ハイスクール・フリート Gフォース   作:首都防衛戦闘機

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第18章 ブルーマーメイドフェスター 前編

8月

 

ブルーマーメイドフェスター

 

それは、ブルーマーメイドが主催する一大イベントである。

 

当日は、普段一般人は立ち入り禁止となっている基地の一部を開放して、BPF隊員達が案内をしたり、使用艦艇も基地同様、一部を一般開放したりする。

 

この他にも音楽隊の演奏やパレード、スキッパーショー、ゲストで呼んだアイドルショー、一般客の参加のアトラクションに縁日では定番の露店も出店し、またブルーマーメイドフェスター限定のグッズの販売など、文字通り、当日は基地がお祭り騒ぎとなる。

 

また、ブルーマーメイドだけではなく、横須賀女子海洋学校の生徒達も参加し、ブルーマーメイドの先輩方に負けじと、教育艦の一般開放や露店を出す予定となっている。

 

千葉県、館山港

 

一方、Gフォース西部方面艦隊は、ブルーマーメイドフェスターに備え、艦隊を一時的に横須賀基地から館山港に本拠を移した。

 

 

空母大鳳、艦橋

 

龍之介「ああ・・・いくらブルーマーメイドフェスターとはいえ・・・・こんな所に避難するとは・・・」

 

功「仕方ないですよ・・・極秘とは言え、我が艦隊を一般人に見られる訳にいきません。」

 

Gフォース西部方面艦隊は、ブルーマーメイドで極秘になっている為、ブルーマーメイドフェスターの時に一般人に見られる訳にもいかない。

 

其処で、横須賀から離れた館山湾に停泊する事になった。

 

此処なら、ブルーマーメイドの管理下の基地だから、一般人に見られる心配はないだろう。

 

龍之介「そんな事は分かっている。」

 

極秘にしている事は、龍之介も分かっている。

 

龍之介「唯、俺的には、邪魔者を基地から一時的に追い出したとしか思えないんだが・・・」

 

功「えっ?」

 

龍之介「最初の任務で大規模な救助作戦をしたり・・・この前の仮想巡洋艦事件を解決したりで、連中から活躍の場を奪っているから・・・連中がこっちの内情を理由に一時的に追い出したんじゃないのかな・・・」

 

龍之介達が余りにも活躍しているから、ブルーマーメイドの連中が嫉妬して、こっちの内情を理由に一時的に追い出したんじゃないのかと思った。

 

功「考え過ぎでしょう・・・」

 

龍之介「如何かな・・・」

 

功「ん・・・」

 

龍之介「そうだ!?・・・これっと言った任務もないから・・・停泊している間、全部の艦載機の総点検をして置こう!!・・・此処に飛ばされて、半年!・・・そろそろ全機を点検しないとな!」

 

うさばなしに停泊している間、空母大鳳では艦載機の解体整備を行う事にした。

 

山崎整備班長の指示のもと、整備員達は艦載機を格納庫に下し、機体を分解し、一つ一つ部品を整備する。

 

整備中、手空き乗員は、半舷休暇になった。

 

宗谷家、龍之介の部屋

 

龍之介「何!?ブルーマーメイドフェスターに行かないかだと・・・」

 

薫「そう!・・・折角のイベントなんだから・・・当日は、はやてちゃんやなのはちゃん、フェイトちゃんも行くよ!・・・一緒に行こうよ兄さん!」

 

薫は、龍之介にブルーマーメイドフェスターに行かないかと誘うが

 

龍之介「折角だが、遠慮する。」

 

龍之介は、行くのを断る。

 

薫「何で?」

 

龍之介「俺は、お前らが遊びに行っている間、艦隊の留守番をしとかなきゃならない。」

 

龍之介は、薫達が遊びに行っている間、艦隊の留守をしとかなければならなかった。

 

薫「そんなの参謀に任せれば良いじゃないの!!」

 

薫は、功に任せれば良いじゃないと言うが

 

龍之介「薫!!俺の立場は何だ!?」

 

それを聞いた龍之介は怒り、自分の立場は何なのか問う。

 

薫「か、艦隊の指揮官です・・・」

 

龍之介「そうだ!・・・その指揮官が!・・・仕事で残っている隊員をほったらかして!・・・自分だけ遊びに行く訳には、いかないだろう!!」

 

龍之介は、Gフォース西部方面艦隊の指揮官であり、その指揮官が残っている隊員をほったらかして、自分だけ遊びに行く訳には、いかなかった。

 

