれだよ穂乃果」
穂乃果「え?」
疑問符を浮かべる穂乃果に正司が指さし教えるのは、
近くの大型モニターだ。その前には大勢の人が
集まり、画面には白を基調とした衣装に身を包んだ
3人の少女達だった。
「あの人達って……」
正司「UTXに在籍しているスクールアイドルの
グループ、『A―RISE(アライズ)』」
穂乃果「A―RISE。あれが……」
そして始まるアライズのライブ映像に、人々は熱狂し
歓声が上がる。
二人もモニターを見つめているが、考えている事は
逆だった。
穂乃果『すごい、これが、スクールアイドル……!』
正司『悔しいけど、UTXとその生徒である
A-RISEの存在は、厄介過ぎる。
おかげで他の学校の注目度もがた落ち。
音ノ木坂もそれに巻き込まれた感じか』
憧憬と興奮を覚える穂乃果と、悔しさと諦めを
覚える正司。
その時、パンフレットを落とした穂乃果が
僅かにフラついた。
「ッ、穂乃果ッ」
慌てて彼女を支え、人混みから離れる正司。
「大丈夫穂乃果?気分でも悪いの?」
穂乃果「ううん、大丈夫。……ショウ君。私、
思いついたよ」
正司「えっと、何が?」
訳が分からず、聞き返す正司。
穂乃果「これだよ!」
彼女は急に顔を上げ、巨大なモニターに
映ったアライズに目を向ける。
正司も目線をモニターに向ける。
そして数秒後、彼女の言葉の真意に気づいた
彼は驚いた表情で、モニターを憧憬の表情で
見つめる穂乃果の横顔を見つめるのだった。
その後、二人は近くの書店で数冊の雑誌を
買ってから学校へと向かった。
そして休み時間。穂乃果は二人に
スクールアイドルをやろうと言い出した。
しかし、それを一蹴する海未。
放課後、穂乃果は正司と共に屋上にいた。
鉄柵の前で並んでグラウンドに視線を落とす二人。
穂乃果「……やっぱり、無理なのかな。アイドル」
呟くように、正司に問いかける穂乃果。
正司「確かに、成功するかは分からないよ。
アイドルになって、注目されたとしても、
ここは言わばA-RISEのお膝元。
強敵がすぐそこに居る。……正直、
無謀な気もする」
穂乃果「……」
正司の、現実を突き付けるような言葉に
彼女は無言で俯く。
しかし……。
正司「……けど」
穂乃果「?けど、何?」
正司「……だからといってスクールアイドル
以外に生徒を集める良い案があるのか、
って聞かれると俺には答えられない。
だったら、その、博打になるかも
しれないなら、それに賭けてみる
のも良いかもしれない。……どのみち、
やってダメだったら、それだけの事。
けど、それが成功したら、もしかしたら
音ノ木坂を救えるかもしれない」
静かに、穂乃果の方へ視線を動かし、
真っ直ぐに彼女を見据える正司。
「俺は、穂乃果をサポートするよ」
穂乃果「ショウ君」
しばし、視線を交差させる二人。
『……~~♪』
その時、ふと二人の耳に歌声が聞こえてきた。
正司「歌……」
歌声に導かれるように、二人は声のする方へと
足を進めた。
そしてたどり着いた教室では、朱色の髪を
持つ1年生の少女が自らピアノを演奏し、
美しい歌声を響かせていた。
穂乃果「綺麗な声……」
正司「うん、そうだね」
呟く穂乃果に、静かに頷く正司。
やがて演奏が終わったのか、その少女は息をつくが……。
『パチパチパチパチッ!!!』
???「ヴエェ?!」
ドアの外で興奮気味の拍手をする穂乃果に
気づいて驚き、変な声を出してしまった。
そして、穂乃果は扉を開けて中に入って行き、
正司もそれに続く。
穂乃果「すごいすごいすごい!感動しちゃったよ」
正司「すごく綺麗な歌声だったね」
???「べ、別に」
二人の賞賛に対し、少女、『西木野 真姫』は
素っ気ない返事を返す。
穂乃果「歌上手だね!ピアノも上手だね!それに、
アイドルみたいに可愛い!」
真姫を褒め称える穂乃果。彼女は、その賞賛の
言葉に顔を真っ赤にする。
そしてそのまま立ち上がって出て行こうとするが……。
「あ、あの!いきなりなんだけど……。
あなた、アイドルやってみたいと思わない?」
正司「ちょっ!?穂乃果!?」
突然の誘いに、真姫も正司も戸惑う。
真姫「何それ!意味分かんない!」
