とりあえず約束は大事   作:黒色エンピツ

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6:ゼロの甘い日常

「ゼロってどれくらい強いの?」

 

退院して記憶の件は落ち着いて考えようと思ったある日、ヴィヴィオ様に聞かれた。

 

「それ程強くはありませんよ。」

 

「え〜、じゃあ魔法は?」

 

「なのはやフェイトの様に派手に戦えませんよ。防御魔法にばかり適正があって他は探索魔法を、後は多少出来る程度です。」

 

「強盗の人達をあんなに倒してたのに?」

 

「まあ、あの程度でしたら。」

 

「ん〜?じゃあなのはママかフェイトママと戦ったらどっちが勝つの?」

 

「そりゃ、なのはとフェイトでしょう。」

 

「ふ〜ん……。」

 

 

 

 

「なんでこうなった?」

 

「にゃはは、今日はよろしくね?」

 

「むー、あそこでグーを出してれば……。」

 

数日後、ヴィヴィオ様に手を引かれて着いた場所は開けた所で訓練施設の様だった。

そこではヴィヴィオ様やなのはやフェイトの知り合い達が見学しており、俺となのはの2人はセットアップして待機していた。

 

「俺空飛べないんだけど?」

 

「まあ、遠慮無しの真剣勝負だからね。ゆるして?」

 

「まあ、やるだけの事はやるけど。」

 

一応空戦も出来るし、何とかなるだろ。

 

「それじゃあ開始ー!」

 

ヴィヴィオ様の元気良い掛け声と共に全力疾走する、瞬間、目の前がピンクに染まる。

 

「フィフスシールド!!」

 

自分の目の前にシールドを5枚重ねて張ると衝撃が訪れる。

 

「おっ……も!」

 

『あー、女性にそんな事言ったらダメだよ?』

 

なのはから念話が届く。今そんな余裕無いんだけど。

そのまま数秒過ぎて衝撃が収まると同時にまた駆け出す。

 

『リフレクション』

 

足元に展開して全力で踏み抜くとそれを反射して大きく空を飛ぶ。

 

「え!?」

 

そのままプロテクションを出力を落として足場にしながら移動する。

 

『シールドブレード』

 

シールドを鋭く尖らせ前方に射出する。

 

「へぇ、面白いね。」

 

『フォールプロテクション』

 

「落ちろ!」

 

「ディバインバスター!」

 

マジかよ、直接割りやがった。

 

「ディバインバスター!」

 

「はやっ!?」

 

チャージに隙が出来ると油断した所に直撃を食らい、そのまま横に滑りながら飛び出す。

 

『プロテクションランサー』

 

棒状に伸ばしたプロテクションを真っ直ぐ飛ばす。

 

「プロテクション!」

 

「バースト!」

 

「きゃっ!?」

 

なのはのプロテクションに突き刺さるとそのまま干渉して破壊し、残ったランサーがなのはを襲う。

 

「いたた……やるね。」

 

「いや、余裕な顔してるだろ。」

 

「にゃはっ、まだまだ行くよ!」

 

『ディバインシューター』

 

「シュート!」

 

誘導弾のみたいだが数がとんでもなく多い、巫山戯た制御能力だ。

 

「チィッ!」

 

『サークルバリア。』

 

周囲からバリアに魔力弾が叩き付けられる。

 

「お、おおぉぉぉ!!」

 

数十秒後、音が止まるとバリアを解除する。その先ではなのはの得意技である集束砲が準備されていた。

 

「舐めんな!」

 

『チャージ』

 

「スターライト」

 

「クレイ、チャージ急げ!」

 

『チャージ、チャージ』

 

「ブレイカー!!」

 

「ストライクブレイク!!」

 

超高出力の馬鹿げた火力の集束砲に対して、俺は右手に高出力の魔力を圧縮して外部を高速振動させた防御魔法を纏った手刀を真正面からぶち当てた。

小さくキィィィと音を出していた手刀は集束砲に当たった瞬間からチェーンソーをもっと酷くした音が出る。

簡単に言えば突撃である。

 

「ぅおらあぁぁぁぁ!!限界まで上げろぉ!」

 

手刀が集束砲を切り裂き始める。

 

「何……これっ!でも、負けないよ!」

 

集束砲が一際大きくなる。それに対抗するように手刀も輝きを増す。

 

