あくいろ!   作:輪音

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地響きを立て襲い来る悪魔大軍団
仲魔たちと共に立ち向かうひなびたおっさんサマナーに
ゾンビちゃんたちの心の叫びは届くのか

『せからしか! 校舎の果ては死の世界の一丁目!! (前編)』

お前はもう、死んでいる






※今回は少しばかりお下品になってしまいました。後編は現在執筆中ですが、こちらも少々お下品になりそうです。
独自解釈がちょっこし多いこともあわせまして、皆様にお詫び申し上げます。


マーラ様が出てくる時点で、シリアスは遠のいてゆくことが確定するのです。




せからしか! 校舎の果ては死の世界の一丁目!! (前編)

 

 

 

 

 

孤独な魂が交わりあう

そこはイクサバ

欠けたモノたちの交流センター

サバイバーたちが屍山血河を築き上げ

ヒトもアクマも

等しく炎にくべられ

溶け合い

許しあい

愛に燃え

そして

皆虚無に至る

 

あとには

なにも残らない

 

 

 

 

 

「炎よ、励起せよ! 怒張すべし! 猛るべし! 怒れ盛れ、炎よ! 我が道塞ぐ敵をことごとく焼き尽くすべし! さあ、喰らうがいい! 魔羅羅犠陀淫(マララギダイン)!」

 

オレの主神のマーラ様が叫んだ。

嗚呼っ、魔王様っ!

烈火の魔炎が周囲にいた魔物大軍団を漏れなく包み込む。

悲鳴を上げる暇(いとま)さえ与えず、数多の悪魔たちはその姿を現世から消していった。

僅かな欠片(かけら)さえも残さずに。

漂うマグネタイトの残滓(ざんし)はすべて魔王様の元へ降り注ぎ、当然の如くに吸い込まれてゆく。

頭の方から、ちゅるちゅると。

 

「ぬははっ! バッキバキじゃあっ! 最近暴れ足りなんだでの。これこそ好機! むっ。なにやら強き魔の力を向こうに感じるぞ。あれは魔王とも戦えそうな輝きの暴れんボーイ! ぬうっ! あの者が、あの者こそが儂の戦うべき相手! むう、新手が来おったか。よかろう、たんと喰らえ、至高の魔弾! ううっ、うっ!」

 

魔王様が手にしたちっちゃな二丁拳銃から放たれた無数の弾は続いて殺到した悪魔たちへと無慈悲に降り注ぎ、彼らを容赦なく撃ち抜いてゆく。

 

「たっぷり出してやろう! 因陀羅光子魚雷発射口全門解放! 発射! 発射! 発射! 発射! 発射! 発射! 発射! 発射! うっ! ふう。次弾装填準備。くくく、まだまだたっぷり出してやるから、お前らも存分にイクがいい。因陀羅光子魚雷発射口、再度全門解放。」

 

光の塊が板野サーカスのごとき軌道を描いて、あちこちで炸裂する。

一発で複数の悪魔が吹き飛んでいった。

おそるべき威力だ。

悲鳴を上げて消滅する悪魔が続出した。

図体の大半を失い、それでもなお刃を向けるが次弾を喰らって爆砕する悪魔。

近づけば至高の魔弾。

離れても、光子魚雷。

軍勢はあっという間に瓦解し、総崩れになってゆく。

向かってくるモノ。

敗走し始めるモノ。

混乱してゆく戦場。

知的なモノも、勇敢なモノも、狡猾なモノも、怠惰なモノも、臆病なモノも、等しく魔女の鍋にくべられる。

逃走する悪魔にも容赦なく光子魚雷はぶつかり、すぐさま生命活動を停止させた。

指揮官らしい悪魔が何発もの光子魚雷を防ぎながら側近らしき手勢と共にマーラ様へ突撃してゆくけれど、魔羅羅犠陀淫をまともに浴びてあっけなく蒸発してゆく。

阿鼻叫喚の渦巻く戦場を支配する魔王様。

とても楽しそうに見える、極太のその姿。

炎に照らされ、赤黒く狂暴な姿で嗤った。

 

「ぐはは! 滅せよ! 滅せよ! 高ぶれ、我が魔羅! 我が魔羅に貫けぬものなし! 目覚めよ、セブンセンシズ! たまらんくらいに! 我は無敵! 我は一騎当千! イクぞ、ここの暴れんボーイよっ! 我が熱く猛き一撃を喰らうまでは、絶対に生きておるのだぞ! そして儂の糧となるがよいっ! ぐははっ! いざ、参らん! イカせてみせようぞ!」

 

車輪がぎゅるんぎゅるんと音立てて、ハイパーモーターチャージャーでも積んでいるかのような四輪戦車に乗ったマーラ様は勢いよく、どろどろと黒い気配濃き場所へと猛突進していった。

なんとも派手な御方よ。

まさにやりたい放題だ。

おそるべし、御立派様。

 

 

 

 

オレはここに来る前のことを思い出す。

マニトゥ平崎で、仕事前の打ち合わせが行われた時のことを。

フリーダムな召喚師の多い、ファントムソサエティの面々が集まった時のことを。

 

