あくいろ!   作:輪音

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白い服を着た男の子は言った。

「ボクはボクの思ったことをあの子に言っただけです。それがなにかいけないことなんですか?」

黒い服を着た男の子は言った。

「ぼくはあの子がまちがっていると思ったから、それをきびしくなじっただけです。それのどこがいけないんですか?」

青い服を着た男の子は言った。

「ぼくはただしいことを言っただけ。ぼくはまちがっていない。」

赤い服を着た男の子は言った。

「ぼくはみんながまちがっていると言ったから、それにしたがっただけ。それだけ。」




今回、少々エロかったりグロかったりします。
ご注意くださいませ。




姉のように思っている娘は、マヨナカになるとなにかを写すように書き記す。
甲州の温泉町に、悪魔は来たりて愛を囁く。
『太郎様の隠れ湯』の湯煙はなにを隠すか?






夢魔の標的

 

 

 

 

くくく、他愛のないことよ。

すぐにエナジーが貯まった。

リフレーッシュ! てとこ。

満員電車は尽きせぬ狩り場。

学生から年配のオスまで選り取り見取り。

むわっと漂う体臭が鼻をくすぐってきた。

ほんの少しずつ吸精すれば、直に腹一杯。

うぷ、ちょっとヤりすぎたかもしれない。

アヘアヘウヒハなオスが量産されたわね。

ま、いっか。

性的満足を覚えて痴漢も減るからニンゲンのためにもなるし、私も生体マグネタイトを得られる。

全者全得で、実に素晴らしいじゃないか。

この体も初めはギクシャクしていたが、段々慣れてきた。

死にかけで私を召喚出来たのは見事だと思うが、生きることに絶望したメスの意識は既にカロンの元へと旅立った。

なんとも、勿体ない。

現在は私がありがたく使わせてもらっている。

この体を辱しめたオスは贄となってもらった。

まあ、当然の結果だな。

お陰でこの世に顕現出来たのだから、全員に感謝せねばな。

 

最近、気になるオスがいる。

矢来銀座で見つけた高校生。

そのオスは、外面の初々しさと内面の濃厚さが不均衡で実に芳(かぐわ)しい。

瞬時禍々しくなり心地よい。

一目で気に入ってしまった。

是非寝所で泣かせてみよう。

でーと、とやらに私から誘ってみるのもよかろう。

あのオスは、私の獲物だ。

誰であろうと渡すものか。

あのオスを私の虜にしてくれよう。

幸い、生体マグネタイトは充分だ。

生体マクスウェル協会に行って、換金しておこう。

万一に備え薬屋アヌーンで媚薬を購入しておくか。

あの女ののろけ話は長くてたまらんが、腕は確かだからな。

かの勇者候補生を見事に陥落せしめて、今でも仲睦まじい。

正直羨ましいぞ。

 

「ねーねー、おじょーさん、こんなとこでぼんやりしちゃってどーしたの? 気分が悪いんだったら、俺らときゅーけいしに行く? いや行かねば。という訳ですぐに行こうよ。」

 

頭の悪そうなオスどもが、私を見ながらニヤニヤしている。

根拠の無い自尊心と卑屈な魂の複雑な絡み合いが見られる。

こんな輩たちになど抱かれたくないな。

抱くならあのオスがいい。

よーし、非常食にしよう。

いつもの廃工場にするか。

 

「ええ、いいわよ。」

「おお、やったね!」

「それでね、私、とってもいい場所を知っているの。」

 

ムハッ、と鼻息が荒くなるオスたち。

可哀想に。

全員昇天させるから、覚悟しなさい。

 

 

 

「平崎市内での行方不明者が微増、ですか。」

「ええ、ここ半年の間ですが、月におおよそ五、六人の割合で増加傾向にあります。」

 

マニトゥ平崎の事務所で、いつもの打ち合わせ。

マヨーネさんとお茶を楽しみながら、会話する。

仲魔たちとマリーさんはいつものひそひそ話だ。

 

