Fete 時計塔の聖杯戦争 ~War of the Clock Tower~ 作:みやびやこ
「ッッッ……」
『了解した』
言葉にするよりも早く、彼は私の手を引いて走り出す。人目があるから無闇に飛んだりできないのだろう。
「ちょっと……!待ちなさい!」
「助けて、キャスター」
口の内側でそう呟く。
『了解。夢のように片付けよう』
私は路地を曲がる。エドモンは人見が無くなった瞬間に私を抱き抱えて開いてる窓から飛び降りた。
「幻術で誤魔化したから大丈夫だ」
「……マーリン、ごめん」
花の魔術師に謝罪すれば彼は私の髪を整えるように撫でた。
「私よりもそっちのこわぁい顔のお兄さんに謝ったほうが良いぞぅ」
「ひぃいい!ご、ごめんよ、エドモン、その、わ、悪かったから」
「・・・迂闊すぎるぞ、共犯者」
二人はそれだけ言うと霊体化ではなくそのまま幻術を使って現地人の格好へと変わった。
「明日からはどちらか一人がリツカの傍に霊体化せずにいると言うのも視野に入れるか」
「そうだね」
うう……。
自分の迂闊さに腸がねじ切れそうだ。私たちは校門へと向かって
「見付けたわ」
その言葉に体が温度を下げていく。
「貴方……魔法の才能が無いふりをしていたのかしら、それともお二人のうちどちらかの仕業?」
黒髪のイシュタル似の人が立っていた。
「………………」
答えられない。この人はマーリンの幻術を見破った。
「・・・まあ、ちょっと簡易版だったんだけど」
「お前のせいか」
「ちょっ、リツカ!?顔怖いよ!?」
手間を省いたのか。マーリンめ。
「いやぁ、最近の魔術は面白いからついつい読み耽っちゃった。それで試してみたんだよ」
「・・・」
現地スタッフが一番頼りないわ。チェンジを頼みたいくらいだわ。
「……それで、貴方は何者なのかしら」
「…………私は」
タイミング。タイミングが重要だ。エドモンの冷たい手を握り締める。この人は曲者だ。顔がイシュタル似と言うの以外にも。
「…………はぁ。話してくれないのね」
「・・・え?」
諦、めた?
「そうよね。ごめんなさい。初めまして。私の名前は遠坂 凜よ。よろしく」
「…………藤丸、リツカ」
何が起きたのか分からずに目を丸くする。
「そう、リツカ。また何かの縁があったら逢いましょ」
…………ええー…………。
「女神様と同じタイプかとてっきり思ったんだけどな」
「…………まあいいよ。とりあえずマイ・ロードのご飯が先だろ」
そうだ。
すんごいおなかがすいた。
その時だった。青空を黒い布がおおっていく。私は静かにそれを、眺めながら、目を見開いたのだった。
落ちてくる黄金色の光に言葉を失う。それは何度でも見て、見慣れきった聖杯だったからだ。