「新宿区飯田橋にある軽子坂(かるこざか)高校とその敷地内が異界化したので、皆さんにこれを調査し攻略してもらいたいのです。また、原因究明並びに原因の撃破もしくは封印も行って欲しいと西氏が望んでいます。」

 

マヨーネさんに呼び出されたかと思ったら、おつかいクエストとボス戦に参加して欲しいみたいなことを言われた。

オレは防御を兼ねて言ってみる。

 

「勿論調査はしますし、原因究明も頑張ります。しかし、原因の撃破や封印はちょっと……。」

「弱気は禁物ですわ。私たちファントムソサエティの大義と意義と存在価値を高めることが、今作戦の主目的でもありますのよ。結果によっては特別手当てもはずみますので、期待してください。嗚呼、私も異界へ突入したいくらいです。」

 

うっとりとした表情で、妖しく微笑むマヨーネさん。

少しこわい。

防御はほんのり失敗したようだ。

傍(かたわ)らのリーゼント男が、オレの肩をぽんぽん叩いてきた。

 

「気楽にいこうぜ、気楽によ。なあ、おっさん。俺もそろそろおっさんだけどな。あはは。」

 

少しむさい感じのジャンパー男がリーゼント男をいさめる。

 

「キャロル・A。慢心は禁物だ。」

「かてえなあ、宇良江はよ。あれ、パチもん神父のエイミスはどこに行った?」

「あいつはとっくに現場へ向かった。今頃は異界で暴れまわっている頃かな。」

「はあ? あの筋肉脳筋魔人、なに考えてんの? 班編成とか突入方向とか人員の割り振りとか事前打ち合わせとか、ヤる前にやることは幾つもあるだろうがよ。」

「あれは、前からああだ。あきらめろ。あれが我々の歩調に合わせるつもりなど、毛筋ほどもないさ。そのうち、身を滅ぼさないといいのだが。」

「あーゆー奴はよ、大抵、やべえ時にやべえことすらわからないままお陀仏になんのよ。自信と慢心は表裏一体だから、どーしよーもないわな。」

「お前は楽観的だと思うぞ。」

「宇良江は悲観的過ぎんのよ。奥さんともっと話し合うべきだな。」

「ふっ、言われるまでもない。」

 

マヨーネさんが机の上に置いていた資料の表紙に『シュヴァルツバースの発生確率と軽子坂高校の異界化の関連性に関する考察』と手書きの文字が見えたけど、あれはスリル博士の筆跡だったような……。

ところで、シュヴァルツバースってなに?

 

 

 

 

現場に到着した。

遠近法の歪んだような、なにか禍々しい雰囲気の『異界』が見える。

大門が三つに、小さな門が幾つか。

我々を誘っているみたいだ。

糧にするつもりか、もしくは同志にでもする気か。

周辺の人々は何事もないかのように、現場付近を通り過ぎてゆく。

なんらかの認識阻害がかけられているのか?

強力な魔力をここからでも感じる。

あそこへ、行かねばならないのか。

やだなー。

でもどげんとせんといかんのだ。

我々はぞろぞろと歩いていった。

偽装用の工事車輌が周辺をふさいで、人々が入れないようにしている。

天幕が張られていて、突入する隊の人員がそこにぞろぞろと集まった。

無所属系の人々もぼちぼちやって来る。

なんだか違法集会みたいだ。

 

うちのエイミス神父みたいに、現在の時点で既に異界へ突入している人も複数いるという。

そうした人員に対しては基本的に救済措置がなく、自己責任でやるならご自由にとのこと。

 

今回の作戦にはクズノハやヤタガラスといった老舗退魔組織の精鋭、メシア教やテルス教がそれぞれ所有する自慢の実戦部隊、陸上自衛隊の特科魔戦中隊第一小隊、それにショッカーを含めた秘密結社の怪人や戦闘員も複数参加する。

一時的にいわゆる『紳士協定』を結ぶことによって共闘もどきで異界とその主に立ち向かう訳だが、必ずしも助け合いが発生するとは限らないだろう。

特にメシア教とテルス教は普段から対立していて犬猿の仲だし、現在も離れた場所で待機している。

小競り合いが起きていないだけマシというべきか?

大規模な異界が発生している以上、短期終息が行われない場合、日常生活に異常が多く発生するようになってしまうそうだ。

異界がじわじわと我々の普段の生活へ侵食してゆき、どんどん壊してゆくのか。

ゾッとする話だ。

目の前の異界が拡大する懸念さえあるとのことで、強力な戦闘部隊を複数投入することで早期的沈静化が図られる見通しだ。

上手くいくのかなー。

上手くいって欲しい。

 

我がファントムソサエティからはエイミス神父、キャロル・A、宇良江、スリル博士が派遣してきたガルガンチュア8率いるガルガンチュア隊、そしてオレが参加する。

当初はマヨーネさんやマリーさんも出撃予定だったが諸般の事情により、こたびは二人とも発令所に詰めるとのこと。

調整能力と実力を兼ね備えた人員で現場責任者になれそうなのが、連合部隊の中に於いて彼女たちくらいしかいないという。

なんてこったい。

後は戦闘民族揃いとでもいうのか。

即席的連合部隊な混成部隊では指揮系統が滅茶苦茶になりやすく、勝手な戦闘を繰り返していたら寸断される可能性すら有り得るし、最悪の場合は集中攻撃によってこてんぱんにヤられた部隊の崩壊を起点として全体が瓦解するかもしれない。

