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「ボルキュス将軍」
頭の毛が一本も確認できず、ハゲと表現するのが的確な中年の軍人が、将軍と思わしき上官に話しかける。
「何だ、バデス?シガンシナ区遠征はそんなにつまらんか?」
ボルキュス将軍と呼ばれた人物は、特に目立つ特徴として、右目に眼帯をしていることと、目を閉じているのではないかと錯覚するほど異常に薄目なことが挙げられた。
それ以外は優しそうな、ただの金髪のおじさんと言った風貌である。
「いえ、将軍…我がアテネス連邦領区の国力は、内縁領区で肥えた老賢人共の権限にも介入でき、尚且つ『巨人』の要請撃退率も他の区の調査兵団を圧倒しておりますゆえ…『ウォール・マリア』でも辺境の外縁地、シガンシナ区に我々が出向く価値は無いと思われるのですが…」
彼はバデス将軍補佐。今は冷静に語ってはいるが、昔はこれでも中々の乱暴狼藉であった。今も言動の節にそれが散見している。
「ハッハッハ!その通りだよバデス。我々が出向く必要など何処にも無い。この遠征は本来は不要な行為だ。」
「ではなぜ…」
「理由の表向き半分は、アテネスを他領区民に好印象づけるためのPR。広報活動だな」
「残りの5割は?」
「私の暇つぶしだ。ハッハッハッ!!」
「…」
やはりこの方には敵わないな、と心の中で今回も思わされるバデスであった。
ボルキュス将軍。かつて麻薬と賄賂で腐敗しきっていたアテネス領区を更正させた陰の立役者。
この方がいなければ今のアテネスは存在していなかったと言わざるを得ないだろう。
「さて、ではそろそろシガンシナ民のためにパレード行進を始めるとするかね諸君」
ボルキュス将軍が皮肉気味に部下へと命令を下す。続く部下たちは内心苦笑いしているに違いない。
そして、数十もの巨兵がその身を揺り起こした――。
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「すげぇ!見ろよアルミン!『ゴゥレム』だぜ!!調査兵団の立体機動装置もカッコいいけど、やっぱゴゥレムは迫力が桁違いだよなぁ!!」
「そんな前に乗り出さなくても見えるよエレン…ゴゥレムは8mはあるんだから遠くから見た方が全身が見えるよ?」
助言をかけたアルミンだったが、エレンはすげぇすげぇの連呼ばかりで、どうやらアルミンの声はエレンには届いていないようだ。
興奮しているのか、エレンはゴゥレムの足元に近づき過ぎて、パレード中のゴゥレム搭乗士を困らせている。
黒髪の無邪気な少年エレン。そして金髪の少し内気な少年アルミン。二人は幼いころから夢を語り合う親友であった。
「ゴゥレム…魔道巨兵…」
アルミンが呟く。
魔道巨兵ゴゥレム。それは人類が『巨人』の脅威に対抗するため造り出した対巨人用の魔道兵器。
全高約8m。全身が石英で出来ており、フレームから装甲まで全て石英製である。
ゴゥレムは『魔力』によって操縦することができ、その『魔力』は、例え微量であっても人類に普遍的に備わっている能力であった。
この魔力は、『石英靭帯』と呼ばれる粘土状の物質に作用し、ゴゥレムの内臓に筋肉状に張り巡らせることで、8mという巨大なサイズでも人間と同等の可動を可能にしていた。
だが、『石英靭帯』の産出地は『クルゾン4大領区』だけであるため、他領区には資源も技術も運用のノウハウも無く、実物のゴゥレムは噂程度の認知度しかなかった。
ゴゥレムに用いられる石英は、油との相性が最悪なため、金属類の素材を使うことが出来ず、さらに火薬も運用することが出来ない。
しかし、重量と質量は同等の大きさの巨人に対して数倍はあるため、機動性は巨人に劣るがパワーで勝り、主要武器のプレスガンは火薬式鉄砲と比べると威力も射程も無いが連射が可能で、予測不能な動きをする巨人に対して連射を行うことで命中率を向上させ、『削り取る』ことが可能なのである。
さらに熟練者ともなれば、巨人の骨格関節部にプレスガンの弾丸をあえて貫通させず、関節部位が曲がらなくなるよう食い込ませることにより、弱点を狙わなければ殺せない巨人を、一方的に行動不能にすることすら可能なのである。
この魔道巨兵を用いた戦術を取り入れたアテネス連邦区は、対巨人戦において圧倒的な戦果を上げ、領内の戦力を尚も増強中との噂だ。
「このゴゥレムがあれば…もしかすれば『壁の外』でも…!」
アルミンがそう言いかけた時だった。
鳥が突如として一斉に舞った。
あれ?今は夜だったっけ?何で地面が暗くなってるんだ?
太陽が在るはずの空へ向かい、ふと顔を上げるアルミン。
「…なんだ…あれ…」
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