あくいろ!   作:輪音

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特務機関ニャルフ

 

 

 

ふう。

やっぱり歳上のお姉さんはいいよね。

太陽が黄色い。少しやり過ぎたかな?

昨夜のことを思い出しながらニタニタしつつ伯父さんの家に帰ると、仁王立ちした鬼神が待ち構えていた。

 

「シンイチ! こっちに来い!」

 

僕は説教の五月雨撃ちを喰らいまくった。

怒られたついでに、ずっと音信不通だった父さんからの手紙を渡された。

……なんで、けろけろケロッピなんだよ。

可愛いじゃないか。

一言、『来い。』とだけ便箋に書かれていた。

……勿体ない使い方しやがって。

一枚の写真が手紙に同封されていた。

胸部を強調した美人のお姉さんが写っている。

なんだ、これ?

……もしかして、アブナイ人なのかな?

伯父さんに手紙を見せると、しばし沈黙してしまった。

まあ、そうなるよね。

 

「行くのか?」

 

伯父さんがぽつりと言った。

 

「ええ、行かないとイケない気がするんです。」

「お前が関係した女性たちとは、ちゃんと話を付けるんだぞ。」

「わかっていますって。」

「まったく、誰に似たのやら。」

 

僕はお姉さんたちと話を付け、新天地へと旅立つ準備を進めた。

呼び出されて刃物を突き付けられたり、いろいろあったけど大丈夫大丈夫僕は大丈夫。

 

 

 

神奈川県足柄下郡箱根町。

そこに、特務機関ニャルフの本拠がある。

バブルの頃に羽振りのよかった企業が建設した、大きな工場の成れの果て。

そこが、浪漫野郎たちの夢の在処らしい。

ところどころ錆びた鉄筋が剥き出しになっていて、現在絶讚修繕中らしい。

 

戦時中に計画された『第二新東京市開発計画』は長野県長野市松代町が舞台だったけど、現在秘密裡に計画中とニャルフの人たちがのたまう『第三新東京市開発計画』はここ箱根町が舞台だ。

なお、箱根町観光協会はノリノリな模様。

ニャルフは秘密機関でもなんでもなくて、日常的に大学工学部の博士や学生が出入りする場所となっている。

厨二魂を持つ人々の誘蛾灯。

それが特務機関ニャルフだ。

猫の肉球めいた紋章が目印。

にゃんこ好きが多いのかな。

神奈川県平崎市に、ファントムソサエティという組織があるそうだ。

そこから胡散臭い関西弁を話すスリル博士がちょくちょくやって来ては、ここの手伝いをしてくれている。

かなり気さくな人で、僕も普通に話す。

忙しい忙しいと、いつもぼやいている。

父さんと違って根っから明るいので、やりやすいのがいい。

父さんは根が暗くてネガティブでぼそぼそ喋るから、あまり好印象ではない。

あれじゃ就職活動しても、余程のことが無い限りは採用してくれないだろう。

組織には本当に調整役がいるんだって、つくづく学ばされている今日この頃。

 

陸上自衛隊特務試験中隊から出向している香都羅一等陸尉は相当な美人だけど、僕から言わせると残念美人だ。

発言がちょっと以上にすっとんきょうであるし、抱きつかれてムフームフーとされたらかなりこわい。

やっぱり、もう少し落ち着いた感じの人がいいな。

 

 

赤井博士とスリル博士が、擬似体験型操縦装置を弄っている。

将来的には、身長五〇メートル超えの人造人間的汎用決戦兵器を生み出すつもりらしい。

それ、無理じゃね?

その頭部だけは出来上がっていた。

形があるのと無いのとでは、まるで話が違う。

それが、彼らの夢の根拠のひとつ。

中に潜り込んで、架空の敵に向かって架空の銃を撃ちまくる。

銃、というよりも大砲だよね。

将来、巨大且つ強大な敵が来ると学者の人たちは信じている。

シュリーマンみたいな感じなのかもしれないけど、誇大妄想みたいな感じがしないてもない。

 

 

ニャルフの収入源のひとつに、箱根及び近隣の食材を用いた喫茶店経営がある。

今流行りの異世界風で、店内では売れない役者の人たちが寸劇を演じてくれる。

メイド喫茶や執事喫茶を超える勢力になるだろうと、皮算用をする人さえいた。

政府からの金だけでは意外とカツカツの模様なので、これらは致し方ないのだ。

僕らはたまにそこで給仕活動を行い、お金儲けにいそしむ。

神奈川県平崎市と横浜市に一号店・二号店があり、東京都内にも店舗を構える予定らしい。

何故なんちゃって異世界風なのかと猫耳を着けながら父さんに聞いたら、自分が好きだからと言われた。

そこで照れるなよ。

やはり、父さんには教育が必要だ。

もう既に手遅れな気もするけれど。

赤井博士に、父さんのあることないことを吹き込んでおこう。

 