薫「あっ!?」

 

薫もその事に気づく。

 

龍之介「権藤中佐も行かないみたいだから・・・俺も残らなければならない・・・俺が言っている事・・・分かるよな?」

 

龍之介は、その他に残っている美由紀達を抑えると言った使命もあった。

 

薫「そ、そうだね・・・御免なさい・・・」

 

それを聞いた薫は謝罪する。

 

龍之介「分かれば良い!!・・・その代わり、お前達だけで楽しんで来い!!」

 

薫「ありがとう。」

 

薫は、少し暗いながら、部屋を出る。

 

宗谷家、廊下

 

真霜「薫!?」

 

薫「ああ、真霜姉さん!?」

 

真霜「如何したの、暗い顔をして?」

 

薫「いいえ、唯兄さんにブルーマーメイドフェスターに一緒に行かな言って誘ったけど、断られたんで・・・」

 

真霜「ふ~ん、そうなの!」

 

薫「まあ、仕方ないですよね!・・・・指揮官は、留守をあづかる身だから・・・」

 

真霜「そうね・・・」

 

薫「それより、真霜姉さんもブルーマーメイドフェスターに行くんですよね?」

 

真霜「ええ!当日は、お母さんや真冬にましろも行くわ!」

 

薫「そうですか・・・まあ、ましろちゃんには、ブルーマーメイドになる為の良い勉強になるかも知れませんね!」

 

真霜「まあ、そうだと良いけど・・・」

 

真霜は、ブルーマーメイドフェスターで、真冬がまた、何か仕出かすかもしれないと不安になる。

 

薫「ん?」

 

薫は、真霜が何故不安になるか分からなかった。

 

ブルーマーメイドフェスター当日

 

横須賀基地

 

真冬「おい、シロ!ましろ!!・・・着いたぞ?起きろ!」

 

ましろ「ん、んん・・・・・・ふぁあ・・・・・・」

 

真冬に起こされて、ましろが寝不足ながら目を擦りながらスキッパーを降りる。

 

早朝から照りつける真夏の太陽と、吹き抜けていく海風。

 

此処、横須賀基地には。ブルーマーメイドフェスタに備え、滅多に見られない程の数の艦艇が集結していた。

 

ましろ「うんうん、今年も先輩方は皆、張り切っているな!」

 

一般客の入場開始まではまだ1時間以上あるこの時間だが、ブルーマーメイドの隊員達や横須賀女子海洋学校の生徒達も、開場の準備に所狭しと駆け回っている。

 

ましろはその光景を見ながら感心する様にそう言うと

 

真冬「先輩方と言うのはまだ気が早いな・・・シロが後輩になれるとは限らねぇんだぞ?・・・何しろお前の受験はまだこれからだ!」

 

真冬はましろの頭をくしゃくしゃと撫でながらツッコム。

 

ましろ「そんな事は分かってるって、姉さん!!・・・・良いじゃない、それくらい」

 

ましろは、真冬の手を払いのけながらムキになった様に真冬に言った。

 

いくら年が離れているとは言え、ましろも現在中学3年生。

 

いつまでも子ども扱いは嫌なのだろう。

 

真冬「まぁ、良いけどよ!・・・シロは肝心な所が抜けてっからなぁ!」

 

真冬がましろに哀れむ様な心配そうな目で語る。

 

ましろ(わ、私は抜けている訳じゃない!!唯ちょっと、運が悪いだけだ!!)

 

ましろは、自分は決して間抜けでは無いと心に主張する。

 

とは言え、受験の事を考えると、やはりプレッシャーを感じる。

 

曾祖母の代からブルーマーメイドを輩出していた宗谷家の娘の1人である自分が横須賀女子海洋学校を受験して落ちましたでは、洒落にならないし、あってはならない事だ。

 

ましろのそのプレッシャーとそれに打ち勝とうとする決意が空回りしない事を祈るしかない。

 

真冬「・・・いくら、母さんが校長だからって、贔屓はされないからな?」

 

ましろ「だから、そんな事くらい分かっているから!」

 

真冬は憤慨するましろを笑って手のひらであしらった。

 

やはり真冬にとって、いつまで経ってもましろは小さな妹なのだろう。

 

釈然としないものがありつつも、そんな真冬の態度には諦めをつけて、ましろは再び会場を見渡した。

 

