あくいろ!   作:輪音

29 / 52


※一人称を『私』から『オレ』に訂正しました【二〇一八〇八一五、二〇一九〇一二三】。



威霊アリラト

 

 

 

「悪魔との契約は、極めて慎重に行わなければなりません。」

 

青い部屋で、黒い服の男はそう言った。

 

「悪魔が契約者の寝首を掻くということは、契約に不備があるからです。」

 

契約……ええと、ちゃんと契約した悪魔なんていなかったような……あれ?

それって、とっても不味いのか?

マーラ様はオレならば大丈夫って言っていたが、今度会えたら聞いてみよう。

 

 

 

背広姿の異相の男性と会話した後、何故か大興奮しているバロウズと電脳仮想商店街を散策する。

真っ白なドレスを着た真っ白な彼女と腕を組んで歩いた。

彼女は鼻血まで出している。

なんとも演出が細かいなあ。

映像で我々を見ているスリル博士が呆れている。

しかし、変だ。

オレが青い部屋にいた時、スリル博士もバロウズもオレを認識出来なかったという。

そして、博士によると『青い部屋』などといった場所の設定は行われていないとか。

謎だ。

 

 

王国屋はロクロウというなんとなく怪しげな眼鏡を掛けた男性が管理している店で、メッチーという電脳ペットを主に扱っている。

そのペットに彼は噛み付かれているが……あ、喰われた。

…………。

ええと。

店の裏の顔は悪魔市場となっていて、生体マグネタイトや電子決済などによって仲魔を得ることが可能だ。

世の中、金と人脈やね。

バロウズの助言に従い、強力な悪魔を数体購入。

電子の海をたゆたう悪魔ってなんだか不思議な気分にもなるが、こういうのは当たり前になるのかな?

生体マグネタイトならば沢山あるぜよ!

ドリーカドモンに喰わせると、強い造魔が出来るらしい。

成長のさせ方によって形が変わるとか。

 

 

 

マヨーネさんのところへ顔を出すと、難しそうな仕事を提示された。

クズノハという組織が悪魔の討伐に失敗したそうで、それの後始末だという。

本来はその組織が始末する筈だったが、術者が悪魔に裏切られたのだそうな。

しかも、その悪魔は現在逃亡中らしい。

なにそれこわい。

しかもクズノハは別作戦に注力していて、戦力がそちらに回せないのだとか。

それでこちらにお鉢が回ってきたのか。

マヨーネさんが不機嫌で皮肉げな顔をしているので、嫌々受けたのがよくわかる。

ちなみにショッカーが二名の怪人と戦闘員二隊を率いさせてその悪魔にぶつけたらしいが、呆気なく短時間で全滅したそうな。

……それ、めちゃめちゃ強い悪魔なんじゃないのかな?

え?

オレと仲魔とで撃破?

それは無理でしょう。

他に適切な人がいるのでは?

元拳闘家とか神父みたいな人とか。

 

 

結局、人手不足とのことで斥候的な偵察をすることになった。

 

 

とある関東圏山中の廃工場へ侵入した。

エモニカスーツとバロウズの相性も悪くないようだ。

バロウズが興奮しているのが難点かな。

初陣で興奮するのはわかるが自重しろ。

そう言ったら悄気(しょげ)るかもしれないし、女性の扱いは難しい。

それとなく注意したら、わかってくれたようだ。

反応に従って索敵し、程なく現れた広い空間。

その中心部に、宙に浮いた黒い石柱が見える。

なんだ、ありゃ。

あ、見つかった。

肩に乗ったピクシーが叫ぶ。

 

「威霊アリラト!」

「知っているんですか、ピクシーさん?」

「めちゃめちゃ高位の悪魔よ! こんなところに出てくる筈無いのに!」

「えええ……。」

「私にいい考えがあります。」

 

バロウズが言った。

途端、周囲が妖気に満ちてくる。

異界化か!

