Fete 時計塔の聖杯戦争 ~War of the Clock Tower~ 作:みやびやこ
とうとうこの日が来た。
「大丈夫かい、リツカちゃん」
「うん、大丈夫だよ、ダヴィンチちゃん」
その言葉に彼女は少し戸惑うように笑う。
それは人理焼却より数カ月後。
「先輩、ダヴィンチちゃんが急ぎの用だそうです」
マイルームにやって来たマシュはどこか不安そうな顔をしていた。
「なんて顔してんの?マシュ。もしかして、また特異点だったり……」
「・・・いえ、特異点では、無い・・・のですが」
その言葉に首を傾げて私は管制室へと向かう。
「リツカちゃん。突然だが、いきなり本題に入ろう。時計塔からお誘いが来た」
入った途端に余裕なく投げ込まれた言葉に頭がキャパオーバーした。
「二ヶ月近く向こうに滞在することになる。明らかな罠、なんだが……生憎のところ、我々に拒否権は無いんだ」
それでも、どうしてもならリツカちゃんの頼みで拒否するけどね!とダヴィンチちゃんはウィンクをする。
「……レイシフト、と言うことですね」
「レイシフト……?」
「うん、敵の本拠地に突っ込むのなら馴れたよ。味方がいない状態にだって」
私はダヴィンチちゃんの手から招待状を受け取る。そして
「是非とも行かせてください」
「それならオレも同行しよう」
管制室の扉が開く。そこには
「エドモン……!!」
「ほう、君も来てくれると言うのなら大歓迎だ!」
ダヴィンチちゃんは目を丸くして笑う。
……ん?
君も?
「ああ、そうだ。私としては大反対なんだけどね。現地集合のガイドを一人、既に雇ってある。まあ、あいつだけじゃ不安だから、君も一緒に行ってくれると助かるよ。モンテ・クリスト伯」
「……その現地集合のガイドが何奴かが気になるところだが、まあいい。我が共犯者の体を恩讐の炎で」
「アヴェンジャイ、短く」
「二十四時間お守りします」
やればできるとダンテス。星を出す系アヴェンジャー!サイコー!
「……で、ジャルタは来るの?」
管制室の入り口に寄りかかっていたジャルタが片目を開いてこちらを一別する。
「・・・あの女の国なのでしょう、ロンドンと言えば。確かに恨み深い土地ではありますが、あの蝋人形のような王の治めていた国になど足を踏み入れたくありません。私は………………何かあったとき、ファブニールで全土を焼けるように準備をしてきます」
素直じゃないなぁ。ジャルタは。
彼女の背中を見送って、ダヴィンチを見る。
「ああ、それとくれぐれもサーヴァントを真名で呼んではダメだよ。それだけで、弱点を晒すことになるからね。分かったかい?」
「はーい」
と言うのが数日前の話だ。
「じゃあ、時計塔では警戒を怠らないようにね」
「はい」
私はヘリコプターに乗り込む。そして、長い長い眠りについた。
目が覚めた時の感覚はどうにもふわふわした感覚だった。影のなかでエドモンが足元に気を付けろとぼやいた気がする。
「……で、現地集合のガイドスタッフとはこの辺で待ち合わせなんだよね」
崩れた廃墟だった。いや、公園なんだけど。広くて、緑がきれいで。私の生れた場所とは違う。
「ここはグラストンベリー修道院だ。入ってくるところは古い外観だっただろう。君からしてみれば珍しい、のかな?ああ、でも確かニッポンのヨコハマという街は似たような外観だよね」
誰かが立っていた。霊体化したエドモンが威嚇を止めて姿を表した。
「貴様、花の魔術師」
「そう!花の魔術師!皆の優しいマーリンお兄さんさ」
「マァアアキャスタァアアアア!!」
全力で地面を蹴っ飛ばす。そして、その首根っこにぶら下がった。
「久しぶり!アヴァロンから徒歩で来たの?」
「そうだとも。ここは徒歩一分位だからね。ほぼ庭と同義さ」
彼が私の背中をぽんぽんと叩いた。
「では、時計塔へ向かおうか」