「ショッカーの仕業じゃないんですか?」

「最近は控え目の傾向にありますが、ヤるときは渋谷や新宿や池袋でガッと捕獲していますね。彼らにしてはやり方が地味過ぎます。」

「メシア教の仕業じゃないんですか?」

「あそこは先ず入信させてから緩やかな洗脳を行い、しかる後に戦闘訓練を施します。やり方が違い過ぎますね。」

「テルス教の仕事じゃないんですか?」

「あそこは実力主義ですから、最初に登用試験があります。やり方が明らかに違い過ぎますね。そんなことを言われると、嘉屋さんに怒られますよ。」

「すみません、気をつけます。それで、第三勢力というか、既存とは異なる組織が出現してきたのでしょうか?」

「それを調べていただきたいのです。」

「警察官みたいですね。」

「港署が三度失敗していますからご注意ください。あ、これは内部情報なので、内緒にしてくださいね。」

「専門家の彼らが失敗とは、穏やかじゃないですね。」

「事件に関連した捜査員は、全員数時間分の記憶喪失になっていました。偶然で片付けるにはおかしいでしょう。」

 

 

 

ふむ、ニンゲンどもめ。

私を捕まえるつもりか。

くくく、甘い甘い甘い。

既にあのオスの学校へと編入出来たわ。

魅了を使って偽造すれば、案外簡単だ。

念のために戸籍なども改竄しておいた。

一族郎党の記憶も既に変更しておいた。

明日からは、あのオスとのらぶろまんすとやらを堪能しよう。

学校はいい。

若々しいエナジーに溢れている。

生体マグネタイトも貯め放題だ。

生体マクスウェル協会がこの街にもあればいいのに。

偉そうなオスの教員は既に私のしもべにしているから、必要に応じてコレに生体マグネタイトや車や金を出させたりしている。

過去の栄光にすがる愚かな暴力蛮族的オスで間抜けな権威主義者だが、表向き、国際競技大会出場経験者且つ名監督として名声だけはある。

こやつは利用し尽くしてくれよう。

メスをあてがう必要すら感じない。

 

お前はオス失格だ。

 

不良どもとねんごろになるがいい。

六人ほどあてがえばいいだろうな。

様々な証拠写真は写真部の面々に撮らせたから、何時でも追い落としにかかれるな。

ノリノリの撮影会に参加した写真部のメスたちは、何故かムハッと大興奮していた。

現代視覚研究会から参加したメスたちも大興奮しながら、撮影したり帳面に鉛筆を走らせたりしていた。

誇らしげに自らを撮影させるオスの教員。

あなここな愚か者め。

 

「何枚撮ってもいいんですよね!」

「はらいそはここにあったんだ!」

「姐さん、一生ついていきます!」

「ウホッ、もっともっと拡げて!」

「こんな風になっちゃうんだね!」

「資料! これはあくまで資料!」

「先生、彼氏と抱き合ってみて!」

「誘われ攻めをしてみて欲しい!」

「先生総受けの絵を描きたいの!」

「夏の新作はこれで決まりだわ!」

 

……喜んでもらえてなによりだ。

不要になったら、斬り捨てよう。

縄張りは『無事』他のヤツにかすめ取られたので、後はアレに任せればいい。

ただ、私の『従姉妹』となるニンゲンは不用心で底抜けにお人好しのメスだ。

なんだか心配にさえなってくる。

悪魔がそんなことを考えるだなんて。

私は悪魔だ。

ニンゲンなどではない。

元々楽天的なのか、そのニンゲンはいつもニコニコしている。

精々、このメスに悪い虫が付かないようにしてやろう。

こやつの好みのオスとまぐわらせてやらねばなるまい。

この部屋には、何故だか参考文献が山程あるのもよい。

一般書店では販売されていないようだが、別に構わん。

あのオスがこの私の虜になりさえすればいいのだから。

ただし、オス同士の文献が多いのはちと偏っているな。

間違えてしもべの教員と不良が一緒の写真を落として『従姉妹』に拾われたが、メスからこれが欲しいと懇願されて戸惑った。

結局進呈したが、あれでは子作りなど出来ぬことを知っておろうに。

 

 

 

「喰らえ! 必殺の電撃! ジオ!」

「箱車の体当たりを食らいやがれ!」

「取り敢えず、イナズマキーック!」

「メギドラオンで昇天しなさいな!」

「ええと、とどめの一撃で御座る。」

 

パンパンパンパンパン、と火薬の発する音と共に三〇口径弾が大きな獣型悪魔を引き裂き、それはドウと倒れた。

 

「グアア、せ、折角、あ、あやつから縄張りをかすめ取ったというに、く、口惜し……や!」

「えっ?」

 

悪魔が消滅してゆく。

だが。

なんだ、今の台詞は?

