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プレスガンの束が、『とある一体の巨人』に向かって、石の雨が降っているのではないかと錯覚するほどの連射で集中砲火された。
これほどの連続した弾丸を喰らえば『普通の巨人』であれば、跡形も残らず粉微塵になることは間違いないだろう。
だが、目の前の『とある一体の巨人』は違った。
「プレスガンが…弾かれるだとッ!?」
『鎧の巨人』――そう形容するのが相応しいだろう。表皮を晒した通常の巨人とは違い、如何にも頑丈そうな『鎧』を全身に身に纏っていたのだ。
射程100~200mを誇るプレスガンから射出される、人間の頭部ほどの大きさの石英の塊の弾丸。決して破壊力が無いわけではない。むしろ質量兵器としては優秀だ。
だが、目の前の『鎧の巨人』には、まるで通用しなかったのだ。
当たっても当たっても、石英製の弾丸の方がバラバラと砕け散るばかり。辺りはプレスガンの弾丸の破片の海となっている。
アテネスのプライドの高い軍人にとっては苦な結果ではあるが、ダメージゼロと表現しなければならない状況だった。
「どうやって倒せってんだ…こんなバケモノッ!!」
狼狽える兵士たちの後ろから、ズンッ、っという一際重苦しい重音が響いてきた。マントを纏った黒い機体。
現れたのは、先ほどから連戦に連戦を重ね、アテネスを勝利へと導いている我らが将軍、ボルキュス将軍その人だった。
「全軍攻撃中止ッ!!手を出した者は処刑だッ!!」
「将軍ッ!危険ですッ!お下がりくだs…」
バツンッ。
黒い蠍の尾が一瞬だけ姿を現し何かを切り落とすと即座にマントの裏側へと帰ってゆく。
名も無き一兵士が乗るラドゥンが持つプレスガンが真っ二つになったのだ。二丁のプレスガンでゴゥレム一台分の製造コストとされるプレスガン。
それを躊躇なく半分こにしちゃうボルキュス将軍。ヤバいこの人マジだ。ちびった。
「全軍ッ!私が死ぬまで石になれッッ!!武器はイーストシミターを使う!…フフフ…イーストシミターなど使うのは何年ぶりだろうかなぁ?」
将軍の脅しを皮切りに、部下から将軍へとプレスガンの弾丸交換とイーストシミターと呼ばれた東洋剣と盾の装備譲渡が行われ、アテネス全軍のゴゥレムは百数十メートル四方へと広がり、将軍と『鎧の巨人』の周りを取り囲み、闘技場さながらの風景を作り出した。
その間、ゴゥレムで形成された闘技場へ向かい襲ってくる他の巨人共は、バデスとアイレスたち精鋭部隊が嬉々として狩ることで現状を維持させていた。
「単独で強襲し我々に注意を逸らさせる…まるで誰かを庇うか守ろうとしたかのような行動だなぁ?ん~?」
安い挑発だ。本来、巨人に明確な『意志』は無いはずなのだが、ヒュケリオンの拡声器で『鎧の巨人』に対して露骨に煽ってみるボルキュス将軍。
効果があったのか無かったのか、『鎧の巨人』はふいに腰を落とし、股を広げ両腕を上げ、ボルキュス将軍に対してファイティングポーズらしき態勢を取ったのだ。
「ほ~?確かにここで私を倒せば、この戦線は維持できなくなり、ウォールマリア壁内は蹂躙されるだろうなぁ~。『もし』私が倒されちゃったらな~」
『ここでボルキュス将軍が死ねば』――将軍自身の言うように、確実に指揮系統は乱れ、士気は低下し、アテネス軍は撤退を余儀なくされるだろう。
その意味が理解出来たのか出来ていないのか、ついに『鎧の巨人』がボルキュス将軍へと向かい突進してきた!
