5話です!
ハクヤサイド
「ねえハクヤ。ソイホンはどこにいるの?」
「わからない。でもあいつの事だから大丈夫だろ。」
ソイホンがいなくなってから一週間が経った。三日目くらいから少し心配しだしたが探すのがめんどくさくなり、俺はもうギルドでマリーと一緒にお酒を飲んでいる。ちなみにこの国では飲酒による年齢制限がないため十四歳のマリーも、もう酒は飲めるのだ。
「一週間前って言ったら私とウィズが暗黒の森で修行していた時だよね?」
「う~ん・・・そうだっけ?」
酒が回ってなんだか気分が高揚としてきた俺は何だかそんなめんどくさい事を考えるのも嫌になる。
「警察に捜索願いでも出すか」
「それはダメです。ソイホンがとても可哀そう」
「もーいいじゃねーかそれで。多分ソイホンは自分探しの旅にでも出たんだよ。あいつも年頃の乙女だからな。地元から飛び出したくもなるさ。」
「自分探しの旅って何!?てかソイホンアクセル出身じゃないからね!」
的確にマリーはツッコミを入れてくる。さすがパーティーで一番の常識人だ。いや俺とソイホンも常識はあるよ?ただなんというかマリーが真面目過ぎるのかな?あー・・なんだか眠くなってきたな。
「おいマリー。俺は少し寝るから。適当な時間に起こしてくれ」
「昼間から酒飲んで酔っ払って惰眠を貪るなんて、本当にダメ人間ですね」
「まあいいじゃねえか。ソイホンもいないし。今日は休みにしようぜ。」
俺のダメ人間っぷりにマリーはゴミ虫を見るで俺を見てくる。だが、
「はあ・・・わかりました。じゃあ私も今日は休日とさせていただきます。久しぶりに洋服店にでも行こうかな」
「そうだそうだ。お前は可愛いんだからもっといろんな服を着た方がいいぞ」
ちなみにマリーの服装は王都でしか売られていない『ゴスロリ』とかいう服を身に着けている。一言で言うとメイド服に酷似した服だな。気に入っているのか最近はこのゴスロリ以外を着ている所を見た事無い。もっとこいつとソイホンはいろんな服を着た方がいいと思う。折角可愛いんだし。
「私が可愛いなんて当然の事じゃないですか。何を言っているんですかハクヤ」
「前言撤回。お前はやっぱり可愛げなんて微塵の欠片もねえ」
自分で自分を可愛いという人は嫌いだ。まあ仲間だから心底嫌いにはなれないが。もう少し謙虚になれこのバカ。
「まあとにかく今日は自由にさせてもらいます。ソイホンもその内帰ってくるでしょうし。」
「そうだな。あ、あと魔王城に住み着いている奴らの詳しい情報が手に入ったぞ」
「え?本当に?」
「ああ」
マリーは気になるのか俺に近づいて来る。そして俺の隣に座り小さな声で話す。
「八王じゃないですよね?」
「ああ。さすがにこんな街に最高戦力はこねーよ」
八王。それは魔王軍の中でも頭一つ抜けた戦闘力を持つ八人の幹部の総称。こちら側で言えば王下七武神のような物だ。
その八人の幹部。八王は魔王軍の最高戦力と言われているほどこちら側つまり人間側から恐れられているのだ。
「多分今の俺でも八王に勝てるかどうかは怪しい所だな。王下七武神の奴らでも良くて相打ちと言ったところか?」
「そんな・・・」
マリーは怖いのか顔を蒼白とさせている。だが、
「大丈夫だマリー。確かに今の俺たちじゃ太刀打ちできないと思う。なら力をつければいい。そのためにウィズと修行していたんだろ」
「うん・・・」
慰めるがマリーはどこか浮かない表情だ。仕方がない。
「マリー・・・もっと自分に自信を持てよ。」
「・・・・・・」
マリーは答えない。自分に自信が持てないのか。俺は椅子から立ち上がり腕を組む。そして座っているマリーを見下ろす。
「自信がないなら今以上に・・いや俺以上に強くなってみろ。そんなんじゃ一生お前の望みなんて叶わない。」
喝を入れたつもりなんだが・・・・それでも尚マリーは俯いたままだ。こいつ体術や筋力だけなら俺とソイホン以上なのだがメンタルが本当に弱い。これからの為にも今の内にこいつの精神を鍛えてやらないと。