強力な筈の連合軍が各個撃破されることは、なんとしても避けねばならない。

戦力の集中運用を相手側が出来るならば、との条件付きだけれど。

あちらに金髪の孺子(こぞう)がいないことを祈っておこう。

こっちにも不敗の魔術師がいるといいのだけど、そうそううまい話は無い。

敵を舐めてかかるのはよくないから、慎重に行動したいところだ。

マヨーネさんとマリーさんは、安全策の一環として動けなくなったのだった。

……どこも人材不足に悩まされているのかもな。

ところで、通信妨害は発生しないのだろうか?

エモニカスーツの通信担当のバロウズに聞いてみたら、今のところは大丈夫とか。

序盤は普通に通信させて、中盤に入った頃に電波妨害をかけて寸断し、そして各個撃破する。

或いは、虚報を途中から多数流して混乱させた上で背後や側面から攻めかかる。

罠をあちこちに仕掛けてもいいな。

オレが相手側の防衛戦担当ならそうする。

マヨーネさんやマリーさんにそのことを伝えたのだが、考え過ぎと言われた。

異界に現れる魔物でそんなことを考えるようなモノは、滅多にいないらしい。

 

 

メシア教の面々は白地に青い衣装で統一されている。

騎士っぽい恰好の人がちらほらいた。

数がけっこう多い。

今回の軍勢では、最も人数が多いんじゃないかな?

中には勇者っぽい人とか、女騎士っぽい人もいた。

半裸の男性が割といる。

目付きが明らかにイっていた。

あれが噂の『人の盾』か。

治癒魔法を周囲にかけながら、飽くなき闘争に身をゆだねる存在。

強化人間らしい者もちらほら見えた。

彼らの試験運用も兼ねているのかね?

使い捨ての駒を使って攻略とは恐れ入る。

気分は十字軍のつもりなのかな?

第二次とか第五次とか第七次とかなら酷い話だが。

天使系の悪魔が何体も漂っている。

天使なのに悪魔とは、これ如何に。

怪しげな天使だかなんだかの悪魔もいる。

仮面を付けたあの怪しいアレはなんぞね?

ん?

眼鏡をかけた女の子が近づいてきて、オレの手を取った。

可愛い子だが、なんのつもりだろうか?

彼女は眼鏡を光らせながらオレに言う。

 

「神を信じ、祈りましょう。神は我々を常にご覧になられています。」

「は、はあ。」

 

チカッチカッ、と眼鏡が光った。

彼女はやさしく微笑み、そして優雅に去ってゆく。

なんだ、あの子。

天使の通り過ぎる時間が訪れた。

振り向いた彼女は少し怪訝(けげん)な顔をして、首をかしげた。

もしかして、魅了系の術でも使われたか?

無効化できてよかった。

初対面の相手に臆面もなく術をかけるか。

おそろしい考え方だな。

仲魔のエンジェルがなんだか嫌そうな顔を

していた。

ニケーも憤慨している。

テルス教の安底羅(あんちら)隊を率いる薬師六将の嘉屋さんが程なく来て、あんな奴らの言うことを真に受けてはいけないと真顔で言われた。

オレに話しかけてきたのは、向こうの広告塔的な女の子だという。

ふーん。

ピクシーとアリスが悪そうな笑みを浮かべていたので、なにかしらやっていたのかもしれない。

テルス教は虎の子の戦闘部隊を二隊投入するとのことで、使い捨ての人員などうちにはいないと嘉屋さんが憤慨していた。

更に、メシア教は無知無謀無策の三拍子が揃った連中ばかりだと怒っている。

末端の兵の使い方が特に酷いとか。

旧ソヴィエト軍じゃあるまいし……え、戦術のわからない人ばかりでろくに軍事訓練すら行っていない人々が、数を頼りに敵へ襲いかかる?

そがあなん、簡単に乱戦になりますがな。

そんな人たちが中央戦線を担うって、なにかおかしくない?

人海戦術のごり押しがメシア教の主なやり方らしい。

末端の信者と下級天使が矛となって敵対者の群れへ突撃し、彼らのこじ開けた場所へ中級上級の信者連中と中級天使が突入し、その後は最上位の面々によって悠々と戦場を支配するのが定石とか。

……それ、ちょっと歯車が狂ったら簡単に瓦解するんじゃないすかね?

奇襲にめがっさ弱いんじゃないですかね?

矛と盾がなくなったら、即時撤退するんですかね?

一旦劣勢になったら、総崩れしそう。

……ま、まさかな。

が、頑張れ、自衛隊の皆さん。

 

 

無所属の戦闘系人員もちらほらいる。

キャロル・Aによると、この戦いで各組織に価値を見せるつもりの連中と戦闘狂の連中とが混じっているそうだ。

頭の中身が泡まみれっぽいチャラ男、やたらと血気にはやる者、野望に溢れ過ぎて実力の伴わない者、いつまで経っても二流から一流になれそうにない者、口先だけは達者な裏切り上等の者、などいろいろいるという。

 

制服姿の高校生らしき女の子まで参加している。

長い黒髪の美少女が、鎖付き鉄球を持っていた。

あれは……あれは、まさか、ガンダムハンマーなのか?