「ほぅッ!凄まじい加速性能だなァッ!!」
突撃してくる『鎧の巨人』に対し、後ろに下がりつつ、左腕と両膝のプレスガンを乱射させるボルキュス将軍。
だが、そんなものはまるで効果は無く、どんどん両者の距離は詰まってゆき、ついに『鎧の巨人』の間合いがヒュケリオンを捉えた。
突進の加速により勢いが増し、『鎧の巨人』の振り被った右拳が、ヒュケリオンへと襲い掛かる。
『鎧の巨人』全高約15m。『ヒュケリオン』全高約11m。体格差およそ4m。
近接パワー勝負において、ヒュケリオンは圧倒的に不利であった。しかし、この体格差により、『鎧の巨人』に若干のリーチ不足が生じていた。
ヴォンッ、という空を切る音と共に、『鎧の巨人』の拳がヒュケリオンの顔面を掠めた。ヒュケリオンは咄嗟に後方へ仰け反ることで回避を成功させたのだ。
だが、その圧力、いやもはや切れ味と言うべきか。ヒュケリオン頭部パーツの装飾品が一部欠け、あらぬ方向へ吹き飛んで行ってしまった。
このパンチを喰らったら、いくらゴゥレム最重量級のヒュケリオンと言えど、粉々に砕け散ってしまうに違いない。
「ただの拳だけで私に挑もうとはなぁッ!はははははッ!!」
標的が逸れ大きく空振ったことにより、一瞬態勢を崩してしまう鎧の巨人。
「しかし空振った後の間隙は縫えんぞッ!!」
姿勢が覚束ない鎧の巨人に対し、反撃を仕掛けるボルキュス将軍。
イーストシミターを持ち、武器によりリーチが延長しているヒュケリオン。
先ほど鎧の巨人が攻撃をミスした時とは違い、ヒュケリオンが振り被ったイーストシミターは、正確に鎧の巨人へと吸い込まれるように向かっていった。
次の瞬間、ジャンッ、と硬度な物体が切断される小高いせん断音が発生した。
あれほどまでに強固だった鎧の巨人の装甲が――斬れた?
見ると、鎧の巨人の右肩装甲が、赤と白の断面を露わにし、綺麗に切断されていたのだ。
イーストシミター。叩き潰すことや削り取ることを目的とした西洋剣とは違い、『斬る』ことを目的とした剣である。
耐久性は低いが、速さはトップクラスの武器なため、拳速の素早い鎧の巨人にも追随が可能であった。
2撃目を入れようと振り被るボルキュス将軍。だが、鎧の巨人は突拍子もない行動に出る。
なんと、鎧の巨人は回避でも防御でもなく、逆に真正面に向かって突進し、あえてイーストシミターを自身の体に深々と突き刺したのだ。
一歩間違えば重傷を負いかねない素人的発想同然の危険な行為である。巨人の再生能力が成せる力技か、あるいはそれほどまでにこの武器を警戒したのか。
その甲斐あって、刺さった衝撃でイーストシミターは刀身の半ばからポッキリと折れてしまった。
「…面白い防御だ」
ゴゥレムの搭乗席内で、頬を吊り上げますます笑みを強めてゆくボルキュス将軍。
イーストシミターを破壊したことで勢いを増した鎧の巨人は、今度は左腕を振り上げヒュケリオンへと殴りかかった。
鎧の巨人の左拳は、先ほど体格差によるリーチ減少で狙いを外したことを考慮し、若干下向きに殴りかかり命中精度を増加させているように見えた。
「…多少学習したようだが、安易な攻撃だ」
鎧の巨人の左腕に、黒い蛇が巻きついた?いや違う、多関節武器スコルピオンテールだ。両肩に装備された左肩の方の蠍の尻尾が、蛇のように絡み付いている。
6関節による雁字搦めの締め付けにより、鎧の巨人の左腕は、ミシミシと音を立てガッチリと固定され、まるで動かすことが出来なくなっていた。
突然のスコルピオンテール強襲により、驚いたかのような反応を起こした鎧の巨人は、誰から見ても分かるような隙を生じさせてしまっていた。
その隙をボルキュス将軍が見逃すはずもなく、すかさず今度は右肩のスコルピオンテールを鎧の巨人へと迫らせる。
≪ヴォアアアアアアアアアッッッ!!≫
叫び声を上げ、窮地に立たされた鎧の巨人が取った行動は、なんと、自身の左腕に向かって、右拳で殴りつけたのだ。
