ソイホンサイド
「んん・・・・あれ・・ここは?」
目が覚めると初めに見たのは天井だった。
背中に柔らかい感触を感じ、体の中を駆け巡る倦怠感を感じながら私は寝ている体を起こす。
上半身だけを起こし辺りを見回す。どうやら私はアクセルの街の病院のベッドで眠っていたらしい。
「私は一体何を・・・」
記憶が混乱している。私は一体なにをしていたんだ・・・?
必死に思い出そうと私は寝起きにも関わらず脳の回転をフル回転させた時。
「お!目が覚めたんだなソイホン」
「ハクヤ」
スライド式の扉から入ってきたのはフルーツを盛り合わせた籠を右手に左手には花束を持っているハクヤだった。
「ハクヤ!私は一体・・」
「まあ落ち着け。まだ起きたばっかなんだ。バナナ剥いてやるから食べろ」
「そこは普通リンゴじゃないのか?」
ハクヤは窓の近くに置いてあった花瓶に持っていた花束を入れて再び窓の近くに置き、ベッドの横に置いてあった椅子に腰かけ籠の中から梨を手に取りナイフを投影して器用に剥き始めた。なんで梨なんだよ。
「もうツッコまないからな」
「なにが」
梨の皮を全て剥き丸裸になった梨をハクヤは丸かじりで食べ始めた。
「それ私へのお土産じゃないの!?」
「はいツッコんだあ!!」
「あ!」
ハクヤがニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべながら私を見てくる。クソウゼええ!!私はベッドから身を出してハクヤを殴りに掛かろうとするが、
バチンッ!!!
「グガッ!!」
私のデコに重い衝撃が走った。その衝撃の勢いでベッドから落ちて頭を床に叩きつけた。
「いたあ・・・」
デコと後頭部を同時に抑えながら私は立ち上がりハクヤを見る。ハクヤは人差し指と親指だけを立てていた。まさか・・・
「さっきのオチョクリと今のデコピンで許してやるよ」
「デ、デコピン・・・・」
デコピンでこの威力って・・・ちょっと反則じゃないのか・・・。
事実デコピンされたデコがジンジンと痛みを伴っている。
「あ・・・・」
「思い出したか」
今のデコピンと頭を打った衝撃で思い出した。
「他の皆は?」
「安心しろ。全員無事だ。今回の戦いで被害を被ったのはお前とマリーだけ。ったくお前よ。思い出したなら分かるよな?お前が周りを見ないで突っ走ったからこんな事になったんだぞ」
珍しくハクヤが怒っている。私にボコボコに殴られても怒らなかったハクヤが・・・。
「ごめんなさい・・・」
俯きながらハクヤに謝る。
そう。あれは・・・。
時は少し遡る。
マリーサイド
「相手は私一人よ。二人まとめて掛かってきなさい」
そう言ったのは魔王軍十二師団第四師団副団長という肩書を持ち、且つモンスターでは珍しい絶滅危惧種に指定されているハーピーだった。両腕は羽。両足は鳥の足。だが胴体と顔は人間の女の形をして人間と同等の知能を持つ希少モンスターだ。
相対するのは二人。片方は黒の胴着を着た凛とした少女ソイホン。もう一人は超絶美少女なこの私。
私とソイホンはこのアクセルの町ではトップクラスの実力を持つ冒険者だ。
「モネと言ったな。私達二人を同時だと?それは少々傲りが過ぎるんじゃないのか?」
完全に舐められている。そう思ったソイホンは半ギレな状態でモネという名前のハーピーに言い返す。
「ソイホン。気持ちは分かるけど相手は副団長クラスだよ。ここは二人掛かりで」
私はソイホンを宥めにかかる。戦闘において一番大事なのは魔力でも特殊能力でも戦闘技術でもない。どんな状況でも最善な選択をするための冷静な判断力なのだ。
半ギレ状態の今のソイホンは冷静ではないと私は気付きソイホンにそう声を掛けたのだが、
「マリー。少し黙ってろ。私は今あいつの所為で非常に機嫌が悪い」
私は額に青筋を浮かべているソイホンを見て冷汗を掻く
ヤバい・・もう完全にキレてる。キレて暴走したソイホンは誰にも手が付けられないのだ。
私が過去に何度かソイホンのマジギレを見た事があるのだが、それはもうヤバい。暴走したソイホンを止める為に自分にハクヤ、コジロウにクーさんが協力してやっと止められるに至る。それほどまでに暴走したソイホンは手が付けられないのだ。
「ソイホン!!冷静になって!」
「マリー!お前は手を出すな!!あの鳥は私が倒す!お前はベルディアを見張っといてくれ!」
そう私に叫ぶとソイホンは一人で駆け出しモネに一騎打ちを仕掛けた。
「相手はこの私だ!!」
「ふふふ。来なさい。力の差を教えてあげるわ」
そしてついに戦いが始まってしまった。
ソイホンVS魔王軍十二師団第四師団副団長モネ