 

「あー、ゴーゴー夕張まで来ているのか。」

 

キャロル・Aがばりばりと頭を掻く。

 

「ゴーゴー夕張?」

「お前、あいつに関わるなよ。あの鉄球で頭をかち割られたくなかったらな。」

「なにそれこわい。」

「あー、あと、あっちにいるヘンゼルとグレーテルの双子コンビの方がゴーゴー夕張よりもはるかに狂暴なので、絶対に近づかないように。」

「なにそれとってもこわい。」

 

キャロル・Aの視線を追うと、銀髪の可愛らしい女の子たちがくすくす笑いながら会話しているのを見てとった。

小学生高学年くらいか?

近頃の児童は危険極まりないのか?

その子たちをやさしく見つめている黒い天使は、どれだけの実力を備えているのか?

 

「いいか、フリでもネタでもないからな。それと、髪の短い方が男子で髪の長い方は女子だ。たぶん。」

「わかった。」

 

召喚した悪魔たちとじゃれあいながら、キャロル・Aは自身に割り振られた入り口へと向かう。

具体的に言うと、テルス教方面だな。

オレは何故か、単身(仲魔は一緒だが)で深奥へ向かうことになった。

……ちょっと待て。

オレは一体どういう扱いなのだ。

ま、別にどうでもいいけれども。

余った穴から突入すればいいか。

残り物には福があるってか。

……違うか。

生き延びることを最優先とする。

オレは仲魔たちにそれを告げた。

死んで花実が咲くものか。

 

「父様。」

 

愛らしい声で話しかけられ、振り向くと双子の片割れがいた。

髪の短い方だ。

ヘンゼルといったか。

……誰がとうさまだ?

 

「ぼくたちがついてってあげようか?」

「ありがとう、でもこちらは充分よ。」

 

アリスがオレの代わりに答えてくれた。

 

「ふーん、じゃあまた後でね、父様。」

 

髪の長い子と一緒になった双子は両名ともオレに向かってぶんぶん手を振り、彼女たちが割り当てられた入り口方面に向かっていった。

 

「さあ、行くわよ、愛しの父様。」

「やめてください、アリスさん。」

 

 

 

そして、作戦の開始時刻が近づいてくる。

メシア教の広告塔を務める女の子が、青と白に彩られた自軍の前で演説し始めた。

傍(かたわ)らにいた嘉屋さんが眉をひそめ、「またあの小娘は世迷い言をほざくのか。」と苦々しげに呟く。

 

「立ち上がってください、皆さん。」

 

淡々と始まる言葉。

だが、力強い言葉。

その場の空気が、一瞬にして引き締まる。

言霊使いなのかな?

なにかがピリッときて、パチンと消えた。

離れていても、メシア教の人々の熱気が伝わってくる。

或いは、狂的なナニカが。

 

「軽蔑され、見捨てられた皆さん。」

 

同意の頷きが何人もの間で行われた。

また、ピリッとなにか肌にくる。

そしてまたも、パチンと消えた。

 

「立ち上がってください、労働の奴隷になっている皆さん。」

 

雰囲気が次第に熱狂的に変わってゆく。

それはもう、色鮮やかな程に。

ビリビリと空気が音を立てて変化する。

 

「会社や社会から虐(しいた)げられ、国家から屈辱を与えられた皆さん、今こそ神敵に立ち向かう時です。皆さん一人一人が当然お持ちの、素晴らしい存在価値を知らしめる時が今なのです。この『聖戦』を勇猛果敢に戦い、自分自身の存在価値を示した皆さんにはきっと安らかな救いが訪れます。各員の奮闘勇戦に期待しています。」

 

おおおっ、と高らかなどよめきが上がる。

 

「あらゆる歯向かうモノは許さない!」

 

勇者っぽい人や女騎士っぽい人らが剣を掲げて、えいえいおうえいえいおうとやっていた。

なんか混ざっていないか?

ちっ、と小さな舌打ちがそばで聞こえた。

テルス教の人々は複雑な視線を、正反対の思想を掲げる彼らへ向ける。

朗(ほが)らかに歌をうたいながら、メシア教の大部隊は異界へ意気揚々と入っていった。

 

微妙な顔つきの自衛隊の皆さんが、装備を再点検している。

メシア教の面々が崩れたら、彼らに負担がやってくるのだ。

たまらんなあ。

どうやら、先行部隊と距離を置いて深奥へ向かうみたいだ。

対戦車兵器やアンチマテリアルライフルのような装備は、悪魔にどれくらい有効なのだろうか?

