わかる人はわかると思います。
23話です
カズマサイド
カポーン。
という音が合いそうな場所。
「いい湯だ」
頭にタオルを乗せ疲れを癒す場所。
アクセルの公衆浴場に来ていた。
この世界に来た時から毎日通っているこの公衆浴場。湯船は広いし気持ちいいし風呂上りのコーヒー牛乳を飲むのが俺の楽しみの一つとなっている。
「貸し切りだな」
現在この浴場は俺一人の貸し切りになっている状態だ。
普通冒険者はクエストから帰ってくると一番初めに風呂に入るのだ。冒険で体が汚くなるからな。だからほとんどの人は早い時間帯に入ってしまうのだ。普段の俺もそうだ。クエストに行って汚れないで帰ってくるなんて今日を除けば一度もなかったからな。
しかし今日はアクアの浄化クエストのみだった為から体が汚れてはいない。そういうことで俺は夕食が終わった後に来たのだ。まあ後15分もすればここも閉まるからそれまでには出ないとな。
閉店ギリギリまで入っていよう思った俺は暇だったので風呂の中で平泳ぎなどして時間を潰した。
誰もいないからいいよね。
その時この浴場のスライド式の扉がガラガラという音を立てながら開かれた。
俺はそれと同時に泳ぐのをやめて大人しく風呂に浸かる。
「・・・・・・」
再び扉の開閉する時のガラガラという音が浴場に鳴り響き、次に水で濡れた床を歩くヒタヒタという音が聞こえた。
入ってきたのは当然だが男だ。湯気で少し見えにくいが背はかなり高い。おおよそだが190cmほどあるとみた。
その男はシャワーで体を洗い流した後俺が入っているこの浴槽へと歩いてくる。
「んんんんん~~~~いい湯だ♥」
道化のような声を出しながら俺と同じ浴槽に入って来た。
そしてその男は俺の隣1m程の距離に座りながら湯船に浸かる。
チラチラと見ながら俺はその男の容姿を見た。
ムカつく事にかなりのイケメンだった。ミツルギとはまた違ったタイプのイケメンだ。
全てを見透かすような切れ長の目。
筋の通った綺麗な鼻
バキバキに割れた8パックの腹筋。見える所だけを見るとほとんどの所が筋肉という鎧で固められている。
そして特徴的なのはピンク色の髪?いや赤に近いな?少し老いた薔薇のような赤色。
そして目の下には変なマークがある・・・右目の下には水色の星。左目の下には黄色い滴のようなマーク・・・・刺青か?
「んんんん~~?さっきから君。僕の事見てるけどどうかしたのかな♦」
「え!?い、いやな、なんでもないです」
舐めるような視線を浴びせられ風呂に入っているというのに寒気がした。なんだろうこいつ・・・。全くの勘だけど良い奴じゃないな。
「2点・・・♥」
「え?なんか言いました?」
「うんうん。なーにも♠」
嘘だ・・・なんか小さく呟いたよこいつ。でもいいや。
何だかこの人といると怖いので俺はもう風呂から上がる事にした。
「ねえ君♦」
「はいッ!!」
風呂から上がる途中に声を掛けられ不覚にも裏返った声を出してしまった。ここに知り合いがいなくてよかった・・・。
「君は冒険者かい♥」
「え・・・えっとまあそうですね。まだ駆け出しですけど」
「そうか♥一つ聞きたいんだけど君の周りに強い人とかいる?」
「え?それはどうして・・・?」
「いいから答えて♠」
背筋が凍る感覚を覚えた。風呂場にいるのにまるで極寒の地にいるような感覚だ・・・。
ただ睨まれただけなのに・・・・俺は足がすくんで動く事ができなかったが震える体に鞭を打ち俺は口を動かした。
「つ、強い人はいますよ。3人くらい・・・。」
「名前は♥」
睨んだ顔から一気に笑顔になる男。一体何者なんだこいつ・・・?
「えっと・・・名前はマリー、ソイホン、ハクヤ・・・です」
「マリー、ソイホン、ハクヤ・・・・か♥。ありがとう♥」
男は立ち上がり足がすくんで動けない俺の横を悠々と通り。この浴場から出て行った。
全身の力が抜けて俺は浴槽の中に座り込む。
「ハクヤ達の名前言っちゃったけど大丈夫だよね・・・?ハクヤ達は強いし・・・大丈夫な・・はず」
冷たい汗を掻いた所為で俺は再びシャワーを浴びなければならない事に気づいたのはこの浴場が閉まる直前ことだった。