あくいろ!   作:輪音

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アフリカ某国の国営企業のマルチミリタリーファクトリー(MMF)が、とある共和国の軍隊の兵器を認可生産しているという。

とある共和国の積極的協力的関与的企業として、某国は自国の兵器輸出的中継点となっている。
アフリカは未だに戦火の絶えない地域が点在しており、その近場と言える中東もその範疇(はんちゅう)に入る。
そういった国々に小火器から戦闘車輌などを販売するにあたって、共和国が直接それを行うのは正直愚策だ。
『国際世論』とやらがうるさいからである。
その『国際』がどこなのかは兎も角として。
しかし、表面上は深い付き合いが無さそうなアフリカ某国を経由すればあら不思議。
ここに『善意の第三者』が現れてしまう。
第二次世界大戦直後やその後の何十年かはこんにゃろめだった品質も、今では様々な独裁者的国々や紛争地帯へ大幅に技術供与出来るほどにまで変化している。

実戦を何度も何度も経ることによって培(つちか)われる『兵器的性能信頼性証明(バトルプルーフ)』は、信頼性に足る性能を有すると証明されれば箔がつく。
その箔は兵器の輸出に大いに貢献することとなって、国家の儲けを増加させる。
やがて、兵器の生産が国の基幹産業のひとつとなってゆく。
いわゆる『死の商人』が無くならない訳だ。

共和国としても人件費が自国以上に安いアフリカ某国で生産・整備・修理することは、利点が幾つも存在する。
その最大の利点は、安くて『使える』兵器を多く提供出来ることだ。
このある国で生産される兵器は、今後も数多く紛争地帯で使われるだろう。
厳しく取り締まる国際的制度が無い限り、この状況が改善されないだろう。

『海洋国家』として世界各地に植民地を有し支配していた連合王国や、『世界の警官』を自称する(した)連邦国家。
はたまた、『鋼鉄の幕』に覆われていた連邦国家がかつて堂々とやっていたことを、第三国を通じて行っているのだからより狡猾になったと言えるのかもしれない。

より救いの無いセカイへと向かっているかのようなやり方。
ニンゲンの死に無頓着になるやり方。
遠い国の悲しみは伝わりにくく、彼らの涙と血は地に吸い込まれ、それは悪魔の舌と喉を潤す美酒となる。

ニンゲンは悪魔に利すると知らぬまま、今日もどこかで酒を醸(かも)している。
時には無自覚のまま悪魔に操られ。
そうして、悪魔はひっそりと嗤う。






※いつも誤字脱字報告をいただきまして、ありがとうございます。








星幽侯オリアス

 

 

 

 

 

とある病院の地下。

白衣をところどころ赤黒く染めた男が、ゲハハと嗤(わら)う。

脅えた顔のぽっちゃり系同性を前にして、彼は弁舌を振るった。

 

「いい、いい。やはりここはいい。木偶(でく)どもを集め、そやつらを私の役に立てる存在とする。これぞ、完全なる再生可能エナジー。実に素晴らしい。」

「あ、あ、あの、オ、オレ、改心します。酒もタバコもパチンコもウマもフネも自転車も配信も課金も、や、止めます! ぜ、絶対にもうしません! だ、だから、これ以上は……。」

「お前は間違っている。」

「え?」

「いや、間違っていた、と言うべきか。」

「は?」

「お前はダメニンゲンだ。もうどうしようもない。車の運転をしながらチューハイをぐびぐび飲み、事故を起こしてまともに反省もせず、タバコをポイ捨てして注意したニンゲンに殴りかかる。駅舎ではお前の不注意をやんわりと指摘した駅員に暴力を振るい、パチンコ屋ではお前の暴力的姿勢に対して低姿勢で注意してくる店員相手に、手酷い暴言の数々。商品が在庫切れだと言われてキレてしまい、コンヴィニエンスストアの店員に不条理な土下座をさせ、ウマが負けたと競馬場で暴れまわり、フネがおかしいと競艇場で喚き散らし、自転車を操る面々の太ももがどうたらと訳のわからぬ屁理屈を競輪場で撒き散らし、ソーシャルゲームでは課金するも希望の娘が出ないと運営にハチャメチャな迷惑行為を繰り返す。SNSの配信では当然のように炎上炎上炎上。とある電脳上の掲示板では不確かな情報を鵜呑みにして、見るにたえない言葉を連発して迷惑のかけ放題。しかも、それらの事象に対し、一切反省しないで相手が全部悪いと放言する。そんなお前に生きている価値があるとでも思っているのか? 思慮に欠けている癖にここまで悪質なニンゲンは滅多にいないぞ。…………たぶん。」

