この家出娘にお迎えを 改め このお迎えに祝福を! 作:ひめりんご
「お得意様よ、邪魔をするぞ」
そこにはいつぞや以上に体をぼろぼろにしたバニルがいた。
「どうした? 体は崩れかけてるしテンションも低いし、またうちの元なんちゃらがやらかしたか?」
「少々食傷気味なだけである。おかげさまでこの通りではあるが、なに、知っての通りこの体はただの土くれ。大したことではない。……ところで年下の娘に慰められ、今度はそんな設定の夢もいいかと企んでいる小僧よ。うむ、そこそこの悪感情ではあるがやはりもたれるな。うぷっ」
「からかうだけなら帰れっ」
ドアを閉めようとしたところで動きを止めてしまう。バニルが慇懃な礼をしていたのだ。こいつ本当に調子がおかしいみたいだな。
「失礼仕ったお得意さま。本日は商談ではなく、当店の問題店主が邪魔をしてないかと思い参ったのである」
「いるけど、お前が暇を出したって風に聞いてるぞ」
商売をすれば赤字を出すウィズの扱いに苦心しているこいつは、とりあえず店から追い出すことにしたらしい。しかし適当に放り出してはまたどこで欠陥商品を仕入れてくるかわからない。そこで、俺の商品の打ち合わせを押し付け、そのままここで休暇を取れという形にしたとのことだ。まあ俺だったら商談を変な形でまとめる気はないしな。悪魔に信用されているというのも不思議な感じだ。
それはそれとして、バニルの企み通り店は順調だったようだ。しかし別の問題が生じた。
「汝もその一人ではあるが、当店に来る冒険者の多くはポンコツ店主を目当てにしている輩が多い。そういった輩が店主の不在を知ると、まあ落胆の悪感情を吐き出してくれるのはいいのだが、これが味はそこそこだが質が悪くてな。その量もあいまってこの通り、というわけである。汝ら人間でいうところの食あたりか。おかげで発光プリーストの結界にも存外に消耗した」
見通す悪魔も見通せないこともあるんですね。自業自得じゃねえか。
「で、迎えに来たってことか。いるよ。広間でみんなと話してる」
「では改めて邪魔をする」
その後アクアが大暴れしたのはいつものことである。
アー! アンタナンデココニインノヨ!
ナンジニヨウハナイノダ、ナゾノハッコウタイ。サテカエr セイクリッド・エクソシズム!
ハナシヲサエギルナッ チイッ、コレダカラアクシズキョウトハ ゴッドブロォォォォォォォ!
カレイニダッピ! コ、コラ、サイセイチュウニカメンヲハゴウトスルナレイギシラズメ!
アーッハッハッハ キョウコソコノホンタイヲタタキワッテヤルワ
エエイヤメンカ! 『バニルシキメビーム』! グオッ、メガ、メガァァァァァァ
クックック、トウトウネングノオサメドキカシラネェ
カクナルウエハ……ソノカラダカリルゾ! ヨシ、コイ! ヨシジャアリマセンヨダクネス、バカナンデスカ!
フハハハハハ、ドウダコムスメ コノカラダニハイッタカラニハ
アア、コノカンカク……タマラン!
サアコムスメヨ、ナンジノナカマノカラダヲコウg アクア、エンリョスルナワタシモロトモコウゲキシロ!
コウゲキシタトコロデコノカタイカラダニツウヨウスr
クゥゥゥゥ、コノセリフゥゥゥゥゥ ヤカマシイワッッッ!
……オイバニル、オトメニムカッテカタイトカイウンジャナイ。セメテタイセイガタカイトカ
ヤァッッッカマシイワァッ! ダマレ! セリフヲイワセロ!
ダクネス……アナタノギセイハムダニハシナイワ ゴッドォォォ……レクイエムーーーーーーー!
フタタビダッピ! ギャー! アア、ダクネス?! ダクネスー!
ム、テンシュヨ、コンナトコロデハントウメイニナルデナイ!
アアッ! アクア、ヤメテクダサイ! ウィズガ、ウィズガー!
イイキカイダカラリッチートモドモジョウカシテアゲルワ!
チョ! カズマー! ミエナイフリシテナイデトメテクダサイ! カズマ! カズマー!
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なんとかウィズを回収し砂糖水を与えつつ嵐から距離を取る。
向こうではめぐみんがダクネスを盾にしつつなんとか避難している。
どうしたものかと途方に暮れているとウィズが目を覚ました。
「う……ん、あ、カズマさん、ここは? さっきまでベルディアさんと綺麗な川で水遊びをしていたと思うんですが」
ギリギリじゃねえか!