悪魔の居た位置には宝石。

アクアマリンが転がっていた。

宝石商に持って行けば、鑑定してくれるか?

 

「サマナー、それはまた今度ラルフの店に持っていこー。でね、でね、こっちに被害者の山があるよー。めっちゃくっさいけど。」

「どうする? 黒おじさんの呪法を真似て、擬似的にゾンビ化させて歩かせてみようか? あ、手足が無いのもいるわ。ずいぶん食べ方が粗雑ね。」

「まあ、手当たり次第にマルカジリしまくればこうなるかな。」

「衰弱していたところを悪魔に喰われた訳ですね、ご主人様。」

「ちょっと待ってください。」

「「「「えっ?」」」」

「これ、おかしくないですか?」

「ご主人様、取り敢えず港署には遺体発見の連絡をします。連絡相手は、捜査一課の遠嶋刑事がいいでしょうね。」

「あ、はい。……ええとですね、今回の悪魔の行動には矛盾が見られます。先ず、衰弱させて生かさず殺さずにしていたように見える状況だったのに、全員乱雑に食い散らかされています。前者は慎重な性格を意味し、後者は粗暴な性格を窺わせます。第二に……。」

 

 

この学校の生徒たちの間では、現在放送中の『真サムライ転生~四匹に斬られる!』というテレビドラマが大人気だ。

メスにもオスにも教員にも人気がある。

三〇年ほど断続的に続いている、ハイパー時代劇だとか。

現代人が江戸時代の侍や御家人などに転生してハチャメチャをする番組。

始まった当初は斬新過ぎると言われていたが、今では定番となっている。

現在放送されているのは、六期か七期だったか?

人気次第で二年くらい続くから、時折役者が交代している。

交代理由は大抵斬殺なので、あちこちでネタ化されてさえいる。

交代した登場人物はその兄とか弟とか姉とか妹とかを名乗るから、どんだけ一族がおんねんとわざわざ詳細に考察したニンゲンもいるらしい。

夕方と夜遅くには平崎市の東亜放送で過去の作品が再放送されているし、この小さな街でもその放送局の電波が受信可能だ。

東亜放送はマニアックな映像作品を次々に世に送り出している、前衛的なメディア。

少年と一緒にその時代劇を見ていて、彼が興奮しているのを見るのは大変好ましい。

 

 

 

悪魔は倒したが、なんだかおかしい。

マヨーネさんや遠嶋刑事には自身の考えを伝えたが、どうやらうやむやになりそうだ。

いわゆる『政治的判断』なのだろう。

気に入らんが、仕方ない。

そんなことより温泉に行くとしよう。

気分転換にと、温泉旅館の宿泊券を貰ったのだ。

甲州の温泉町。

『太郎様の隠れ湯』が複数存在する、山の中の小都市。

そこでゆったり過ごすのだ。

うちの一族郎党もノリノリ。

平崎駅からは片道一五〇〇円、往復二八〇〇円で直通バスも走っている。

高速道路を使って行くのもいいだろう。

江戸時代の商家や明治大正昭和初期の名建築も、街のそこかしこにある。

下手な開発競争に巻き込まれなかったために往時の姿を今に残し続ける。

『ろまん灯籠』というパン屋の三代目主人は太宰治かぶれで、初代は当人と親交があったという。

地元民に親しまれる名店ナリ。

店の名前も太宰の著作からだ。

実際、太宰治直筆の落書きがあったり、彼が好んだというフランスのバケットに似たステッキパンがここで買える。

ラスクパンやカタパンも旨いそうだ。

黒石の林檎を使った惣菜パンも有名。

そうした旨い店が、その小さな温泉町にはちらほらあるという。

今から行くのが楽しみだ。

 

 

 