「あ、あの……。」

「大丈夫だ。」

「え?」

「お前はこれから、私のためにメタモルフォーゼするのだ。よかったな、お前の人生の最後にわずかなりと前向きな意味付けが出来て。」

「イ、イヤだ!」

 

院長は拘束された患者に素早く近づき、なにかを行った。

すると、患者から悲鳴があがる。

 

「ぎゃあっ!」

「ん? 間違ったかな?」

「ぐああっ!」

「よし。これだ。」

「げああっ!」

「よし、段々わかってきた。」

 

男の悲鳴を伴奏にしながら、院長の手は止まらない。

まるで演奏でもするかのように、院長は患者を『手術』していった。

とてもとても楽しそうに。

 

 

 

 

 

「みたらしヘブンボンバー!」

 

みたらし団子の力を身にまとったピクシーが、敵対者に対して激しい攻撃を加える。

見たことのない技だ。

ポカポカポカポカポカポカと可愛らしい擬音を有した団子のようなヒカリが敵対者に当たり、容赦なくその肉体を貫いていった。

 

「ぐはあっ!」

「そして、五〇〇キロカロリーパーンチ!」

 

ピクシーの右腕に『五〇〇』の数値をまとった光が現れ、彼女はそれを敵対する悪魔に叩きつけた。

 

「ぐああっ!」

 

見たことの無い技だ。

敵対する悪魔はその巨体を吹き飛ばされ、大地と激しく接吻(せっぷん)する。

 

「とどめ! ホーロドニースメルチ!」

 

待ち受けていたアリスの放った荒ぶる凍気が敵対する悪魔を包み込み、それは放たれたアッパーカットの生み出した上昇気流と共に空高く舞い上がってゆく。

凍ったまま急上昇したぽっちゃり系の悪魔はやがて急速に落下し、氷塊のまま地面に激突した。

それは当然のごとくに砕け散り、そのことは戦闘終了に直結する。

我々の勝利だ。

 

スカアハとハトホルは人間社会の研究だか探求だかで、女子高校生化してあちこち出歩いている。

おねだりされたので、つい許可を出してしまった。

マグネタイトの貯蔵は十分ですかと尋ねたらその直後にかなり吸われたので、当分大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

「これが新しゅう作ったヴァーチャル・トレーナーや。新人サマナーにこれを使わせて、ビシバシ特訓させるんやで! クリアする度に報酬は二〇〇マッカ出したる。MMO的にゆうたらチュートリアルやな。」

 

スリル博士作の悪魔召喚師訓練装置が完成したというので、北山大学の研究室でその説明を聞いている。

ふむふむ。

エモニカスーツの調整も順調のようだ。

この強化服一着でロールスロイスが買えるというから気をつけてはいるけれども、戦闘経験による信頼性保障性能は非常に重要らしい。

ファントムソサエティに所属する一般系悪魔召喚師の黒スーツとか眼鏡型スカウターなどにもエモニカスーツの戦闘経験情報が反映されていて、性能向上に役立っている。

ちなみにマヨーネさんがいつも着ているイタリア製のドレスとかお洒落な衣類はエモニカスーツの応用品らしく、一着で同国製のスーパーカーが買えるとかどうとか。

あの恰好で戦闘までこなすのだから、びっくりぴょんである。

イタリアには『公社』と呼ばれる強力な戦闘組織があるそうだから、なにか技術交流があるのかもしれない。

マヨーネさんは、もしかしたらスフォルツァ家とかオルシーニ家とかエステ家とかみたいな名家の人間なのかもな。

実家には執事や複数の使用人がいると聞いたし、たまに貴族っぽい発言があるから、良家のお嬢なのだと思われる。

 

