あくいろ!   作:輪音

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※一人称を『私』から『オレ』に訂正しました【二〇一八〇八一五】。



東京洗脳塔

 

 

江戸下町方面の押上駅近くに存在するスカイツリーは、都民へ毒電波をじゃんじゃん発振する洗脳塔として建設されたそうだ。

一般市民には全然まったくこれっぽっちも知らされていないが、東京タワーも長らく洗脳塔として都民を洗脳しまくってきた。

旧洗脳塔の老朽化に伴い、新洗脳塔はその後継者たるべく毎日都民の海馬やら小脳やらに悪影響をかなり及ぼしているという。

都民でたまに地方の人々を見下したり誹謗中傷したり虚仮(こけ)にしたり貶(おとし)めたりするようなつまらぬ人がいるのは、この洗脳効果によるものであるとか。

 

その昔、世良田三四郎とかいう男が「セガ・サターン、シロ!」と叫びながらこの洗脳塔へ突撃をかましたらしい。

彼に従う、何名かの酔狂な愛しさとせつなさと心強さに満ちた者たちと共に。

彼らのその後の詳細はわかっていない。

だが、彼らの志は伝わっているらしい。

 

とある都知事が長らくその立場を維持出来たのは、この洗脳塔の出力を限界近くまで上げていたからだと聞いた。

それで、あんなにも長いことやりたい放題やらかしていられたのか。

妄執のエロ老人は苛烈にやり過ぎて、東京洗脳塔の機器はその寿命を著しく縮めた。

結果的によかったというべきか、なんというべきか。

人を人とも思わぬ権威主義的悪質系老知事は、機器の不調に伴って知事を辞任する。

理由は高齢化のためと言ってはいるが、権力乱用も公費乱用も大好きな彼が大人しく自ら退任する訳などない。

一説によると亡霊たちから散々激しく脅されたという都市伝説めいた話まで、まことしやかに囁かれたという。

 

スカイツリーや東京タワーの悪影響を特によく受けているのが報道関係者、政治家、芸能人たち。

次いで、テレビ番組にちょくちょく出演している有名人たち。

放送局は毒電波を増幅するための支援施設なのが、その理由。

彼らはこぞって常識良識理性判断力を狂わされ、赤坂の料亭で悪企みしたり裸踊りしたり野球拳したり部下に酷いことをしたり女の子とあんなことやこんなことをしたりしている。

それであんなにも酷いのか。

各界権力者たちと癒着の限りを尽くし腐敗の密林をさ迷うマスメディアの人々は毒電波の影響もあって、ろくでなしであるピューリッツァーの名を冠した賞の行方に興味津々だ。

ろくでなしを誉めるということは、彼らもろくでなしの系譜に従う存在なのだろう。

おそらくは。

 

 

その毒電波塔が悪魔に占拠され、異界化しているという。

平崎市内にあるファントムソサエティの事務所に呼ばれたオレは、マヨーネさんから指示を受け取った。

相変わらず調度品がとても豪華だ。

来る度になにかしら変わっている。

マヨーネさんは大金持ちなのだな。

 

「今回は合同作戦になります。」

 

彼女の後ろにある壁には、大変高級そうな散弾銃が三挺掛けられている。

いずれも繊細精緻な彫刻が施されていた。

 

「今回は、そちらの銃を使われるんですか?」

「悪くはありませんけど、別にゾンビを倒しに行く訳ではありませんから。」

「そう言えばゾンビ好きですね、アメリカの方々は。」

「アメリカ人と言えば、ゾンビ、ハンバーガー、バニーガールですからね。」

「ところで、そこにある散弾銃ってけっこう高いんですか?」

「そうですわね、一挺でちょっとした車が買えますかしら。」

 

なんとも、お高いんだなあ。

 

 

アリス、ピクシー、マリーさん、ハコクルマ、エンジェルの五名を連れ、外装はイタリアで内装は日本という伊日合作車に乗ってスカイツリーへと向かう。

やがて悪魔が占拠している洗脳塔に到着。

マヨーネさんは男前の仲魔たちを引き連れていた。

彼女は高そうな傘を持っている。

あれが武器なのだろうか?

もしかして仕込み傘かな?

いつもの革ジャン仕様なキャロル・Aや、よその地域を担当するサマナーたちも集結していた。

 

オレの隊は裏手から突入し、動力室へ向かう流れ。

他は、上を目指したり別のところを目指すらしい。

現れる悪魔なんてみんな殺しちまえばいいんだ、と不穏な発言をする若いサマナーがいる。

彼の仲魔は首輪を付けていた。

支配力強化のアイテムだとか。

彼は、他のサマナーや悪魔たちから白い目で見られている。

平然としている彼は、肝っ玉が太いなあ。

彼は小口径の軍用小銃を持ち、沢山の弾倉を腰のベルトに差していた。

 

洗脳塔の攻略が始まった。

出会う悪魔たちは皆好意的で、平和的に会話しながら異界を踏破してゆく。

 

「相変わらず、訳わかんないくらいに悪魔と相性がいいわね。」

 

あきれた声のアリス。

そういうもんかね?

 

案外あっさりと動力室に到着。

罠も見当たらなかったし、準備不足だったのだろうか?