続々と集まる艦艇。

 

その中には横須賀女子海洋学校の所属艦の姿もちらほらと見える。

 

ましろ「あれ姉さん?・・・武蔵の姿が見あたらないんだけど・・・・」

 

毎年楽しみにしているこのイベントだが、その中でも、ましろが一番の目玉といえる催し物があった。

 

それが『武蔵の体験航海』である。

 

旧大和型戦艦、現大和型超大型直接教育艦二番艦 武蔵

 

現在は、横須賀女子海洋学校に所属しており、成績優秀者だけが乗艦が許される艦。

 

ましろの姉である真霜と真冬がかつて横須賀女子海洋学校の学生の頃、艦長を務めていた艦で、同型艦の大和はブルーマーメイドの総旗艦であり母、真雪が艦長を務めていた。

 

将来を嘱望される宗谷家の娘に生まれたからには、横須賀女子海洋学校に入り、武蔵の生徒に、いや、むしろ艦長として座乗するべき、しなければ、したい、取り合えず武蔵に乗ってみたい、にならなければならない。

 

そんな気持ちが逸っている時に、「今年も武蔵の体験航海をやるそうだ」と聞き、数ヶ月も前から気もぞろぞろな状態が続いていた。

 

そんなましろにとっては憧れのある艦の姿が見えなかった。

 

真冬「あン?まだ来てねーか?何かトラブって到着が遅れるとは聞いてんだが・・・」

 

頭をかきながら武蔵がまだ会場入りしていない理由を零す真冬。

 

ましろ「トラブル?・・・・武蔵のクルーはエリート揃いなんじゃ?」

 

真冬「はっ、エリートだろうがなんだろうが海にはトラブルがつきもんだ!・・・とはいえ今回のは、武蔵自体のトラブルじゃない・・・同じくこのイベントに向かっていた艦が不意のエンジントラブルで立ち往生しちまってたんだと・・・それを近くにいた武蔵が、曳航してくる事になったって話だ!!」

 

ましろ「成程!」

 

真冬の話を聞き、ましろは武蔵の生徒達を感心した。

 

自分達にも大事な役目があるにも関わらず、困っている他の艦を見捨てない。

 

学業や技術だけではなく、武蔵の生徒は、その心根までもが素晴らしいのだ。

 

ましろは唯武蔵に乗る事ばかり考えていたが

 

ましろ(体験航海では、当前武蔵の生徒達の様子も見られる訳だ!!・・・その素晴らしい乗組員の先輩方には話しかけて見ても良いのだろうか・・・良いよな?・・・体験航海だもの・・・それくらいは許される筈!)

 

真冬「わくわくするのは結構だがシロ、先ずは、本部席に行くぞ!!」

 

ましろ「本部席?・・・・私は、早速見回ってきたいんだけど・・・」

 

武蔵以外にも見て回りたいものはたくさんある。

 

何より、この開場前の独特の雰囲気は、此処でしか味わえない高揚感の様なものがある。

 

真冬「良いから来い!!・・・あたしは母さんじゃねぇからな、シロを贔屓して、特別にブルーマーメイドとしての経験を積ませてやる!!」

 

ニヤリと笑う真冬。

 

夏の盛りだというのに、ましろの背筋には、雅に真冬の風が吹き抜けた。

 

嫌な予感しかしない。

 

此処は、戦術的撤退の一手。

 

逃げる、逃げよう、逃げるべき。

 

ましろ「やっ、やっぱり贔屓はよくないから、遠慮し・・・・にぎゅっ!?」

 

ましろが本能に従ってその場から逃げようとしたが既に遅く、いつの間にか、ましろは、真冬の手でがっしりと首根っこを掴まれていた。

 

ましろ(こういう時には、いつも思うのだが、私の不運は、真冬姉さんの下に生まれ付いた時から、既に始まっていたんじゃないだろうか?)

