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「くっそぉ!もう駄目だぁ!!移動砲台も固定砲台も全部やられちまった!そもそも全然効かねぇ!!」
「ええい!各員、立体機動装置の使用を許可する!隊長命令だ!巨人に直に取り付いてなんとかしろぉ!!」
「んなこと言って!どうせ俺らを身代りにして自分だけトンズラする気なんだろ!?捨て駒はゴメンだ!俺は逃げるぜ!!」
「なッ…!?貴様!敵前逃亡は重ざ………あっ…」
「もう何言っても聞かねーよ!あばよ!!せいぜい戦っ………がっ」
バツンッ。
この音は誰がどう聞いても何が起こったか瞬時に理解するだろう。
何かが切断された音。
立体機動装置で建造物の合間を縫い、逃亡を図った彼だったが、突如として民家の影から出現した巨人の口の上下に付いた歯によって、真っ二つになってしまったのだ。
「あいつ、かなりの速度で立体機動を行ってたのに…巨人は立体機動をああも簡単に捉えられるのか!?」
「初めて見た…あれが、巨人の運動能力…!無理だッ!!あんなスピード、勝てっこねぇ!!!」
「貴様たち!死んだ奴のことなど一々構うな!後ろばかりに気を取られるんじゃあない!前からも来るぞぉぉぉぉぉ!!」
「うっ、うわあああああああああああああ!!!!」
「もうだめだあああああああああああああ!!!!」
「ひえええええええええええええええええ!!!!」
こうなってはもう収拾がつかない。巨人による前方からの圧力に屈し、後方の巨人の確認もままならないまま、全員四方八方散り散りに退散していった。
残ったのはどう行動すればいいかわからない若い兵士と、家族がまだ脱出していないと思われる老齢の兵士だけが取り残されていた。
見ると、先ほどまで威勢を張っていた隊長らしき人物も、逃走した兵士たちに紛れてこっそりと逃げ出していた。
全滅コース確定の瞬間である。
残った何人かが、前方からやってくる巨人に対し攻撃を仕掛けに向かって行ったが、誰も帰ってこなかった。その結果により、もう誰も巨人に立ち向かおうとはしなかった。
巨人の群れが近づくにつれ、膝を着き、地面にひれ伏す者も現れ始めた。
もし、圧倒的な能力や力を持つ超人がこの光景を見たならば、なんと滑稽な構図なのだろうと感じることだろう。
だが、見られている当人たちは至って大真面目である。
大真面目に、泣き叫んでいた。
だが、精一杯出した鳴き声も、早々に掻き消されることになる。
カンッ、という小気味よい音と共に何かが射出されたかと思うと、巨人の体からバスッ、と重い物体がぶち当たる衝撃音が、隊列を成して奏でているのだろうと聞き取れるほど連続して巻き起こったのだ。
「あれは…!?アテネスのゴゥレム部隊!!」
「た、たすかった…俺たち助かったんだ!!」
頼れる援軍の到着により、一斉に泣き叫ぶ音を歓声を湧き上げる声に転化させる取り残されていた兵士たち。
その惨状を、アテネス兵は救えた達成感と同時に憐れんでいた。
「駐屯兵団と調査兵団の混成部隊か…急造の有り合わせ部隊でろくな連携も取れなかったろうに」
「指揮官も逃亡しているようだ…これではまともに戦えと言う方が無理だ」
「諸君!我々が来たからにはもう安心していいぞ!」
とは言ったものの、隊列を成して遠くからプレスガンを撃ったところで、巨人は弱点を的確に狙わなければ殺せないため、
巨人の足を遅らせるだけで進撃を止めるにまでは至らなかった。
この現状を打破するため、バデス将軍補佐が分析し意見を述べる。
「破壊された壁から壁の外へ出て超大型巨人に接触するためには、まずこの10m級の巨人共で出来た肉の壁をどうにかしなければならないようですねぇ…いかが致します将軍?」
「ふむ、そうだな…ではアイレス、やってくれるか?」
「………」
将軍がアイレスという名を呼ぶと、ヌッ、と巨大な斧を手に持ったガッシリとした灰色のゴゥレムが巨人の群れの前に立ちはだかった。
「!?たった一台で!?無茶だ!!」
「フッ…まあ見ていろ小僧」
無謀とも思える行動を取る一台のゴゥレムに驚愕するエレン。だが将軍に宥められる。
巨人の群れが、プレスガンの斉射による圧力から解放されたことにより、アイレスのゴゥレム『ドラギア』に向かって突進してくる。
どんどん距離を詰めてくる巨人に対して、アイレスはまだ行動を起こそうとしない。斧を持ったまま仁王立ちである。
そして、巨人が、アイレスの有する間合いへと侵入した――
「粉砕せよ、虫螻!!!!!!」
視界が上下に分断した。目の錯覚か?
