ハイスクール・フリート Gフォース   作:首都防衛戦闘機

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第31章 初詣

1月1日

 

年が明けた新年

 

横須賀市、諏訪神社

 

横須賀近くにある諏訪神社は、初詣の参拝客で大変な賑わいを見せていた。

 

そんな参拝客達を巫女衣装に身を包んだ八木鶫と鶫の幼馴染である宇田慧は眺めていた。

 

慧は今日、鶫の神社が初詣で混雑する事が予想されたので、手伝いに呼ばれたのだ。

 

しかし、今の慧は巫女装束でなく、私服の上にコートを羽織っている姿だ。

 

慧「お・・・・お・・・・相変わらず、凄い人数だね・・・・」

 

鶫「大きい神社だからね!」

 

慧は大勢の参拝客を見て呟く。

 

そして、鶫は神社が賑わっている理由を話す。

 

鶫「それにほら横須賀女子海洋学校の受験で、こっち来てる人も多いから・・・この中にも受験生の子いると思うよ!」

 

慧「そう言えば、もう直ぐだね‥‥」

 

慧はもう直ぐ横須賀女子海洋学校の入学試験が近づいている事を指摘する。

 

鶫の神社は、横須賀女子海洋学校の直ぐ近くにあり、しかも学業成就の神社であり、この時期は大変賑わうのだ。

 

慧からの指摘で鶫も受験が迫っている事を自覚する。

 

慧「受験勉強は進んでる?」

 

慧は鶫に受験状況を尋ねる。

 

鶫も慧も共に横須賀女子海洋学校を受験する受験生なのだ。

 

鶫「言わないで~」

 

慧からの質問に鶫は視線を逸らし、やや落ち込んだ様に言う。

 

如何やら、あまり芳しくない様だ。

 

鶫「兎に角、今は、巫女としての奉仕を頑張らなくちゃ・・・」

 

慧「そうだね・・・・」

 

鶫は気分を切り替えて、受験よりも今は目の前の仕事に集中する事にした。

 

鶫が社務所でお守りを売っている時、慧は鶫の後ろで小さな旗を振って鶫を応援し、鶫がお使いで神社の彼方此方を駆けずり回っている時、慧はカルガモの雛の様に鶫の後を追い、案内所での仕事の時は

 

慧「声出していこ・・・・・」

 

と、慧は鶫を励ますが、

 

鶫「手伝って欲しいんだけど‥‥」

 

慧の声援はたいして役に立ってはいなかった。

 

むしろ手を出してくれた方が鶫としては助かった。

 

その間にも神社の参拝客は増々増えていく。

 

慧「それにしても、どんどん人が増えてくるね!」

 

鶫「どんどん忙しくなるよ・・・・」

 

この後も仕事量を考えるとなんだけで、モチベーションが落ちてくる。

 

慧「手伝いにももう少し人手が欲しいんじゃない?」

 

慧がこのままの人数で運営できるのかちょっと心配になる。

 

鶫「まぁね‥‥というか、宇田ちゃんが手伝ってくれればいいだけの話なんだけど‥‥そのへんどうお考え?それに今から人手を増やすとなると巫女経験者じゃないと‥‥今から教える時間はないし‥‥」

 

慧「そっか・・・・じゃあ私が探してあげよう!!これだけ人がいれば、1人くらい見つかるかも~ 人探し宇田レーダー・・・・!!」

 

慧は変なポーズをとり、参拝客の中から巫女経験者を探し始める。

 

鶫「何そのポーズ・・・そんなに都合よく‥‥ん?」

 

鶫がふと、手水舎の方を見ると、其処には、1人の少女が手水を使っていた。

 

鈴(寒いな・・・・早くお守り買って帰ろ・・・)

 

知床鈴は、今年、横須賀女子海洋学校を受験する予定の受験生で、受験成就と名高いこの神社の御利益にあずかろうと1人で神社に参拝に来ていた。

 

鈴は、手水舎に一礼した後、右手で柄杓を取り、手水を掬い、その手水で左手を清め、次に柄杓を左手に持ち替え、同様の動作で右手を清めた。

 

慧「如何したの?」

 

鶫「あの子・・・」

 

次にもう一度右手に柄杓を持ち替え、左の手のひらに手水を溜めて口に含み音を立てずに口をゆすいで清め、左手で口元を隠してそっと吐き出す。

 

その後、最初に左手を清めた動作で左手を清め、最後に柄杓の柄を片手で持ち、椀部が上になるよう傾け、柄に手水をしたたらせて洗い流し、柄杓を元の位置に静かに戻し、一礼した。

 

鶫「完璧な手水作法・・・!!」

 

それは洗礼された手水作法であり、それらの動作から彼女が巫女または神職の関係者だと鶫はすぐに分かり、彼女の方へと近寄った。

 

鶫「お嬢さん!」

 

鶫は手水舎にて、手水作法をしていた鈴に声を掛けた。

 

鈴「はい?」

 