うふふ、とうとうこのオスは私のモノだ。

思った以上の満足感を得られて嬉しいぞ。

アヌーン特製の媚薬を使うまでも無かったのはよかった。

あれは下手をすると『壊れる』しな。

誰にも渡さんぞ。渡してなるものか。

オスの唇を放課後にむさぼっていたら、それを見た同級生のメスから「エッチなのはいけないと思います!」と言われた。

なにをほざくのだ、ニンゲンのメス。

お前の唇も吸うてやろうか、と言ったらなんと気絶した。ヤワ過ぎる。

何故かその後、『姐さん』と呼ばれるようになった。意味がわからぬ。

私を姉御扱いする、舎弟まで出来た。

『狂犬』と呼ばれる凶猛なオスらしいが、武闘派の悪魔たちに比べたら仔犬のようなものだ。

まあ、今後精々利用してやろう。

あの駄犬よりはマシだろうしな。

ちょっとやんちゃなヤンキーども二〇名程を失神させただけなのだが、それでいたく感心されてしまった。

あの時の生体マグネタイトの集まり具合はなかなかよかった。

このオスがツガイを求めていたので、どんなメスがいいのだと問うたらモジモジしていた。

ハッキリせんか。

取り敢えず、手近なメスの教員をあてがう。

そのメスもツガイが欲しいと常々ぼやいていたから、丁度よかろうて。

双方ともに損は無いだろう。

好きなだけまぐわうがいい。

ただ、年齢差が大きいので、舎弟の経験値を高める相手としておこうか。

メスの教員は、その内あの高慢ちきなオスの教員に嫁がせるとしようか。

アヌーン特製の媚薬もある。

舎弟の次の相手は誰にしようか?

手間ではあるが、そういったことも視野に入れておこう。

上級生か、同級生か。

 

山梨県八十稲庭(やそいなにわ)市。

それが現在私の住む街の名前となる。

神奈川県平崎市への直通となる高速バスがあるから、意外と利便性がいいとも言えよう。

江戸時代から塩や魚の干物や乾物などを運んでいた関係で、今でも交流があるとか。

その昔は軽便鉄道が走っていたそうで、それを復活させようとの草の根運動もある。

オスが矢来銀座にいたのは、遊びに来ていたからだったとか。

うむ、これは運命だな。

ここはのんびりとした感じの、山間(やまあい)にある街だ。

八十桃と温泉が有名で、そこそこの観光客がこの街を訪れる。

『桃と温泉の街』が謳(うた)い文句で、温泉が流行していた頃はかなり景気がよかったそうだ。

戦前の名建築がちらほら残っていて、国の重要文化財も数件ある。

同級生が若女将をしている温泉旅館もそのひとつだ。

『金はこういうところに使いなさい』と、大正頃の当主が儲かっている最中に宮大工の手で大改修させた。

結果的に今では使えないような木材がふんだんに使用されており、今でも皇族指定宿泊施設だ。

今度オスと、温泉でしっぽり過ごしてみたいものだな。

 

最近出来たばかりのショッピングモールが、市内及び県内の話題を集めている。

湯根洲百貨店が資本を出しているリュネスは大型商業施設だ。

近隣諸藩のニンゲン共が買い物に来るので、生体マグネタイトの集まりもいい。

購買人口は、おおよそ三〇万ほどを予定しているのだとか。

地元の商店も複数中に入っていて、彼らと連携しようという動きが感じられる。

私はそこの花屋でアルバイトをしており、店長の息子であるオスと頻繁に会う。

そういう風に、状況を仕立ててみた。

こういうのが仲を深めることになる。

『リュネスは毎日若々しく新しい発見のあるお店!』が謳い文句とか。

まあ、そんなことはどうでもいいな。

愛こそ、すべて。

このオスを私は愛し抜いてゆくのだ。

なあ、ヨウスケ。

 

 








某日某所

「さあ、僕と握手しましょう!」
「えっ、何故ですか?」
「え……その、お近づきの印に。」
「あの、そういう趣味はありません。」
「あっ、いえ、その、違うんですよ。」
「あの、そういうことをいろいろな方になさっているんですか?」
「え? ええ、こんな雨の日は、握手くらいして気分転換されては如何かと。」
「すみません、意味がわからないです。」
「あっれー、ファントムさん、どうしたんですか?」
「こちらの方がオレの手を握りたいって言われていまして、絶讚困惑中です。」
「え、その、ちが……。」
「あー、僕も女子高校生とか美人ニュースキャスターの手を握るんなら兎も角、野郎の手は厭ですねー。」
「そういう訳で、申し訳ありませんが貴方の希望に添えません。」
「僕もやだなー。」
「え、あの、ちが……。」


「あ~あ、誰も握手してくれない。この仕事は悪手だったかな? アルバイト先を変えよっかなあ。」



※作中のとある温泉町は、アニメーション版の群馬県某市ではなくゲーム版の山梨県某市を参考にしました。
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