いや違う。数体の巨人の首と胴体が、一瞬にして両断されていたのだ。しかも巨人の弱点であるうなじを見事に切断できている。
驚愕の出来事に呆気に取られる暇もなく、アイレスのドラギアは瞬時に斧を構え直し、ニ撃目の態勢に入った。
「 粉 砕 せ よ ッ ! ! 」
だいぶ離れているというのに、大気を切断する音が直接耳に響いてくるほどの衝撃と、何かのフレーズと思われる叫び声が轟いてきた。
「 む し け ら ァ ッ ! ! ! ! 」
まるで大根の微塵切りなのではと思うほどスパスパと綺麗に切断されていく巨人の群れ。巨人の進撃する勢いが一瞬途切れた。
「よぉし!この隙を見逃すな!俺たちもアイレス殿に続くぞ!!」
「こりゃ討伐数10くらいはいただきだぜ!!」
「だからお前ら戦闘中の私語は慎めよ!!」
「「「うおおおおおおおおーーーッ!!!」」」
荒々しい雄叫びと共に、左肩に装着された国産標準装備の剣を構え、アテネス主力量産型ゴゥレム『ラドゥン』を巨人群へ突撃させる搭乗士達。
各部隊長の指示に従い、3台一組となって1体の巨人を取り囲み、袋叩きにすることで的確に巨人のうなじを抉り取って行った。
単純な戦術だが、名も知れない兵士でも十分効果を発揮できる有効な戦法であった。
「ッ!10時方向!『奇行種』確にn………ガハッ」
「味方1台ダウンッ!速いぞッ!同隊のゴゥレムと背を合わせ防御陣形を取れ!狩られるなよッ!」
良く見えなかったが、どうやらとんでもない巨人がいるようだ。『奇行種』と言うらしい。何やら普通の巨人と違って顔も動きもより気持ち悪くなった感じだ。
今見えているだけでも、民家と民家の間をとんでもない跳躍とスピードで跳ね駆け回っている。それにゴゥレム一台が巻き込まれ、胴体を押し潰されたのだ。
仇を取ろうと奇行種を追ってプレスガンを連射するアテネスのゴゥレム達だが、一向に当たる気配がない。それほどまでに凄まじい機動性だということだ。
「くそッ!当たらねぇッ!!どうすれば………ッ!?」
またとある一台のゴゥレムが標的となり、奇行種の突撃が襲い掛かった。
「やっ、やられる…!!」
今にも押し潰されそうになる中、左腕の盾を構えながら必死にプレスガンを連射し迎撃しようとするが、それで奇行種を止められるはずもなかった。
彼のゴゥレムの投影石英スクリーン越しに、奇行種の大きく見HIRAかれた目玉と、靡く無数の髪の毛のが迫り、距離が0となり、彼は死――
「まったく、プレスガンに頼り過ぎなんですよねぇ皆さんは」
死ななかった。
「バデス殿!!」
間一髪。奇行種は標的のゴゥレムのゼロ距離で『空中』で停止していた。
よく見れば、バデスさんのゴゥレムが、大きな槍で奇行種の胴体を深々と突き刺し、空中で停止させていたのだ。
その槍から逃げ出そうと暴れまわる奇行種だったが、槍の持ち主は腕を上げたまま微動だにせず、恐ろしいほど冷静に『分析』していた。
「これは珍しいモノが釣れましたねェ…!持ち帰って色々研究するというのはどうでしょう将軍?『ドクターヘイパス』も喜びますよォ!」
「興味ないから却下」
「…畏まりました」
名残惜しそうに、バデスのゴゥレム『ペルセボネ』は、槍で持ち上げたままの奇行種のうなじを素手で握り潰したのだった。
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