破嵐万丈 インフィニット・ストラトス闘争   作:梵葉豪豪豪

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 一応タイトル通りの闘争らしくなってきた。後IS対巨大ロボットはもうちょっと増えてもいいと思う。


05 ランナバウト

 野次馬から抜け出した万丈ご一行は、アミューズメントビルにある芸能人御用達のフレンチレストランにてランチをしたためた。サタデーやらピントのような写真週刊誌に隠し撮りされる万丈のような目立つ人が隠れるには、芸能関係者が囮の役を果たしてくれて都合がいい。

 高校生の簪にとってははじめてのハイソ!て感じで舞い上がるのも無理はない。

 

 ランチの後、簪をIS学園まで送り届けた。まだ午後の1時頃だし特に咎められないだろう、と思っていたが校門に誰かが仁王立ちしてラピド・ポータを睨みつけていた。よりによって簪の姉、楯無である。生徒が外をうろつくのは生徒会長サマとして看過できません……という建前1割、妹が悪い虫にたかられるのは許しませんが9割のご様子だった。シティ内での先の事件との関連を疑われても困るので、万丈としては適当に受け流しておく算段でいた。

 

「万丈さんそのまま突っ込んで! 人のいる方に」

「簪ちゃんまずは落ち着きましょう」

 

 簪がいきなりハンドルを奪う真似をして人を撥ねる事態にならなかったのは僥倖だと万丈は心から安堵しつつ、まずはあの怖ーいお嬢さんに事情を説明するためにラピド・ポータを降りなければならない。

 

 腕を組んで万丈一味、特に目の前に立つ万丈を睨みつけてこれだから探偵は……とブツブツと怨嗟の声を上げている楯無の背後を、ツナギを着た内装業者の女性が通り過ぎていく。破嵐万丈探偵事務所の波乃真(ハノマコト)嬢が業者を装って学園に侵入し職員室やトイレなど数箇所に盗聴器を仕掛けに行った帰りなのだ。マコトとしてはコントじみている光景に指を差して笑いたいところだが、勘がいいらしい彼女に気取られるのもよろしくないので、そのまま素知らぬ振りをし通り過ぎていった。無論、万丈やファン、簪も視線をマコトに向けず、知らない振りをしておく配慮はあった。

 

 

∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀

 

 

 翌日、昼下がりのシン・ザ・シティ西側上空に2機のISが低空から侵入していた。北京から一直線に大連や平壌、金沢市を突っ切り、シン・ザ・シティへとすっ飛んできている。現在自衛隊、外務省など関係各所がスクランブルやら事実確認やらに大わらわになっており、朝からパニック状態だ。尚、中国政府は沈黙を続けている。

 

 そのISの1機、北京軍区空軍第24戦闘機師団の実験部隊に属する紙秋(ディー・クー)女史、いや少尉、通称オータムさんはウンザリしつつも上空からビル群へと突っ込んでいった。

 

 元々彼女は給料が上がるらしいという雑な理由で、政党内の派閥である女性権利団体「亡国機業」へと理念に賛同する気もないのに門を叩いた。

 今回、その「亡国機業」から部隊を経由して「いやしくも日本の警察に不当に拘束された同志を救出する。お前はその陽動をしろ」と命令が下ったのだ。辞令は正式なものだが、その同志なんざ知らないし、これはやっちゃ駄目な方の行動じゃないかしかも軍隊の私物化ジャンと胸中は呆れるばかりだった。

 が、部隊長の微妙に目線をずらす態度から、この場で文句をぶつけるのは自分にとってもよろしくないと判断し、渋々と命令を受理したオータムである。給料分の仕事はするつもりだ。

 

 一緒に飛んできた僚機がオータムの隣に並び、ロールする。明らかにはしゃいでいる。

 

「お姉マ! 一緒に頑張りましょう!」

 

 お姉マ言うな通信記録残るんだぞボケ! と叫びたいのを堪えて、オータムは僚機に乾いた笑顔を送った。更にロールする僚機に雑技団の猿回しか! とも思ったが口にはしなかった忍耐力を褒めて欲しい。

