あくいろ!   作:輪音

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この悪魔異録『あくいろ!』は『デビルサマナー ソウルハッカーズ』と『真・女神転生デビルサマナー』の世界観を土台として、真・女神転生各種やペルソナ各種の世界観も含有しています。
多身合体系混成仕様となりますので乱痴気に見えるかもしれませんが、ご容赦いただけましたら幸いです。
物語の進行はゆっくりめで、日常生活が基本の予定となります。
主人公とファントムソサエティを繋ぐ存在には、マヨーネを起用しました。
イタリア語で検索をかけるとマヨーネは苗字で出てきましたため、新たに名前を付けています。
ちなみに御立派様と主人公との繋がりは信仰心で、エロいことが目的ではなかったのですけれども、結果的にエロい力を得ました。

『メガテン』を知らない方も読める作品が目標です。
それでは、どうぞ。
コンゴトモヨロシク。




屍鬼アリス

 

「おなごとまぐわうのだっ! その命尽き果てるまでまぐわうのだっ! そして産めよ増やせよ! 儂が許すっ! このマーラの名にかけてっ! 我が金魔羅宮(かなまらのみや)の敬虔なる信徒よっ! 毎日儂を拝む信徒よっ! 煩悩にまみれ、我欲を満たすがよいっ! お主がまぐわったおなごの数は少なすぎる! 回数も少なすぎる! 儂を毎日拝みながら、なんという体たらく! イカン! イカン! イカせなければイカン! エレクチオンじゃ! お主はその根っこをエレクチオンして、おなごを何人も歓喜せしめ昇天させるのじゃ! お主はこれより愛の尖兵! 異論は許さぬ! ヤれ! ヤるのじゃ!」

 

眠っていた筈なのに、明確に感じる世界。

ああ、これが明晰夢というやつなんだな。

眼前には緑色の御立派な姿に口や手足の付いた存在が、古代の戦車みたいな四輪の乗り物に鎮座している。

もしかして、彼がオレの崇める神になるのか?

毎日拝んでいる、裏庭の社の神様なのか?

神というよりも魔の存在に見えるのだが。

 

「お主には大いなる性愛の力を与えよう! お主の求めるおなごは皆簡単に陥落し、尽き果てぬ力故にあらゆるおなごはお主に満足するのだっ! 如何なるおなごも歓喜して昇天すること間違いなし! これこそ二者両得! 気に入った娘たちを皆惚れさせ、次々に妻とするがよい!  そして、オマケに敵を火に弱き札へと変え、すべてを燃やし尽くす異能を与えようっ! これに耐えられる者はなかなかおるまいて! ぬははっ!」

「それ、現実にやったら犯罪です。」

「なん……じゃと……? お主の世界ではおなごを愛することもろくに出来ぬのかっ? なんと理不尽なっ!」

「理不尽なのは、あなたの方です。」

「ほほう、このマーラにそのような口がきけるとは、流石儂の見込んだニンゲンよ。よし、その度胸に免じてこの娘を預けよう!」

「ちょっと待ってください! この子は可愛いですけど、いろんな意味で不味い!」

「くくく、悩むがよい悩むがよい。それもまた真理。」

「恰好いい台詞ですが、訳が全然わかりません!」

「ではさらばじゃ、ニンゲン! また会おうぞ!」

「あの! ちょっと!」

 

オレの傍には少女がいる。

そんじょそこらじゃ見かけないような、綺麗な娘だ。

あと五、六年経ったら最盛期を迎えるだろう美少女。

 

「屍鬼(しき)アリスよ。今後ともよろしくね、ニンゲン。」

「は、はあ、よろしくお願いします。」

 

青いワンピースを着た、金髪碧眼の白人系美少女。

よくわからんのだが、彼女は人間じゃないらしい。

 

「ホントはあんたくらいの力じゃあたしを制御出来ないんだけど、魔王から直々に頼まれたとあっては致し方ないわ。手助けしてあげるから、感謝しなさい。」

「ありがとうございます。」

 

そこで意識が途絶える。

訳のわからない展開だ。

 

目が醒めたらば、隣でアリスが寝ていた。

なんてこったい。

急いで下着を確認したが、大丈夫だった。

ほっとする。

ヤバい性癖は覚醒していないようだ。

 