すらりとした美しい闇エルフが隊長らしい自衛官に寄り添っている。

ヒーホーな悪魔たちが自衛官の周りでうろうろしており、白い戦士っぽい悪魔が静かに佇んでいた。

ピクシーが数体いて、うちのピクシーとなにやら情報交換している。

なんだか、なごむ。

 

 

 

侮蔑した表情でメシア教の軍勢を見送った嘉屋さんとなんとなく一緒にいた訳だが、彼女からなにか言えと言われる。

テルス教の面々も頷いていた。

目の前にいるのは、ファントムソサエティの愉快な仲間たち、テルス教の実戦部隊、我が親愛なる仲魔たち、こちらを興味深く見つめている無所属の戦士たちなど。

 

「ええと、それではこれからこの異界を調査し、現世から消し去るための方策を得るための活動に行きましょう。戦いが起きたとしても勝つための算段は本陣がしてくれたようですし、死なない程度に頑張りましょう。我々にかかっているのは高々この世界の安定性です。気負い過ぎないくらいにいきましょう。」

 

皆の衆から、微妙な表情をいただいた。

ごっつぁんです。

 

 

 

自分自身の武装の確認に取りかかった。

ロシアのPKMを元に作られた、旧ユーゴスラビアなセルビア製のツァスタバM84の調子を確かめる。

分隊支援火器に位置付けられる軽機関銃だが、武器商人のマッコイ爺さんが妙に勧めるので先日購入したのだ。

完全に銃刀法違反だが、なにを今更である。

ああ、カタギの道がどんどん遠のいてゆく。

まあ、それはそれとして。

今は戦うことに千年女王。

試射は既に、二〇〇〇発ほど済ませてある。

だが、実戦ではなにが起きるかわからない。

用心しよう。

今回は大型作戦なので、いつもの三〇口径の軍用小銃は使わないことにした。

一〇〇発詰め込んだ弾薬箱を装着したら更にずしりと重くなる軽機関銃だけど、エモニカスーツに組み込まれた補助動力がそれを軽減する。

たいしたものだ。

予備銃身を三本と弾薬箱を二〇個、予備のドイツ製短機関銃に食料品や飲料水にナイフなどを、ゴリアテ改弐に載せた荷台へ詰め込み運ぶ。

いやー、楽チン楽チン。

ゴリアテ改弐、可愛い。

キュルキュル進む姿が健気でよい。

四〇口径の半自動式拳銃に予備弾倉も確認する。

ナイフもだ。

二二口径の小型拳銃は気休め。

無いよりはずっとよい代物だ。

全自動で撃てるお守りである。

一点に集中させて撃てばよい。

足首のホルスターに差し込む。

こんなものかな。

行動食は、すぐに食べられる。

自作のシリアルバーを取り出して見ていたら、仲魔たちにじっと見つめられた。

いやん。

皆で仲よくわけて食べる。

豆や干し果実も入っていて旨い。

豆を食べていたら人間死なないのよ、とアリスがマッコイ爺さんみたいなことを言った。

仲魔たちがオレを見つめる。

仕方ない。

筑波山麓産の素焼きな落花生を皆で分けあって食べた。

豆旨い。

 

 

 

大きな入り口は三つある。

小さな入り口は複数ある。

メシア教の大軍勢は正面中央から突入。

特科魔戦中隊第一小隊はその後詰めだ。

テルス教の嘉屋さん率いる部隊は左翼。

ショッカーの怪人率いる部隊は右翼だ。

クズノハ、ヤタガラス、無所属の面々は遊撃、もしくはいずれかに混ざる形だとか。

我らのファントムソサエティは主に左翼から突入するようだ。

秘密結社系の戦闘職は右翼が多いかな。

ショッカーの指揮官は一応知り合いだったのでちっとばかり激励する。

彼は応、とこたえて何体もの怪人及び戦闘員たちと異界の中へ入った。

敵さんに誘い込まれているような気がしてならないのだが、誰も気にしていないように見えて不安感は強い。

うーん。

致し方ないな。

行くとするか。

 

 

 

 

回想を終えたオレは、仲魔たちと共に異界内をてくてく歩いてゆく。

ゴリアテがキュルキュル音を立てつつ、一生懸命ついてくる。

可愛い。

 

異界はめっちゃ広い。

だだっ広い。

中世風の街並みが眼前に広がっていた。

他の面々が通る場所はどうなっているのだろう?

時折遠くで爆発音や射撃音や咆哮(ほうこう)や悲鳴や絶叫などが聞こえる以外は、意外と静かにさえ思えてくる。

無人の撮影所。

そんな雰囲気。

奇妙な感じだ。

ピクシーはくるくる回りながら、他の仲魔たちとおしゃべりしつつ楽しそうに飛んでいた。

石畳や壁のところどころに見える染みは攻め手に由来するのか、それとも守り手に由来するのか。

それとも全然別のなにかなのか。

警戒しつつ、行動だ。

校舎は、遠い。

 

 

 

偽りの平穏は、不意に破られる。

 

ぴかぴか光る眼鏡をかけ、パリッと糊の利いた白衣を着た中年男が自信満々の様相で目の前に立ちふさがった。

たった一人だが、その声音(こわね)は高らかだ。

 

「私は教師オオツキ! プラズマを身にまとった先進的科学者! すべては魔神皇(まじんのう)様のために! お前たちをこの先へ行かせる訳にはいかない。いざ、ここで死すべし!」

「死んでくれる?」

 

首をかしげたアリスが妖艶に微笑む。

そして放たれしは、死をいざなう力。

 

「ぐはあっ!」

 

物理的に強化されたであろう改造教師も、強力な魔の力には抗し得なかったようだ。

屍(しかばね)を乗り越え、我々は先へと進んだ。

まじんのうってなんだ?