 

「ウソだーっ!」

 

ピクシーが叫んだ。

飛んでくる冷気を避けて走り回り、三〇口径の小銃弾をバシバシ撃つ。

きちんと当たってはいるものの、攻撃が効いたようには到底見えない。

 

「体当たりが効かない!」

 

突撃を敢行したハコクルマが叫ぶ。

 

「アタタタタタタタッ!」

 

アリスが無数の拳を放つけれども、効いていないみたいだ。

 

「喰らいなさいな、メギドラオン!」

 

マリーさんが熱核系攻撃呪文を唱える。

が、煙が晴れても相手は無傷に見えた。

 

「あれは暗黒ヤング伝説!」

 

ピクシーが叫んだ瞬間、アリラトから放たれた激しい凍気にさらされる。

 

「メ・ディア!」

 

エンジェルが全体系治癒呪文を唱えた。

 

状況は極めて不利。

逃走は難しい現状。

バロウズが叫んだ。

 

「強制脳波同調完了! これより強制多身合体作業に移行する! レッツ! コンバイン! 出でよ、無敵鋼魔! セカイを破壊し得る力をその身に備えよ! あらゆる悪魔に負けぬ力を! ミーアのような愛の力を! さあ、ご主人様、そのドリーカドモンをアレに向かって投げてください!」

「は、はい。」

 

言われた通りに、人形をぶん投げる。

それは中空でぴたりと停止した。

アリラトが攻撃を仕掛けるものの、無効化しているみたいだ。

ドリーカドモンの胴体部分が徐々に左右へと開いてゆき、中から何本もの光る触手が現れて強大な悪魔に絡み付いてゆく。

高位悪魔はそれを振り払おうとしているのだが、何故か上手くいかないようだ。

光の渦が発生している。

購入した悪魔たちはバロウズによって現界した後に、ポイポイと無造作にその渦の中へと送り込まれる。

……なんだか扱いが酷くないかな?

 

「天秤の理(ことわり)に基づき、貴方たちはご主人様の下僕となって愉悦を感じるがいい!」

 

なんだか妙なことを言っている。

姿が朧気(おぼろげ)になってゆくアリラトや、王国屋で買い求めた悪魔たち。

複雑な魔方陣が彼らの下に展開し、外周の輪がくるくる回転していた。

悪魔たちはいずれもぐにゃぐにゃの粘土状になって、なにかの力でも加えられたのかぐにんぐにんと混ぜられてゆく。

廃工場に隠れていたらしい悪魔たちも光の渦に吸い寄せられ、次々粘土状になっては捏ねられていった。

それぞれが合体してまた別の悪魔になり、そしてまたすぐに合体して別の悪魔へと変化してゆく。

それはちょっとした悪魔博覧会だった。

最後にアリラトとなんだか強そうな悪魔たちが合体し、ドリーカドモンの中へ吸い込まれてゆく。

バロウズが更にその中へ、なにかの欠片や部品めいたものを投入していった。

料理を行うみたいに。

案外自由だな、この擬似人格。

やがて、光に満ちるドリーカドモンとアリラトと悪魔たちの混成体。

そして、強い光に満たされる。

チン、と高い音が響いてきた。

現れたのはメカメカしい造魔。

頭部と胴体と翼から成る魔物。

 

「出来ました、ご主人様!」

 

晴れ晴れとした声のバロウズ。

ドン引き状態の我が仲魔たち。

 

「ワタシ……ハ……ニケー……コンゴトモ……ヨロシク。」

 

『勝利のニケー』の像に似たメカっぽい造魔が、途切れ途切れにそう言った。

 

「……あらあら? こんな合体結果は知りませんわ。」

 

呟くバロウズ。

えええ。

これは酷いぞ。

これは特殊な合体結果なのか?

 

「ワタシ……ゴシュジンサマ……ノ……タメニ……テキヲ……タオス。」

「無理はしないでくださいね。」

 

ついつい頭を撫でてしまった。

 

「うわあ、サマナーがまた女悪魔殺ししている。」

「いつも通りね。」

 

ピクシーとアリスがなにか酷いことを言って、他の悪魔たちが頷いている。

風評被害ですがな。

エンジェルとニケーが、いつの間にかなにやら熱心熱烈に話し合っていた。

 

ええと、これにて一件落着!

そういうことにしておこう。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。