今日も今日とてハローワーク。

明日は明日で再就職への活動。

なかなか仕事が見つからない。

うぐぅ。

 

気分転換にと、彼女を伴って街歩きする。

ここ神奈川県平崎市は古墳時代から豪族が治めていた場所で、戦国時代には北条氏や今川氏などが激戦を重ねたという。

江戸時代は秦野氏がずっと穏健に治めた。

そのお陰で独自の文化が花開き、それは今も伝統を受け継いだ人々によって豊かに根付いている。

矢来羊羮と蒲鉾と海の幸と旨い酒が名物。

そんな街だ。

アリスは物珍しいのか、辺りをきょろきょろ眺めていた。

こうしていると、無邪気な女の子にしか見えないんだよ。

で、だ。

なんだか自意識過剰かもしれないが、女性たちからちらちら見られている気がする。

オレがモテる?

まさかな!

あれは夢。

単なる夢。

三〇代半ばの冴えないおっさんがモテるなんて、そんなご都合展開などある訳無い。

なんかムラムラするが、気のせいだ。

何回でも問題無いようにさえ感じる。

気のせい、気のせい。

みんな、気のせいだ。

臨海公園で無邪気に走り回るアリスを見ながら長椅子に座っていると、美人が目の前に現れた。

なんだか、いい香りがする。

ヤバい。

ヤバい。

オレの中の魔獣が勃起する。

 

「お隣、よろしくて?」

「え、ええ、どうぞ。」

 

帽子をかぶった、ゴスロリ仕様の娘さん。

着ているものが、なんだかとても高そう。

何故かもじもじしながら話しかけてきた。

 

「あの。」

「はい。」

「イタリアはお好きですかしら?」

「え、ええ、いいと思いますよ。」

「その、ぶしつけですが、お仕事はなにをしていらっしゃいます?」

「お恥ずかしながら、今は就職活動中の身でして。」

「あら、でしたら、好都合ですわ。」

「好都合、ですか?」

「私たちの会社では、現在有能な人材を求めていますの。」

 

私の手を握りながら説得してくる娘さん。

建物調査や害虫駆除などが主業務らしい。

 

「私、アマーリア・マヨーネと申しますの。是非とも、我が社に就職してください。私が全面的にあなたを支援しますわ。面接なんてまだるっこしい。即採用です。そうですわ、いいホテルを知っていますの。そこでゆっくりこれからのことをお話しませんか?」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします、マヨーネさん。その、ホテルはですね、あの子がいますので今日はちょっと……。」

「アマーリア、とお呼びください。ではまた今度、お一人で私の住むマンションにお越しくださいね。」

「あ、その、考えておきます。」

「あなたなら、大歓迎ですわ。」

 

電話番号とメールアドレスを交換し、彼女は名刺と封筒をくれた。

近々お電話しますので、とまるで名残惜しそうに去ってゆく彼女。

戻ってきたアリスから、何故だかげしげしと蹴られた。

痛い、痛い。

 

なんだったんだ、今のは。

封筒の中身は現金だった。

かなり入っている。

ヤバい仕事の人に目を付けられたのか?

 

「あの女、サマナーね。」

「サマナー?」

「あんたと同業の悪魔召喚師ってこと。」

「悪魔召喚師? お伽噺みたいですね。」

「あたしが、お伽噺の存在に見えるの?」

「う~ん、とても美少女に見えますな。」

「な、な、な、なにを言っているのよ!」

「本当は人間じゃないんですか、アリスさんは。」

「ムッキー! ニンゲンにニンゲン呼ばわりされた!」

「怒った美少女も風情がありますね。美しいことは、利点が多いものです。」

「う、う、あんた、ホントにモテないの? なんだかジゴロみたいだけど。」

「オレは、嘉納治五郎みたいな柔道の達人じゃありませんよ。」

「誰がボケろと言ったのよ!」

「それはおいといて、ご飯を食べに行きませんか?」

「その前に、あんたを丸かじりしてやろうかしら。」

「煮ても焼いても喰えませんよ。」

「そういう鬼の像があるわよね。」

 