それを見越していたのか、締め付けていたスコルピオンテールを緩ませ隙間を作ることで損傷を免れることができたボルキュス将軍。
どうやらこの鎧の巨人は、自身の腕を破壊、もしくは脱臼させることでスコルピオンテールの拘束から逃れようとしたらしい。
見ると、鎧の巨人の左腕と右拳は、鎧が砕け、肉と骨が露出してしまっていた。強固な装甲同士が衝突した影響もあるが、それほどまでに力強く殴ったということだ。
「先ほどと同様だが…いくら再生するからと言って、ちょっと再生能力に頼り過ぎなのではないかぁ?」
余裕綽々と言った感じで、スコルピオンテールを再びヒュケリオンのマントに隠し仁王立ちするボルキュス将軍。
その行為にキレたかキレてないのか、鎧の巨人が無鉄砲にもヒュケリオンに向かって飛びかかろうとする。
そんな追い詰められた無法者がするような行為に、さすがのボルキュス将軍もその行動は予測できなかった。
なので、後ろに倒れ込むことで回避することにした。
急に倒れ込んだヒュケリオンに飛びかかろうとした鎧の巨人は、逆に呆気にとられてしまう。彼もまた、将軍のこの行動は予測できなかった。
「ふふふ…どうした?私は倒れたままだ。殺るなら今しかないぞ?私はゴゥレムで戦っているから疲弊はしないが、生身の君はどうなのかね~?」
本日何度目だろうか、またも安い挑発だ。将軍が疲れないというのはもちろんブラフである。だが、効果はあったらしく、鎧の巨人は上半身を捻らせ、両腕を大きく振り被った。
これまで左右の腕で一回ずつ殴ったわけだが、どれも直撃せず。今度は両腕による同時打撃で確実に命中させる算段らしい。
その戦術は間違いではなく、ヒュケリオンの胴体目掛けてまっしぐらに振り下ろされ、直撃コースは確実であった。
ニヤッ
不意に、この黒いゴゥレム、ヒュケリオンが笑った気がした。いや、実際にはヒュケリオン内部に潜む、ボルキュス将軍が笑っていたのだ。
いつの間にか、マント下から隠されていたはずのスコルピオンテールが露出し、鎧の巨人の両腕を絡め取ろうとしていたのだった。
思わぬ眼前の伏兵に、とっさに両腕による打撃攻撃を中止する鎧の巨人。
まさに間一髪。スコルピオンテールは、鎧の巨人の両腕を掠め、ヴンッと空を切るに終わった。
≪ヴォオオオッ…!!≫
苦しい態勢に唸り声を上げてしまう。鎧の巨人は両腕を振り下ろした反動を相殺できず、思わず転倒しそうになってしまったのだ。
ここで転倒すれば最後。この黒い巨兵の猛攻が待ち構えているだろう。
なんとか両脚を地面に食い込ませ転倒しないよう踏ん張る鎧の巨人だったが、その行為をボルキュス将軍が許すはずもなかった。
未だ地に仰向けで倒れているヒュケリオンの右脚が、鎧の巨人の右脚を蹴り飛ばし、さらに姿勢のバランスを悪化させる。
鎧の巨人は、一歩、二歩と躓き、転びそうになるのを必死にこらえた。
その数歩。ヒュケリオンが再び地に足をつけ、起き上がるには十分な時間であった。
両者とも態勢が元に戻った時にはもう遅い。スコルピオンテールによるリーチを有するボルキュス将軍が優位に立つのは当然であった。
スコルピオンテールによる、左右からの連携攻撃が、鎧の巨人に襲い掛かる。
必死に猛攻を避け続ける鎧の巨人。だがその跳躍力を生かし、なんとか後方へ下がり間合いを取った。
鎧の巨人はなぜこうもスコルピオンテールを警戒するのか?
それは恐らく、ゴゥレム一体分の長さに匹敵し、かなりの質量を持ち合わせたこの武器は、いくら強固な装甲を持った巨人にとっても、相当なダメージが入るからなのであろう。
その戦果は、ボルキュス将軍がこの戦場において、嫌と言うほど自身で証明していた。
この武器に近寄りたくない鎧の巨人は、徐に荒れた地面へと両手を伸ばし、そこら中に散らばったアテネス標準剣の破片を掴み取った。
≪ヴォオオオアアアアアアーーッ!!≫
投擲攻撃――!