鶫に声を掛けられ、鈴は、振り向く。

 

鶫「貴方もしや・・・神職関係者では・・・?」

 

と、鈴が神社の関係者ではないかと鶫は、尋ねた。

 

鶫は笑みを浮かべているが、彼女の後ろでは、

 

とても忙しくて人手が足りない。

 

お手伝いが欲しい。

 

手伝って

 

人手欲しい

 

お願い

 

等の煩悩が鈴には見えた様な気がした。

 

鈴「ち、違います・・・!!」

 

本能で危険を察知した鈴は無意識のうちにそう答えた。

 

鶫「その歳で手水作法を完璧にこなす素人なんて限りなくゼロに近いですよ。お願いします~!!」

 

鶫は鈴が逃げ出さない様に抱き付いて、彼女に懇願する。

 

しかし、鈴は

 

鈴「ぐ・・・偶然です!奇跡です!テキトーにやってみただけです!!」

 

面倒事に巻き込まれるのは御免だとあくまで白を切る。

 

鈴「わ・・・私は、唯お守りを求めに来ただけで・・・」

 

そして、今日この神社へ参拝しに来た目的を鶫に話す。

 

すると

 

慧「あら?自分の神社じゃ駄目だったんですか?お守り?」

 

慧が鈴に尋ねる。

 

鈴「いやぁ~うちの御利益はどちらかと言うと縁結び系で・・・合格祈願は別神社がいいかなぁ~と・・・」

 

慧「ほうほう、成程!」

 

と、背後から現れた慧の質問につい正直に答えてしまった。

 

慧は鈴の答えを聞き、何故自分の家の神社では無く、他の神社に参拝しにきたのか納得した様子。

 

鶫「やはり、神社生まれでしたね・・・言質取ったり」

 

鈴(しまった・・・・・・!!)

 

当然鈴に抱き付いていた鶫にも鈴が神社の家の者だと聞こえており、鈴はあっさりと鶫に神社の家の生まれだとバレた。

 

鶫「さっそく着替えましょう!!」

 

鈴「あああああ~なし崩し敵に手伝わされるぅ~」

 

鈴は号泣しながら鶫に引きずられて行った。

 

何が悲しくて正月の三が日の期間、他の神社の手伝いをしなければならないのだろう?

 

鈴は自分の迂闊さと不幸と共に世の中の理不尽さを呪い、

 

引きずられて行く鈴を見て、慧は、

 

慧(私もちゃんと手伝おう・・・)

 

鶫の様子を見て、本当に追い込まれているのだと確信し、今後はちゃんと手伝う事にした。

 

鶫「さあ、皆さんにご奉仕しましょ――――!!」

 

鈴「いやぁぁぁー!!帰してぇぇぇぇぇぇ・・・・!!」

 

慧「ゴメンね、普段はこんな子じゃないんだけど・・・・」

 

鈴は鶫に拉致られて、社務所の奥へと引きずられて行き、その後ろを慧はついて行く。

 

慧は鈴に自分のカマかけで、この様な事になった事について少しすまなそうに言う。

 

鈴が鶫の手で社務所に連れられて言った時、境内では、1人の少女が参拝客の列をジッと見ていた。

 

参拝客を見ている少女、立石志摩はあまりの混雑に唖然としている。

 

志摩も今年、横須賀女子海洋学校を受験しようとしている受験生で、この神社に合格祈願をしに来たのだった。

 

志摩「・・・にぎやか・・・参拝・・・行列・・・ながい」

 

こんなに長い列だとお賽銭箱に辿り着くのにかなりの時間を掛ける事になる。

 

志摩としては、人ごみの多い列には並びたくない。

 

でも、お賽銭は入れたい。

 

志摩「ん」

 

其処で志摩はある事を思いつき、参列から少し離れると、

 

志摩「とど・・・け」

 

賽銭箱に向かって百円玉を投擲した。

 

志摩(入ります様に)

 

志摩は投擲した位置から、かしわ手を打ち、神頼みを行った。

 

近くに居た人は志摩の行動を見て唖然としている。

 

彼女の願いである「入る」とは賽銭箱に賽銭が入る事を指しているのか? それとも志望校に入る事を指しているのか?それとも両方か?それは彼女しか分からない。

 

投げられた100玉は参拝客の頭上を飛んでいき、賽銭箱へと向かって行く。

 

その賽銭箱がある境内の最前列では、合格祈願に来ていたましろが今雅に賽銭箱に賽銭を入れ様としていた。

 

今日は、ましろは、1人で参拝に来た。長女真霜や次女真冬、そして母の真雪は、仕事が忙しく一緒に行けなかった、龍之介も薫もゴジラ捜索でいない。

 

その為、ましろは、1人で参拝に来た。

 

ましろ(凄い行列だったな・・・お賽銭、お賽銭・・・)

 

時間をかけて並んだ為、ましろは、少し疲れていたが、学業成就として名高い諏訪神社を参拝するのは、受験生であるましろにとっては、物凄く意味の有る事だった。

 