 

自分の不幸の始まりを思いながら、ましろは、真冬に開催本部へと引きずられていった。

 

ましろ「スケジュールの調整役!?・・・私が!?」

 

真冬の手で本部へと連行されたましろは、ブルーマーメイドフェスターのスケジュール調整の役を押し付けられた。

 

真冬「調整役つっても基本的には本部が決めた事を伝える!!・・・まぁ伝令役ってとこだな!」

 

ブルーマーメイドフェスター本部席にて真冬がましろに言い渡したのは、武蔵の入港が遅れた事によるスケジュールの変更を各部署に直接伝えに行けと言う事だった。

 

ましろ「そんなのいくらでも連絡する方法があるんじゃ・・・」

 

真冬「もちろんあるし、此方から連絡もする・・・だが、それは、こっちからの一方的なもんだ!・・・シロは、其処で出た問題点なんかを聞いて、こっちに折り返してくれりゃぁいい!!」

 

ましろ「それだって、電話でも無線でもできる様な・・・」

 

真冬「あのな、相手は人間なんだよ!!・・・予定が狂えば、それだけで不満が出る・・・それが一方的な命令なら尚更だ!!・・・だが、其処に実際に顔を付き合わせて、文句が言える相手がいれば話は変わってくる・・・それが人間ってもんだ!!」

 

ましろ「そ、それはつまり、私に緩衝材になれと?・・・」

 

真冬「スケジュールは、もうずれてんだ!・・・お前が早く調整してこねぇと、武蔵の体験航海もできなくなっちまうかもなぁ・・・」

 

ましろ「何その脅迫!?・・・くぅっ!・・・行けば良いんでしょ!?」

 

ましろは、真冬から、このままでは、武蔵の体験航海も潰れてしまうと脅しをかけられて渋々手伝う事になった。

 

真冬「おう、ちょっと待った!!これを着てけ!!」

 

ましろ「これは?・・・・」

 

真冬「お前があたしの名代だって、分かりやすい様にな・・・その格好じゃ一般客と見分けがつかねーだろ!!」

 

それは、やけに古いタイプの体育着だった。

 

横須賀女子海洋学校の校章と、大きく『宗谷』と書かれたゼッケンが付けられていた。

 

ましろ「これ、もしかして姉さんの?・・・何でこんな物を?」

 

ましろが「何でこんな物が?」と尋ねると、真冬は

 

真冬「アッハッハ、そりゃあ、初めから着せて手伝わせるつもりだったからに決まってるだろ!!」

 

と、悪びれる様子も無く、ましろに言い放った。

 

如何やら、トラブルが起きなくても何かしらの仕事をましろに手伝わせる気満々だった様だ。

 

ましろ「せめて制服にしてよ!!」

 

ましろの悲痛な叫びが開催本部の部屋に響いた。

 

真冬「アッハハ・・・!!」

 

ましろの抗議は真冬の笑い声と共に潰えた。

 

ブルーマーメイドフェスターのとある会場では

 

洋美「ん・・・・」

 

黒木洋美が機嫌を悪くしていた。

 

洋美の母「洋美、そう何時までも膨れてんじゃねっぺさ!!」

 

洋美「膨れてない!!」

 

洋美の母「まったく、この子ときたら・・・・」

 

そう言って嘆息する母親をじろりと一瞥する。

 

膨れているつもりはなかったが、洋美の機嫌は確かに悪かった。

 

今日は、朝起きた時から、映画でも観に行きたい気分だったのだ。

 

恋愛モノにしようか、アクションモノにしようか、幼馴染みの麻論にも声をかけるとするとやっぱりコメディとかになっちゃうのかなとか、洋美は、そんな事を考えていたら、「良いところに連れてってやる」と行き成りスキッパーに乗せられてやって来たのが、此処『ブルーマーメイドフェスター』だったという訳だ。

 

洋美(知り合いから招待状を貰ったからとの事だったが、お父さんは、一体私が今いくつだと思っているんだろう・・・中学3年にもなる娘が、両親とのお出かけにそんなにワクワクする訳ないじゃない・・・映画を観に行く予定がすっかり台無しだ!!・・・麻論にだって・・・・まあ、麻論とも別に約束とかしてた訳じゃないけど・・・)

 

洋美「私、1人で見て回るから・・・」

 

兎も角、機嫌が悪かった洋美は、両親にそう言い残して、さっさと1人で歩いてきてしまった。

 

両親がやれやれと溜め息を着くのを背中に感じて、ちょっぴり罪悪感は覚えたが、歩き始めた足は、今さら止まりはしなかった。

 

洋美「ん、しょう油の匂い・・・・」

 

その時、漂ってきた香ばしい匂いに、ふと首を巡らせる。

 

洋美は、その屋台ブースの方へと足を向けた。

 

一方、ましろは、スケジュールの変更で一番問題がありそうなのが音楽隊によるパレードだった。

 

ましろに限らず武蔵の姿を一目見たいと考える一般客は多い。

 

