この家出娘にお迎えを 改め このお迎えに祝福を! 作:ひめりんご
リベンジ的にカズマのプチ家出(?)
「おはよー」
いつもより大分早い時間に起床し、広間へ降りていく。昨日はクエストをこなし今日は休養日だ。
「あらカズマ、今日は早いわね。頭でもおかしくなった?」
「おはようカズマ。もうすぐ朝食ができるようだが食べるか?」
「いや、いらん」
そう言いながらキッチンに入り水を飲む。
「カズマ、おはようございます。寝なおすのなら、後で部屋に食事を持っていきますが」
「このまま出かけるからいいよ。玉子焼き旨そうだな。一つ貰うぞ」
そう言いながら一切れ摘まむ。お、旨い。めぐみんが何か言ってるが聞こえないふりでやりすごす。
「んじゃちょっと出てくるわ」
怪訝な表情で見送られながら、俺は街に繰り出した。
俺の名はサトウカズマ。ひょんなことで命を落とし、すったもんだの末異世界へ転生し、冒険者をやっている。
常時問題行動を繰り返す
ここ最近はトラブルも起こさず、上級職らしい見事な戦果を挙げている。
余計なことしかせずに戦況を悪化させていたアクアは適切に支援・回復魔法をかけて回り、調子に乗ることもない。
ダクネスがアホみたいに敵の真ん中に突っ込んでいくこともなく、小物の群れは爆裂魔法で簡単に一掃できる。
めぐみんも学習したのか、爆裂魔法の威力を抑えるという信じられないことをやっているようだ。
こうなってくると俺は何もすることが無く、後ろのほうで適当に声を出しているだけになってしまう。なんだかんだ言ってあいつらは実は優秀なのだ。
まさに、以前他の冒険者から言われた上級職におんぶにだっこの状態と言えよう。
またこういった変化は生活にも表れており、正直俺は非常に肩身が狭い。
いや、問題が起きないのはいいことなんだけど……俺っている意味あるのかなぁ?
そんなわけで屋敷はどうにも居心地が悪く、こうして逃げ出してきたわけだ。
顔見知りと適当な話をしつつあてもなく歩いていると街を流れる川に出ていた。やることもないので土手に降りて足元の石を投げる。
お、杭に当たった。ナイスコントロール。
……今の俺、リストラされた中年サラリーマンみたいだな。
「寝よう」
天気もいいのでそのまま転がり、ふて寝をすることにした。
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「カズマ」
声をかけられて目を開ける。太陽はてっぺんを大分過ぎていた。
「こんなところにいたんですか。いつまでも帰ってこないから探してたんですよ」
寝ころんだまま見上げるとめぐみんがいた。あ、見えた。黒が好きだなぁ。
「……俺はもう少し清楚な感じのが好きだな」
「どこを見ながらぬけぬけとっ!」
視界が無くなる。帽子を叩きつけられたらしい。
「朝食もろくに食べずに出かけましたが、ちゃんと食べましたか?」
「そういえば食べてないな。道理で腹が減ってるわけだ」
「我々冒険者は体が資本ですよ。しっかししてください」
そういって隣に座り込み、ちょっと真剣な目を向けてくる。
「朝から様子がおかしいと思っていたのですが、何かありましたか? 私でよければ話を聞かせてください」
あ、なんだろう泣きそう。その優しさがちょっと痛い。ちっぽけな人間でごめんなさい。
さっき投げつけられた帽子で顔を隠しつつ、俺はぽつぽつと話し始めた。
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ものすごく呆れた声が返ってきた。
「この男は……私たちが苦労を掛けすぎてると思っていろいろと自重してみれば、それはそれで落ち込むとか。面倒くさいひとですねぇ」
言ってくれるな。自覚はある。
「まあな。だけど俺は幸運値だけの最弱職だ。お前らがちゃんと動けるなら出番はない。だったら冒険者は引退して、商人としてバックアップしていくってのも一つの道かなーなんて思ったりな」
うん、いいかもしれない。もともと高い幸運値は商人向けって話だし、今だってもう似たようなことはしている。アクアを野放しにするのは心配だけど、今のあいつならまあ大丈夫だろう。遠くない場所で監視もできる。
どうだろうめぐみん? ナイスアイディアじゃないか?
そういいながら帽子を取ると、赤々と光る瞳が俺を見ていた。
「馬鹿なこと言わないでください。カズマはそれでいいかもしれませんが、私……たちが困ります。ダクネスの囮を活用するのも、アクアのミスを挽回するのも、倒れた私を運ぶのも一体誰がするんですか。カズマしか持ってないスキルだってあるんですよ」
おい、それは俺である必要があるのか?
「たしかに最近は安定していますけど、カズマの機転が無ければ危ない場面だってありました。結構頼りにしているんですよ? それに……それに私はもっとカズマと一緒に冒険がしたいです。パーティーに加えてくれた恩だって返し切れていません。だから、引退なんて言わないでください」
なんだこれ? なんだこれ? とうとうめぐみんルート突入?
なんてことはこの時は考えられず、不覚にもまた泣きそうになり、慌てて帽子で顔を隠す。
「もうちょっと自信を持ってください。頼りにしてますよ」
なんとか、おう、とだけ返す。大丈夫だったか? 涙声になってなかったか?
そんな俺の心境を知ってか知らずか、めぐみんは俺の頭をずっと撫でてくれていた。
どれくらいそうしていたか。川面を流れる風が冷たくなり、ぶるりと体が震える。
帽子を取るとめぐみんと目が合った。
「泣き止みましたか?」
「な、ないてねーし」
「ふふっ、わかりました。今日のことは二人だけの秘密ってことにしてあげます」
「泣いてなんかいないっての!」
「泣いてたんですか? 私はカズマの気弱な発言のことを言ったつもりですけど」
手玉に取られているようでモヤモヤしながら立ち上がり、帽子を乱暴にかぶせる。わぷっという声と抗議が聞こえるが無視だ。
「あー腹減った。帰るか」
「はい、帰りましょう。本当は今日の夕食当番はカズマだったんですよ?」
「うえっ?! ……帰ったら謝りマス」
ほっこりっていうかしんみり……うーん