ボルキュス将軍は回避行動を取る暇も与えられず、鎧の巨人は思い切り上半身を仰け反らせ両腕に掴んだ剣の破片を勢いよく投げ飛ばした。傍から見てもフルパワーなのが見て取れる。
鎧の巨人から放たれた剣の破片は、凄まじい運動エネルギーと共に、ヒュケリオンの闇色の中へと吸い込まれてゆき――
直撃した。
ズンッ、と大地に大質量物体が倒れ込む振動音が周囲を包み込む。あのヒュケリオンが倒れたのだ。
「ボルキュス将軍ッ…!!一体どうなってるんだ…!?」
ざわつく、周囲を取り囲んでいる兵士たち。
もしかして将軍がやられたのではないか…?一抹の不安が兵士たちの心の隙間によぎる。
だが、そんな心配をする必要は無かった。
「…咄嗟にヒュケリオンを宙に浮かせて正解だったようだ…大地にしがみ付き真面に守ろうとしていたら…」
起き上がったヒュケリオンの盾には、鎧の巨人により投擲された剣の破片が深々と刺さっており、ピキピキと石英に亀裂を走らせていた。
「衝撃を吸収しすぎてフレームごとやられていただろうなぁ」
盾が砕け散り破片が地面に降り注ぐ。だが、当のヒュケリオンは全くの無傷であった。目立った損傷と言えばボルキュス将軍の髪が乱れていることぐらいか。
「ボルキュス将軍!」
「ボルキュス将軍!!」
「ボルキュス将軍!!!」
歓声が沸き上がる。まるでジワジワと鎧の巨人にプレッシャーを掛けてゆくようようにも見える。
鎧の巨人は、2度目の投擲攻撃を行わなかった。なぜなら、この攻撃はあくまで意表を突いた奇襲攻撃だったからだ。まともに堂々とやっては避けられてしまうだろう。
それを察してか察しないでか、ボルキュス将軍がとんでもない指示を出す。
「おい、この『鎧の巨人』に剣を渡してやってくれ」
は?全アテネス軍、そして手に汗握り観戦していたエレンもこれには思わず「は?」と言わずにはいられなかった。
「正気ですかボルキュス将軍!?!?」
「将軍命令だ。やれ」
「ぬぅ………はい…」
一台のラドゥンが、嬉々としてボルキュス将軍へと近寄り再び剣を譲渡した。
もう一台のラドゥンが、恐る恐る鎧の巨人へと近寄り、地に剣を突き刺した。そしてそそくさと離れていった。
「鎧の巨人君…まぁ君らの本名は知らないが、破壊を具現化する巨人――『ブレイクオンタイタン』とでも呼べばよいかね?、私からのささやかなプレゼントだ。君らの行った行為には敬意を表するよ。ぜひ使いたまえ」
ボルキュス将軍の好意――いや、これは完全なる『挑発』であった。舐めている。馬鹿にしている。甘く見ている。
この意味するところは、本来の目的を見失わせ、完全にボルキュス将軍だけを眼中に収めさせ、『絶対に殺す』という殺意を抱かさせることであった。
この度重なる挑発に、鎧の巨人は――
乗った。
地面に刺さった剣を右手で引き抜き、左手を添え剣を構える鎧の巨人。二人の距離はジワジワと縮まってゆく。
「ふむ…剣を持つ巨人と言うのは初めて見るなぁ…敵の好意に甘えてまで単身でこれほど必死に戦うということは何か訳があるのだろうが…」
ボルキュス将軍の唇が歪に歪む
「ちょっと今しがた消失した超大型巨人の近くに、『誰か』いないか全軍を上げて捜索してみるかなぁ?」
≪ヴォオオオオオオアアアアアアアアアーーーーーッッッ!!!!≫
(クックック…自国政策の支持率アップのためのくだらん遠征だったが…大当たりだとはな!!)
ボルキュス将軍の意図の取れない謎の一言が発せられると同時に、鎧の巨人がとてつもない怒号を上げ、剣を振り被り突撃した!
