6月5日
東シナ海、尖閣諸島沖
さつまでは、臨検に備えで乗り込み準備をしていた。
その時
さつま、艦橋
さつまの見張り員「貨物船からロケット弾!?」
美由紀「何!?」
正体不明の武装船から行きなり、RPG-7(ソ連製携帯式対戦車ロケット弾)がさつまに向かって放たれた。
重雄「回避しろ!!」
守「間に合いません!!」
RPG-7の攻撃を回避しようとしたが、間に合わず、さつまの後部に命中した。
『うわぁ!?』
衝撃が艦橋にも伝わり、乗員達は困惑する。
さつまの見張り員「後部に着弾!」
さつまの機関長『此方機関室!!機関損傷!!』
機関室からの連絡でRPG-7の一発の直撃で機関が損傷した。
美由紀「何ですって!?」
重雄「総員戦闘配置!」
被弾後、直ぐに配置に着く。
美由紀「通信主!急いで各方面の各艦に連絡を!」
さつまの通信主「りょ、了解!」
正体不明の武装船との遭遇と戦闘に入った事を急いで、各方面に散開している各艦に知らせる。
重雄「機関室!・・・機関の損傷状況は如何か?」
重雄は、機関の損傷状況を聞く。
さつまの機関長『損傷は軽微ですが・・・速度は、低速しか出せません。』
機関の損傷は軽微だったが、速度が低速しか出せなかった。
重雄「そうか・・・」
守「低速では、回避は不可能です!!」
美由紀「副長!・・・相手が携帯式のロケット弾で撃ってくるなら、全速でも、どのみち回避は不可能よ!」
例え全速でも相手がRPG-7を撃ってくる以上、回避は不可能だった。
正体不明の武装船、甲板
謎の集団手下B「やったぞ、命中だ!!」
謎の集団手下C「良いぞ、どんどん討って!!」
一発目の命中で勢いづいたか、正体不明の武装船から、RPG-7を続けて撃ってきた。
さつま、艦橋
さつまの見張り員「貨物船から再びロケット弾!!」
美由紀「迎撃せよ!!」
回避が不可能なら迎撃するしかない。
正体不明の武装船から次々と発射されるRPG-7を20mmファランクス及び12,7㎜機関銃で迎撃するが、更なる攻撃がさつまの右舷すれすれに着弾した。
美由紀「この衝撃は!?・・・砲弾!?」
RPG-7に続いて15cm砲弾を連射して来た。
正体不明の武装船の攻撃にさつまも負けていられず
20mmファランクス及び機関銃でRPG-7を迎撃するが、撃ってくる15cm砲弾の方は、忽ち、さつまの至る各所に着弾し、応急要員が対処に当たっていた。
守「くそ!好き勝手に撃ちやがって・・・艦長、反撃命令を?」
重雄「は・・」
重雄が攻撃命令を出そうとしたが
美由紀「待って艦長!・・・攻撃は、控えるべきよ!」
突然、美由紀が攻撃を控えるよう言う。
守「何故ですか中佐!?・・・このままでは、被害が拡大します!!」
美由紀「副長!冷静に考えなさい!・・・相手は、ブルーマーメイドが登録している貨物船に偽装していた・・・と言う事は、もしかしたら・・・相手の艦には、その船の乗員が捕らわれてるのかもしれないわ!!」
美由紀の言う通りである。
攻撃してくる正体不明の武装船の船底には、ブルーマーメイドが登録している貨物船の乗員が捕らわれていた。
彼らは、佐世保に向かう途中、フィリピン沖で正体不明の武装船に襲われ、船は、ばれない様に撃沈され、しかも積まれていた物資は強奪され、乗員達も捕虜にされてしまった。
ついでに、何故此処に正体不明の武装船が来たか
それは、先、さつまが遭遇した中国漁船と関係があった。
正体不明の武装船が偽装して、貨物船を襲い積まれていた物資を強奪し、乗員達も捕虜として捕まえて、国境すれすれで取引相手の漁船と合流。
強奪した物資を渡し、捕虜にした乗員も商品として、裏市場に売られる予定でいた。
だが、さつまとの遭遇が彼らにとって思わぬ事態を招じた。
守「では、如何すれば良いんですか?・・・このままでは、被害が拡大するばかりです!!」
乗員を人質に取られている以上、攻撃は出来ない。
しかし、このままでは、被害が拡大する。
美由紀「通信主!各艦には、此方の状況は連絡したの?」
さつまの通信主「はい中佐!・・・既に弁天や浪速が此方に急行中ですが・・・到着まで時間掛かりますと!」
救援に向かっている真冬の弁天と浪速の到着まで時間が掛かる。
それまで、此方は、持ちそうにない状態だ。
