真剣で私に恋しなさい!!~月下流麗~   作:†AiSAY

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第13話 小次郎、いざ光射す舞台へ。

東西交流戦から一夜があけ、その日の川神学園は朝のHRは、臨時の全校集会が開かれていた。

全校生徒を前に学園長である川神鉄心が前に出て口を開く。

 

「皆も今朝の騒ぎで知っているじゃろう、武士道プラン。」

 

そう、今や川神に限らず日本、世界は九鬼財閥の突然の発表、《武士道プラン》の話題で持ちきりであった。

ざわめく学生達を気に留めることなく、鉄心がそれに伴い川神学園に6人の転入生が入ることになったと説明を始める。

 

まず初めに、3-Sに入る葉桜清楚が紹介され、その名の通りの清楚な振る舞いで男女問わず皆を魅了していた。途中、清楚のスリーサイズを聞こうとした愚者あるいは猛者がいたが、それはその生徒の担任によって無かったことにされた。

 

次に義経達、2-Sに編入する者達の紹介に移る。

義経は昨日の東西交流戦で見知った者のいたが、それでも皆の注目を集めていた。

しかし、それ以上に生徒たちの注目を集めたのは弁慶の姿であった。

どうやら皆、かの武蔵坊弁慶のクローンとやらに先入観があったのであろう、目の前で飄々とした雰囲気を醸し出す美女の姿は彼らの予想を良い意味で裏切る者であったらしく。

主に男子たちの歓声は大地を震わすほどであった。

そして、最後に那須与一の紹介が行なわれるはずであったが、その姿はどこにもなくしばらくの間、辺りはどよめいたが義経がなんとか与一のフォローをしようと頭を下げてことなきを得た。

しかし、その後ろで川神水(※ノンアルコールで場で酔える不思議水)を公衆の面前で飲んでいる弁慶が注目され、落ち着く間も無くまたざわめきが起きた。

 

場所は変わって、川神学園屋上。

 

グラウンドがそんな中、与一は1人校舎の屋上入り口上の貯水タンクの横にてごろりと横になっていた。

 

「ハッ!くだらねぇの…。卒業するまでの付き合い…馴れ合いに意味あるのか?」

 

あいも変わらず、今日も今日とて中二病まっしぐらである。

 

「人間は死ぬまで1人なんだよ」

 

と、寝転んだまま誰にいうでもなく言葉を吐く与一。

しかし、与一が独り言として呟いた言葉は彼の予想に反して、返ってきた。

 

「別にそうしているの構わんが、良いのか?このままだと後ほど弁慶の折檻は免れぬぞ?」

 

「あっ!?」

 

その言葉を耳にして、与一がガバッと起き上がる。

与一が声の方を見ると入り口に小次郎の姿があった。

 

(全く気配を感じなかった…。やはり、コイツ組織の…)

 

「いやはや、また色々と思案しているようだが。私はお前の様子を見に来ただけだ。何せこの身に課せられた任はお前達の護衛。義経達はともかく、お前が何処にいるか確かめに来ただけよ…。」

 

と、特に与一の方を向かずに話しかける小次郎。

その姿はいつも通りの特注の従者服を身に纏い、長刀を背にしていた。

 

「にしても、今日ぐらいは皆の前に出て一言くらいは申したらどうだ?お前にとっても、今日は新たな日々の始まりであろう?」

 

「フン、群れたい奴は勝手に群れれば良い。俺は何ものにも迎合する気は無い。」

 

「左様か…。だが郷に入っては郷に従えとも言う。無理に他者に合わせろとは言わぬが、別に輪の中にいても、孤高でいることは出来よう。」

 

「何?」

 

「寄るべの無い者はただの孤独。寄るべがあり、それでも自身を見失うことのない者を孤高と言う。与一、お前が目指すものはどちらだ?」

 

そう言い残して、小次郎は何事もなかったかのように屋上を後にした。

与一の耳に小次郎の言葉が深く残っていた。

 

「孤独か孤高か…。」

 

 

小次郎がグラウンドへの戻ると、全校集会ではウィ○ン交響楽団のファンファーレが鳴り響いていた。

どうやら、義経達の自己紹介が終わり今度は1-Sに編入する者の紹介が始まるようだ。

目立たぬように控えていたクラウディオが小次郎に気づく。

 

「おや、戻りましたか?」

 

「おう、与一は屋上で寝ていたぞ。」

 

「連れてはこなかったのですか?」

 

