三人称
ソイホンVSモネ
ソイホンは構えて。
モネは翼と鳥足。半鳥半人の姿になって待ち構える。
そしてついにその時は来た。
「いくぞ!!」
「来なさい」
ソイホンはモネ一直線に走り接近した。
「はああ!!」
モネに衝突する2m程手前でソイホンは跳躍してそのまま空中に浮かびながらさらにモネにへと接近する。
一瞬虚を突かれた形となりモネは動揺して目を見開いた。
ソイホンは空中で体を捻じるという荒業を披露してそのまま攻撃に移った。
「フェイストライク!!」
回転して溜めた威力を右足の踵に全て注ぎ込みそのままモネの顔面目掛けて蹴り込む。
「おっと!」
モネは上体を限界まで逸らしてソイホンの蹴りをスレスレで躱した。
「ちっ!」
躱されてわかりやすくイラつくソイホンはそのままモネの後方に着地してさらに追撃。
「グリムゾンカット!」
グリムゾンカット。この技はソイホンの技の中でも1・2を争うほどの殺傷能力を持つ技。右腕の筋肉を操作して指、爪の形状を変える人体操作術。変形したソイホンの指は龍の爪の如く。そしてソイホンの変形した爪は本物の龍の爪を超える斬れ味を持つ兵器へと変貌する。その斬れ味は鉄をも容易く切断する事が出来る。
その『龍の爪』をソイホンはモネの喉目掛けて引っ掻くように繰り出した。
しかし、
「たびら雪。肌刀」
金属音が鳴り響く。
ソイホンの龍の爪はモネには届かず代わりに何かに当たった。
「なんだこれは!」
ソイホンが見たのはモネの翼。
「悪いわね。刃物を使えるのは貴方だけではないの」
ペロリと上唇を舐めるモネ。
モネの翼は羽が一枚一枚が白く光る刃と化していた。
「くっ!」
ソイホンは一旦距離を取る。距離を取った事によりモネの全体像が視界に移る。
首を振り子のように数回動かし音をならすソイホン。瞳にはより一層の怒りが籠っている。
「気持ち悪い鳥だ。さっさと駆除してやる」
両方の翼の羽が白い刃と化しているモネにそう言い吐いた。
「できるものならやってみなさい」
小さな笑みを浮かべながら子バカにした感じでソイホンを挑発するモネ。
「上等だ!テメーを殺した後焼き鳥にして食ってやる!」
ソイホンはまたもやモネ一直線に走りだす。
「雪兎」
そうモネは唱えるとモネの周りの中空に雪で形成された兎が作られた。
「冷えなさい」
その言葉を合図に中空の雪兎はソイホンに向けて発射された。
ソイホンは走りながら飛来してくる雪兎を全て躱す。飛来してくる雪兎のスピードは並の冒険者では目に捉える事も出来ないだろう。しかしソイホンは並ではなく上級の冒険者。これくらいのスピードで飛来してくる物を躱す事は朝飯前である。
「こんなものいくら飛ばそうが私には当たらない!」
雪兎を掻い潜りモネの所までたどり着いたソイホンは再び龍の爪で攻撃するが、
ガキィィィン!!