もしかして、ラスボス?

バロウズに調べさせるが、よくわからないと言われた。

電波状況は徐々に悪くなってきているらしい。

本陣へ連絡を取り、よその状況を聞いてみる。

今のところはいずれも順調だとかで、メシア教の面々が暴走気味みたいだ。

不要な交戦は避けつつ、情報収集しつつ、調査と踏破を進めるようにとマヨーネさんから言われた。

 

 

 

或いは、先程の教師が引き金だったのかもしれない。

敵さんがそれからどんどん現れてくるようになった。

しかも、殺りにくい相手ばかりだ。

次々に現れるゾンビな先生やゾンビな男子生徒たちを成仏させ、我らは進んでゆく。

お札がどんどん消えていった。

ここは敷地内だから、彼らは現れるのか?

既に校舎の範囲なのか?

ピクシーがここの同族悪魔とすぐに意気投合したため、彼女に道案内をお願いした。

すると、裏道っぽい場所へと我々を誘う。

どやどやとそこへ入っていった。

森だ。

森の中の小路(こみち)だ。

へえ、こんなところもあるのか。

てくてく歩く。

バロウズに解析させるが、問題はないと言われた。

どうやら、無理なく深奥へと進んでいるみたいだ。

途中出現する悪魔と会話したり交渉したりしながら、どんどん歩いてゆく。

攻略戦に参加した他の面々は大丈夫だろうか?

ともかく、この道を進むしかない。

味方に一切出くわさないこの道を。

 

 

 

てくてく歩いて、おおよそ一時間。

森の小路から校舎内にやってきた。

するりと中へ潜り込む。

 

「待てい!」

 

少し割れたような声が聞こえてきた。

白衣と眼鏡とが特徴と言えばそうなのかもしれない、中年男が現れる。

友軍には出会わないのに、こうした輩とまたも出会うとはこれ如何に。

よく見ると彼の眼鏡にはかすかなヒビがあり、白衣も少し汚れている。

彼はプラズマの光を身にまとい、ヤル気満々な感じがした。

 

「私は狂師オオツキ! 黄泉の淵より戻りし者! さあ、科学的根拠に基づき、逝くがいい!」

「死んでくれる?」

「ぐはあっ!」

 

アリスが艶然と微笑む。

懲りない男は、またもや即死してしまった。

 

 

 

友軍と連絡がつかなくなった。

マグネタイトをかなり消費し、発信能力を増幅させて通信に挑むのだが、誰も応答してくれない。

ファントムソサエティの愉快な面々とも、テルス教の嘉屋さんにも連絡が取れない。

音信不通状態が継続中だ。

本陣とも連絡がつかない。

バロウズも困惑している。

各個撃破されていないことを祈ろう。

小休憩を取り、体力魔力を回復した。

 

 

 

端末機が置かれた教室を見つけたので、バロウズに電脳侵入を頼んでみる。

意気揚々と攻略に臨んだ彼女だったが、すぐに攻勢防壁に弾かれてしまう。

端末機は操作を受け付けない状態で、なんのために置かれているか不明だ。

条件が合えば使えるのか?

 

 

 

途中で保健室を見つける。

消毒液のにおいがしてきた。

中には普通に入ることが出来る。

そこにいるのは香山先生という美人だった。

生活に必要なものはどこかからかすべて届けられているそうで、彼女の表情と態度からは特に不満めいたものが感じられなかった。

保健室は傷ついた生徒を癒す場所であるが、我々の傷も癒してくれるという。

覚えておこう。

自作のシリアルバーと茨城県産落花生を渡したら喜んでもらえた。

 

 

静かな校内を歩く。

放課後のような、校舎内を。

 

 

薄汚れた制服を着た、顔色の悪い女の子たちが沢山現れた。

お札を用意していると、ピクシーが声を上げる。

 

「ぬう。あれは、屍鬼ゾンビちゃんね。」

「知っているのですか、ピクシーさん。」

「ええ、死体が悪魔化した悲しい存在よ。……でも、変ね。こっちをじっと眺めているだけなんて。まるで、仲魔になりたがっているみたいだしー。『麻痺噛みつき』も『毒引っ掻き』も『セクシーダンス』もしないだなんて。」

「あ、あの……。」

 

眼鏡っ子委員長系のゾンビちゃんが、こちらへおそるおそる近づいてきた。

 

「は、はい。」

「ちょ……ちょっと……こっちに……来てくれ……ませんか?」

 

悩んでいると、アリスが口を開いた。

 

「あたしが付いていくから大丈夫よ。あたしの方が圧倒的に上位だから、彼女たちは絶対に逆らえない。」

 