「何、ここで無理に連れてきても場が乱れるだけであろう。それに…。」

 

言い止まる小次郎をクラウディオが見る。

 

「それに?」

 

「いや、私よりも奴を引き出すのはこれからの出会いに任せるべきかとな…。」

 

と、小次郎が目を閉じながら言った。

その言葉を聞くと、クラウディオは目を細めて微笑む。

 

「そうですね。」

 

「して、どうやら義経達の顔見せは終わったようですな。」

 

「ええ、ご覧の通り。今は紋様とヒュームの紹介をしています。」

 

「いやはや、それにしても紋様の護衛とはいえヒューム殿がこの学び舎に通うとはな…。」

 

と、小次郎が笑う。

クラウディオも同じことを思っていたのか、苦笑いを浮かべる。

そう話す2人の前ではヒュームの編入を目の当たりにして当然だが、学生達は驚愕している。

すると、ヒュームの姿が消えた。

 

「おや?」

 

「どうやら、学生の方に行ったようだ。しかも、あそこにいるのは…」

 

2人がヒュームの向かった方に目線を向けると、ヒュームは1人の女生徒の後ろにいた。

そして、その生徒のことを小次郎は見知っていた。

川神百代、つい先日立ち会った武士娘である。

ヒュームは百代に何か耳打ちすると、再び目に見えないほどの速さで元の場所に戻った。

 

「さて小次郎、次は貴方の紹介です。私が先に出ますので呼んだら来て下さい。」

 

「承知した。」

 

そう言って、今度はクラウディオが生徒達の前に出る。

 

「えー、ここで僭越ながら、ご挨拶させて頂きます。私、九鬼家従者部隊序列3番。クラウディオ・ネエロと申します。」

 

と、恭しく礼をして挨拶するクラウディオ。

再び何事かと生徒達がクラウディオの方を向く。

そして、クラウディオは従者部隊が紋白の護衛と武士道プランの成功の為に頻繁に現れることを説明した。

そして、クラウディオは今一度、生徒達を見て口を開いた。

 

「そして、その従者部隊の者の中にも義経様同様、武士プランに携わる者がいますのでご紹介いたします。それではこちらへ…。」

 

そう促され、小次郎が出てきてクラウディオの隣に立つ。

その姿を見て女性とから黄色い声が湧き上がる。

小次郎はその反応に少しばかり驚いたが、すぐにいつもの調子で受け流す。

 

「九鬼家従者部隊の佐々木小次郎と申す。クラウディオ殿達同様、私も度々この学園に顔を出すと思うが、よしなにお頼み申す。」

 

と、深々と礼をする小次郎。

すると、ある一点から闘気が自身に向かってくるのを感じた。

小次郎は顔を上げるまでもなく、その持ち主が誰か分かっていた。

そして、顔を上げるとまさしくそれは小次郎の予想通りの生徒が浅きれないほどの闘気を纏いながら笑みを浮かべていた。

 

(やれやれ、本当に血気盛んなことよ…。)

 

と、小次郎はその闘気を受け止めることなく受け流しながら、百代に向かって流し目で笑みを向ける。

すると、百代はそれを挑発と受け取ったのか険しい顔をする。

 

その後、全校集会はつつがなく終了し、生徒達は解散すると各々の教室へと戻っていく。

そんな中でクラウディオが小次郎に話しかける。

 

「如何ですか、小次郎。この学園での生活はやっていけそうですか?」

 

「うむ、皆いい顔をしている。己が務めを全うしながら楽しむとしよう。」

 

「そうですか、それは何よりです。」

 

と、笑顔を見せる小次郎にクラウディオも満足そうに頷いた。

 

「では、小次郎。私は皆様の邪魔にならぬよう、控えていますが貴方はどうしますか?」

 

「うむ…。とりあえずは、私も学生達の学びの邪魔するのは忍びないのだが…?」

 

と、悩むような顔をする小次郎にクラウディオが語りかける。

 

「そうですね。ですが、貴方は説明したように武士道プランの1人として認識されています。ですので、学生の皆様と交流がある方が良いでしょう。授業を受けることは無理でしょうが、学内を散策するのは良いでしょう。」

 

「む、良いのか?」

 

「もちろん、貴方自身が仰っているように学生の皆様の生活に支障をきたすのは厳禁ですがね。」

 

「うむ、承知した。」

 

そうして、小次郎はクラウディオと別れ校舎内へと入っていった。

 

to be continued…

 


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