音楽隊によるパレードは最終地点を武蔵の前とし、其処で盛大に盛り上げた後で体験航海に参加する一般客の乗艦が始まる流れだ。

 

パレード自体が体験航海の時間に左右される上、パレードが通る箇所にある各ブースとも調整しなければならない。

 

ましろ「と言う訳で、連絡は来ていると思うのですが、何か問題点など有れば・・・」

 

BPF隊員「は、はぁ・・・」

 

体育着姿で現れたましろに面食らったのだろうがBPF隊員は、少し驚いた様子でましろの体育着の胸の部分に貼られた『宗谷』と書かれた名札を見て、「あっ」 と声を上げた。

 

BPF隊員「失礼いたしました!!・・・宗谷ましろさんですね!・・・姉君の真冬さんには大変お世話になり・・・」

 

ましろ「あのっ、そう言うのは良いので!・・・私は、唯の使い走りですから・・・」

 

年上の、しかも、BPF隊員に畏まった態度を取られ、恐縮するましろ。

 

BPF隊員「・・・・成程!・・・真冬先輩も格式張った事を嫌う豪放磊落な方でしたが、流石、その妹君と言うところでしょうか?」

 

ましろ「私をあんな傍若無人な人と一緒にしないでください!!」

 

BPF隊員「失礼しました!!」

 

BPF隊員は、ましろに敬礼し、謝罪するが、やがて、敬礼ポーズのまま口元を引きつらせ、肩がフルフルと震えている。

 

BPF隊員「ぷっ・・・・ちょ、ちょっと失礼・・・・ぷははっ、くーくっ・・・・ダメ、我慢できない!・・・アハハ・・・!やだ・・・!!可愛いっ!・・・ちっちゃい真冬先輩がいるぅ!・・・超可愛い・・・!!」

 

ましろ「は、はい?」

 

突然大爆笑したBPF隊員の態度に付いていけず、ポカンとした顔で大爆笑をしているBPF隊員を見ている。

 

BPF隊員「ちょっとちょっと!・・・真冬先輩の妹さんが来てるんだけど、超可愛いの!・・・皆来て来て!・・・よりによって、あの頃の体育着着ててさぁ!」

 

ましろ「あ、あの!?」

 

流れに全くついて行けないましろは、恐る恐るBPF隊員に声を掛ける。

 

BPF隊員「あ、御免なさいね!・・・私もそうなんだけど、うちの音楽隊って学生時代に真冬先輩にお世話になった子が何人かいてね!」

 

BPF隊員が理由を話すと、他のBPF隊員がましろの下に駆けよってきた。

 

BPF隊員「真冬先輩の妹さん!?」

 

BPF隊員「わぁ!!ホントに可愛い!!」

 

BPF隊員「今何年生?」

 

BPF隊員「何に乗ってるの?」

 

ましろ「えっと、あの・・・」

 

大勢のBPF隊員に囲まれてあわわと困惑するましろ。

 

BPF隊員「ばっか、妹さんまだ中学生だって・・・そもそもこの体育着も真冬先輩のお下がりだし!!」

 

『あの伝説の体育着!?』

 

BPF隊員らは、今、ましろの着ている体育着に驚いている。

 

それを聞き、真白自身も驚き、BPF隊員に尋ねる。

 

ましろ「伝説ぅっ!?・・・伝説って何が有ったんです!?姉は一体何を!?」

 

BPF隊員「宜しい!伝説の生き証人である我々真冬先輩の後輩ズが語り尽くしましょう!!」

 

ましろ(しまった!?)

 

ましろは、自分の発した言葉が悪手だと此処で気づいた。

 

しかし、既に時遅く、音楽隊の楽屋にはパイプ椅子が円陣で組まれ、ついでにお菓子と飲み物まで用意され、ましろは、逃げる事ができない状況へと追い込まれていた。

 

数十分後

 

ましろ「ええと、それでは、パレード時間前の人払いについてだけもう一度確認してほしいと言う事で・・・」

 

BPF隊員「はい!後は、此方で何とか出来ると思います!・・・それでは、ましろさん、真冬先輩にもよろしくお伝えください!!」

 

ましろ「ハハハ・・・・了解しました!!」

 

姉・真冬の話を散々聞かされたましろは、乾いた笑みを浮かべそう言った。

 

開場のアナウンスも、結局此処で聞く事になってしまった。

 

ましろ(相手が年上で、しかも複数だったとはいえ、私は、もしかしたら押しに弱いのだろうか・・・いやいや、そんな事では、宗谷家の娘は名乗れない!!・・・母や姉たちに並び立つブルーマーメイドになろうというのなら、そんなものに負けてはいられないのだ!!)