「悪魔教官たちが直々に勧誘してきた連中を、ここをつこうてびしばししごくという訳やな。」

「今回、何人勧誘出来たんです?」

「八人や。」

「ほう、それは多い。」

「初陣で死なさんために、訓練訓練また訓練で鍛え上げるちゅう方針や。これにはマヨーネはんも賛成しとる。」

「確かに訓練は大事です。」

「仮想空間であんたもヒーローや!」

「あちこちうろついて殺し回る訳にもいきませんし、丁度よさそうですね。」

「銃火器の訓練は頼むで。」

「わかりました。」

「あーあ、花山博士がここにおったら、ずいぶん楽が出来たんやけどなあ。」

「花山博士?」

「花山博士は悪魔召喚実験に失敗して、呼び出した悪魔にヤられてしもうた人や。」

「それは残念でしたね。」

 

いくらエモニカスーツの性能がよく、バロウズが献身的且つ全面的に補佐してくれるにせよ、肉体をある程度かそれ以上鍛えないと敵対者に対抗しきれない。

柳生流の道場に通っているが、まだまだ先は見えない。

地道にやるしかないのだろう。

剣や魔法の才能は殆ど無いし、使える魔法はシャッフラーとマハラギオン。

戦術がハマれば強いけれども、必ずしもそうとは言えない状況もあり得る。

コツコツヤるしかないだろう。

 

 

スリル博士との雑談は続く。

 

「メシア教の最終目的は、東京に『ミレニアム』と呼ばれる要塞都市を建設し『千年王国』を築くことや。」

「千年王国?」

「せや。そいで、真の千年王国を築くためには『救世主』が必要なんやて。」

「救世主?」

「この間違った文明社会に汚染されたニンゲンを救い、永遠に平和的日常生活が過ごせる理想郷を現実のものとすべく、彼らは『民衆の導き手』を必要としとるんやて。」

「民衆の導き手?」

「そう、メシアや。」

「飯屋?」

「そっちやない。」

 

メシアって……うーん。

あんなに杜撰(ずさん)且つどんぶり勘定な組織でそういった存在をきちんと管理出来るのだろうか?

メシア候補みたいな信徒が複数いるけど、その、まあ、彼らが直接導くのか、それとも司教とか枢機卿(すうきけい)みたいな存在が黒幕になるのか。

今のやり方を見ている限りでは、現実と理想の解離が酷すぎてどうにもならないんじゃないかな?

考えていると、スリル博士がにっこりしながら言った。

 

「そうそう、今度『ティフェレト』がコンサートするゆうとったから、警備をするようにってマヨーネはんが言うとったで。後な、大田区にある老舗の芸能事務所からも何人かアイドルが来るらしいわ。」

「ティフェレト?」

「最近結成された、絶讚売り出し中のアイドルグループや。」

「アイドルはさっぱりわからなくて。」

「大丈夫やで、ワシもようわからん。」

「その子たちは人気があるんですか?」

「リサ、りせ、杏の三人のぴちぴち女子高校生新人アイドルで構成されとるらしいけど、詳しいことはマヨーネはんに聞いといて。彼女、そういうのはそこそこ知っとるみたいやから。」

「わかりました。」

「で、こっからが本題や。」

 

スリル博士が指を鳴らす。

すると。

ゴツい火器を二丁、メイド姿の美少女が持ってきた。

白い肌に紅い瞳。

なんだかとっても強そうな感じがする。

スリル博士はすぐ武器の説明に入った。

彼女のことは説明してくれないらしい。

 

「こっちはとある共和国の軍隊で使われとる87式自動榴彈發射器や。現在はこれより新しいのが出とるけど、そっちは手に入らなんだ。これの口径は独自規格の三五ミリで、ぽんぽんと榴弾を遠くへぶっぱなせるんやで。中越戦争で散々痛い目におうた連中が、兵隊の火力高めちゃろう思うて作った兵器や。マッコイが持ち込んだ火器でな、なんや書類をすり替えて廃棄品扱いにしたもんらしい。バラバラにして工業製品扱いとした上で、横浜港経由でこの国に持ち込んだ、と。弾もバラして持ってきたんやから、たいしたもんや。なんともあいつらしいわ。ま、たぶん、弾で儲けようゆう腹やろ。◯レッ○商法やな。」

 

マッコイ爺さんもよくやるなあ。

 

「そんで、あっちはこの持ち込まれた火器を解析してワシが作った八七式改や。弾も作った。不発弾なんかの不良品を掴まされたらえらいことやしな。不発はともかく、暴発したら最悪死ぬ。弾代でたまらんことになってもうたらワヤやし、別にあっちを儲けさせんでもええやろ。マッコイやしな。それにこの弾なら、悪魔にもよう菊正宗やで。光学式照準器はバロウズに対応させとるから、狙いが外れることはそうそう無いやろ。まあ、ワシの作り上げた八七式改を試しにつこうてみい。エモニカスーツを着用するなら充分運用出来る筈や。近距離の悪魔相手につこうて、破片やなんかの塊が飛んできて結果的に死んでもうたゆうんもアホらしいしな。」