美由紀「如何すれば良いの・・・」
他の手がないか、美由紀は、悩む。
接触から僅か30分で、戦闘は泥沼化していた。
正体不明の武装船からは、次々とRPG-7や15cm砲が連射され、さつまからは、20mmファランクス及び12,7㎜機関銃で迎撃するが、15cm砲弾が何ヶ所かに命中して応急班は、あちら此方で手を焼いている。
更に応急員に向かって、連中がAKM自動小銃を撃って来ている。
反撃したくても人質を取られている為できない。
何とか打開策はないのか
その時
「権藤中佐!!」
艦橋に駆け上がってくる1人の男がいた。
美由紀「古野間隊長!?」
艦橋に駆け上がってく来たのは、第21対生物特殊部隊第6小隊隊長の古野間 卓少尉だった。
古野間「中佐!・・・我々に武装艦への強襲乗り込みをさせて下さい!!」
何と、古野間は、特殊部隊を率いて、正体不明の武装船に強襲乗り込みをするという。
守「強襲乗り込み!?それは、危険だ!!・・・相手は、15cm砲を連射しているんだぞ!!」
古野間「この状況を打開するには、それしかないでしょう・・・一か八か・・・賭けに出るべきです!!」
古野間の言う通り、人質を取られている今、反撃もできない。
なら、特殊部隊を送くって、一か八か強襲を掛け、この状況を打開するしかないだろ。
しかし、相手は、15cm砲やAKM自動小銃を連射している今、特殊部隊をボートで送ろうとしたら、忽ち餌食に成る。
美由紀「それなら良い方法があるわ!」
『えっ!?』
それに対し美由紀は、ある策を提示する。
美由紀「接舷強襲よ!」
『接舷強襲!?』
美由紀「そう!・・・全速で武装艦に体当たりで突入し、白兵戦を仕掛けるの!」
接舷強襲とは、相手の艦に全速で突っ込んで、相手の艦に白兵戦を仕掛ける方法。
守「それなら、行けるかもしれません!!」
美由紀の策に守は賛同するが
重雄「しかし中佐!・・・機関が損傷して、速度も低速しか出せません・・・接舷強襲など不可能です!!」
最初の攻撃でさつまの機関は損傷している。
その為、低速しか出せないうえ、今は、応急処置の作業中である。
この状態での接舷強襲は不可能である。
美由紀「ん・・・・艦長!・・・一瞬だけど・・・機関を全速出せる?」
美由紀は、一瞬だけ全速出せるか如何か問う。
重雄「ちょっと待って下さい!!」
重雄は、機関長と相談する。
重雄「ん・・・・ん・・・・・分かった・・・10秒だけなら、出せます!!」
機関長と相談した結果、10秒だけなら機関を全速にできると言う。
美由紀「それだけあれば、十分よ!・・・古野間隊長!」
古野間「はっ!」
美由紀「隙を見て、奴らの武装船に接舷強襲を行う!・・・接舷したら、直ぐに突入し、各所を占拠する事!・・・良いわね!!」
古野間「任せて下さい!!」
古野間は、艦橋を降りる。
美由紀「艦長、奴らに気づかれない様にゆっくり、艦首を敵艦に向けて!・・・私の合図で機関を全速に・・・」
重雄「分かりました。」
こうして、両者が戦闘している中、一か八かの接舷強襲作戦が実行されようとしていた。
さつまは、気づかれない様に艦首を正体不明の武装船にゆっくり向け、機関室では、機関の一応の応急処置は終わり、艦内では、古野間率いる特殊部隊が89式 5.56mm小銃やM84スタングレネード(閃光手榴弾)などを装備し、接舷強襲に備える。
一方、正体不明の武装船の方は
正体不明の武装船、船橋
謎の集団幹部「一体奴らは、何をする気だ?」
謎の集団手下A「こっちには、人質がいるんだ!・・・下手な真似は、できないだろう。」
正体不明の武装船の乗員は、さつまが行おうとしている接舷強襲に全く気づかずに、攻撃を続ける。
やがて、さつまの艦首が正体不明の武装船に向き
さつま、艦橋
美由紀「今よ艦長!」
重雄「両舷全速前進!!」
美由紀の号令のもとさつまは、正体不明の武装船に全速で突入する。
正体不明の武装船、甲板
謎の集団手下B「や、奴らの艦が突っ込んでくるぞ!?」
謎の集団手下C「ひ、怯むな!!撃って!!撃って!!」
さつまの体当たり突入に正体不明の武装船の乗員は慌てて応戦する。
さつま、艦橋
美由紀「主砲!・・・甲板の15㎝砲に向け砲撃せよ!」