そして、吐き捨てるようにそう言うと真姫は
出て行ってしまった。
それを振り返って見送る正司と固まる穂乃果。
正司「穂乃果、あれは流石に急すぎるって」
穂乃果「だよね~。アハハハ……ハァ」
乾いた笑みとため息をつく穂乃果。
その後、二人は放課後の学校内を当てもなく
ブラついていた。
「ねぇショウ君。ショウ君ってアイドル
詳しい?」
正司「……お門違いも良い所のド素人だよ。
音楽に関してなら、ギターを少し
弾けるくらいだけど……」
『音撃弦の練習の意味も込めて、普段から
ギターを演奏してたからなぁ』
穂乃果「じゃあ、ショウ君がギターで大会に
出る。とか?」
正司「いや、多分無理だと思う。俺だって少し
かじっただけの、まだ半人前だし。
俺が有名になったってそれが音ノ木坂の
宣伝になるかも分からないし。それに、
集めるのは男子じゃなくて女子でしょ?」
穂乃果「ですよね~」
しばし、無言で歩く二人。やがて……。
「ショウ君」
正司「何?」
不意に、穂乃果が呟く。
穂乃果「その、私に出来るか分からないけど、
でも、その、手伝ってくれる?」
俯き、しかしすぐに視線を上げ、正司の事を
真っ直ぐ正面から見つめる穂乃果。
正司「……さっき言ったじゃん。俺は
穂乃果をサポートするって。
俺に出来る事があれば、協力
するよ」
そう言って、正司は胸の前で右手を
握りしめる。
穂乃果「ショウ君。ありがとう」
彼女は、笑みを浮かべながら頷く。
『パンッパンッ!』
そして、気合いを入れるために両手で
自分の頬を叩いた。
「よしっ!とにかく、出来る事を
やってみよう!ショウ君、
手伝って!」
正司「了解っ!」
そして、二人は共にかけ出した。
そんな姿を、一人の友人に見られていたとは
思わずに。
その後、ことりは弓道場へと行き、そこで部活に
励んでいた海未を連れて、校舎のある場所へと
向かった。
そこでは……。
穂乃果「ふっ!はっ!」
正司「1、2!1、2!そこでターン!」
ステップの練習をしていた穂乃果と、手を叩きながら
リズムを刻みつつ、練習に付き合う正司の姿が
あった。
『グラッ!』
穂乃果「うわっ!」
しかしターンの所で躓いてしまう穂乃果。
正司「穂乃果!」
咄嗟に正司が、穂乃果の片手を、左手で掴み、
右手を彼女の腰元に回し支えた。
「大丈夫穂乃果?いきなりこれは……」
穂乃果「大丈夫だって。これくらい出来なきゃ、
スクールアイドルになれないもんっ!」
正司「わかった。それじゃあ、もう一回」
穂乃果「うん!」
再び練習を始める穂乃果とそれに付き合う正司。
しかし再び倒れそうになる穂乃果を彼が
支える。
「う~~。上手く出来ない~」
正司「しょうがないって。いきなり出来るように
為るわけじゃ無いよ」
悔しそうに呟く穂乃果をフォローする正司。
その時。
海未「全く、見ていられません」
不意に、角から二人の様子を見ていた海未が
声を掛けた。
穂乃果「海未ちゃん!それにことりちゃんも!」
海未「やるのなら、3人でやらないと」
穂乃果「海未ちゃん!ことりちゃん!」
涙目で、笑みを浮かべる穂乃果に、二人もまた
笑みを返すのだった。
その後、4人は生徒会へ部活動としてアイドル部を
作るため、申請書類の提出に向かった。
絵里「これは?」
穂乃果「アイドル部、設立の申請書です」
どこか、気だるげな絵里と対照的に自信に
溢れて居るように見える穂乃果。
絵里「それは見れば分かります」
穂乃果「では、認めて頂けますね!?」
絵里「いいえ」
そして帰ってきたのは、否定の言葉だった。
これに驚く穂乃果達。
「部活は同好会でも最低5人は必要なの」
穂乃果「え!?」
海未「ですが、校内には部員が5人以下の
所もたくさんあるって聞いてます!」
咄嗟に反論する海未だが……。
絵里「設立した時は、みんな5人以上居た
はずよ」
希「あと一人やね」
正司「……仕方ない。穂乃果、海未、ことり。
しょうが無いけど今は出直そう」
穂乃果「……わかった。行こう」
踵を返し、4人揃って退室しようとしたが……。
絵里「待ちなさいっ」
それを彼女が呼び止めた。
「どうしてこの時期にアイドル部を始めるの?
