Fete 時計塔の聖杯戦争 ~War of the Clock Tower~ 作:みやびやこ
「……何も、起きないね」
『起きないことを楽観的に言うな。起きないというのはつまり』
「アヴェンジャー、分りやすく」
『…………準備期間なのでは?』
なるほどー。
『まあ、その線が濃厚だろうね。最近、魔力の疼きが激しいくらいだし』
その言葉にふーん、と言葉を返した。
「藤丸 リツカ。この問題の答えを答えよ」
「はぃいいいいい!!」
一気に立ち上がる。
突然指されて黒板に書かれていた問題に目を走らせる。けど、全然分からない…………。
『マイ・ロード』
マーリンがトントン、とこちらをつつく。
「あ……え、と、だ、から、その(何やら難しいあれやこれや)だから……(さらに難しいこと)で、(もう訳がわからないよ)だから……」
「もういい、ミス藤丸。座りなさい」
マーリンのかんぺを棒読みしただけだ。
「これってズルじゃないの?」
『ん?仕方無いだろ。知識の無い君にこんな難しい問題をさせるほうが悪いし……それに、君には必要ない』
必要ない、と言うのは違うのではないだろうか。
『いや、必要ないな。貴様が扱える魔術はただひとつ。古今東西ありとあらゆる英雄を従えることのできるという奇跡のみでいい。それ以外は貴様の魂を濁らせ、汚し、腐らせるだけの代物だ』
エドモンの言葉に鉛筆を止める。
「……どういう、こと?」
『何。君のあり方をねじ曲げる可能性があるって話だよ。マイ・ロード』
あり方……。
『魔術師ぜんとしていればこの魔術師もオレもお前には手を貸さなかったという話だ。分かるか?』
「……うん、なんとなく」
時計塔の鐘の音が鳴り響いて抗議が終わる。生徒たちは立ち上がった。
「昼休みか……」
『そう言えば、この辺に美味しいカフェテリアがあるらしいよ』
「お!行ってみよっか!」
私は荷物を纏めて立ち上がる。
私はここにいても一人だ。
たった一人でずっと歩いている。エドモンとマーリンはいるけど、それ以外は、誰も。
その時だった。
黒髪が柔らかく靡く。
「_________イシュタル」
呼び止めてからはっとする。ここはカルデアじゃ無いんだ。エドモンはため息を吐いて頭を抱えている。
「私に何か用?」
「あ……いえ、知り合いと似ていて、見間違いを。ごめんなさい」
その女性はこちらを検分するように見つめる。そして
「イシュタルといえばバビロニアの神話に出てくる美の女神よね」
冷や汗が背筋を伝った。
「……そんな人と、何故、知り合いなのかしら」
「…………たま、たま、名前が、同じという、だけ、です」
「じゃあ、そこにいる色白の色男さんについての説明はいただけるのかしら?」