今回は短めです。
姉様の朝は早い。
割烹着を装備し学食で朝食の準備をしている姿は、勇ましく凛々しく美しい。
撮影係の下僕さんも気合い十分だ。
姉様の隣で作業出来ることは私の誉れ。
快楽。
今朝の献立。
コカトリスの骨を出汁に使った、野菜たっぷりの濃厚目覚ましスープ。
学校周辺に生えていた香草とオーク肉の薫製を使った、しゃきしゃきサラダ。
滋養に富んだ蓮根とひじきの煮付け。
武田牛乳の素晴らしき低温殺菌牛乳。
甘くないふんわりフレンチトースト。
地元産林檎をそのまま搾った果汁水。
「さあ、這いつくばって食べなさい、下僕ども。」
嗚呼、姉様は朝からとても素敵です。
本当に這いつくばってしまう子ばかりなので、彼女たちを起こして食べさせる。
姉様ってほんと、お茶目。
くくく、と邪悪に笑った姉様も素敵。
「佳那子は貢献度が高いから、特別にあげるわ。大いに感謝しなさい。」
「このアルフレッド、感謝の極み。」
「よきにはからえ。」
「ははあ。」
姉様手製の、プリンと葛餅と信玄餅の武田コーヒーアイス添えをいただく。
山梨県といえば武田牛乳。
姉様も納得の素敵な牛乳。
ところで、ここの製品に描かれている可愛い象さんの名前はなんて言うのかしら?
姉様。
姉様。
嗚呼、このまま時間が止まってしまえばいいのに。
水信玄餅を一緒に食べることが出来たらいいのに。
先日の平崎市四川町(しせんまち)に於けるドンパチで、李さんという料理人を助けた。
彼はそのことを大変恩義に思ってくれたらしく、店に来たらいつでもご馳走してくれると言ってくれた。
四川町は平崎市内のミニ中華街とも言える場所で、地元民に親しまれる名店が多い。
その中の『天龍(てぃえんろん)』が彼の店で、観光客や地元民でいつも立て込んでいる。
最近は朝から李さんがわざわざ我が家を訪れ、台所で朝食作りに励んでくれることも多い。
義理堅いことで御座る。
今朝は中華粥だ。
鶏で出汁を取った卵粥。
薬味が七種類もあった。
甘辛く煮た蓮根。
梅干し。
蒸し鶏。
肉味噌。
炒り豆。
椎茸の煮物。
干し海老。
これらの具材を粥に入れて食べる。
マリーさんや仲魔たちとわしわし食べる。
李さんは悪魔のことを既に先日の事件で知っているため、ピクシーを隠す必要も無い。
ありがたい、ありがたい。
丁寧な仕事が窺える上品な味わいは、様々な人々を魅了して止まない。
中華料理の有名店やホテルの料理長などから、現在進行形でしばしば勧誘されるのも頷ける程の腕前だ。
四川町の誇る名料理人の一人なのだ、彼は。
素晴らしきかな、平崎市。
宮内庁管理部大膳(だいぜん)課古式食品研究室。
室長並びに室員二名の計三名という少数精鋭部署。
その室長やマヨーネさんと共に、マニトゥ平崎一階にあるハイネセンで即席の品評会へと参加する。
先日連続失踪事件のあった山梨県立八重瀬高校の食品研究会が作り出した食材を基に、ここで調理したものを食べて寸評するのだ。
しかし何故、オレが選ばれたのだろう?
……まっ、いっか。
猪や鹿の薫製を使ったジビエ料理に、本葛粉を使った葛餅。
甘葛(あまづら)を使った饅頭。
室長の鷹司(たかつかさ)さんは品のある穏やかな感じのおじさんで、興味深そうに料理を咀嚼している。
全国津々浦々を尋ねては、質のよい食材や腕のよい料理人を求めているとか。
そして眼鏡に叶ったら審査を通し、基準点に達した人物を推挙するとの話だ。
宮内庁の目であり耳であり鼻であるとも言われる、練達の調査員。
その頭目と目される彼は、やさしく微笑みながら古式ゆかしき製法の旨みに舌鼓を打っていた。
夕食の時間となり、李さんの『天龍』に寄った。
満面の笑顔で出迎えてくれる名料理人。
今夜の献立が達筆で書かれた紙を見る。
山椒蒸し鶏。
塩揚げの落花生。
胡瓜のピリ辛和え物。
玉子のスープ。
酢豚に青椒肉絲に魚の蒸し煮。
焼きそばにご飯。
とどめは杏仁豆腐。
むふぅ。
なんとも旨そうな献立。
仲魔たちも嬉しそうだ。
さあ、食べるぞ。