彼女たちはこの異変的状況に対して独自的に抗ったそうだが、結果的に今の状態になったという。

生き返りたい子が何名もいた。

そりゃそうだ。

アリスやピクシーに聞いてみたが、彼女たちを人間に戻すことは出来ないと言われた。

湿っぽくなる空気。

アリスは二択を提案する。

成仏するか、オレの仲魔として生きるか。

動揺する彼女たち。

オレには、静かに彼女たちの選択を聞くことしか出来ない。

この残酷な、少女の明るい未来をあっさり絶つような異界。

 

 

大半が成仏を選んだ。

 

 

結果にもやもやする。

希望者を成仏させ、オレたちは三名の仲魔を新たに引き連れて先へと向かう。

早くこの状況を打破せねば。

こんなの、絶対おかしいよ。

 

 

 

 

激しい戦闘の跡を発見した。

血痕も遺体も無い場所だが。

残留する血のにおいや魔力やマグネタイトが余韻を伝えてくる。

誰が戦ったのだろうか?

薬莢なり衣類の断片なりがあればまだ推理出来るけど、この異界がそれらすべてを飲み込んでいるのかもしれない。

むう、厄介だな。

バロウズに分析させているが、情報が足りなさすぎてなにもわからないとのこと。

敵を殲滅したのか、味方がヤられたのか。

或いは両方なのか。

不明のまま、その場を後にした。

 

 

 

連戦、連戦、連戦。

各員の魔法や特技を出し惜しむことなく投入し、敵対者を討ち果たしてゆく。

軽機関銃を撃ちまくるため、弾の消費が激しい。

勿論、交渉出来る相手にはそれを持ちかけるが、そうしたことに重きを置かない相手には戦うことだけが価値ある行為に思えなくもない。

ゾンビちゃん三名にも後方支援で頑張ってもらってはいるが、情勢はあまりかんばしくない。

ニケーも派手に兵装を使いまくっているので相当疲弊しているし、ピクシーやアリスもけっこう疲弊していて空元気でなんとかやっている感じだ。

ハコクルマとエンジェルの疲労が特に激しく思われる。

空き教室で少し休憩し、消費した使いきりの品々を処分してゆく。

文車の中で少しでも回復度を高めようとしている仲魔もいる。

外を警戒するが、なにかが近づいてきていることもないみたいだ。

魔力の回復を図り、それは少しばかり叶えられた。

携行糧食を皆で分ける。

もそもそと皆で食べた。

このままではじり貧だ。

一時的撤退も補給もままならない中、持ち合わせているモノでやりくりするしかない。

他はどうなっているんだ?

バロウズに頑張ってもらってはいるが、今もどことも繋がらない。

 

一旦保健室まで退却し、癒してもらう。

ゾンビちゃんたちは中に入らなかった。

 

 

 

 

中ボスらしき相手と激戦を繰り広げる。

全体攻撃系の魔法や物理的特技を駆使する難敵だ。

ハコクルマが文車で敵をバコンと撥ね飛ばし、エンジェルがディアを連発して時に敵のそばへと飛んで撹乱し、ニケーが光線技を幾つも飛ばす。

ピクシーはザン系の攻撃魔法とディア系の回復魔法を駆使し、アリスは肉弾戦で敵の破壊を目論む。

ゾンビちゃんたちは三位一体のセクシーダンスを行って、中ボスの注意力を散漫にさせる方向で頑張っていた。

オレは軽機関銃を撃ったり、回復用の品々を仲魔に投げたり、攻撃用の品々を敵に投げつけたりした。

喰らえ、メギドラストーン!

ニケーが拡散波動砲みたいな光線技で、体力に溢れた相手を追い込んでゆく。

アリスの放ったホーロドニースメルチが中ボスの巨体を吹っ飛ばし、バロウズの示す一点に火線を集中させてようやく倒した。

ヤバい。

残弾が心もとなくなってきた。

 

 

結果、とうとう我々はからっけつになってしまった。

ガス欠状態である。

オーマイガッ!

ゾンビちゃん三名を、背中にもたれかけさせたり両脇に抱えたりしながら移動する。

エンジェルとニケーは顔色の悪いハコクルマの文車の上でぐったりしており、ピクシーはオレの頭の上、アリスはトトロに抱きつく五月のようにオレの前面にへばりついている。

荷物の多くはゴリアテ改弐が担当だ。

そろそろ限界だ。

早くまともに休憩しなくては。

ゴリアテの蓄電池はまだまだもつが、どこか充電出来る場所は無いだろうか?

 

 

 

そうこうしている内、邪教の館ぽい建築物を見つけた。

何故か管理者はいない。

逃げたのか、やられたのか。

設備だけが問題なく稼働している状況だ。

変だな。

回復設備まであるのは実にありがたいが。

だが、ここで大きな戦力を得られるならばそれは得難いことだ。

バロウズの悪魔合体用アプリケーションは簡易型だからな。

こういった本格的な場所で合体させたい。

だが……誰を合体する?

