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「こらァーッ!『エレン・イェーガー』!!何をちんたらやっとるかァーーーッ!!」
「ひぇー!すっすみませ~ん!!」
『シガンシナ区陥落』から2年。家族と開拓地を転々としていた俺は、ウォール・ローゼ南方面駐屯、第104期訓練兵団へと入団した。
シガンシナ陥落後のゴタゴタの後、俺とミカサと母さんでどこに移住しようか調べていたとき、アルミンとその家族も無事だったことが判明し、再開した際は号泣したが…開拓地に移住したあとも、まあそれなりに幸せに暮らしていた。
だが、俺は『ある理由』から、どうしても『調査兵団』に入団したかったのだ。なので早々に調査兵団への入り口である『訓練兵団』への入団を希望し、そのことを思い切って周りに打ち明けた。
その際、母さん、そしてミカサとアルミンは当然のごとく猛反対したが…その反対を押し切って半ば無理矢理に入団したのだ。
あの時の母さんの心配そうな顔ったら今でも忘れられずにいる。正直後ろめたい気持ちもあったけど、後ろを振り返らず前を向いて突き進むことにした。
入団の際、いつの間に手続きをしたのだろうか?なぜだかミカサとアルミンも入団すると言って俺についてきたのだ。
アルミンの入団理由は外の世界を見たいから。ハハッ昔と変わらないな、俺もその夢は今でも忘れていない。
ミカサは…何かブツブツと言ってたような気もするが上手く聞き取れなかった。
入団後、アルミンは座学でトップの成績を収め、いつの間にやらウォール最深奥壁内シーナ中央政府での内定も有力視されるほどの逸材になっていた。すごい。
ミカサの方は、実技でその体技を活かした優秀さをいかんなく発揮し、現在成績第一位。他の兵員、そして教官からも一目置かれる存在になっていた。つよい。
そして、俺はというと…
「ハハハ!『落ちこぼれエレン』~!」
「いまだに立体機動が出来ないなんてダサすぎだぜ~!」
「いっそ巨人に親殺されて復讐鬼にでもなった方が良かったんじゃねぇの~?」
落ちこぼれとなっていた。
先ほど教官に叱られたのも、『立体機動装置』の操作を誤り地面に激突してしまったからだ。痛い…。
『立体機動装置』
それは人類が対巨人用に開発した個人用特殊装備。
人体の腰部を接続部とし、下半身のベルトによって姿勢を安定させる。
その機能は『立体機動』と呼ばれる、両腰のボックスに内蔵されたワイヤーウィンチ先端のブレードを巨人と同高の構造物に交互に貫徹させ、腰背部のガスシリンダーを噴出し、まるでスケールのデカいブランコのような機動を行うのだ。
操作はボックスに繋がった2つの鍔の形をした操縦桿で行い、この鍔型操縦桿に、鞘のようなボックスに収納されているカッター刀身を装着することで、巨人を斬り裂くことができる二対の剣が完成するわけである。
ただし、この『立体機動』を行いながら、『巨人のうなじを斬り取る』、という戦術は、かなりの技術を要する。実際、『立体機動』で巨人と戦闘を行った際の兵士損耗率は決して良いものではなく、むしろ悪いものだ。
いい例が調査兵団である。50回以上の壁外遠征調査を行っている調査兵団ですら、毎回の損耗率は5割以上と類を見ない損害だ。
だが、鉄砲や大砲といった、単発での『点』や『面』で攻撃する兵器が『再生する巨人』に対して効果が無い以上、狙った箇所に正確に攻撃できるこの『立体機動装置』に頼らざるを得ない状況なのである。
で、話は戻るが、俺はその立体機動装置の『難しい操作』に苦難しているわけだ…。もうすぐ試験だというのに、このままでは落第…。
いや、そんな結末には決してさせない!なぜなら、俺にはある『約束』があるからだ。まあ俺が勝手に決めつけた一方的な約束だけど…。
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――2年前、シガンシナ領外区、ウォールマリア内周
「ボルキュス将軍!!」
