ソイホンサイド
「暇だな」
「暇ですね」
「確かに暇だな」
「暇ね」
「暇だ」
上からカズマ、めぐみん、私、マリー、ダクネスの順で皆共通の言葉を呟いた。
「アクア!浄化の方はどうだ!」
「順調よ!」
「あんまり無理するなよ!!トイレ!!行きたくなったら何時でも言えよ!!」
「女神はトイレなんてしないからあああ!!!」
そうカズマの問いにアクアはそう答えた。
「あの調子なら大丈夫そうですね。ちなみに紅魔族もトイレはしませんよ」
「お前らは昔のアイドルか」
アイドル・・・ってなんだ?
「わ、私も・・・く・・クルセイダーだから・・・と・・トイレには・・・うう」
私の隣の隣にいるダクネスが顔を赤くしてモジモジしながら恥ずかしそうに言う。
「ダクネス。対抗しなくていいんだよ。女の子だって出る時は出るんだから」
マリーが優しく声を掛ける。
「ちょ、マリー!」
マリーの言葉でさらに顔を赤くしたダクネスが頭から湯気を出している。どんだけの箱入りなんだよ。
「で、出る時は出る・・・・・」
「なに想像してんだお前。気持ち悪い」
「そ、想像なんてしししてねーし!!」
ゴミを見る目でカズマを見る。
「まあそんなことよりも。もっといいクエストなかったのか」
両手を後頭部に回し私はカズマに尋ねた。
「仕方がないだろ。アクアがどうしてもこれやりたいってうるさいんだ」
そう。今私達・・・いやアクア一人と言った方が正しいか?
アクセルの街から少し離れた湖の浄化クエストを行っているのだ。
その湖の水がかなり汚染されてしまっていて第5級危険指定モンスターのブルーゲルアリゲーターが棲みついてしまったとかなんとか。このモンスターは汚染された水を好む為浄化して水を綺麗にしてしまえば勝手に出て行くため討伐の必要はないという比較的簡単なクエスト。
まあモンスターも限りある命。討伐する必要がないのならそれに越した事はない。
「暇だな」
今の状況を説明すると
まずアクアがモンスターを捕獲する時に使う大き目の檻に入れられたまま湖に浸っている。
これはカズマの案でモンスターに襲われずに安全に作業するためにだとか。まあ確かにあれならモンスターに襲われる心配はないが傍から見れば使えない仲間を湖に不法投棄しにきたようにも見える。
しかしこんな事を考えるとは結構頭はキレるんだな。
そしてアクアを除く私達五人は陸から湖に捨てられ・・・・浄化作業をしているアクアをじっと見守っているという感じだな。
「ねえカズマ。聞きたい事があるんだけど」
「んお?どうしたマリー。」
「アクアって本当に浄化する気あるの?なんか魔法を唱えているようには見えないんだけど」
確かにアクアはただ湖に浸かっているだけで浄化魔法を唱える素振りを一度も見せていない。
「なんかわからないけど本人曰く水の女神だから水に浸かってれば自動的に浄化されるんだって」
「「「「ふーん」」」」
私とマリーだけでなくめぐみんやダクネスも半信半疑と言った感じの声を出した。
「あ、そうだ。俺も幾つか聞きたい事があったんだ」
「ん?なに」
「いや。マリーにじゃなくてめぐみんにだ」
「え?私ですか?」
突然名前を呼ばれためぐみんがカズマの方に顔を向ける。
「めぐみんってさ。いつも自己紹介する時最後に王下七武神って単語を言うよな。それ一体なんなんだ?」
「え?まさかカズマ知らないのか?」
ダクネスが驚きながらそうカズマに聞く。
「まあ前いたところで似たような名前は聞いた事あるんだが・・・その王下七武神ってのは全く知らないな・・・ってなんでお前らそんな珍しい物を見る目で俺を見るんだよ」
「いや。まさか王下七武神を知らないんて思いもしなかったですから。冒険者なら一度は必ず目標にして目指すものですよ」
「そうなのか。んでそれは一体何なんだ?」
めぐみんがカズマに詳しく王下七武神についての説明をし始めた時今度はダクネスが私に聞いて来た。
「なあソイホン。お前にも聞きたい事があるんだが・・・」
「ん?なんだ?」
私はダクネスの顔を見る。綺麗な顔してんなー。
「ああ。あの『解体屋』ジョネスを倒した時の事なんだが、ジョネスを倒した技。あれは一体何なんだ?」
ジョネスを倒した技・・・?・・・・ああ。あれね。
「あ、それ私も気になっていました!目にも止まらぬ速さでジョネスの心臓を抜き取ったあの技!!とてもかっこよかったです!!」
説明が終わったのかめぐみんとカズマも私に聞いてくる。
「あ、それ俺も気になってた。どうやってやったんだ」
3人が興味深々といった眼差しで私を見てくる。しょうがないな。
「あれは技って言うほどのものでもないよ。ただ相手の心臓を抜き取っただけさ。ただ・・」
「「「ただ・・・?」」」
私は右腕の筋肉を操り形状を変えた。私の右腕は『龍の爪』となり五本の指は鋭く針のような形状に変化して腕も血管などが隆起したり筋肉が肥大化したりしている。
「な!なんですか!?」
「右腕がエライ事になってるぞ!」
「これはまさか人体操作術・・・?」
「お!ダクネス正解。こうして筋肉を操作して心臓を取りやすい形状に変えたんだ。私は幼い時から人体操作の修行を受けてたからな。まあ私の故郷に伝わる独自の技術だけどね。それにしてもダクネスよく知ってるな」
「昔の文献を読む機会があってね。そこに似たようなものが書いてあったのを覚えてただけさ。しかし近くで見るとすごいな。なんかこう存在感を感じる」
「確かに・・・迫力はありますよね」
「なあソイホンそれって俺でも覚えられる?」
「確かカズマのクラスは冒険者だったな。残念。これはスキルではないんだ。修行の果てに手にする事が出来る代物だからな。」
「そうか・・・でも羨ましいなその筋肉操作するやつ。」
そして私は腕を元に戻す。
「言っておくがこれは人体操作術の基礎に過ぎない。私の故郷にはとんでもない化け物がいたんだ」
「ジョネスを一撃で倒したソイホンが言う化け物ってどんなやつなんですか・・・?」
めぐみんが驚きながら聞いてくるが・・・あれは・・・。
「悪いなめぐみん。昔の事はあまり思い出したくないんだ。」
「す、すいません。過去を詮索するような事を聞いてしまって・・」
「ふふ。構わないさ」
今頃何しているのかな・・・あいつら・・・・・
私は物思いに耽りながら空を見上げるのだった。