ヒトのセカイの隙間で生きている悪魔は案外多いらしい。
そういった連中の中には、よろしくないモノたちがいる。
その患部を切除するのが自分なのだ。
悪魔狩りを得意とする男は、そう言ってのけた。
彼は春になったら悪魔を狩りに行くのだと言う。
それでその他の季節はどうしているのかと聞いたら、勿論他の季節にも狩っているのだと答えた。
……よくわからないな。
独特のニヤケ顔が印象に残った。
ファントムソサエティの面々はよく言えば多士済々(たしせいせい)、悪く言えば玉石混淆(ぎょくせきこんこう)だ。
そんな組織に所属する一人が行方不明だそうな。
あの男だ。
春になったらなんとかの。
「行方不明は困るのですが、他の組織に移籍されるのはもっと困るのです。」
マヨーネさんはそう言った。
茶碗蒸しの食べ方が可愛い。
彼を連れ戻せばいいのかな?
メンチカツの衣がサクサクしていて旨い。
この菜の花の和え物もおいしいな。
「悪魔に狩られたという可能性は無いのですか?」
そう聞いてみる。
「あの不屈の男が? ハハハ、面白い冗談です。」
筍ご飯をおいしそうに食べつつも、そう言ってのける彼女。
どうも、彼自身はアスラン王国の傭兵並にしぶといらしい。
マヨーネさんほど強いとは到底思われないが、それなりに強いように感じる。
二人でデザートの牛乳寒天を食べ終え、調査に移った。
男の足跡がなかなか掴めない。
調べてわからないなら、他の者に尋ねればいい。
情報屋をしている知り合いの悪魔に聞いてみた。
「知らないホー。」
厭そうに写真を見て、情報屋はそれだけ言った。
マグネタイトや現金や魔石を提示しても、彼は首を横に振るだけだ。
致し方ない。
別の方向で探そう。
アリスを肩車して、左右の腕にはスカアハとハトホル。
懐にはピクシー。
うん、これで完全体だな。
…………。
キミたち、探す気はある?
魔も人も共存出来るのなら、そうすればいいと思う。
そうは思うのだけど、そう思わない人間も多々いる。
夕日が闇に溶けそうな時刻。
かはたれどき。
平崎市内にある公園。
異形の影を纏(まと)って、彼は現れた。
黒い装甲服は既にぼろぼろ。
なにと戦ってきたのだろう。
彼の闘志は薄れていないようだ。
孤独なまでに一人で戦い続ける。
たぶん、そうした男なのだろう。
目の前にいる、半壊した装甲服を着たこの男性。
マスクが割れ、目と口元が見える。
笑っていた。
あのニヤケ顔がどことなく真剣に感じられる。
ただただ戦いたいのだと。
我々を見て、そう言った。
ならば。
ピクシーのヒンメルラント神拳は、実におそろしい威力を発揮した。
あと、破裏拳流や赤心少林拳なども素晴らしい技の冴えが見られた。
対する彼も大いに善戦したと言えよう。
グレートホーンをまともに喰らい、槍でぐさぐさと刺され、体のあちこちを凍らされても。
それでも彼は戦い続けた。
公園の夜桜が美しい。
仲魔たちは相変わらずなので、屋台で団子を買った。
祭をしているようだ。
人々はのんびりと桜を見物しながら、練り歩いている。
平和な風景。
これだ。
こういうセカイを守りたいのだ。
不意に、そう思った。
さてと、今夜は『ローマの休日』を観ようかな。