九つの大罪人がダンジョンにいるのは間違っているだろうか? 作:厨二病なりかけ
では本編をどうぞ。文字数は前とそこまで変わりません。
俺はまた、戻ってくる。
私の大切なにぃにはそう約束して、私達から去っていった。
なんでまだ戻ってこないのにぃに?
こんなに長い間待っているのに。
私を置いていかないでにぃに。
置いてかないで!
私の意識が冷めていく。
瞳に一粒の涙を浮かべて。
「シ・ロ・・く・・・さい」
「シクロ・・く起き・さい」
「シクロ早く起きなさい!」
ロキファミリアの団員、シノはシクロを叩き起こした。
「う〜ん、あと五分・・」
「あと五分って言って、本当に五分で起きたことなんてないでしょうが〜!」
「うっ、わかった。起きる」
シクロはノソノソとナメクジみたいな遅さでやっと布団から出た。
「布団の強さは異常・・誰かが起こしてくれなかったらずっと寝させられてしまう」
「だからシクロは怠惰だって言われちゃうんだから、もっとシャキっと起きなさい」
「・・無理・・・」
「そんな感じで否定しないの。というか、とっとと着替えなさい」
「ん」
「じゃあ、私は先に食堂に向かうわよ。ナシロも早くしなさい。ロキはみんなが集まるのを待っているんだから」
そう言って、部屋の扉から出て行った。
シクロは服を着替えながら夢のことを思い出していた。
にぃにと最後に会った時と同じだった。
あの決心したような顔も、周りの景色も一緒だった。
シクロはあの事件から五年経った今でも、帰ってこない兄に対して言葉を零した。
「にぃに、どこへ行ったの?」
と涙を少し浮かべて、涙声で、小さな声を零した。
ナシロには到底兄であるリクが死んだとは思えなかった。
強さという点もあるが、嘗ての主神に何かしら特別な祝福を貰っているということも知っていたからだ。そして、これ以上に兄が今まで約束を破ったことがなかったからだ。
「お願い、早く帰ってきてよ。にぃに」
「盗み聞きとは趣味が悪いなシノ」
「そういうあんたこそ耳澄ませて聞いていたでしょうにミラ」
「ふっ、まあ違いない。彼女が心配なのは私も一緒ということだ」
「本当にあなた達は過保護ですね」
「「ミロク」」
「あなたの方こそ過保護でしょうに」
ミロクに指摘されたシノはため息をつきながら返した。
「全くだ。まああのシスコンリクのことだ、すぐに帰ってくるだろう」
「まあ、そう言われると納得ですね。あの男の生命力はゴキブリ並・・いやカメムシ並ですからね。死んでいるという可能性も万に一つもないでしょう」
「それは違いないわね。あのシクロの前では頑張ってかっこつけるナルシストが、妹のために帰ってこないわけがないわね」
とミラ、ミロク、シノの順にこの場にいない嘗ての副団長を貶していた。
「ひっ」
その時の三人をたまたま見ていたラウルは三人の満面の笑みを見て、美しいはずなのに、とてつもない恐怖を抱いたという。三人の様子を見ていた他の団員達も生きた心地がしなかったという。
この後、ナシロは服を着終わり、食堂へと向かった。
————食堂
「シ〜ク〜〜ロ〜ちゃ〜ん」
と叫びながら主神であるロキはシクロを見るや、すぐにシクロに向かってダイブした。
シクロは片手を出すと、彼女のスキルを発動した。
『一方通行』
彼女が持つ唯一のレアスキル。シクロの驚異的な頭脳により、ほとんど全ての事象を演算することができ、ベクトルを操ることができるこのスキルはシクロのためにあると言っても過言では無いものだ。演算ができなければこのスキルは真価を発揮しない。演算のスピードも速いシクロはロキがダイブして、抱きついてくる少しの間に軽く演算を終わらせ、周りの風のベクトルを操り、主神であるロキを吹っ飛ばした。
「今・・私不機嫌、もう今日はダイブしてこないで。演算するのだって疲れるから」
ロキが向こうの壁に衝突する手前、小さな人がロキを救った。
「全く、これでも一応神なんだから手加減したらどうだい?」
ロキファミリア団長であるフィン・ディミナその人であった。
「これでもってなんや、これでもって!」
「そんな態度だからそんなことを言われるのだ」
「全くじゃわい。主神様はいつも変わらんの」
と順にロキファミリア副団長リヴェリア・リヨス・アールヴ、最古参であり幹部の一人であるガレス。
「まあ、これで全員揃うたし、食事といくで〜!」
「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」
食事が終わった後、シクロはダンジョンに潜ると言って出て行ってしまった。
シクロは毎日、起きてはダンジョンに潜っていた。兄を探す、ただそれだけのために。これまでシクロは体が怠くとも、ダンジョンに潜り、兄、リクの情報を集めた。時には『深層』まで潜ることもあった。もはや彼女の意識は兄にしか向いておらず、自分のファミリアの仲間以外と話すことといえば、兄の情報を聞き出す時だけになっていた。彼女は言ってしまえば病んでいるのだろう。
そして、シクロはまたダンジョンへと潜る。
——一週間後
「わぁ〜、ここが迷宮都市オラリオか〜。おじいちゃん、僕は英雄になるよ。そして、素晴らしい出会いをするんだ。このオラリオで!」
と神の塔『バベル』の前のデカイ一本道の上でベル・クラネルはそう小さく叫んだ。
「にっしっし、面白いことを言う奴がいたもんだ。にしても、あいつとはもう一回会う気がするな」
これは予感であった。そして、この予感は的中することになる。