3話です!
『すいません。今日はお休みさせていただきます』
という張り紙がこの店の扉に貼られている。
「今日は休みなのか?」
俺は今この街にあるウィズ魔道具店という店の前に来ている。
ここに今日俺の仲間のマリーが来ているはずなんだが。おかしいな?
あのリッチーことウィズは基本休まず毎日店を開けているはずなのに。まあ開店していたとしても客が来る事はないだろう。あのリッチーは絶望的なまでに商才が皆無なのだ。
詳しく説明すると、いつ使うんだとツッコミたくなるような商品を仕入れたり、この街では需要のない商品ばっかりを置いているのでいつも赤字なのだこの店は。
「まずリッチーがなんでこの街で店なんか出しているんだろう。」
この街では俺や俺の仲間しか知らないと思うがウィズは元魔王軍の幹部らしいのだ。
しかしそのウィズはとても温厚な性格でとても魔王軍に属していたとは思えない。
だから俺も討伐しないではいるのだが・・・・。
「本当にどこにいるんだ?あいつは?」
休みと書いているんだからマリーもウィズもここにはいないはず。
そんな事を考えていた時、遠くの方から轟音のような物が聞こえて来た。
「なんだ?これは?」
耳を澄ますと魔法の音や木々が倒れる音が微かに聞こえてくる。
音の飛んでいた方角を向く。
「この方向は・・・・」
確か少し深めの森があったはずだ。一般の人は遭難の恐れがあるから立ち入り禁止になっているが。
「まさか・・・」
俺は急いでその森に向かう事にした。
ソイホン サイド
「うう・・・頭が痛い・・・」
目を覚ますと酷い頭痛に襲われた。どうやら飲みすぎたようだ。
覚醒して辺りを見回すとここはギルドという事がすぐにわかった。
「あれ?私はなんで・・・ああ思い出した」
そう言えばハクヤと飲んでいたんだ。それで飲みすぎた私は眠ってしまったと。
「ソイホンさん。起きましたか?」
「あ、はい。迷惑かけてすみません」
私に話しかけて来たこの金髪の女性はこのギルドの従業員のルナだ。
いつもいつも朝から晩まで働いてとても偉いと思う。クセのある冒険者の相手をしたり私のような酔っ払いの相手をしたり掃除したり。お疲れ様でーす。
「ハクヤがどこにいったか知ってますか?」
「いえ、ソイホンさんが眠ってしまった後お金を置いてどこかに行ってしまいましたよ」
机に溜まっていた私の涎を拭きながらルナは答える。涎を垂らしながら寝ていたという事実に私は少し自分に引いた。この酒癖をどうにか治したい。
「わかった。ありがとう。私はハクヤとマリーを探してくる。奢ってもらったお礼をしなければ」
「はい。わかりました。今日の夜もお酒は飲まれるのですか?」
「いや・・今日はもう飲まないでおこう。」
また涎を垂らしながら眠ってしまう。
そして私はギルドから出てハクヤ達を探すために歩き出す。
「あいつらは一体どこにいったんだ?」
ハクヤは私を置いてどっか行ってしまう、マリーは朝からいないし。
「ん?」
街を歩いていると町の中心から少し外れた広場についた。その広場は綺麗な緑色をした草が生い茂っていてなんだか心が洗われる感覚を覚える。広場の近くには川が流れて街の人間はそこで釣りなどをしている。
そして私はその広場の中央に点在している大きな木の下に視線を向けた。
その木に寄りかかって座っている男がいた。
私はハクヤ達を探すのを途中で放棄してその男に近づく。
「ここで何をしているんだ?コジロウ。」
「風を感じたくなってな。この些か暖かい風がどうもクセになる。貴様こそ黒夜叉を連れずしてこんな場所で何をしているんだ?ソイホン」
ハクヤの事を黒夜叉と呼ぶこの男。
こいつの名前はコジロウ。この街に住むハクヤの友人の一人だ。
いや友人というのは語弊があるかもしれない。戦友と言った方が正しいか?
「ハクヤを探している途中でお前を見かけてな。まさかこの街に戻っているとは思ってもいなかった。王都からの依頼は完遂したのか?」
「当然だ。そうしなければ王下七武神の称号を剥奪されてしまうからな」
そう言いながら男は立ち上がる。私より頭二つ分高いため私は必然的にこの男を見上げてしまった。
綺麗な濃い青髪を腰辺りにまで延ばし『ワフク』と言われる服を身に着けていて背に刃渡り150㎝はありそうな長刀を携えている。いつも思うのだがそんな長くて実践で使えるのか?
「王下七武神。私には興味がないな。」
王下七武神とはこのべルセルク王国直属の選ばれた七人の冒険者の総称の事だ。その一人がこのコジロウという男だ。
この王下七武神に加入すると様々な特典を得る事が出来る。
例として挙げるとまず金には一生困る事はない。王下七武神は魔王軍に対抗するために作られた組織の事。そのため必然的に圧倒的な強さが求められる。その王国の戦力となってくれる彼らに王国は毎月莫大な金額を支払っている。
その他にも権力や土地なども手に入れる事が出来る。しかしその反面、王国に召集を受けたら必ず王都に赴かなければならない。そしてこの王下七武神とは魔王軍に対抗するために作られた組織。
王国が魔王軍の危機晒された時、命を賭して闘わなければならない。それだけではない。
一級危険指定区域の調査。一級危険指定生物の捕獲や討伐。など割にあわない事ばかりやらされる、いわば王国専用の何でも屋なのだ。
だがそれでも王下七武神の座を求める冒険者が後を絶たない。中には王下七武神になるためだけに冒険者になる者もいるらしい。
「そうでもない。魔王軍に対抗するために作られた組織。ならば属しておけば必然的に魔王軍との手合わせが叶うのだ。私にとってこれほどまでに都合のいい職はない。」
「そんなに魔王軍と戦いたいのか?」
私は疑問に思う。私の知る限りこいつは別に戦闘狂というわけではないのだが。
「ああ。どうしても私自らが倒さなければならない者がいるのだ。」
「誰だ?そいつは?」
「教える義理はない。それよりいいのか?黒夜叉を探していたのではないのか?」
「そうだった。それとハクヤを黒夜叉を呼ぶのをやめてもらおうか。」
私はコジロウを見上げながら睨み付ける。そしてコジロウは私を見下ろす。
「ほう。やめなければどうする気だ?」
綺麗に整った顔を私に近づけ挑発してくる。私はコジロウの蒼い瞳と目を合わせながら。
「少し・・・痛い目を見てもらう」
私は腕の筋肉を操り自分の肘から指先までの形状を変化させた。自分で言うのはあれだが先ほどまで綺麗だった腕が肘から指先までに太い血管が隆起している。そして腕の筋肉が肥大化してまるで男のような腕になっている。指先にある爪もナイフ以上に鋭く切れそうな形状に変化している。
その凶器と化した腕をコジロウに見せつけながら低い声で私は言う。
「いいか?もう金輪際私の前でハクヤの事をその呼称で呼ぶのをやめろ。次私の前で言ったら。」
「どうするのだ?」
コジロウは尚私を小バカにした感じで見下ろしてくる。
「貴様の心臓を抉り取ってやる。わかったな?」
一瞬の沈黙。
「ふう・・わかった。そなたのような美しい少女とは争いたくない。ここは私が引くとしよう。」
「最初からそうしてればいいんだ」
私は自分の腕を元の状態に戻す。
「それとコジロウ。貴様気づいているか?」
「もちろんだ。近くの古城だろう?」
「十分だ」
そして私はコジロウに背を向けて走り出した。ハクヤの所に。