あなた達2年生でしょ?」
穂乃果「廃校を何とか阻止したくて!
スクールアイドルって今すごい人気が
あるんですよ!だから!」
絵里「……だったら、例え5人集めてきても
認めるわけには行かないわね」
穂乃果「え!?どうして!?」
絵里の言葉に、3人が驚き息をのむ。
絵里「部活は生徒を集めるやるものじゃない。
思いつきで行動した所で、状況は
変えられないわ」
正司「……お言葉ですが」
その時、黙っていた彼が口を開く。他の
5人の視線が彼に集まる。
「行動自体、起こさなければそもそも
現状を打開できません。彼女たちも
自分なりにこの状況をどうにか
しようと考えての行動です」
3人をフォローしようとする正司。
絵里「……では、彼女たちならば生徒を
集められると?」
正司「その事に関して、確証はありません。
ですが、行動は起こさなければ意味が
ありません」
絵里「だから彼女たちの活動を容認して欲しい、と?
あなたはなぜそこまで彼女たちに肩入れ
するのかしら?」
正司「……俺は1年前、共学化のためのテスト生
としてここに入学しました。しかし結果は
何ら意味を成さなかった。……廃校の
一件は、俺にも責任があります」
その言葉に、穂乃果たち3人思う所が
あったのか俯く。
絵里「それはあなたの義務感で、と言う事
かしら?」
正司「それもあります。ですがそれだけでは
ありません。何もせずにじっとしている
くらいなら、俺は3人の可能性に
賭けてみたい。それが俺の考えです」
絵里「……。無謀ね。とても容認出来ないわ」
そう言うと、絵里は書類を突き返してきた。
「こんな事をする暇があるのなら、後の
2年間をどうするか考えなさい」
そして、結局その後何ら言い返せず、4人は
校舎を出た。
穂乃果は、無言のまま何も言わず、海未とことりも
戸惑いを浮かべていた。
正司『俺に、俺に出来る事は、何だ。俺だって、
この学校を守りたい。だけど、俺に
何が出来るって言うんだ……!』
心の中で、やるせなさを叫ぶ正司。
そして彼が鞄を持つ手に力を込めた時。
≪だって可能性感じたんだ♪
そうだ進め~♪≫
不意に、穂乃果の歌声が響き始めた。
それを、後ろから見つめていた正司。
正司『……綺麗な、歌声』
呆然と、穂乃果の後ろ姿を見つめる正司。
そして、彼女の歌声に合わせるかのように、
周囲に桜の花びらが舞う。
すると、突然穂乃果が駆け出し、鞄と制服の上着を
投げ捨てた。
「はっ!ちょっ!?」
それでやっと正気に戻った正司が彼女の鞄を
拾い、風に流されそうな制服をキャッチする。
すると、今度は海未とことりまで制服と鞄を
投げ出して駆け出した。
「二人もっ!?」
慌てて二人の荷物と上着を拾った正司は、穂乃果
たち3人の後を追い、そして、見た。
3人の奏でる『歌』を。
『これが、穂乃果たちの歌』
そして、彼はただ呆然と彼女たちの歌を、その
後ろ姿を見つめながら聞き入っていた。
歌を聴き、正司は思った。
『もしかしたら、この3人なら。
穂乃果たちなら……』
そう思う彼の手に、力が籠もる。
『そうだ。俺は俺に出来る事で、
穂乃果たちを支えるんだ!』
スクールアイドルをめざし、一歩を踏み出した
穂乃果たち。
そして正司もまた、彼女たちを支える決心を
固めるのだった。
第3話 END
これからも地道にやっていくので、よろしくお願いします。