機動六課にヴィヴィオ様は保護されたみたいだ。
双眼鏡片手に木の上に座って見守る。
「この子どうしたんだろう?」
「エリオとキャロが見つけて来たんだって。」
あれが高町なのはにフェイト・テスタロッサ・ハラオウンか。
「ゼロー?ゼロどこー?」
涙目で周りをキョロキョロするヴィヴィオ様を見てつい動きそうになる。ジェイルとの約束だから仕方ない。
「ゼロってお友達?」
「えっとゼロは……んと。」
説明が出来てないみたいだ。まあ説明されても困るし、そもそも関係を伝えていないのもある。
あの人達なら大丈夫そうだ。
ゆりかごが落ちていく。ジェイルの計画は失敗したか……。
ビルの屋上から双眼鏡で見ると遠くに手錠を付けられ捕まったジェイルが見える。
ジェイルは見えないはずなのに俺の方を見ると困った様に笑い、すぐに高笑いをした。
「……そうか、満足したのか。」
無限の欲望の癖に満足するなよな。
「捕まってもジェイルとの約束は続いてるし、どうせやる事も無い。護衛を続けるか。」
最近ストーカーをしている気分になるが……。仕方ない事だ。
「ん?今フェイト・テスタロッサ・ハラオウンと目が合った様な気がするが。」
もう1度双眼鏡を覗くとまた目が合う。
まずいな、同じ場所に居すぎたか。場所を変えよう。
「待って!」
流石の速さだが、俺が逃げる方が速い。
その後はコソコソ隠れながら拠点に戻った。
ヴィヴイオ様が初等科3年生になった。それにしてもSt.ヒルデ魔法学院とはやってくれる。毎日潜入するのが大変だ、もう慣れたものだが。
いつも通り木の上に枝を陰にしながら座ってあんぱんと牛乳を食べる。この組み合わせは素晴らしい。あんぱんは片手で食べられ甘いため、疲れも緩和され長時間の護衛にはピッタリだし、牛乳とも良く合う。その上安いと来た。寝転がったまま食べる事も出来るから姿勢的にも便利でもある。
「ヴィヴィオ様も大きくなったものだ。」
機動六課に引き取られた当時はゼロゼロと泣いていたが、その後は高町なのはとフェイト・テスタロッサ・ハラオウンを母と呼び明るくなった。
「俺の護衛はもう必要無いのでは無いか?」
ふと思う。周りには強い大人が居て、信頼出来る友達が居て、これではもう俺は必要無いのではないだろうか?
「……まあ、ジェイルが捕まってからはただの暇潰しの様なものだ。」
寧ろ俺が居る方が邪魔なんだと思う。それに俺もいつまでも付いていてもどうしようもない。
「今日で止めるか。」
……ちょっと写真の1枚位撮ってもバチは当たらないだろ。
あ、ライトで教員に見つかった。逃げるか。
「あれ、今のは……?」
明日から何をしよう?
よし、撒いたぞ。あの教員凄いな。学校外まで走って来るとは。
「む、ヴィヴィオ様も近くに来ているのか。運が良い。」
見馴れた金髪が目に映る。親の二人と銀行に行くのか。学院よりも難易度が高くなったな。
と言うかここに居るということは数時間は走っていたのか。
「動くんじゃあねぇ!殺すぞ!」
……強盗か。最後に一仕事するか。
なのはママとフェイトママを待って居ると急に外が静かになった事に気付きました。
「動くんじゃあねぇ!殺すぞ!」
男の人達の怒鳴り声が聞こえてバンバンと破裂音が聞こえて竦んでしまう。
でも、ママ達が居るからきっと大丈夫なはず!
「失礼する。」
新しく男の人の声が聞こえる。どこか聞いた事があるような、懐かしい感じがする。
「ああ!?なんだてめぇは、引っ込んでろ!」
「すまない。他はどうでも良かったんだが、ある人が巻き込まれてるから、貴様らを潰す。」
顔を上げるとスーツを着た男の人が武装した男の人達を次々と倒していました。
「終わりだ。……このまま息の根を止めた方が良いだろう。」
殺すんだと思った。でも、あの人に人殺しをして欲しくないって思ったの。
「や、止めて!」
「了解しました。」
声を出すと、上げていた手を下げてくれました。
……あれ?