さつまの砲雷科「目標ロックオン!ファイヤー!!」
さつまの5インチ単装砲が甲板の15㎝砲を粉砕する。
重雄「総員!衝撃に備え!!」
さつまは、正体不明の武装船の右舷に体当たりした。
美由紀「突入!」
さつま、甲板
古野間「行くぞ!!」
右舷に接舷と同時に古野間率いる特殊部隊が正体不明の武装船に強襲を仕掛けてきた。
正体不明の武装船の乗員が制圧部隊に対して応戦し、双方で銃撃戦になった。
正体不明の武装船、甲板
古野間「閃光手榴弾を投げろ!!」
GF隊員「これでもくらぇ!!」
敵の抵抗が激しく、閃光手榴弾を投げ、活路を開く。
謎の集団手下『うわぁ!?』
閃光手榴弾を受けて、正体不明の武装船の乗員は、目と耳を潰され、その場で体勢を崩す。
古野間「今だ!!」
その機を逃さず体勢を崩した乗員を拘束する。
突入から5分、古野間達は、あっという間に甲板を制圧し、続いて、二手に分かれ一方は、船橋にもう一方は、船内えっと向かう。
途中、抵抗を受けたが、特殊部隊には、敵わず次々と投降していった。
さつま、艦橋
美由紀「如何やら、成功ね!」
特殊部隊の突入制圧を美由紀達は、艦橋で見守っていた。
正体不明の武装船、船橋
謎の集団A「駄目だ!あっちこっち制圧されている。」
謎の集団幹部「うう・・・」
各所を次々と制圧されて、慌てふためく中、船橋のドアが吹っ飛ばされ、古野間達が突入してきた。
古野間「動くな!!武器を捨てろ!!」
謎の集団幹部「う、撃たないでくれ!!・・・こ、降伏する!!」
直ぐに武器を足元に捨て、手を挙げて降伏した。
さつま、艦橋
さつまの通信主「古野間隊長から連絡!・・・艦橋を制圧したとの事です。」
美由紀「如何やら・・・ひとまず終わった見たいね・・・」
最初の戦闘からわずか10分で艦橋を制圧したことにより、正体不明の武装船との戦闘は、ひとまず終結した。
さつまの被害はひどいあり様であった。
機関は損傷し、しかも無理な全速と衝突の衝撃で修理は不可能な為、自力での航行は出来なくなった。
また、敵の15㎝砲弾が命中している為、至る所穴だらけで、飛行甲板もめくれ上がった状態だった。
負傷者は、50人程度で死者はなかった。
一方、艦内に突入した特殊部隊は、船底へと辿り着く。
正体不明の武装船、船底
GF隊員「おい、此処に誰かいるぞ!!」
船底を調べてみると、ある部屋に人の気配がした為、扉を突き破る。
GF隊員「動くな!!」
ノルウェー船の乗員「撃たないでくれ!!・・・我々は、ノルウェー船の乗員だ!!」
扉を突き破ると其処には、ノルウェー船の乗員達が閉じ込められていた。
ノルウェー船の乗員だと聞いて、銃を伏せる。
GF隊員「船長は、誰だ?」
奥から船長がやってきた。
ノルウェー船の船長「私が船長だ!君らは?」
GF隊員「我々は、ブルーマーメイドだ!!君たちを救助に来た!!」
ノルウェー船の乗員「助かった!!」
ノルウェー船の乗員「家に帰れるぞ!!」
ブルーマーメイドの名を聞いて、ノルウェー船の乗員達は涙を流して喜ぶ。
よく見ると、彼らの衣服は、ボロボロで食事もロクに与えられなかったか、体もボロボロで、栄養失調を起こしている者もいた。
直ぐに救護班を呼び、担架でさつまの医務室へと運び出され、救助された乗員もさつまに収容された。
やがて、日が昇り、真冬の弁天と浪速が救援に到着し、正体不明の武装船に接舷する。
真冬が宙返りで正体不明の武装船の甲板に着地、美由紀が出迎えに来た。
正体不明の武装船、甲板
真冬「ブルーマーメイドの宗谷真冬だ!!救援に来たぞ!!」
美由紀「ご苦労、宗谷二等監督官!でも、もう戦闘は終わったわよ!」
真冬「くそ!!遅かったか・・・」
遅れた事に真冬は、悔しがる。
美由紀「でも、来てくれただけでも嬉しいわ!・・・今此方の負傷者と救助した乗員の負傷者の手当てで手がいっぱいなの!・・・それに拘束した連中を其方に引き渡したいんだけど・・・」
真冬「おお、任せろ!!」
美由紀「助かるわ!」
真冬「それにしても酷くやられたな・・・」
美由紀「仕方ないわよ!・・・人質を取られて、しかも不意打ちを受けたんですもの・・・これぐらいの被害は当たり前よ!・・・死者が出なかった事が何よりの喜びよ!」
真冬「へ・・・」
美由紀「何ですか、宗谷二等監督官?」