 僚機の彼女は凰乱音(ファン・ルァンイン)一級軍士長。同じ部隊の仲間であり、当然ながら「亡国機業」の構成員でもある。中華民国(台湾)からどういうミラクルを使ったのか本国へ亡命した人物という噂があるが、特に冷遇されているワケでもなく、人懐っこい性格もあり皆よく知らないまま付き合っている少女だ。

 オータムはそんな年の差の激しい彼女に何故か懐かれている。同性愛のケがあるオータムだが生憎10代はレンジ外だ。というか懐かれすぎて気持ち悪い。

 

 ISのセンサーが地上に多数の熱源を拾った。7m前後の代物である。

 

「何かいましたお姉マ!」

 

 乱音が叫ぶ前にオータムは既に正体を見極めていた。想定内の相手だ。

 陸上自衛隊のテンダーギア「多聞丸」(たもんまる)。球形の胴体に手足が生えた、緑の機体である。奴らの頭部にある単眼も明らかにオータムらを捉えている。蛇腹の腕に装着した機関銃が一斉にこちらを狙っているのだ。

 北京からここまで時間が十分にあった。待ち構えているのも道理だ。

 

「よし散開! お前は左を潰せ!」

「了解です!」

 

 敬礼した乱音が急速に離れていくと同時に、オータムは警告抜きに自衛隊の群れに対物ライフルを数発撃ち込んだ。自分らの任務は陽動だ。派手に暴れてやるとした。

 

 当然返礼が返ってきた。銃弾の嵐である。それでも散発的なのは極力周囲の建築物を壊さないという配慮があってのものだ。いつの時代も自衛隊が配慮しなければならないアレコレは面倒なものだが、それ故に射撃の精度がやけに高い集団になっている。現にオータムがデタラメに回避行動を取っているにも拘らず段々と銃弾が当たり始めた。ISのバリアが自身を守ってくれるし損傷もないが、それでも並ならぬ衝撃は襲ってくる。

 

「ッてぇなコノ!」

 

 激昂したオータムが反撃し、上空から数体の「多聞丸」にヒットさせるが、生憎とISが携行した対物ライフルとロケットランチャーは歩兵の武器に毛が生えた程度のものである。人間相手なら余裕だがタングステン製の戦車より更に頑丈な相手では表面の塗装を剥げさせるが精々でしかなかった。センサーか関節に当てれば芽はあるが、チョコマカ動き回る相手に当てられるほど都合良くはない。ビーム兵器を携行すればISは誰あろうと無敵と呼んで差し支えないが、今ないものをねだっても不毛である。

 

 ISのセンサーが背後からの物体を捉え、オータムが振り返ると同時にロケットランチャーを構えると、緑の丸い機体が目前に迫っていた。テンダーギアが長距離を飛べる兵器であることを失念していたワケではないが、油断は油断だった。

 

「そう来るかぁッ!?」

 

 「多聞丸」が蛇腹の腕を豪快に振り回し、オータムに頭から叩きつけた。とっさにオータムが腕を交差させて自身を守る。バリアで機体は守られたが、ロケットランチャーはひしゃげた。

 空中で踏ん張れたのが却って逆効果となり、更に「多聞丸」による全開の噴射により、勢い付いて地面に激突、緑の巨腕とのサンドイッチになった。

 

 衝撃を吸収しきれずオータムの左奥歯が粉砕された。彼女は吐血するも、構わずに背後に背負った衝撃兵器「龍咆」を、密着した相手の頭にある単眼へ狙い違わずぶち抜いた。衝撃のみを撃ち出す兵器である。

 視界を奪われた「多聞丸」は数m程浮き上がり、再度地面に激突して転がっていった。

 

「ざまぁーっガッ!」

 

