破嵐万丈シリーズとは、有名な某ロボットアニメの主人公からスピンオフした、富野由悠季の手掛けたアクション探偵物小説です。全4巻。
ハイテク時代、なんて言葉が昔流行ったことがあったよね。
あれはまだ世間様がコンピュータやらハイテクやらに溢れていなかった時代、そんな頃を知っている世代がそーいうのに溢れた時代の流れをリアルタイムで体感して出た言葉だ。
でももう僕らの世代は生まれた時からずっとハイテクに囲まれているから、それが当たり前になっている。時が常に進歩すると誰が決めたかはともかく、今は日進月歩で進歩し続けている。
僕の名は破嵐万丈(はらんばんじょう)。ハイテクの更にハイテク時代の探偵やってます。
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シン・ザ・シティは東京湾になん十万本ものコンクリートの柱を打ち込こみ、その地盤の上に首都機能を移転して発展してきた海上都市だ。
そのハイウェイを1台のスポーツカーが疾走している。運転しているのはスーツ姿の一人の青年、破嵐万丈。職業・探偵である。頭頂部が逆立ってて、光の加減でちょっと緑にも見えなくもない黒髪を持つイケメンさんである。
この時代、30までは遊び倒してちょっとバイトして暮らすなんてモラトリアムな若者像が普通になっている。万丈や事務所受付のミーシャ嬢みたいにこの歳で定職に就こう、なんてのが珍しくなってしまった。早くに独立したかった、というのが万丈の言い分ではある。
万丈がマッハ・アタッカーと名付けようとして周囲に止められたスポーツカー、ラピド・ポータの助手席に座るは、金髪の白人女性、ファン・ファン。ブルジョワジーのアメリカ人だが、どういう経緯か破嵐万丈探偵事務所に入り浸って助手をやっている。でも事務所の上にある万丈の個室にまで押し掛けるのは勘弁して頂きたいところだ。
「バンジョー、もしかしてIS学園に向かうのか? 行くの止めようよ?」
ファン・ファンが唐突にそんなことを言い出した。事前にどこへ行くかは当初聞き流していて、今になって思い出したのだ。目的地まであと半分もない時間が経っているこの時点でだ。
「今更何てこと言い出すんですかアナタ。ホラお仕事なんですから。大体自分から乗ったじゃないですか」
万丈はウンザリしつつも、運転中なのでファン・ファンの方を余所見はしない。
「知らなかったんだもーん」
つーんという態度を取るファン・ファンに、どう落ち着かせようか万丈が思案を巡らす。車中なので逃げ場がないのはたちが悪い。
「行ーきーたーくーなーいー!」
「こら暴れない。壊れたらウジノ君が困るでしょ!」
メカニックのウジノ君に迷惑かけた度合いは仕事柄数えきれない程あるが、メタルバンドの如く前後に揺さぶってシート壊しましたでは流石にウジノ君だって怒る。多分。
ちなみにラピド・ポータの後方を走るトラックを運転するオジサンからすれば、走行中ユッサユッサ揺れるスポーツカーなんて、いかがわしいことしている何かにか見えないワケで、万丈としては甚だ不本意極まりない。
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IS学園という国立の高等教育機関は、シン・ザ・シティ最南端のポッと突き出た区画にある。IS、インフィニット・ストラトスと名付けられた人型マシンを扱うための教育をするために数年前設立された。女性しか受け付けないという意味不明な特性のため、生徒は女子であり学園は女子高校である。何でロボット一つに国が専門の学校建てるのかだって? それで既に経済が廻ってるんだもの。
ラピド・ポータがIS学園の敷地に入ると、丁度校舎が見晴らしも良く見えてきた。見晴らしというか、上部が2ヶ所、大穴が空いてごっそり吹き飛んでいた。
つい先ほど、ミサイルがこの学園を襲ったのだ。それも2発。報道によると幸い死傷者は出なかったらしい。
その見るも無残な校舎を、やけに情感を込めてファン・ファンが眺めていた。
「うわーい綺麗に空いてるぅ」
「何で君そう嬉しそうなの? 一応クライアントなんだから自重してね?」
一転して機嫌よくするほど何か恨みでもあったのだろうかと考えた万丈だったが、大人しくしてくれるならもう何でもいいやと思うことにした。
駐車場から校舎に向かう道すがら、警察の集団とすれ違う。その周囲にはマスコミやら女子やらのやじ馬が出来ている。本日は急きょ休校となった様子だ。
万丈らは警察から極力目立たないように気を使いつつ出入り口へと向かう。が、一人の私服警官、つまりは刑事さんの村雨氏に見咎められてしまった。
「そこー勝手に入っては……またお前か」
「仕事だからね、仕事」
「学園から依頼でもあったとか?」
「守秘義務ですよ守秘義務」
「お堅いなーもう」