 

如何もましろは、押しには弱いのではないだろうかと自分自身でそう思ったが、それでは、この先、宗谷家の名を背負ってはいけないぞと自身を奮い立たせた。

 

BPF隊員「あっ、それと‥‥」

 

ましろ「は、はい!」

 

たった今、自分を奮い立たせたましろが、突如、BPF隊員にまた声を掛けられて、ビクッと身体を震わせるましろ。

 

BPF隊員「ましろさんに来てもらって正直助かりました!!・・・あの子達さっきまで『武蔵は、何やってんだ!!』とか不満たらたらだったので・・・」

 

BPF隊員は、小声でましろが来る前の楽屋の様子をこっそりと教える。

 

真冬の予想通り、かなり不平不満が溜まっていた様だ。

 

ましろ「・・・・それなら、姉が直接来た方が良かったかもしれませんね!!」

 

ましろは不満があるので有れば、彼女らが慕う真冬が来た方が、彼女らを喜ばす事が出来たのではないだろうかと思う。

 

BPF隊員「ううん、でもそれだとほら、プレッシャーが強すぎるから・・・」

 

苦笑するBPF隊員を見て、姉が自分を伝令役にした理由が分かった気がした。

 

確かに真冬が来れば、その場での不平不満は収まるが、彼女がその場からいなくなった時にまた再燃焼しかねない。

 

しかも1度目の燃焼以上に

 

そうなれば、現在の武蔵や航行不能になった学生艦の乗員である横須賀女子海洋学校の生徒にその矛先が向けられ、彼女らがブルーマーメイドになった時、新たな溝や確執を生む結果となる。

 

真冬は、それを防ぐ為にましろを伝令役としたのだろう。

 

普段の姉の様子からは信じられない考えの深さであるが、やはり真冬も宗谷家のブルーマーメイドなのだとましろはそう思った。

 

ましろ「っと、いけない!急がなくちゃ!!」

 

ましろは、音楽隊の楽屋を後にし、次なるブースへと急いで向かった。

 

その頃、屋台ブースでは、

 

横女の学生「いらっしゃいませー!!・・・其処の素敵なお姉さん、焼きトウモロコシなんて如何ですか?」

 

洋美「えっ!?」

 

横女の学生「す、素敵なお姉さん・・・・?」

 

焼きトウモロコシの屋台の売り子からの声で洋美は思わず、辺りをキョロキョロと見渡すが、売り子が言う「素敵なお姉さん」は自分の事を指しているのだと分かった。

 

横女の学生「そうそう、お姉さん、貴方ですよ!・・・あぁん、クールな瞳も素敵っ!・・・えっと、大学生とかですか?」

 

確かに洋美は、中学生にしては背が高いがよりによって大学生に間違われるとは。

 

そもそも、そう言って私を指さす屋台の人も、私よりせいぜい1、2年上という程度の女の人だ。

 

よく見れば、焼いてる人も、後ろで何か整理している人も同じくらいの女の子ばかり。

 

洋美(あれ、こういう屋台って大人がやってるって訳じゃないの?・・・ブルーマーメイドの人か、普通に業者とかが入ってやってるものだと思ってた。)

 

洋美「い、いえ、あの・・・・私、中学生で・・・」

 

横女の学生「へ・・・・?」

 

洋美「だからその、中学、3年生なんです・・・・御免なさい!!」

 

横女の学生「と、年下ぁっ!?・・・御免なさい!!・・・でも素敵なのは、ホントだから・・・焼きトウモロコシ!・・・どう!?・・・美味しいよっ!」

 

洋美「あ、あはは・・・・じゃ、あの、一本!」

 

互いに気まずい空気の中、洋美は、焼きトウモロコシを一本購入した。

 

横女の学生「ホント!?・・・ありがとうー!御免ねぇ、何か無理矢理買わせちゃったみたいで・・・」

 

売り子は、申し訳なさそうに焼きトウモロコシを洋美に手渡し、洋美は、売り子に焼きトウモロコシの料金を支払う。

 

洋美「いえ、あの‥‥この辺の屋台は皆高校生の方々がやっているんですか?」

 