 砕けた奥歯をベッと吐き出し、悠然と立ち上がって次の獲物を睨みつけようとした。が、いつの間にか自衛隊が視界から消えている。

 今度は明後日の方向から砲撃が飛んできた。また別のタイプのテンダーギアが数多く物陰から覗いていた。

 

「今度はヤンキーかよクソッ!」

 

 アメリカ陸軍のテンダーギア「アディゴ」は、骸骨をモチーフにしたような、自衛隊機とは正反対の細い体型を持った機体である。

 この時点で自衛隊と米軍の間にいかようなやり取りがあったのかオータムが想像を巡らす暇もない。

 多数の「アディゴ」が猫背気味の機体に懸架されたボックスからミサイルを一斉射した。白煙の尾を引いて、大量のミサイルがオータムを襲う。

 

「ナットーかよボケェェェェエ!」

 

 彼女の苦手な中国料理を連想しながら、空中を右へ左へと回避していく。どうやら今度の相手は周囲の損壊なぞお構いなしらしい。

 

 もはや自分が何をしに来たのかオータムは忘れかけていた。

 

 

∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀

 

 

 銃撃を掻い潜り、「多聞丸」に取り付いた乱音が振り回した青龍刀は正確に腕関節へ捩じ込まれた。逆立ちの大股で取り付いている姿は「多聞丸」のコクピットからは股間や尻がアップで映り込んでいるであろうと見越しての行動だった。彼女は少女であることを最大限に活かし世の中をしぶとく生き残ってきた娘である。

 青龍刀から衝撃を伴った電撃をぶちまけ、「多聞丸」の腕を吹き飛ばした。間髪入れず、単眼に二振り目の青龍刀を突き立てて同様に電撃をぶち込む。構造上中の人を焼くに至らないが、機体を行動不能にはできた。

 

 更に第2陣第3陣が向かってくる中、ふとその向こうで避難の遅れている輸送車をISのセンサーで見咎めた乱音は、腹いせに機関銃をその方向に叩き込んだ。多くはテンダーギアに遮られて跳ね返されたが、数発は確実に輸送車へとヒットした。

 

「あーごめーんねー」

 

 テヘペロと舌を出しつつ、通信から流れてくる本国の工作員らしき人物が放つがなり声を右から左に聞き流した。悪意を隠すのは慣れている。

 

 

∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀

 

 

 一夏君ら6人は昨日警察にこってり絞られ、翌日の今日護送車に乗せられて警察本部に向かっていた。特に一夏君は打ちひしがれて、これからどうなるのかと不安で何度も自問自答を繰り返している。

 その護送車が突然鋭い連続した衝撃に見舞われ急停止した。

 

「え? 何? 何なの?」

 

 シャルロット嬢が狼狽する中、車内の最前列に座っていた箒嬢が運転席の見える窓を覗き込んだ。普段は閉められているが衝撃で開いてしまっている。

 

「うっ……!」

 

 思わず箒が目を背けてしまう。釣られて一夏君も中を覗いた。

 

「あぁっ……!」

 

 アクリルの窓には鮮血がべったりかかっており、その向こうには運転席と助手席の双方から頭や胴体をフロントごと撃ち抜かれた男2人の死体が見えた。一瞬で思考が固まる。次にここにいたら危険だという焦りが襲ってきた。一方、隣の箒嬢は吐き気を抑えている。

 

「何ですの一夏さん?」

「見ちゃ駄目だ!」

 

 セシリア嬢が見咎めようとしたが一夏君に止められた。だが窓にかかった血でおおよその事情を察した。何故を考える前に次の対処に思考を巡らせた。

 

 今度は背後のドアが外から乱暴に開けられた。その向こうではサングラスの女性2人が手招きしている。奥に車も用意されていて、あからさまに怪しい。

 

「お前たち! 早く出なさい!」

 

 狼狽している一夏君はフラフラと外に出ようとした。が、その手をラウラ嬢が掴んで止めた。

 

「駄目だ嫁!」

「何故だよ! ここにいたら危ないかもしれないのに」

 