「それでは。」
「あっ、まっ……!」
去ろうとする背中を追いかけようとしたら足を引っ掛けちゃった、怪我したらまたママ達を困らせちゃう……。
「全く、危なっかしい所は変わりませんね、ヴィヴィオ様。」
ふわりと抱かれた感覚を私は覚えていた。
やってしまった。守るためとはだとしても姿を見せた。
「ゼロ……?」
「なんでしょうか?」
今日で終わりにするつもりだったのに、どうしてしまったのだろうか。強い親が居るんだから任せれば良かったろうに。
「成長しましたね。身長も随分と伸びて。」
頭を撫でるとポスリと胸に顔を埋めた。
「なんで、居なくなっちゃったの?」
「……申し訳ありません。」
「バカ、バカバカ。ずっと探してたのに。」
そういえば休日に無意味に外出していた日があった。そういう理由だったのか。
「嫌われたんだって、思って……。」
「陰から見守ってましたよ。」
「ふふっ、ストーカーだー。女の子にそんな事しちゃダメなんだよ?」
「……気を付けます。」
「うん。」
「……それでは。」
少し惜しいがもう離れよう。今のでもう充分だ。
「ダメ。」
襟を引かれる。
「一緒に居て?良いでしょ?」
「いや、その……。」
「ね、お願い。」
「……了解しました。」
「うん。ねぇ、昔みたいに撫でて?」
「は、はい。」
「ヴィヴィオー!」
「ヴィヴィオ、大丈夫!?」
「なのはママー!フェイトママー!こっちだよぉー!」
「あの、「ダメ。」……はい。」
どうにもこのお嬢様は俺を離す気はないらしい。正直言うと会いたくない。
「それでヴィヴィオ、この人は誰?」
強盗を倒した後に事情聴取をされその日の内に帰られたがヴィヴィオ様に高町家に連れて来られてソファに座らされた。そして膝の上に乗って俺の手を取って胸の前でクロスさせた。……ご機嫌そうで何よりですが抱いてるみたいで少し照れます。
「ゼロ!」
「初めまして、ゼロと申します。友との約束で今まで護衛をしていました。」
「フェイトちゃん。」
「うん、保護した時に呼んでた名前だよね。」
「ゼロさん。約束とは誰とのですか?」
「答えたくありません。」
「ゼロ、教えて?」
「……ジェイルとの約束です。ヴィヴィオ様の下僕になるようと、まあ、護衛の様なものです。あいつが捕まってからは独断で。どうせする事もありませんでしたし、今日で終わりにしようとしていましたが。」
「ジェイル・スカリエッティ……。どんな関係だったんですか?」
「友です。」
「じゃあ、やっぱり事件が終わった時に遠くから見てたのは。」
「俺です。」
一問一答で進んでいく。もういいだろう。話す事は話した。
「それでは俺はこれで。」
「帰っちゃうの?」
「帰る?……まあ、そうですね。正確には餓死するまで今までの道を暇潰しに振り返るが正しいですが。」
復讐が終わって約束も終わったなら俺に存在する意味はない。
「ダメ、絶対にダメだよ。」
「何故でしょうか?優しく強い親に、信頼出来る友人や仲間。これだけあれば俺はもういらないでしょう。要らない部品は取り外す事を推奨します。」
「イヤ。」
「ヴィヴィオ様。」
「ヴィヴィオがダメって言ってるの!ヴィヴィオの下僕なら言う事聞いてよ!今からゼロはヴィヴィオの物!」
それはまた……昔の我儘とはレベルが違いますね。
「……了解しました。今から俺の全ては貴方の物です。」
今日が最後だと思った時に心残りがあった。きっと、これで良かったんだろう。
「ヴィ、ヴィヴィオ?それはちょっと言い過ぎじゃないかなーって、思うんだけど……。ね、フェイトちゃん?」
「えっ!?う、うん、そうだね。」
「もう!ママ達は静かにしてて!」
「「はい……。」」
「それとゼロのお家は今日からここだからね!ヴィヴィオ達と一緒に過ごすの!」
「あの、それは流石に……。」
「だって、帰したらどこかで倒れてそうなんだもん……。」
……それはそうですが。
「良いでしょ?なのはママ、フェイトママ。」
「う、うーん、部屋は余ってるけど。」
「なのは、私からもお願いしてもいい?ヴィヴィオの言う通り倒れたら大変だし。」
「俺は別に庭で……。」
「ゼロは黙ってて!」
「はい……。」
ここまで怒られるともう何も言えない。
それにしても怒っていても可愛いものですね。
なんとなく指で頬をつつく。
「にゃっ、ちょっ、ゼロ何するの、怒ってるんだから……。」
嫌がっていますけど顔が緩んでますよ。
「申し訳ありませんが、少しの間お世話になってもよろしいでしょうか?」
頭を下げると膝に乗っていたヴィヴィオ様も頭を下げる形になった。
「うん、ヴィヴィオも良いって言ったしね。」
「わー!ありがとうママ!」
「あ、でも部屋は別々だよ?」
「きょ、今日だけ!」
「ダーメ。」
「フェイトママぁ……。」
「う……な、なのは、1日くらいは良いんじゃないかな?」
「ダメですー。」
「ご、ごめんね、ヴィヴィオ。」
「う〜、ゼロは良いでしょ?」
「ヴィヴィオ様にが言うなら。」
「ゼロも甘やかさない!」
む……教育としては間違ってないだろうが、ヴィヴィオ様はまだ子供だし少しくらいは良いのではないか?しかし、言うことも分かるか。
「分かりました。ヴィヴィオ様、余り我儘を言えば困らせちゃいますよ。」
「……ごめんなさい。」
……明日はヴィヴィオ様のためにご飯を作りましょうか。
「じゃあ、今日はもう寝よっか!」
「おやすみ、ヴィヴィオ、ゼロ。」
「おやすみなさーい!」
「おやすみなさい。」
普通のあいさつなのに少し照れる。今まで1人だったからだろうか。
今の気持ちは多分幸せなんだろう。