そして、財布を取り出し、御縁がある様に5円玉を取り出し、賽銭箱に放ると、先程立石が投げた100円玉が失速して落ちて来た。

 

このままでは、志摩の100円玉は賽銭箱前に落ちるかと思いきや、100円玉はましろが投げた5円玉に当たり、再び勢いを取り戻すと、賽銭箱の中に見事入った。

 

一方、志摩の投げた100円玉に当たったましろの5円玉は急に失速し、賽銭箱前にチャリーンと音を立てて落ちた。

 

ましろ「・・・・・・・・・・・・!!」

 

「何だ?何かが飛んできたぞ!」

 

「鳥か?」

 

ましろの後ろの列の人がざわついているが、ましろ本人は、神から見放された様な気分となる。

 

自分が入れ様とした賽銭が、弾き落とされたのだから

 

先程の光景は受験生であるましろにとって決して縁起の良いモノとは言えないモノとなった。

 

ましろ「新年早々ついてない・・・」

 

5円玉を拾い、賽銭箱に入れ直したましろは重くなる様な気分で境内を歩く。

 

すると、目の前にはおみくじが売っていた。

 

唯、おみくじを売っているツインテールで同い年ぐらいの年齢の巫女さんは、何故か泣いている様にも見えたが、今のましろには、そんな事を気にしている余裕はなかった。

 

ましろ「・・・おみくじか」

 

引いてみようかと思ったが、どうせ引いても大凶か凶だろうと思った。

 

しかし

 

ましろは頭を振って、思考を振り捨てるかの様におみくじを引いた。

 

ましろ「よしっ」

 

勢いよくおみくじが入った箱に手を入れ、その中から1つを取り出し、開く。

 

其処に書かれていたおみくじの結果は、『大凶』‥‥だった。

 

ましろ「分かってた・・・分かってたさ・・・」

 

大凶のおみくじを引いたましろは、跪き頭を垂れる。

 

ましろ「待て・・・細かく読んでみよう・・・こう言うのは、大抵不幸への対処が記してあるものだ。」

 

ましろは、これまで大凶や凶のおみくじを引いて来た経験からおみくじをよく読んでみる事にした。

 

鈴「はぁ~帰りたい‥‥」

 

ましろがおみくじを見ている間、鈴は相変わらず、仕事はしているのだが、何だか嫌々でやらされている様にも見えるがましろは、それに気づかなかった。

 

ましろがおみくじの用紙をよく見て見ると、印刷ミスのせいで肝心の部分がよく読めなかった。

 

ましろ「今年は家から出ない方がいいのかな・・・」

 

ましろはおみくじを神社の枝に結ぼうとその場を離れた。

 

ましろがおみくじ売り場を離れてすぐ後、

 

明乃「あっ、大吉だ」

 

ましろ、志摩、鶫 鈴、慧ら同様、受験生である明乃も本日、この神社に来ていた。

 

昼近くになると、混雑していた神社も参拝客が次第に減り始めた。

 

鶫「うーん、大分参拝者の数も落ち着いてきたけど、あの子は何所に行ったんだろう・・・?」

 

慧「つか・・・れた・・・」

 

鶫は鈴の姿が見えない事に気付き辺りを見渡す。

 

神社関係者「ツインテールの・・・?ああその子なら、さっきお手洗いに行くって出てってから、それっきり・・・」

 

社務所に居た他の巫女さんが鈴の事を鶫に伝える。

 

鶫「いなくなっちゃったの?」

 

神社関係者「でも随分助かりましたよ!」

 

慧「ね~」

 

鶫「何も言わずいなくなってしまうなんて、なんて謙虚なのかしら?もしかしたらあの子は忙しい私達を助けるために神様が与えてくれたお使い様だったのかも・・・」

 

鶫は鈴が神からの使いなのではないかと思った。

 

その鈴は、人知れず帰路についていた。

 

鈴「はぁ・・・また逃げて来ちゃった・・・怒ってないかな・・・できる事はやったし、大丈夫だよね。」

 

鈴は神社の人達が怒っていない心配だったが、鶫達は怒るどころか鈴に感謝していた。

 

しかし、鈴にはそれを知る由も無かった。

 

鈴「お守りを貰ってすぐ帰るつもりが随分遅くなっちゃったな・・・」

 

鈴の手の中には社務所の巫女さんから貰ったお守りが握られていた。

 

まぁ、お守りをタダで貰ったと思えば、お守り代は浮いたので、鈴はそれで『良し』とした。

 

鈴「ま、いっか・・・早く帰って受験勉強でもしよっと」

 

鈴はお守りを手に家路へと急いだ。

 

その頃、神社では、

 

鶫「あの子を称える像を造ろう!!」

 

鶫は鑿と木槌を手に鈴の像を作ろうと意気込んでいたが

 

慧「勉強したら?」

 

そんな鶫に慧は一言ツッコンだ。

 




立石志摩、知床鈴、八木鶫、宇田慧登場
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