銃にも特許保護期間というものが存在し、それが切れた名銃の複製品はけっこう作られているらしい。
関東某県山奥にある射撃場でドイツ製の機関銃を撃たせてもらっているのだが、これもあちこちの部品が複製品なのだという。
撃ちやすいし、銃身の交換も容易だ。
次に迷宮探索や戦闘の激しい作戦に投入されそうな時はこれを使おうかな。
銃身を交換しながら二〇〇〇発ほど撃ち、感覚を掴んでおく。
実戦での銃は、ただでさえ当たりにくい。
練習では標的に吸い込まれるように当たる銃も、実戦で動く対象に当てるのは至難のわざだ。
仮に当ててもそれが致命傷にならない箇所だと、当然の帰結として特殊攻撃や魔法による報復行為が考えられる。
撃って、射って、うちまくる。
そうやって、馴れてゆくしかない。
拳銃の弾一発で悪魔を倒すことは大変難しい。
脳幹などの致命傷になる部位を撃ち抜けたら別なのだろうが、場合によっては何発も撃たないといけない。
相手が都合よく即死してくれるのを期待してはならないし、何発も喰らった相手が死に物狂いになって反撃してきたら、こちらがお陀仏になってしまう。
殺し損じて殺されることは嬉しくない。
法執行機関が拳銃の装弾数の多さにこだわることは、非常に意味のあることなのだ。
個人的には撃ちまくることよりも喋りまくることの方がやりやすくてすっきりする。
折角話が出来る相手なのだ。
一応文明人の隅っこにいる者としては、弾丸を放つよりも言葉を放つ方が好ましい。
そういう者ばかりでないところが実に悩ましくもあるけれど。
自分自身で使う銃の選定は意外と難しい。
なにが正解かちっともわからないからだ。
マヨーネさんはやたらとイタリア製の銃を推してくるが、それが自身にしっくりくるとは限らない。
確かに軍用銃は様々な兵士に使われることが前提条件なので、汎用性が高い。
高いのだけど、それが本当にいいと思えるかどうか。
なんとも悩ましい。
拳銃でいうと、オーストリアで開発されて今も世界中に影響を与えている某拳銃は特許保護期間が過ぎ、複製品やら似た製品やらが世界各地の銃火器製造会社から現在進行形で販売されている。
元が極めて優秀な作りの傑作品なので、それは当然なのだろう。
この傾向は当分続くでしょうねと、マヨーネさんが言っていた。
そうした中から愛銃を選ぶ悪魔召喚師も複数存在するし、それが堅実で現実的なやり方かと思う。
とある吸血鬼はとんでもない威力の大口径弾を使う特製拳銃が愛用品だというけれど、あんなモノは人間に扱えない。
よくわからない強力な存在と戦う破目になりたくないものだ。
幾種類かの魔法を使えることは出来るが、戦況に合わせて多彩な魔法を使える訳でもない。
機関銃、軍用小銃、短機関銃のすべてを持ち歩いて適宜使い分ける訳にもいかない。
拳銃だって、何挺も持ち歩くことなど出来ない。
比較的汎用性の高い品を選んでゆくしかなかろうて。
または、作戦に応じた小火器の使い分けをするかだ。
戦うための拳銃? それなら.44マグナムですよ! と言った青年がいたな。
彼は元気なのだろうか。
鉄と木で作られた銃の時代は終わり、主に樹脂で作られた銃が広く世に出回る時代。
選択肢は一見多いが、そうとも言い切れないような気がしないでもない。
浪漫に走るのも悪くないが、あれはあれで大変そうだ。
いろいろな情報から、自分自身の最適解を見つけたい。
たとえそれが世の流行りでなくとも。
風がどちらに吹こうとも、行き先は自分で決める。
悪魔と人間はそんなに違うのだろうか?
彼らの愚痴の聞き役をしていたら、ついついそんなことを考えてしまう。
「それで、オレっちのカシラが言うのさ。それくらい、当たり前にやれってよ。いっつもいっつもそんな態度でな。そろそろ契約を打ち切ろうかって考えてんだよ。」
「もうさあ、ニンゲンにはわかんないかもしれないんだけどさあ、悪魔にだっていろいろあんのよ、いろいろとさ。わかる? でね、こないだなんてね……。」
「オレサマ、ニンゲンマルカジリ!」
「我輩もそろそろ年頃だからして、ぼちぼちチャーミングな相手と結婚したいところであるのだよ。先日行った八三回目の見合いは失敗に終わったが、なに、次は絶対に上手くいくのである。それでだな、サマナーに最近のニンゲンの流行を聞きたいのだ。参考にしたいのだよ。」
「こないだ、雇い主のサマナーにオレってもしかして合体素材なのか、って聞いたんだよ。そしたらよ、黙ったまんまで答えてくれねえんだ! なんで答えてくれなかったのかねえ。もうそろそろ、田舎に帰ろうかなあ……。」
不意に、炒飯やら豚饅頭やらを食べたくなってきた。
よし、それらを食べるぞ。
出来たら、今夜。
今も不満を吐き続ける美人悪魔を見ながら、オレはそう思った。
なのに。
何故か、徹夜で女悪魔たちの相手をすることになってしまった。
嗚呼、太陽が黄色い。
夕食、食べ損ねたな。
さてはて、どうしようか?
朝の街をふらふらと歩く。
ん?
飯のにおいだ。
おや、定食屋がある。
ここで朝飯にしよう。
そうしよう。
ほう。
セルフの食堂か。
いいじゃないか。
さて、なにを食べようか?
ハンバーグがある。
これは決定だ。
肉豆腐もいい。
唐揚げ、肉じゃがコロッケ。
どんぶり飯。
ご飯は大盛。
鯖の味噌煮。
おみおつけ。
小皿の麻婆豆腐。
種類はいっぱい。
腹一杯食べよう。
自分自身で食べるものを選び、席に持ってゆく。
会計は食べ終わった後。
さてと、いただきます。
肉豆腐。
今日も旨い。
よく味がしみている。
肉じゃがコロッケ。
うむ、これこれ。
摩訶不思議な旨さ。
人参がいいんだよな。
ハンバーグ。
肉汁たっぷり。
焼き加減も丁度いい。
旨い、旨いぞ。
ひじき。
大人になると好きになる。
ここのは甘ったるくなくて旨い。
鯖味噌煮。
甘辛のたれがいい塩梅。
唐揚げ。
さくさくした衣とたっぷりの肉汁。
ああもう、とにかく旨い。
飯がなくなった。
まだ、食える。
まだ、足りない。
追加だ。
追加飯といこうじゃないか。
新たにもつ煮込みを加え、わしわし食べる。
うれしいネギ多め。
もつ煮込み、旨い。
しっかり濃い味だ。
他の人が食べていてうまそうなハムエッグも更に足す。
このとろとろ半熟玉子がいい。
飯の上に載せちゃえ。
半熟の黄身と白飯、合わない筈がない
麻婆茄子。
小皿に載った惣菜のひとつ。
この量、絶妙、
ピリッとして食事を引き締める。
時々おみおつけとおしんこで味わいの調整をしながら、空腹を幸福で満たしてゆく。
それにここの飯は家庭料理みたいだから、安心して食べられる。
いい朝だ。
こういった食堂で当たり前のようにおいしい食事がありつける、そんな世の中であって欲しい。
賑やかに入店してきた仲魔たちを見つめつつ、オレはそう思った。