 

ハコクルマ、エンジェル、ニケー、そしてゾンビちゃんたち三名がなにやら話し合いをしている。

 

ゴリアテの蓄電池を充電開始した。

なにか武器になりそうなものは無いかと探してみたが、なにも見つからない。

銃の点検と同時に他の装備も確認してゆく。

 

 

 

仲魔たちがオレに更なる戦力強化を提案してきた。

自分たちを合体させ、もっともっと高みを目指して欲しいと。

そういうものなのか、と聞いたら、そういうものよ、と言われた。

ためらっている場合ではない。

ならば、ヤるしかない。

六身合体まで出来るという設備で、乾坤一擲(けんこんいってき)の賭けに出る。

女神か、魔神か、或いは魔王か。

それとも……。

兎に角、強力な悪魔が生まれてくることは間違いないらしい。

 

合体が、始まった。

 

仲魔たちが融合し、新しい悪魔がこの場に生まれてくる。

ん?

合体事故?

警報がガンガンと響く中、姿を現した悪魔が口を開いた。

 

「私は女神スカアハ。ふむ。新しい弟子を取ろうかと思っていたところだ。お主ならばよかろう。これからもよろしく。」

 

そう言って、帽子をかぶったセクシー系衣装の美人系お姉さんがオレにしなだれかかってきていきなり口をふさいだ。

口づけの後、彼女は唇をぺろりと舐める。

仲魔たちにげしげし蹴られた。

解せぬ。

 

「ふむ。お主の邪魔者はすべて私が殺し尽くしてやろう。お主に尽くしてやるから、私を大切にするのだぞ。」

「わかりました。」

 

そう答えるしかないようだ。

 

「うむ。手始めにあやつらでも皆殺しにするか。」

「えっ?」

「私は今、すこぶる機嫌がよい。お主を見て激しく興奮する程にな。見ておれ、我が愛弟子よ。このゲイボルグの威力をとくと見るのだぞ。」

 

いつの間にやら愛弟子になっていた。

師匠と呼ぶことになったスカアハは実際、めちゃめちゃ強かった。

彼女はいつの間にか外に集まっている悪魔たちの群れへ、雄叫びあげつつ勇敢に向かっていく。

それはもう、嬉しそうに槍を振るって、敵を虐殺しまくったのだ。

師匠、こわいです。

 

「お主のためならば、もっともっと殺してよいのだぞ。」

 

返り血を浴びた姿で微笑む女神様。

この人、ノルド的思考だーっ!

嗚呼っ、ヴィンランド・サガ!

 

 

サマナー、屍鬼、妖精、女神、ゴリアテ改弐といった構成で我々は未踏破領域へと向かった。

文車をそのまま使えるのはありがたい。

 

 

 

 

てくてく歩いている内、ある教室にたどり着いた。

何故、この教室の中は石造りなんだろう?

そこには二本の角を生やした美人がいる。

相当強そうな小宇宙(コスモ)を感じた。

 

「私は女神ハトホル。貴方……いえ、貴方様は……。」

 

オレをじっと見つめた色っぽいお姉さんはギュッとオレに抱きつき、そして言った。

 

「ここで会ったが百年目! 密着からの零距離攻撃! 甘噛み! ベイバロンの気! マリンカリン!」

「あれえ!」

「もう! 私をほったらかしてどこへ行っていたんですか! ではいざ、ご一緒に快楽の園へ!」

 

彼女は無茶苦茶興奮している。

このままでは、ヤ、ヤられる!

 

「そこまでだ、そこの牛女。」

 

師匠がじろりとハトホルを睨(にら)み、ゲイボルグを突きつける。

まさに一触即発の危機!

 

「あら、なにも独り占めしようだなんて考えていないわ。」

「そうか、ならばいい。」

 

いいのか?

ハトホルはオレのことを知っている?

ハトホルはオレのなにを知っている?

 

「私は女神ハトホル。黄金の居合拳で、あなたの眼前に立ち塞がる存在をすべて粉砕してみせるわ。ふふふ。」

「お、おお。よろしくお願いします。」

「先ずは、メジェド様たちに索敵と哨戒任務と威力偵察をお願いしましょう。」

「え?」

 

オバQみたいな二本足のナニカがいつの間にやら開いた漆黒の穴からぞろぞろ現れては、我々の周辺に散らばってゆく。

なんぞこれ。

彼らの姿はどんどん薄れ消えてゆき、時折光線が放たれてはなにかを消し去っているようだ。

 

我々はハトホルの誘導に従って、異界攻略戦を再開した。

 

 

 

よし、この作戦が終わったら、オレ、ドイツ料理店でフリカッセを食べるんだ。

あのめっちゃガタイのいい料理人が作る繊細な鶏の生クリーム煮は、最高だぜ。

フリカッセがフランス発祥の伝統料理だって、かまわない。

マッシュルームにシメジに玉ねぎの共演も実に素晴らしい。

ソーセージにザウアークラウトに馬鈴薯のパイに生ビール。

デザートはケルシーのケーキだな。

よし、殺るぞ。

 

 

 

 






闇の結界にこだまする悪魔の囁き
その不気味な響きに
魂を侵食される人々
そして、それは遂に
ゾンビちゃんたちの心をも蝕んでしまうのか

次回、『あくいろ!』
『せからしか! 校舎の果ては死の世界の一丁目!! (後編)』

悪魔の泣き声など聞こえない






某魔王様「ワシはなんも悪うない!」



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