 

「「「うらめしやあ。」」」

 

三体の敵対者が出現する。

 

「あれは、『ユリアとミキヤともう一人』! えっと、あのギタリストはスピーディー! 三名全員揃っているわね。」

 

ピクシーが叫ぶ。

途端。

なんだか彼らがぴかぴか輝き出した。

えらくふっくらした体格の女性歌手。

キーボードを有したイケメンぽい人。

口がスピーカーになったギタリスト。

 

「知っているんですか、ピクシーさん?」

「一世を風靡した楽団よ 。今は昔の話だけどね。」

 

なんだか彼らは落ち込み出した。

音楽に詳しくないオレにはよくわからない。

 

「ええと、どこかで聞いたことがあるような……。」

 

記憶の底を漁ってみる。

 

「昔の有名人よ。覚えている人がいるかもしれないけど、とっくに忘れ去られた芸能人たちね。」

 

彼らは一層落ち込んでゆく。

透き通った体の怨霊群。

かつてアイドルやアーティストだった者たちの成れの果て。

ひそひそと話し合う怨霊群。

頷く彼ら。

気を取り直したような彼ら。

どうやら立ち直ったらしい。

きりっとした表情で、こちらを睨み付ける。

 

「あたしの歌を聴くのよ!」

「ボクの超絶トランスミュージックで、文字通りトランスするがいいさ。」

「プオーッ! プオーッ!」

 

そこへハコクルマが自身の箱車を牽(ひ)いて、もーれつに突進してゆく。

ア太郎!

 

「先ずは先制攻撃! あたしの暴れまくりを喰らいやがれ!」

「「「ぎゃあっ!」」」

 

その三名の前に、妖精と昇降機案内娘が立ちはだかる。

詠唱は殆ど終わっていた。

 

「「さあ、お喰らいなさいな、メギドラオン!」」

「「「ぎゃあっ!!」」」

無属性系熱核型広範囲攻撃呪文二連撃が、三名の怨霊を燃焼させる。

それはまさに、オーバーナイト・センセーション。

 

「これでも喰らえ!」

「「「ぐああっ!」」」

 

アリスのなんだかよくわからない呪文。

彼女によると由緒正しい攻撃魔法とか。

「我らに敵対せし、愚かにして悪しきものよ、滅するがいい! ハマ!」

「ぎゃあっ!」

 

エンジェルが気合いを込めた、破魔の呪文を唱える。

 

スピーディーがユリアを庇(かば)い、その名の通りに素早く透き通った姿を消滅させゆく。

 

「スピーディー!?」

「お前、ユリアのことを!? 」

「プオーッ! プオーッ! プオーッ!」

 

なんだか、感動的に見えなくもない情景が展開される。

そして残るはあと二体。

両名はきりっとこちらを睨む。

揺らめく姿。

最後の意地でなにかやる気だ。

だが、残念ながら。

こちらの熱核系攻撃呪文の詠唱は、既に殆ど終わっていた。

 

「「とどめのメギドラオン!」」

「「ぎゃあああっ!」」

 

ピクシーとマリーさんの攻撃呪文が、ふらふらの彼らを直撃する。

 

「ユリア……。」

「ミキヤ……。」

 

抱き合いながら、彼らは消えてゆく。

笑顔を見せながら。

きらきらと。

きらきらと。

 

 

 

マヨーネさんから通信が入り、洗脳塔攻略へ加わるように言われる。

了解して、動力室の異界が消えたのを確認してから上層を目指した。

洗脳機械が置かれている部屋を発見。

ついでに洗脳装置を破壊しておこう。

ぼかぼかぼかぼかぼかぼかぼかぼか。

 

 

 

最終地点に到着した時、既に戦いの火蓋は切られていた。

 

「あれは、オルゴン・ゴーストの強者!」

「知っているんですか、ピクシーさん?」

「ええ、これまでの戦い方によってこいつは強くなったり弱くなったりするの! でも、おかしいわね。使役している怨霊群を通じて、あいつはエナジーを吸収していた筈なのに。」

「オノレ……セラタサンシロウカラウケタキズサエカンチシテオレバ……キサマラナドヒトヒネリナモノヲ……。」

「はははっ! 悪魔死ぬべし!」

 

叫んで銃撃していたサマナーが一瞬の隙を突かれてオルゴンゴーストに囚われ、瞬く間に精気を吸い尽くされた。

それはまさに、あっという間の出来事だった。

彼はあの、現れた悪魔を皆殺しにしていいと放言した人物ではないか。

木乃伊(ミイラ)のように干からびて、彼はドサリと倒れてしまった。

そして全身にヒビが入り、体は粉々になって溶ける如く消滅してゆく。

 

「あれはエナジードレイン!」

「知っているんですか、ピクシーさん?」

「本来のオルゴンゴーストにあんな力は無い筈……まさか、なんらかの事態を経て進化したとでも言うの!?」

「な、なんだってー!」

「一斉射撃しなさい!」

 

マヨーネさんの檄が飛ぶ。

咄嗟に照準を合わせて、三〇口径の軍用銃弾を撃ってゆく。

スイス製の小銃から放たれた銅弾がびしばし当たってゆく。

マヨーネさんは傘に散弾銃を仕込んでいたようで、それをばっつんばっつん撃っていた。

仲魔たちもどんどん攻撃魔法をぶっ放してゆく。

苦悶の声を上げる怪異。

一隊だけならば苦戦したやも知れぬが、複数の攻撃集団による猛烈な攻撃を続けざまに受けたのだ。

たまったものではなかろう。

程なく、オルゴンゴーストは討伐された。

 

 

そして、新洗脳塔はその洗脳機械の破壊という大きな代償の末に異界からこちらの世界へと戻ってきたのである。

東京タワーの洗脳装置もいつの間にか誰かに破壊されたそうで、今は作られていない部品が沢山あるから復旧は困難だとか。

いやー、なんともたいへんだなー。

 

マーラ様は特になにも言っていないから大丈夫だろう。

 

めでたしめでたし。

とっぺんぱらり。

 

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