ガキンッ!という、まさに刃物と刃物が激しくぶつかり合う衝撃音が、幾度となく交じり交わされる。火花が飛び、石英製の刀身の破片が飛散する。
ボルキュス将軍が使うのは剣だけではない。左腕のプレスガンと両肩のスコルピオンテールを用い、複雑な攻撃を仕掛ける。
一方、鎧の巨人はそのパワーを生かし、剣を力任せで縦横無尽にブンブンと振り翳している。
鎧の巨人のパワーが勝ったのか、幾度目かの剣同士の弾き合いで、ヒュケリオンの剣が粉々に砕け散ってしまった。
砕けた剣により生じた隙をカバーするため、右肩のスコルピオンテールで間合いを補おうとするヒュケリオン。
だが、鎧の巨人の剣の方が一歩早く、迫るスコルピオンテールを刃でいなし、スコルピオンテールの関節中間点を狙いその自慢のパワーで一刀両断した。
「むぅッ!!」
これを好機と見た鎧の巨人は、一気に畳み掛けるように、ヒュケリオンへと向かって跳躍し、剣で薙ぎ払おうとする。
だがその時だった。ヒュケリオンは、突如として空いた両手を前へ突出し、鎧の巨人の両肩を掴み、その跳躍の勢いを殺したのだ。
さらにどうしたことか、剣と右方スコルピオンテールを失い重量軽減されたヒュケリオンは、鎧の巨人の両肩を接点とし、なんとその巨体で逆立ちをするという、サーカス曲芸のような芸当を行ったのだ!
鎧の巨人は剣で薙ぎ払おうという態勢を取っているため、いま直上にいるヒュケリオンに対し対空迎撃も行えず、勢いも殺され脚も動かせない状態になっていた。
逆立ちしたヒュケリオンは、重力に従い鎧の巨人の後方へと次第に落下、そして――
背後を取った。
一撃目。背骨へ左足による一蹴。
二撃目。左腕プレスガンによる各関節骨格への精密射撃。
三撃目。後頭部からうなじへかけて左肩スコルピオンテールによる連続殴打。
これらの攻撃は三回の連続攻撃に思えたが、実際は1秒にも満たない間でやってのけた、『同時攻撃』であった。
凄まじい衝撃と共に、地面へ向かいうつ伏せになりながら勢いよく倒れ込んでしまう鎧の巨人。
まるで気を失ったかのようにピクリとも動かなくなってしまった。地に伏した鎧の巨人の背後に、ヒュケリオンが悲しげに佇む。
「……お前はつまらん……間合いの変化に対応できず、直線的に追い回すだけ。すっかり冷めてしまったよ…」
土煙を上げながらひれ伏す鎧の巨人を見下すボルキュス将軍。
その表情は怒っているのか悲しんでいるのかよくわからない感情を示していた。
佇むヒュケリオンに、壁外の巨人狩りに満足したのか、結構ボロボロになったペルセボネでバデスが現れた。
「一騎討ちなど…このような行為はこれっきりにして下さいよ、ボルキュス将軍…」
「命令違反をしてでも将軍の暴走を止める、という兵がいないのにも問題があるだろう?」
「…暴走してるという自覚はあったんですか…?…ところでこの鎧の巨人はどういたします?」
「戦ってみてはっきりした。この鎧の巨人の力は、巨人の能力に頼り切ったものだ。この巨人の戦い方にはまったくセンスを感じなかった。比べるなら先ほど戦った超大型巨人の方がまだマシだったぞ。冷静な戦い方でいかにも任務を全うする職業軍人という体だったしな」
「相変わらず戦いのこととなると将軍は饒舌になりますねぇ…」
「ハハッ!こやつめ!鎧の巨人はお前に任せるよバデス」
「わかりました。では、鎧の巨人は本領へ輸送します。みなさん!トレーラーに縛り付けてゴゥレム五台がかりで抑え込んで運搬なさい!」
ゴゥレム運搬用のトレーラーに石英製の鎖で縛り付けられ、五台のラドゥンに圧し掛かられる鎧の巨人。
アテネス本領へと運ばれ、実験拷問解剖される運命になってしまうのか…。
もはやその運命のなるままと思われた次の瞬間、それに抗うかのように、地を影で覆う超巨大物体が雷のごとく唐突に出現した。
それは、下半身が無く、胴体の切れ目から内臓を露出させた不完全体とでも呼ぶべき――
消えたはずの超大型巨人だった――
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13/09/20
台詞
(クックック…自国政策の支持率アップのためのくだらん遠征だったが…大当たりだとはな!!)
を追加改訂しました。