「ぶった斬れろ!!」

 

「撃ち抜く!」

 

「オオオオオオオオォォォ!!」

 

「ハアアアアアアアァァァ!!」

 

ゼロの手刀がなのはの集束砲を貫く、決まった。とその時、ゼロが顔面から突っ込み一緒に倒れる。詳しく言えば胸に顔から突っ込んだ。

ゼロはさっきの魔法で限界まで魔力を出したためグロッキー状態になった。

 

「んぎゅっ。」

 

「へ?あ、きゃああぁぁぁ!!?」

 

なのははポカンとした顔から押し倒されている事に気付き顔を赤く染め、可愛らしい悲鳴と共にゼロの顔面には魔力強化されたビンタが飛んできた。

 

 

 

 

「うぇっぷ……ここは……?」

 

目が覚めると白い部屋の中にいた、気絶していたみたいだから病室だろうか。

 

「ゼロ!起きたんだ。」

 

「あ、おはよう。ゼロ。」

 

「……オハヨ。」

 

「あ、ああ、おはようございます。

……なのはは、どうしたんだ?」

 

顔を赤くしていたなのはが熱でも出したのかと聞いてみると、どうやら俺がバカをしたらしい。まさかあのまま意識がないとは言え情報の胸に顔を突っ込むとは……。

 

「すまない……。」

 

「ほんとだよ、気を付けてね!」

 

「まあまあ、ゼロも反省してるんだし、ね?」

 

「お嫁に行けない……。」

 

そうだな、嫁入り前の女性にあんな事をした罪は重いだろう。

 

「なのは、俺も男だ、責任を取る。」

 

「ふぇっ!?せ、責任って、つつ、つまり……。けっこ「腹を切るか、指を詰めるか。どちらか選んでくれ。」ん……?」

 

ん?なんだ、反応が良くない。ま、まさかっ!もっと酷い事でも行うつもりなのか!?

 

「な、なんだ、何が望みだ!?何だってやってやるぞ!?」

 

「こ、こういう時って普通は結婚とかって言うんだよね?フェイトちゃん、ヴィヴィオ?」

 

その瞬間顔に熱が集まるのを感じた。

 

「け、けけけ結婚だと!?な、何を馬鹿な事を言ってるんだ!?」

 

「「「え?」」」

 

「そ、そもそも女性が軽々しく結婚とかをだな……。」

 

「もしかして、ゼロって初心?」

 

「…………そ、そんな訳ないだろう。」

 

「へぇ〜、そうなんだぁ。まあいつも冷静そうな顔してるんだからそんな訳ないよねぇ?」

 

なのはが顔を近付けて顎に指を添える。

今まで意識して来なかったのと、一部記憶の回復のせいだ、ティーダと一緒に居た時の職場は確か男ばかりで女性が居なかった事による女性免疫のせいだ、絶対そうだ。

 

「あ、いや、その……。」

 

「ふふっ、今のゼロって新鮮で可愛いね。」

 

フェイトに頭を撫でられる。今だけ、体が昔に戻ったような錯覚に陥る。

 

「どうしてそんなに顔が赤いのか、お姉さんに教えてほしいなぁ?」

 

「ゼロ、可愛いなぁ……。ね、私に甘えても良いんだよ?」

 

「……ゼロの新しい一面だ。」

 

状況が訳の分からない方向に進んでいく。

 

「お、おれにちかよるなぁぁぁ!!!」

 

その日から数日自分の部屋に閉じ篭った。

 

 

 

 

「ゼロー、ご飯だよー。」

 

あれからゼロの部屋のドアには『ヴィヴィオ様以外の女性立ち入り禁止』の張り紙が張られている。

ふふっ、何だか私のだけ特別扱いなの嬉しいなぁ。

 

「入るよ〜。」

 

部屋に入ると中は真っ暗でゼロが壁に座って寝ていた。

いつもこうやって寝てるんだ。きっと私達のために警戒してるのかな。でも、どこか寝づらそう。

 

「ゼロー、起きてー。」

 

頬を軽く叩くと薄らと目を開ける。いつもは誰よりも早く起きるから見た事無かったけどゼロは寝起きは弱いみたい。

ボーッと私の顔を見た後にくしくしと猫みたいに目を擦る姿がいつもの姿とのギャップで可愛く感じた。

 