「お堅いって君警官でしょ?」
などというお互い肩を竦めてのお馬鹿なやり取りをする程度には腐れ縁とは呼べるだろう。お互い嬉しくはないんだけどね。
ようやっと校舎の出入り口が見えたところに、一人のスーツ姿の女性が腕組みをして待っていた。
「破嵐万丈探偵事務所から来ました、破嵐万丈です。こちら助手のファン・ファン」
「……偽名か?」
「本名です」
失礼と言えば失礼だが、よく言われることなので万丈はさらっと流す。
「いや、済まない。あなたが……。本校の教師をやっている、織斑千冬(おりむらちふゆ)だ。よろしく頼む。こちらへ」
気恥ずかしくなり恐縮しつつも千冬が万丈らを奥へと案内する。スーツ越しに見える背中の筋肉の付き具合と歩き方から、あぁこの人はアスリート向きなのだと万丈は観察した。女性の観察は得意な万丈である。
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「ようこそいらっしゃいました。IS学園の学園長を勤めております、轡木十蔵(くつわぎじゅうぞう)です。お見知り置きを」
「破嵐万丈探偵事務所の破嵐万丈です。至急にとのことでしたのでこちらに伺いましたが、最終的に依頼を受けるかどうかは詳細を伺ってからになります」
非常に型通りの社交辞令は大事である。ちなみにファン・ファンは先程の悪い意味でのはしゃぎようもどこ吹く風、万丈の後方で助手らしく静かな表情で控えていた。そういうマナーはちゃんとできる育ちのいい子である。
ついでに千冬女史は十蔵さんの背後でしかめっ面を隠さず控えている。別に万丈らを歓迎していないワケではなく、単純にこれからの話に嫌悪感を抱いているのだ。
「はい、承知しております。早速ですが本題に入りましょう。本校にミサイルが撃ち込まれたのはご存じでありましょう? 実はその直後、ヘリコからこのようなものが撃ち込まれましてね」
十蔵さんはクリップボードに挟まれた1枚の紙を万丈に寄せた。撃ち込まれたといえば、確かに室内の窓辺りにガラスが散乱し吹きざらしと化している。
「コピーです。本物は警察に渡してあります」
無論余計な指紋は付けないように警察の立ち合いの下でである。
「CG(クリーン・グリーン)ですか」
「はい」
顔をしかめたい気持ちを表に出さず、万丈はコピーされた便箋に記された宛名を読んだ。
CG(クリーン・グリーン)とは、近年台頭してきた女性権利団体の一つである。主に高年以上や老人の女性によって占められ、つまるところ暇なオバサマ達の権利を主張する団体だ。
ところがこの集団、CGという略称の別名が「コンバット・ガンズ」であり、どこから調達したのか武器弾薬装甲車やヘリコで武装し、有無を言わさずテロによって幅を利かせてきたのである。国会議事堂を上空から爆撃したことだってある。
おかげで幾つかあった他の女性権利団体は解散もしくは吹けば飛ぶほど弱体化を余儀なくされている。
更にISが台頭してから日本で主にマスコミによって煽られてきた女尊男卑の風潮も、CGの過激な活動によって嫌悪感が先に立たれる結果になった。例えば極端な話、さるご婦人がショッピングモールの婦人服売り場でそこらの男性にお前が金を払えなんて迫ったとしよう。「君CGの構成員?」なんて返された途端に男女問わず周囲の冷たい目線に晒され、ご婦人が渋々退散する羽目に陥るのがオチなのだ。
尤も、CGはそのショッピングモールで無差別の銃撃戦をやらかして一般人から死傷者を出しているんだけどね……。
そのCGがこの学園にミサイルを撃ち込んでメッセージを送りつけたというワケだ。コピーにはこう書かれている。
『年若い女性ばかりを優遇するISのあり方を我々CGは容認できない。女性を優遇する道具というのならば我々のような年代にこそ与えられるべきものであることを要求する。同時に、ブリュンヒルデこと織斑千冬は我々に帰属せよ』
「……何だこりゃ?」
ファン・ファンの気の抜けた言い分もごもっともな話ではある。皆そう思っても口にはしなかったのだから自重して欲しかったところでもある。
次回:02 簪、がんばる(仮)
・破嵐万丈
元が元だけに、皆さんの脳内声優は故人のあの方で。
・ファン・ファン
決してお馬鹿じゃないんです。運の持ち合わせが壊滅的に悪い人なんです。
・ラピド・ポータ
しっかり変型して空を飛ぶ。万丈は素性を隠すのに苦労する。
・CG
破嵐万丈に登場したとってもアブナイ団体。政治の世界にも食い込んでてとっても厄介。
・世界観
両作品の世界観のすり合わせに当たって多少は改変はあるので、その辺りはおいおいと。
・簪
次回以降、万丈側の人として登場予定。
・ダイ以下略
原作には欠片も登場しないけど、出した方がいいのだろうか? やるには相応の背景が必要なのでいっそテンダーギアと称して作中に組み込んでしまおうか。