「わかりました。」

 

持ち上げてみる。

ずっしりと重い。

小型のバズーカ砲みたいだ。

よくあの子はひょいと持てるな。

個人携帯火器としてはどうだろうと思わないでもないが、この手の火器としてはおそろしい程小型化及び軽量化されているみたいだ。

 

「二脚付きで約一二キロ、装弾数は六発、一五発と選べる。」

「ほう。」

 

弾倉は二種類あるのか。

兎に角運用してみよう。

 

 

 

 

 

ここはどこだ?

仕事を終え、食事を終え、入浴を終え、仲魔たちと床に入った筈だ。

もしかして、明晰夢か?

なにかぼんやりした姿のモノがオレに問いかけてくる。

 

「お前は誰だ?」

 

逆に問うてみた。

あんたこそ、誰やねんな。

そのなにかようわからんもんは、よくわからないことを幾つも述べてゆく。

禅問答か?

意味がわからないよ。

 

「……どうやらお前は、幸いにもサタンではないようだ。」

 

なにかよくわからぬモノは、そう言って消え去った。

何故か、マーラ様がそれに向かって突撃でもするんじゃないかとの予感をおぼえた。

まさかな。

目覚めると、両隣の仲魔が絡みついていて身動き出来なかった。

 

 

 

 

 

吉祥寺のとある病院が怪しいらしい。

変な鳴き声とか妙なにおいとか全身タイツの男たちとか。

奇妙な現象が頻発しているのだとか。

少なくとも、怪談のたぐいではない。

変態の巣窟だったら厭になるけれど。

マヨーネさんから調査依頼を受け、出かけることにした。

マリーさんは書類仕事やら交渉やらで手が離せず、スカアハとハトホルは女子高校生の姿でニンゲンの街を満喫中。

自由だなあ。

よろしい、ならば、アリスとピクシーとで探索だ。

 

 

 

 

深夜の病院に着いた。

侵入に関する電子的なあれこれはバロウズに任せる。

エモニカスーツを予め装備しておこう。

 

「ふふふ、私に任せなさい。身を任せてもいいわよ。」

 

そんな冗談を言えるだなんて。

人工知能も進化したものだな。

無事、侵入が出来た。

だが、おかしい。

人の気配がまるで無いようだ。

看護師や警備員はいないのか?

まっことおかしい。

……ま、いっか。

院長室の近くへ行く。

 

「エネミーソナーに感あり。気をつけて、サマナー。強い敵がいるわ。」

 

バロウズが言った。

アリスとピクシーも頷く。

悪魔があそこにいるのか。

ならば、突入だ。

戸を開け放った。

我々に驚く院長。

そして彼は話しかけてきた。

 

「お前たちは改造手術を済ませたのか?」

「改造手術? ○面○イ○ーみたいな?」

「ふむ、お前たちは済ませていないな。」

「ええ、悪魔になる気もありませんし。」

「まだ悪魔への改造手術を済ませていないとはけしからん! 大人しく改造を受け入れるがいい! 私が病院で作り上げた『製品』は『市場』に供給され、一定或いはそれ以上の成果をあげている。洗脳しただけのニンゲンであろうと、数倍の力を発揮出来る。全身タイツ系の簡易な作りの強化服でも与えておけば、末端の戦闘員としての活躍も可能だ。また、素質のあるニンゲンは獣人などに作り替えている。どうせ奴らの多くは、喫煙や飲酒や借金や賭博や配信や課金などで身を持ち崩したろくでなしどもだ。私の役に立てるのだから、ありがたく思ってもらいたいくらいだよ。」

 

酷い言いぐさだ。

院長の容貌が変わってゆく。

まるで作り物を壊してゆくかのように。

 

「さあ、お前たちも改造してやろう。」

 

院長がにやりと嗤った。

ぐにゃり、と顔を歪ませ変化してゆく。

四〇口径の拳銃弾を複数お見舞いしたが、障壁かなにかで無効化されてしまった。

残念。

八七式改を構える。

 