「ね、ゼロ、ぎゅってして?」

 

いつもゼロが嫌がって余りしたがらない我儘を口にするとのそのそと動いて私に体を預ける様に抱き着いて来る。

……寝起きなら、こんな事も出来るんだ。

 

「んあ……?ヴィヴィ……オ……様?」

 

その日からゼロの部屋にはヴィヴィオ様の文字にバツ印の書かれた『女性立ち入り禁止』と書かれた紙が貼られた。

 

 

 

 

くそ、あれ以来部屋から出るのが風呂とトイレだけになってしまった。もちろん警戒は続けているが集中が乱れがちになっている。

 

「せめて表面上でだけでも……幻術魔法は得意じゃないんだが、仕方ない。」

 

クレイを使って幻術魔法のサポートをしてもらい安定させる。

鏡を見るといつも通りの顔が映っていた。

 

「よし。これで元通り。」

 

俺は思い切って部屋から出た。

 

 

 

 

フェイトちゃんとヴィヴィオと3人でどうやってゼロを部屋から出そうと話していた時にドアの開閉音が聞こえてゼロが降りてきた。

その顔は閉じ篭る前と同じで平然とした顔だった。

 

「今まで心配させたな、すまっ……んん、すまない。」

 

うん?

 

「ゼロ、どうかしたの?」

 

フェイトちゃんが近寄るとそっと1歩後退した。

 

「い、いやぁ、なんでもない。」

 

明らかに動揺していて声も裏返っているのに顔は平然としてるし、よく見たら幻術魔法を使ってるみたい。

 

「ゼロー。」

 

「なななんだ、なのは。」

 

頑張って向き合おうとしてるみたい、解けたらどうなるんだろう。

 

「今、魔法使ってるでしょ?」

 

「……つ、使ってな「嘘吐かないで。」……。」

 

「バレてるんだから、魔法を解いて。」

 

「……ん。」

 

ゼロは魔法を解いてすぐに服の袖で顔を隠した、でも耳まで真っ赤だよ。

 

「も〜、ゼロってば可愛いんだから〜。」

 

頭を撫でると手の動きに合わせて頭が揺れる。

 

「ヴィヴィオー。」

 

「は〜い。ゼロ、手を退けてほしいな。」

 

「あの、ヴィヴィオ様?」

 

「お願いっ、良いでしょ?」

 

「……了解。」

 

ヴィヴィオがそう言うと手を外す。でも少しくらいは抵抗しても良いと思うんだけどなぁ。

 

「わっ、凄い赤いの。」

 

「ゼロ、お姉ちゃんって読んで?」

 

「しっかり写真に撮らないと。」

 

「へぁ?お、お姉ちゃん。って、ヴィヴィオ様っ、恥ずかしいから!?フェイト放して!」

 

うわー、うわー、あのゼロがあんなに慌ててるなんて……。

フェイトちゃんにもみくちゃにされながらヴィヴィオに写真を撮られてる姿は初めの頃の印象とは全く違って見える。

 

「えーい!わたしも混ぜてー!」

 

楽しそうなのに仲間はずれは嫌なの!

 

 

 

 

「柔らかい……良い匂い……。」

 

「にゃはは……お疲れ様。」

 

あれから数十分は経っただろうか。俺は苦笑したなのはに膝枕をされながら未だに鼻息を荒くしたフェイトに撫でられていた。

まさかとは思うが……子供であるエリオとキャロにもこんな風にしてたとか、無いよな?

 

「ヴィヴィオ様は……?」

 

「部屋で写真の整理をしてるよ〜。ゼロの代わりに記録するんだって。」

 

「確実に残るからな、助かる。」

 

「多分ずっと記録は続くんじゃないかな?」

 

「……それは凄いな。」

 

マメになったんだな。

 

「ゼロがそれだけ大事なんだね。」

 

「そう思うか?」

 

「絶対そうだよ。」

 

そこまで断言されると、凄く嬉しいな。うん、嬉しい。

幸せはこういうものなんだろうな。きっと。

 

「フェイト、そろそろ放して。」

 

「やだ。」

 

……イマイチ締まらないな。

余談だが後日行ったフェイトとの模擬戦ではスピードで圧倒されて完敗する事になる。相性を思い知った。

 


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