 外では銃撃音と爆発音が断絶的に続いているので、一夏君の言うことにも一理ある。とはいえここは自分が何とかしなければ、という使命感をラウラ嬢は抱いた。

 

「それでもだ。逃げるにしても少なくともあの連中に付いていくべきではない」

 

 外を覗いたラウラ嬢は左目の眼帯を外し、存外近くに見える戦闘行為を観察した。ナノマシンを注入された左目がISのセンサーに近い性能を発揮し、物を鮮明に捉えた。その中でISが暴れているのを確認した。

 

「今暴れているISは……中国機だ」

 

 一夏君・箒嬢・セシリア嬢・シャルロット嬢が一斉に鈴音嬢に振り向く。

 

「ええッ!?」

 

 鈴音嬢が慌てて手を振り否定した。

 

「いやいや私知らないわよ!」

 

 その言葉に嘘偽りはない。

 

「これは……荒れるなんてものじゃないか」

 

 そう一人ぐちたラウラ嬢だったが、この一件が自分達の起こした件をきっかけにしたものであり、既に自分たちの手を離れているとまで思いを巡らせるには判断材料が足りなかった。

 

 

∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀∀

 

 

 万丈らは埠頭から市街地へかけて起きている戦闘を観察していた。彼らは現在貸ビルの屋上にて待機している。背後には巨大な倉庫が鎮座している。

 

 万丈、マコトが外での観察と通信やニュースの傍受を担当し、ファン、ウジノ、簪は倉庫内に納められた機体のセットアップを行っている。

 彼らはシン・ザ・シティで起こり得るこういう事態のため超法規的に動くべき人材である。そうでなければ探偵事務所のバックに居るスポンサー「トキョー・インフォメーション」に資金を打ち切られかねない。

 この貸ビルと機材もそのスポンサーが用意したものだ。

 

「行けます?」

「行けます!」

 

 倉庫を覗いた万丈の問いに、簪がズビシッと親指を立て笑顔で応えた。

 

 そこに鎮座していたのは、10mもない小型の青く塗られた戦闘機である。だがテンダーギアでもある。つまりは人型に変型するのだ。

 開発名ラピド・ポータ・サードは隠密行動のために開発された。名称の通りラピド・ポータの各種機能を内包している。仕様を聞いた時万丈はニンジャか! と突っ込みたくなった。

 

 万丈がテンダーギア上部にあるコクピットに乗り込んだ。通常背中にコクピットがあるテンダーギアがうつ伏せになると必然とコクピットがその位置に来る。

 オールビュー、つまり全方位に張り巡らされたモニタが退避する簪らを捉えた。搭乗口が閉じられると完全に全方位になる。

 乗り物なら何でも乗りこなせる万丈が扱うにはもってこいの機体だ。万丈は両手に納まったグリップと両足のスロットルレバーの感触を確かめた。

 

 開放された倉庫の扉からゆっくりと機体がホバリングで外へ向かう。機体から発する音は非常に静かである。

 

「ダイターン、発進する!」

「えっ」

「えっ」

「えーと、個性的ね?」

「……いいかも」

 

 万丈のネーミングセンスは非常に不評であったが、最後に簪からの受けが良かったことに万丈としては一応救いがあった。

 

 噴射煙も見せず、テンダーギア「ダイターン」は静かに、しかして急速度で発進した。

 

 

次回:06 アーム・アームズ

 




・オータム
 くまのクーさん。今最先端にいる被害者。中国名で進行すると混乱を招くのでオータムで。

・乱音
 判っててやっただろおめーな人。ただ可愛いだけでは生き残れない。

・テンダーギア「多聞丸」
 自衛隊機。ぶっちゃけ某∀のカ○ルそのまんまの見た目。転がると止まらない奴。


・テンダーギア「アディゴ」
 米軍機。ついでに水中用の「トリトン」という機体もある。

【挿絵表示】


・ダイターン
 日輪のあいつ。セカンドは仰向けに変型して4枚羽根で赤い。フォースが存在したら多分白い。
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