「バニルに噛みついたアクアの攻撃の余波で浄化されかけてたんだよ。調子はどうだ?」
なんなら多少ドレインさせてもいい。
「えーっと……あ、バニルさん。ひょっとして迎えに来てくれたんでしょうか?」
「そんなこと言ってたぞ。店に来る冒険者が軒並みガッカリして胃がもたれたらしい」
「ガッカリですか? なんででしょう……あ、ひょっとしてこの前私が仕入れたアイテムをバニルさんが勝手に返品しちゃったから?」
絶対に違う。というか今度はどんなガラクタを仕入れたんだ。いや、聞きたくはない。
「なあウィズ。部外者が経営に口を出すのも悪いとは思うけど、もう少しバニルに相談したらどうだ? ウィズだって自分が商売苦手でバニルが得意だってことはわかってるだろ?」
「え、ええ……まあ」
言い過ぎたか?
「でも店長は私ですし、私がしっかりしなくちゃと思うんです。そのつもりで沢山怒られてしまっていますが」
そう言うと今度は少し柔らかい表情になってさらに続ける。
「それに、こんなこと言うとおかしいかもしれませんが、ちょっと楽しいんです。あ、いえ、ダクネスさんのような意味ではなく。私ってリッチーじゃないですか。冒険者だった頃の仲間とは疎遠になってしまいましたし、あの頃から面識がある、友人と言える人ってバニルさんくらいしかいないんですよね」
魔王様はちょっと友人と言うには恐れ多いですし、なんてことを言ってはにかむ。
そうだよな。今だって冒険者連中やご近所さんといい付き合いはしていても、昔からの友人となるとリッチーになってから距離を置かれただろうし、もう亡くなっている人もいるだろう。俺がダストやキースあたりと悪乗りしてるのに近い感じなのかな。
「なので、つい甘えちゃうんですよね」
……いや、俺とアクアの関係に近いか。
目の前には嵐。
破れた絨毯、割れた花瓶、椅子もいくつか壊れている。ああ、窓も割れたか。寒い時期じゃなくて良かった。
「しょうがねぇなぁ」
「おいバニル、これ以上続けるなら部屋の修理費請求するぞ。ウィズの店に」
高笑いをしていたバニルが動きを止め、ギギギギという音が聞こえそうな様子で首だけこっちを向く。
「今、なんと言ったか?」
「店の赤字を上乗せしてやると言った。ここでやめるなら全額アクア持ちだ」
「ちょっとカズマさん、なんで私だけなの?! 悪いのは全部この寄生虫じゃない!」
「やかましい! 喧嘩売ったのはお前で被害の原因もほとんどお前の攻撃の余波じゃねえか!」
そう、基本的にバニルは避けるだけ。この前衛も行ける上級職が破壊活動に勤しんだだけである。
「汝親愛なるお得意様よ、吾輩が矛を収めたところでこのエセ女神が引くとは思えんのだが」
「お前が引くなら認めてやる。それ以降は勝手に暴れるアクアの責任にする」
「フム、それならば切り上げるとするか」
「カズマ?! ねえなんで! 私悪いことしてないじゃない! 無視しないで、ねえカズマ!」
修理費いくらになるかなー。
「フハハハハハハ、良い運動になったわ。腹のもたれも解消した。礼を言っておこう、悪名高き水の女神と同じ名の駆け出しプリーストよ」
「続けるなら外でやれ。これ以上はマジで請求するぞ」
アクアも狂犬みたいに唸ってるので、本当にこれ以上は勘弁してほしい。
「バニルさん。そろそろご近所の子供たちも帰ってくるころですし、戻りましょう? お店も長いこと空けてしまいましたし」
「であるな。小僧、今日はいろいろとすまなんだ。礼と謝罪はしておこう」
「皆さん、今日はありがとうございました。とっても楽しかったです。またいつでもお店にいらしてくださいね」
襟首を掴まれて引きずられていくウィズが朗らかに言う。
「ああ、まだ商品開発も続けているし、いい話を持っていけるようにするよ」
「ふむ、半日も行き遅れ店主を預かってくれた礼をせねばなるまいな……ではこの見通す悪魔が予言をしよう」
嫌な予感しかしないので手を振って一人下がる。
みんな聞かなけりゃいいのに……ほらやっぱり真っ赤になってからかわれてるし。
おい、なんでこっちをチラチラ見るんだ。なんか俺に関係する話か?
うぐぐぐ……気になる。
「フハハハハハ、美味である! 美味であるぞ汝らの羞恥の悪感情! 御馳走さまだ! では小僧、またのご来店お待ちしているぞ。……う、うぷ、まだ腹の調子は万全ではないか。では失礼する」
そう言って、やはり笑顔で手を振るウィズを引きずりながら帰っていった。なんだかんだでいいコンビだと思う。
「昔からの友人、ね」
元の世界の友人というと画面の向こう側にしかいなかったし、そうなると一番古い付き合いってアクアになるか。
何十年後かにはあんな感じになるのかねぇ……考えられないわ。
バニルさんうまく動かせるようになりたいです
タイトルあらすじ詐欺が悪化してきたので変更しました