 

普段から、まともなものをろくに食べていないニャルフの研究員たち。

即席麺とか仕出し弁当が殆どだ。

もっと食うことを大切にしろよ。

腹がいっぱいになったらそれで充分て、どこの中世風異世界生活水準なんだ。

重箱作戦で彼らの胃袋を攻略していたら、スリル博士が僕に話しかけてきた。

 

「キミも大変やなあ。あないなア……やのうて、浪漫衆に囲まれてもうて。」

「技術的な面に限って言えば、割と価値があるんじゃないですか?」

「まあなあ。ロボット工学的には大きな影響もあるから、仕方なしに手伝どうとるんや。もうホンマ、助手が一ダースは欲しいとこやで。」

 

博士も随分気苦労しているみたいだ。

手作りのバナナカステラをあげたら、大いに喜ばれた。

しっとり白餡にふっくらのカステラ生地。

旨いぞお。

 

 

やれやれ。

本日もようやっと、実験が片付いた。

学業との両立をさせなきゃいけない。

これって、けっこう大変なんだよな。

体にぴったりしたプラグスーツを、苦労しながら脱いでゆく。

これってウェットスーツみたいなものたから、着脱が大変だ。

まっぱになって解放感とたかぶりを感じたので、欲望のままに自家発電しようとしたら可愛い仲間からどつかれた。

うん、その容赦の無さがいい。

彼女はまだ脱ぎきっていない。

全部脱いじゃえばいいのにな。

同僚の綾波が青いウィッグを外した。

同じ学年で無口な女の子。美少女だ。

髪を青く染めて欲しいとの要望があったそうだが、傷んでしまうのでイヤですと彼女にきっぱり断られ、提案者たちは付け毛で妥協したのだった。

彼女も彼女で、けっこう苦労させられているらしい。

今度、手作りで自慢のプリンを食べさせてあげよう。

 

「今夜はなにを作ってくれるの?」

 

期待した目で僕を見つめてくる。

これぞ、愉悦。

綾波の胃袋は既に僕のモノだぜ。

くくく。

勝ったな。

 

「そうだ、麻婆豆腐なんてどうかな?」

「愉悦系はダメよ。あれは辛すぎる。」

「うん、あれはちょっとダメだった。」

 

父さんは赤井博士と同棲しているので、僕との同居を頑なに拒んだ。

毎晩励んでいるんですね、わかります。

いろいろとヤバいものがあるみたいだ。

今度いきなりガサ入れしてみようかな。

という訳で、僕は綾波と同居している。

北上ストアで食料を買い込んで、料理を作る。

新婚さんみたいだ。

まだ中学生だから、結婚出来ないけどね。

僕としては、歳上のお姉さんの方がいいんだけどな。

あ、でも香都羅さんは論外だ。

もっとこう、なんていうか、癒し系エロスなお姉さんがいいんだよね、僕としては。

きびきびしたお仕事出来る姉貴系が悪いって訳じゃないんだけど、癒し系のいやらし系にビンビン反応してしまう僕はそういうお姉さんと夜戦をしたいのだ。

そういえば、こないだコンビニエンスストアにいた鹿島ってお姉さんはとっても可愛かったな。

あの子に頼んでみようか。

 

 

悪魔が街に出てきたとか建物を占拠して悪魔使いに討伐されたとか、妙な噂話が中学校でも飛び交っている。

スリル博士に何気なく話を振ってみたら、なんだか微妙な顔をしていた。

もしかして、なにか知っている?

まさか、本当に悪魔がいるんじゃ……。

いやいや、まさかな。

ええと、まあいいや。

 

 

ニャルフで働くと、お賃金が発生する。

資金を貯めて、スローライフするんだ。

それが、僕の当面の老後に於ける目標。

今度、ここの実験のために、ドイツから女の子が来日するという話を聞いた。

大変だなあ。

ドイツ料理でも覚えようかな。

綾波も喜んでくれるだろうか。

玉葱のパイやバウムクーヘン。

よし、実験台はニャルフの人。

さあ、みんな太らせてやんよ。

くくく。

待ってろ、ドイツ美少女。

君の胃袋も僕のモノだぜ。

 

おはぎをせっせと作りながら、僕は夢想する。

巨大ロボットで悪に対して無双する展開を夢見る人々へ、支援物資を提供する。

政府が支援の打ち切りをしない限り、立場は安心安全だ。

親方日の丸万歳。

 

 

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