「ちっ!」
またもや羽が刃と化した翼で防がれる。
「リバーストライク!!」
「ぐっ!」
ソイホンはモネのガードの上から回し蹴りを繰り出しモネを吹き飛ばした。
「(なんて力なの!)」
一度上空に避難して体勢を立て直すモネだがソイホンはそんな猶予を与えるほど優しくはない。
「え!」
かなりの高さまで上昇したモネだがソイホンは力を溜めて跳躍しただけでモネがいる高度までやってきた。
「逃げるなんて寂しいじゃないか」
凶悪な笑みを浮かべているソイホンに一瞬モネは肝を冷やした。
「舐めないで!」
モネは迎え撃つ為に地面を見下ろす体勢になり両方の翼を広げた。まるで何かを包みこもうとするように。
「(何をするつもりだ・・・関係ねえ!!)」
わざわざ攻撃を食らいやすい体勢に変わったモネを訝しんだのも束の間。ソイホンは渾身一撃をモネの腹部に叩き込んだ。
「ベリーストライク!!」
「ガアアッ!」
直撃。ソイホンの右足がモネの腹部に深々と突き刺さる。
口から血を吐きだすモネ。その血がソイホンの顔に付着するが当人はそれを気にも留めない。まるでそれが慣れているかの如く。
「(決まった・・・)」
心の中で確証を得たソイホン。自身の渾身の一撃。しかも相手は空中にいる為衝撃は全てモネの中で爆発する。
自分は副団長クラスの敵に勝った。しかもただの勝ちではない。相手の攻撃は自分には一度も当たらずにだ。
自身の一方的な攻撃だけでの勝利。
つまり圧勝だ。
現実は甘くない。
「ふふ・・」
「なに?」
ソイホンは驚く。
モネが笑った。
口角を少し曲げるだけの簡素な笑みだったが、それでも笑ったのだ。
自分の全力の一撃はモネの腹部に直撃した。確実に効いているはず。しかも奴は吐血もした。これは内臓にダメージが浸透している証拠。
事実ソイホンが最後に放ったのは相手の内蔵を破裂させて絶命に至らしめる技。
一撃必殺なのである。
にもかかわらず。一撃必殺の技を食らった直後に笑ったのだ。
「どうして笑えるんだ貴様・・・・悶絶もんの痛みが走っているはずだが・・・」
「さあ・・・どうしてかしらね」
モネは広げた翼でソイホンを抱きしめるように包んだ。
マリーサイド
「勝った・・・・」
私は無意識にその言葉を口にしていた。
「おお勝ったぞ!!」
「すげえ!!」
「さすがソイホンだ!!」
「やっぱりハクヤの仲間なだけはあるな!」
後ろにいる冒険者達がそう口々に言うが何だろうこのモヤモヤ。
まだ終わってない気がする。
「あっ・・!」
モネの翼がソイホンの体を包んだ。まさか自爆?
「終わったか」
「え・・?」
そう遠くない距離に私達と同じようにモネとソイホンの戦いを静観していたベルディアがそう小さく呟いたのが聞こえたので私は一瞬だが気を取られソイホンとモネを視界から外しベルディアの姿を見た。
その次の瞬間だった。
後ろの冒険者達が揃って叫び声を上げたのは。
「「「「うわああああああ!!!!」」」」
「え!」
私は一度後ろの冒険者達を見た。そしてすぐ視線をソイホンとモネの方へと戻した。
「え?」
私が振り向いたと同時に肉のような物が地面叩きつけられる音が耳に劈いた。
落下したと思われる場所には土煙が舞っていて何が落ちたのかはすぐには分からなかった。でももう一度空を見上げると見えたのは口から出た血で服を汚したモネの姿だけだった。モネは翼を羽ばたかせながら空中に滞在している。同時に何かを見下ろしていた。
「中々手こずらしてくれたわね。」
モネは口に着いた血を拭いながらそんな事を言う。
土煙が止む。やっと何が落ちたのか私にも確認できた。
確認なんてしたくなかった。だってそれは・・・・
「帰るわよベルディア。」
モネが地上に降りてベルディアにそう言う。逃げるのだろう。ダメだ。捕まえなくては。こいつらにはダクネスの呪いを解かせなければならないんだ。
だけど私はそれよりも落下した・・・ソイホンの元へと向かっていた。
「ソイホン!!ソイホン!!」
ソイホンの元へと駆け付けた私は何度もソイホンの名前を叫ぶ。
触れてみる。まるで氷のように冷たい。
肩を叩き意識があるのか確認する。反応なし。
「心臓が止まってる・・・・」
私はソイホンの胸に手を当て確認した。
心臓が止まっている・・・それはすなわち
死んでいるのだ。
モネはベルディアの元へと向かいベルディアはテレポートの類の魔法を使ったのかベルディアの背後の空間が歪む。
「わかりました副団長。そうだ。もう一度言っておく紅魔の娘よ。そのクルセイダーの呪いを解いてほしくば城へ来い。もし俺の所へたどり着く事が出来たのならその呪いを解いてやろう。まあたどり着けたらの話だがな」
そして二人は歪んだ空間に歩を進めようとするが、
「待てよ。」
私は呼び止めた。
「何か用か?」
ベルディアは進むのをやめてこちらを振り向き聞いてくる。
「よくもソイホンを・・・殺してくれたな」
私は今まで感じた事のない怒りを感じながら二人を睨む。だが、
「死んで無いわよ。その子」