「はーっはっはっは! 知っているぞ、貴様。最近、悪魔退治で名を馳せているニンゲンだな。ちょこまかと小うるさい奴よ。だが貴様の働きもここまで。大人しく我が槍の錆となるがいい! ルシファー様もどうしてこんな平々凡々な男を買いかぶったのか!」

「はあ。」

「貴様がサタンであろう筈は無い! ましてや、メシアであろう筈も無い! 愚かなるニンゲンにふさわしい死をくれてやろうではないか! 私は星幽侯オリアス! 三〇個軍団を率いる魔界の侯爵よ! さあ、逝くがいい!」

 

青白い馬に乗った甲冑姿の悪魔が現れた。

赤い鎧の頭部は獅子。

右手には槍。

周囲が異界化してゆく。

 

「爵位持ち悪魔! しかも、侯爵か!」

「いかにも! 死ね! ニンゲンよ!」

「あれ? オリアスって……堕天使じゃなかったっけ? まあまあの……。」

 

ピクシーがなにか言っているけれど、こちらは射撃態勢をととのえるので忙しい。

使い馴れない武器を持ってきたのは失敗だったか?

 

「取り敢えず、これを撃ってみよう。」

 

手にした八七式改をぶっぱなしてみる。

 

「ぐああっ!」

「おう、効いとる、効いとる。」

 

スリル博士謹製の三五ミリ弾はよく効くみたいだ。

よかった。

しかし……高位の爵位持ちにしては弱い気がする。

アレは自称侯爵なのか?

まさかな。

うおっ、危ない危ない。

破片が沢山飛んできた。

これ、近距離じゃ使えないな。

ある程度かそれ以上離れていないと、爆風や破片の影響が強い。

下手したら死ぬぞ。

エモニカスーツが無いと危ないところだ。

ま、異界なら幾らぶっぱなしてもいいか。

もう一発発射してみる。

よし、腹部に当たった。

 

「がああっ!」

「よしよし。」

 

一旦倒れた後、むくりと起き上がる悪魔。

 

「よしよし、ではないわっ! 調子に乗るなよ、ニンゲン!」

「死んでくれる?」

 

アリスが左手の人差し指を敵対する悪魔に向けた途端。

魔界の侯爵を包み込むように無数のトランプが現れて舞い踊り、古風な時計盤が針をぐるぐる回転させる。

赤黒いフォークを持ったトランプ兵が次々に上空から降下し、容赦なく星幽侯を貫いていった。

 

「ぐはあっ!」

「ふふふ、新演出の技は如何?」

 

上品にスカートの端をつまんで、カーテシーを行うは美しき屍鬼。

 

「な、なんのこれしき!」

「みたらしヘブンボンバー! アーンド、五〇〇キロカロリーパーンチ!」

 

ピクシーの素早い連擊が容赦なくオリアスを襲った。

みたらしの力と五〇〇キロカロリーの力が魔界の侯爵の障壁をぶち抜き、敵対者は激しく体力を失ったように見える。

……本当に侯爵なのかな?

こちらのセカイに顕現すると、著しく性能が減退するのかもしれない。

 

「がああっ!」

 

もう一発撃っておくか。

ぴょーんと吹っ飛ぶオリアス。

特撮番組の悪役みたいだ。

 

「げはあっ!」

「よしよし。」

「な、なんのまだまだ!」

「ダイヤモンドダスト!」

 

荒ぶる凍気がアリスによる白鳥座の舞いと共に放たれ、弱ったオリアスを激しく襲った。

 

「があああっ!」

「死んじゃえ。」

「ま、負けられんのだっ! き、貴様らの好きにはさせん! やらせはせ……。」

「もう一発、五〇〇キロカロリーパーンチ!」

「ダイヤモンドダスト!」

「うぎゃぎゃぎゃあっ!」

 

五〇〇キロカロリーの力に吹き飛ばされた悪魔は、更なる猛烈な凍気に包み込まれる。

カチンコチンに凍結した魔界の侯爵は、そして砕け散った。

 

よし。

これにて一件落着。

 

 

 

 

ああ、疲れた。

あの甘味処へ行こう。

信州伊那(いな)の寒天と肥後天草は佐伊津(さいず)の黒糖を使った、おいしい黒糖寒天を食べたいな。

 

そして、帰途についた。

警護するアイドルたちってどんな感じなのかなと思いつつ。

 

 

 

 

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