洋美が辺りの屋台ブースを見渡すと、売り子の殆どは目の前に居る売り子と変わらない年代の子が多くセーラー服を着用している。

 

横女の学生「うん、あたしたち横須賀女子海洋学校の生徒なんだ!・・・毎年このブルーマーメイドフェスターにはこうやってブルーマーメイドの人達に交じってお店出したりしててね?・・・文化祭の予行演習みたいなノリで・・・」

 

売り子の横須賀女子海洋学校の生徒は何故、ブルーマーメイドの基地に高校生がいるのかを説明した。

 

洋美(横須賀女子海洋学校・・・・ブルーマーメイドの養成学校で有名なとこだよね。)

 

洋美も今年は受験生。

 

一応無難な進路希望は担任に提出してはいるけど、正直に言ってそれで本当に良いのかは、未だに考えあぐねているところだった。

 

洋美「あ・・・・もしかして!?」

 

焼きトウモロコシを齧りつつ、洋美は、ふと思い至る。

 

洋美(もしかして、お父さん達は、私が進路の事で悩んでるのに気がついて、今日此処に連れ出してくれたのかな・・・ん・・・・それは、無いか・・・そこまで繊細な両親じゃない・・・そんな事よりこの焼きトウモロコシ、本当に美味しい・・・トウモロコシ自体の甘みやシャキッとした歯ごたえもさる事ながら、これ結構いい醤油を使ってそうな気がする・・・それとも、何か良い出汁を合わせてる?・・・ちょっと知りたいな・・・でも、その為にあの屋台まで戻るのは微妙だし・・・・)

 

焼きトウモロコシの味はとても美味しかったのだが、高校の事と焼きトウモロコシに注意が集中していた為、周囲への注意が散漫になっていた様で、洋美は、艦と艦の連絡橋を渡ろうとした時だった。

 

ましろ「うわっと!?」

 

洋美「きゃっ!?」

 

洋美は、随分ぼんやりとしていたらしい。

 

洋美は突然現れた誰かにぶつかってしまった。

 

ぶつかった相手は、何とスケジュール調整をしていたましろだった

 

ぶつかっただけならまだ良かったけど、その拍子に焼きトウモロコシを手から離してしまった。

 

反射的にソレを追いかけて、焼きトウモロコシは、無事に落とさずに済んだのだが、洋美の身体の方はまだぶつかった衝撃から立て直しが出来ていない状態で橋の外へ落ちかけていた。

 

このままでは、バランスを崩して海へ落ちてしまう。

 

ましろ「おっと、危ない!!」

 

すんでのところで、ましろがサッと洋美の身体を掬いあげ、洋美は海へ落ちずに済んだ。

 

洋美は助かった後も目をぱちくりさせていた。

 

ましろ「ぶつかっちゃって御免なさい!!大丈夫?・・・怪我はない?・・・痛いところは?」

 

洋美「は、はぁ・・・・大丈夫です!!」

 

ましろ「そう、それなら良かった!!」

 

洋美が無事だと分かると、ましろは、ホッとした様子で笑みを浮かべた。

 

その笑みを見て、洋美の胸はドキッと高鳴る。

 

ましろ「それじゃ、急いでいるから、本当に御免ね!!」

 

そう言って、ましろは、颯爽とその場を去って行く。

 

洋美は、ましろの後ろ姿を呆然と見ていたが、そしてその姿が見えなくなってからハッとする。

 

洋美「何で、体育着?・・・じゃなくて、結構危なかったし、もうちょっと何か有っても良いんじゃ!?」

 

一歩間違えれば、海へ落ちていたのかも知れないのにあんな投げやりな謝罪じゃ気が済まない。

 

洋美「決めた!・・・今の子追いかけて一言文句を言ってやる!!」

 

黒木は慌ててさっきぶつかった体操服の女の子を追いかけた。

 

洋美(姿は見失ったけど、あの格好なら直ぐに見つけられる筈・・・胸に書いてあったから名前もバッチリ分かってる・・・覚悟しなさいよ、『宗谷』さん・・・ちょっと奇麗でかっこよくて、私より背は低いのになんか大人の余裕みたいなのが有るからって、絶対にそれだけじゃ済ませないんだから!!)

 

類は友を呼ぶと言う言葉がぴったりなましろと洋美だった。

 

 




黒木洋美が登場

横女は、横須賀海洋学校の略称
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