Infinite Dendrogram-蒼い瞳の刀使いー 作:びーびー
時間は大分とびとびになる予定です。ご了承ください。
ザ・サード(第二形態)
≪風のままに≫周囲15メートルの『気』を感知する。(パッシブ効果)
≪蒼い光≫体内の『気』を武器に通すことができる。(SP消費)
「って言われてもね……?」
最初の戦いから大分経ってホノカのレベルも30を超えエンブリオが1段階進化したころ、コルタナの街を歩きながら自身のエンブリオの説明を読み直していた。
「もっとこう、具体的に書いてほしいもんだね」
とは言え現時点、使えないわけではないので別段困ることもない。
謎の多いエンブリオであるがそれでもその有用性は抜群である。第二形態になって範囲が広がった『気』を感知できる力のおかげか最初の戦いのように奇襲を受けることはなく、武器に『気』を通すことでホノカの未刀は同レベル帯では無類の切れ味を誇っていた。(形態が進化してもホノカのエンブリオはバンダナのままだったが)
「ノル爺もわかんないって言ってたしなー」
そもそも『気』とは何なのか。エンブリオが発現し、街に戻ってきてからホノカは調べてみたが全く判明しなかった。夜が明けてからノルのもとを訪れ聞いてみたがあまり芳しい返事は得られずじまいだった。唯一聞けたことは彼曰く、黄河帝国の方で似たような言葉を聞いたことがあるとのことだけだった。
「まぁいいか。使えるもんは使えばいいわけだし」
この世界に来てから何度目かになる思考を一言で切って捨てる。結局的には自分に有用であれば難しい理論はあまり気にしない彼女らしい言葉であった。
「ほのちゃーん」
考え事をしながら歩いていたせいか、もう待ち合わせ場所が近づいていた。自分より先に待ち合わせ場所についていたらしい相手に片手をあげて答える。
「早いね、ミリィ」
「ザンカンさんの変わりだもん。遅れられないよ」
そう答えて待ち合わせの相手、ミリアムは朗らかに笑う。
彼女こそがホノカの持つ未刀を作ったマスターであり、ザンカンの弟子のミリアムだった。身長はホノカより低く、見た目もまさに幼いという言葉が似合う容姿をしていた彼女はその見た目通り実年齢も若い。しかし彼女がこのゲームを始めたのはゲーム発売と同時であり、その幼い容姿に似合わずゲームのプレイ時間はホノカより大分長く、総レベルもホノカを大きく上回っていた。
ザンカンの紹介で知り合った二人だが、妙に馬が合い今では互いに愛称で呼び合うようになっていた。もっともホノカはほのちゃんと呼ばれることにいまだ慣れてはいないが。
「じゃあ、これ。預かっていた刀だよ」
「うん、ありがとミリィ」
ホノカは先ほどまで刀を携帯していなかった。
ホノカのエンブリオの二つ目のスキル≪蒼い光≫は圧倒的な切れ味を誇るが、刀に気を通すことで生じる耐久度の減少は大きなものがあった。ザンカンの紹介でミリアムに出会ったホノカはフレンド登録をした後、定期的にミリアムに刀の研ぎを依頼していた。
「刃こぼれはないのに耐久値が減ってるなんて、不思議だね」
「あたしにもわかんないけどね」
そう言いながらホノカはミリアムから刀を受け取り、すらりと刀を抜き刀身に目を落とす。
「……ん、いい腕だね相変わらず」
「天地に行ってまで修行したからね」
ミリアムはホノカの賞賛に小さな胸をそらせて喜ぶ。普段はザンカンのもとで技術者の修行をするミリアムだがたまに興味の湧いたものを習得しにどこかへいなくなってしまうことがあった。ホノカとザンカンが初めて会った時もミリアムは刀鍛冶の技術を習得しに天地へと旅に出ていた。
「ふぅ……」
刀を鞘に戻し、ミリアムを食事に誘おうとしたホノカは、覗うようにホノカの顔を見るミリアムに気が付く。
「ミリィ?」
「あのね、ほのちゃん。お願いがあるの」
ミリアムが差し出してきたのはザンカンからホノカに宛てた手紙だった。はて、と首をかしげながら手紙を受け取りホノカはその中身に目を通す。
「ザンカンさんが一人じゃダメだって、ほのちゃん……一緒に行こう?」
手紙にはミリアムが最近発見された先々期文明の遺跡行きたがっていること。その遺跡が砂漠の真ん中に在り戦闘職ではないミリアムが向かうには危険すぎること。できれば護衛としてホノカがついていってほしいことが書かれていた。
「でもミリィ、最近発見されたとはいえ遺跡なんてもう他のマスターとかの手が入ってて何にもないんじゃないの?」
「わかんないけど……行ってみたいの!」
だって遺跡だよ、と理由になっているのかわからないようなことを言うミリィにホノカは笑いながら両手を上げる。ホノカ自身遺跡というものには興味があるし、ほかならぬザンカンとミリアムの頼みだ。そもそも断る理由などホノカにはどこにもなく、それゆえにホノカの答えは決まっていた。
「おーらい。それじゃあ行こうよ、ミリィ。その遺跡ってのにさ」
ホノカの答えを聞いた瞬間ミリアムは弾けるような笑顔を浮かべてホノカに飛びつく。かなり勢いをつけて飛びついてきたミリアムを回転しながら受け止めホノカも負けじと笑みを返す。
「ありがと、ほのちゃん!」
「いーよ、あたしも行ってみたいしね」
そう笑い合って二人は遺跡までの計画を話し始める。
照り付ける日差しの中で遺跡までの足や消耗品、食事や水分など必要なことについて話し合う彼女たちの話し声は砂漠の街の喧騒にかき消されていく。
読んでいただきありがとうございます。
というわけでミリィの登場です。いろいろと設定が原作と違うので注意してください。
ちなみにこの物語のもう一人の主人公的なポジションの予定です。
感想等お待ちしております。