取り敢えず、アリスと一緒にキリノハモールへと出掛けた。

ここは平崎市最大の地域密着系大型商業施設で、癖のある地元の名店が幾つも軒を連ねている。

よし、今日はラーメンしらいしへ行くとしよう。

臨時収入があったし、ここは奮発するか。

時刻は夕刻で店内はけっこう混んでいる。

カウンター席にオレたちは並んで座った。

アリスは物珍しそうにきょろきょろしている。

 

「豚骨こってりばりかた野菜多めとドミカツ丼普通、それに餃子三人前ください。あと、彼女用に小皿をひとつ。」

「あいよ。」

 

昔間諜をしていたと自称する女性主人に注文した。

いかん、普段はなにも感じないのに何故か今日は彼女にムラムラする。

汗ばむうなじにドキドキした。

シャツの隙間からちらちら見えるブラに、ドギマギする。

これは不味いんじゃないかな?

 

「おや、あんた、ちょっと見ない内にいい男になったじゃないか。ふふふ。」

「そ、そうですか?」

「パリで別れた、諜報員の恋人を思い出すよ。」

「ねーねー、サマナー。さっきのドミカツ丼ってなに? 豚骨こってりばりかたってなに?」

「あー、このお嬢ちゃんはうちが初めてなんだね。ドミカツ丼てのはうちの裏献立のひとつでね、豚カツと湯通ししたキャベツを載せたご飯の上にドミグラスソースをかけたもんさ。豚骨こってりばりかたってのはね、濃厚豚骨拉麺の麺固めだよ。」

「へえ、じゃあ、あたしはドミカツ丼にする。」

「あいよ。ちょっくら待ってな。その間にこれでも食べておくれ。自家製の浅漬けさ。」

「ありがとうございます。」

 

小声でアリスに話しかける。

 

「あの、アリスさん。」

「なーに?」

「今更ですが、普通に食事は出来るんですか?」

「出来るわよ。エナジーの吸収効率は今一つだけどね。」

 

調理の合間に、主人がこちらをちらちら見ている。

やはり、勘違いではなさそうだ。

 

「はいよ、ご注文の品一丁上がり。」

 

主人が、常連らしい会社員になにか熱心に話しかけている。

最初戸惑った様子だった彼が、手を握られて赤面していた。

 

客が入れ替わり立ち替わりしてゆく店内。

右隣の席にチンピラっぽい若者が座った。

着席と同時に彼は素早く簡潔に注文する。

 

「カツ丼。」

「はいよ。」

 

手慣れた感じだ。

 

「おい、お前。」

 

話しかけられ、顔をそちらに向ける。

 

「なんで仲魔をこんなとこに連れてきてやがる?」

 

ナカマ?

 

「あんたには関係無いでしょ。」

 

オレ越しにアリスが男へ言った。

 

「ふん、そんな高位の奴を連れ回していたら、あっという間にマグネタイトが尽きるぞ。」

「おあいにくさま。そんなことにはならないから。」

 

マグネタイト?

なんだそりゃ?

 

「カツ丼、お待ち。」

「おう。ん? なんだか今日はとっても色っぽいな、女将。」

「あはは、口説いてもダメだよ。今夜は先約があるからね。」

 

カツ丼を豪快に食べ始める男。

またこちらに話しかけてきた。

 

「いいことを教えてやる。」

「いいこと?」

「悪魔を信用するな。人間も信用するな。信用出来るのは自分自身だけだ。」

「はあ。」

 

おしんこを噛み砕き赤出汁の味噌汁をくいっと飲み干し丼を手早くかっこんだ彼は、すいと立ち上がる。

 

「女将、勘定。釣りはいらねえ。」

「いいのかい?」

「これで相手に精のつくもんでも喰わしてやんな。」

「じゃあ、お言葉に甘えてそうさせてもらおうか。今度来た時は、オマケしてあげるよ。」

「期待してるぜ。」

 

彼はくるっとオレを見て言った。

 

「じゃあな、あばよ。」

 

 

その後の帰宅途中、学生やら会社員やらから声をかけられて大変だった。

アリスから何度も蹴られて脛が痛い。

オレは一体、どうなるんだろう?

 

 

 

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