真冬「以外とそんな事言うんだな、あんたも!」
美由紀「如何いう意味?」
美由紀は、真冬を睨む。
真冬「い、いや、何でもないよ・・・」
真冬は、向こうへと逃げて行く
美由紀「何あれ!・・・失礼な子ね!」
恐らく美由紀が若い頃の母、真雪の姿に見えたのだろう。
それから間もなく、ながおか、とよだが合流。
ノルウェー船の乗員を弁天や浪速に移乗させ、鹵獲した正体不明の武装船を弁天が曳航した。
損傷したさつまは、ながおかが曳航して横須賀へと帰還する事になった。
6月13日
国土交通省、廊下
真霜は、正体不明の武装船を制圧した事を海上安全整備局に報告し、横須賀のブルーマーメイド庁舎に戻ろうとしていた。
そんな時
真霜「ん!?」
真霜の前にある男が立ちはだかった。
邦夫「これは、これは、宗谷監督官!・・・武装船の制圧、お見事でしたね!」
男の名は、野田邦夫
ブルーマーメイドと並ぶ、ホワイトドルフィンの安全監督室室長で階級は、一等保安監督官、言うなれば真霜がブルマーメイドの最高指揮官ならば邦夫は、ホワイトドルフィンの最高指揮官でもある。
邦夫は、真霜に皮肉を言う。
真霜「・・・・」
真霜は、そんな邦夫を無視して、先へと向かう。
邦夫「酷いな宗谷監督官!・・・許婚である男を無視するとは・・・」
邦夫は、そう言って、真霜を止めるが
真霜「ふん!・・・冗談じゃないわ!!・・・誰が懐かしいと思うの!・・・それに貴方とは、もう許婚でも何でもないわ!!・・・今は、忙しいの!・・・失礼するわ!!」
実は、真霜と邦夫は、かつて、許婚の関係であった。
だが、今は、もう許婚ではない。
理由は、いずれ説明する。
とは言え、真霜は、邦夫を振り切ろうとする。
邦夫「そう言えば!・・・お前の部隊に・・・妙な連中が配属されていたな?」
邦夫は、龍之介達の事を出す。
真霜「ん!?」
邦夫「しかも、その指揮官とお前は同居しているんだよな・・・」
真霜「えっ!?」
何処で知ったかは、不明だが、龍之介と薫が宗谷家に同居しているのを邦夫が知っていた事に真霜は驚愕する。
邦夫「まあどうせロクでもない奴なんだろうな!・・・そんな奴の面倒を押し付けられるとは・・・お前も付いてないな・・・」
邦夫は、龍之介の事を馬鹿にし、更にその面倒を押し付けられた真霜も馬鹿にする。
真霜「そうね!・・・少なくても、貴方見たいに愛人を作る人より、ましかもね!」
それに対して、真霜は、邦夫の弱みを言って、逆に邦夫を馬鹿にする。
邦夫「何だと!?」
それを聞いた邦夫は、態度を露にする。
真霜「御免なさ~い!!・・・私、貴方と違って、遊びで付き合わないんで・・・では、失礼します!!」
そう言って、真霜は、その場を去る。
邦夫「ふん・・・まあ良い!・・・どうせお前は・・・俺の元に戻ってくるのだからな・・・」
去っていく真霜を見て、邦夫は、そう言う。
何れ邦夫は、龍之介や真霜の前に立ちはだかる事になる。
6月14日
横須賀基地
この日、ながおかが航行不能になったさつまを曳航しながら、横須賀へと入港した。
薫「あっ・・・!?」
帰還したさつまを見て、薫達は驚いていた。
機関は損傷し、更に至る所穴だらけ、飛行甲板もめくれ上がっている。
次郎「酷い有様だな!」
薫「そうだね、それよりもこんな状態で、接舷強襲した事が驚きだわ!!」
次郎「そうだな!・・・聞いたところ、機関も損傷してたって話だぜ!!」
薫「えー!?・・・それで接舷強襲何て!?・・・やっぱり、中佐は、私達より凄いわ!!」
その後、さつまは、修理の為、ドックに入ろうとしたが、空いているドックが無かった為、仕方なく、横須賀女子海洋学校の地下ドックに入渠する事になった。
ドックに入渠する時、学生達が珍しそうに入渠するさつまを見て、驚いていた。
如何やら、学生艦以外の艦が入渠するのが珍しいんだろう。
さつまの修理は、数ヶ月は、掛かるらしい。
それから、今回の活躍で美由紀にブルーマーメイドから感謝状と勲章を贈られるそうだが、美由紀は、これを丁寧にお断りした。
何故、お断りしたか理由を聞くと
美由紀「私は、あくまで任務を遂行したまで、感謝状を贈られる程の事はしていないわ!!」
流石は、美由紀だった。
次回は、岬 明乃の登場です。