「俺はソイホンを探してくる。お前は自分でどうしたいのかよーく考えろ。」
そして俺は机に金を置いてギルドをでる。
俺はしばらく歩き街外れにある喫茶店に来た。この店を常連としている奴に会うために。
そして店に入る。内装はとても綺麗で客が少ない所為かとても静寂としている。
そして店の奥の席で本を片手にコーヒーを優雅に飲む男いた。
そして俺はその男に近づく。俺の存在に気づいた男は右手に持っていたカップをテーブルに置き俺の方を見る。
「おやおや。ここに私がいる事を誰かに聞いたのか?」
「お前がこの店によく来ている事は誰もが知ってるよ」
「それは知らなかったな。私も有名になったものだな」
「王下七武神の一人なんだ。知名度が上がるのは必然だと思うが?」
「それもそうだな。所で私に何の用だ?黒夜叉」
「俺をその名で呼ぶのをやめろコジロウ。」
「ふっ、同じような事を貴様の仲間にも言われたぞ」
「ソイホンか。お前ソイホンがどこにいるのか知ってるか?今あいつ迷子なんだ」
こいつは王下七武神の中でも一番の情報通なのだ。理由は一番こいつが王下七武神の中でも言う事を素直に聞くらしいからだ。その結果魔王軍の情報収集などもこいつに依頼される事が多い。近くの古城のやつも王国から依頼があり調査したみたいだ。そしてその調査が終わりこの街に帰って来た。
「私が最後にあったのは一週間も前の事だ。ソイホンが今どこで何をしているかなど私は知らない。私が貴様に教える事が出来る情報は近くの古城に住む魔王軍の事だけだ。しかしそれも貴様にすでに教えたはずだ。それにもかかわらず私のもとに来るとは、教えた内容を忘れてしまったのか?」
こいつの悪い所。話の所々にムカつく言い回しをしてくる事。ちょっとイラっときたから俺も少し反発口調になる。
「なわけねーだろ。単純にソイホンがどこにいるかを聞きにきただけだ。まあ知らないならいい。俺は帰る」
「そうか。では帰る前に私は貴様に聞きたい事がある。」
「なんだ。魔王軍の情報を教えてくれた礼に一つだけ答えてやる。」
「そうか。なら一つだけ。」
「早く聞け。俺はソイホンを探しにいきたいんだ」
「何故王下七武神を抜けた?」
一瞬の沈黙。俺はソファーに座っているコジロウに向けて殺気を込めた視線を送る。
「お前には関係のない事だろ」
そう言うと俺はコジロウに背を向け店を出ようとした時、
「ヨミが原因か?」
そうコジロウが口にした瞬間この喫茶店内に鼓膜が破れそうな程大きな金属音が鳴り響いた。
俺とコジロウ以外の数人の客と店員は自分の鼓膜を守るために反射的に耳を塞ぐ。
「・・・・・・」
俺は剣を作り出し常人には目視不可能なほどの速さでコジロウに横薙ぎを繰り出していたがコジロウは自分の長刀を鞘から数センチ出した状態で俺の剣を受け止めていた。
ガチガチと剣と刀が鍔ぜり合う音が店内に響き渡る。
「言葉に気を付けろよ。戦友だからって俺の逆鱗に触れれば容赦はしない」
コジロウは無表情のまま俺の剣を受け止めている。だが今の不意打ちに反応できた事には賞賛を送らざるを得ないと内心思っている自分がいる。
「すまかったハクヤ。私もふざけが過ぎたようだ。」
コジロウの謝罪に満足した俺はゆっくりと力を緩める。そして剣と刀が離れ俺は一歩下がる。剣を解除して再びコジロウに背を向ける。
「古城にいるのは魔王軍十二師団のどの師団だっけか?」
「第四師団だ。副団長ベルディアの存在を確認したから間違いない。」
「そうか。ありがとよ」
そして俺は振り返らず店を出た。
そのままギルドに向けて歩き出す。街を歩いているとクエストから帰って来たのか体が汚れている冒険者をちらほらと見かける。
『ヨミが原因か?』
ちッ・・・考えないようにしていたのにコジロウの奴。
俺は珍しく不機嫌になりながらギルドに繋がる道を一人歩いて行った。