黒髪の質素な服装の子供が、黒い軍服を纏った金髪の男に声をかける。
「なんだ小僧?」
「俺も将軍と一緒に戦いたいです!!」
「ハッハッハ!冗談はよせよ小僧!」
「本気です!!」
「…」
「俺、将軍の戦いを見て感動しました!将軍なら…ボルキュス将軍なら『巨人』を全滅できると思います!!」
「君…そのへんにしておきなさい。ボルキュス将軍にはこれから戦後処理の仕事があるのです。これ以上つっかかれば――」
「いいんだ。バデス」
「――将軍?」
「いいかね小僧?残念ながら我が『アテネス』は他領区民の難民受け入れの体制は行ってはいないんだ。だから小僧がアテネス軍に入ることも、私と共に戦うことも出来ないのだよ」
「そっ…そんな………」
「逆だ小僧」
「?」
「アテネスで私と共に戦えないと言うのなら、『別のルート』を使って、私と共に戦えるような状況を作り出せばいい」
「???」
「フッ…今はまだ分からなくともいい。小僧はまだ10才くらいだろう?それに、戦場へ少年兵を出さざるを得ない軍に、良い未来は無いだろうしなぁ」
「…俺…どうすれば…?」
「小僧ならば――どうすればいいかなどすぐに理解できるはずだ――」
この言葉を最後に、将軍は去って行った――
その後、巨人の進撃からシガンシナ民を救い、難民の他領区への誘導までもの戦後処理を行ったボルキュス将軍は、彼らから絶大な支持を受け、自国ならず他国でも英雄扱いとなったそうだ。
将軍の別れ間際に言った言葉の意味は、その時の俺にはさっぱり理解できなかった。
だが、あれから2年経った今の俺にならば、将軍の言った通り、すぐに理解できた。
『合同壁外調査』――
半年前、各町々でそういう噂が立ったとき、俺の頭の中でピーンと来たのだ。
『調査兵団が、アテネスと合同軍事同盟を結めば――』
ボルキュス将軍が言っていた言葉の意味は、まさにこのことに違いなかった。
街の噂の指し示す通り、付近の調査兵団の動きもどこか慌ただしく、ちょくちょくアテネス軍の物と思われるゴゥレムも見かけるのだ。
恐らく彼らは、『大規模な壁外調査』のための準備を始めているのだろう。そうに違いない絶対。
この同盟に参加することが出来れば、ボルキュス将軍に会える――しばらく胸の高鳴りが収まらなかった。
当然この流れに乗り遅れるわけにはいかず、俺は心構えも無く早急に第104期訓練兵団へと入団したわけだ。
だが、『心構えが無かった』ため、入団して早々後悔するわけだが…した。前々からもっと勉強しておけばよかった…体を鍛えておけばよかった…と――
――第104期訓練兵団。この訓練兵団に入団し、3年の訓練課程を修了すると、調査兵団、駐屯兵団、憲兵兵団のいずれかの兵団に配属することができるのだ。
が、その『訓練』は厳しく、昼夜問わず『対巨人訓練』を主としているため、教練内容はかなりハードな内容となっている。事実、入団してすぐに除隊してしまう者も多く、1日未満で脱走した奴もいるほどなのだ。
それにこの厳しい訓練に耐え続けたとしても、試験成績と評価が悪ければ当然、配属のための合格判定は貰えず、落ちこぼれとなってしまう。それが俺だ。
しかし、そんな落ちこぼれの俺にも、一筋の光があった…。
俺が地面に激突し痛みのあまり座り込んでいると、周囲にそり立つ木々の後方から、凄まじいスピードでワイヤーウィンチを振り回し、何かが飛来した。
教官の頭を掠め、Uターン。また旋回。急上昇急下降。ちょっと地面に降りて数歩歩いて見せる。また飛翔。教練内容に従った他の訓練兵員と真逆の方向へぶっ飛んで行った。
このふざけたトンデモナイ行為に、普段キレやすい教官もブチキレた。
「『ジルグ・ジ!!・レロ…レラ…!アララルバロ…!…ッ!!』」
噛んだ。
――ジルグ・ジ・レド・レ・アルヴァトロス――
兵員内での通り名は『ジルグ』――
第104期訓練兵団『最下位』――
彼のおかげで、俺はケツから2番目の順位を維持する事が出来ていた――
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