正反対の二人   作:やまたむ

10 / 11
隠し部屋はどーこだ

『おーおー、なにやってんだお前ら』

 

『て、てめぇはっ!』

 

『どうもー、路地裏の悪魔、祐貴クンですよー』

 

『やろーども、かつ上げは中止だ。こいつを殺すぞ!!』

 

 五、六人くらいでかかってきた不良どもの意識を刈り取って、俺はかつ上げされていた小学生に声をかける。

 

『ガキンチョ』

 

『こ、後輩です!』

 

『いや、俺はお前の先輩じゃないぞ』

 

『いえ、俺の苗字です!!お金はありません!!』

 

『別に金をたかってるわけじゃないから。今までもこんなことあったのか?』

 

『は、はい!!お金はありません!!』

 

 どう解釈すればこうも金のことに持っていけるのだろうか?

 

『はぁ、いちいちめんどいガキだなぁ。仕方ない。俺がおまえを鍛えてやるよ』

 

『は、はい?』

 

『いやぁ、最近退屈してたんだよ。なら、弟子でもとって退屈しのぎでもしようかと思ってな。そしたら、なんか、決意のある目をしてる奴がいてちょうど良いから鍛えてやろーかなーってわけ。

 で、どうよ、強くなる気はないか?』

 

『こ、これでお金を取られることがなくなるのなら!!』

 

『その粋やよし。それじゃ、今からうちいくぞー!!』

 

 そんな、中一時代の記憶は今では黒歴史だ。

 

 ──────────────────────

 

 羽沢珈琲店で面接を控えた少年、弓塚祐貴は幼なじみの少女、白鷺千聖に面接の練習を手伝ってもらっていた。

 千聖は面接する際に用意される履歴書に目を通しため息を吐く。

 

「で、これはなに?」

「見ての通り、履歴書だが?」

 

 その一言に千聖のこめかみがピクピクと動き、明らかに苛立っているのがわかる。

 

「へぇー、そう。それじゃぁ、この、自己PRにある、『路地裏の悪魔と呼ばれ、不良グループから恐れられていました』って言うのはどう言うこと?」

「ほら、俺ってケンカする事ぐらいしかできないだろ?」

「へぇー。それって、人の顔を見て体調がすぐにわかって、それに合わせた料理が作れて、物語を作れて、人望がある。で、ケンカ以外なんですって?」

「ち、千聖……」

 

 千聖の言葉は、「そう自分を否定しないで欲しい」という願いが込められており、それを祐貴に否定することはできなかった。

 と、言うより、自分のことをキチンと見てくれていたことに驚いていた。

 

「祐貴?」

「いや、こんな俺でもちゃんと見てくれてるなんてなぁ、って思って」

「あっ、当たり前じゃない。幼なじみなのよ?これくらい当然よ」

「そうか。でもよ、それってアピールするような物なのか?」

「貴方の『路地裏の悪魔』の二つ名を書くよりはずいぶんとマシよ」

 

 こんな事をしながら数時間が経過し、もうそろそろ夕方に差し掛かろうとしたところだった。

 

「ゆーうーきー、あーそびーましょー!」

 

 聞き覚えのある声が玄関から聞こえてくる。

 祐貴はため息を吐き、千聖に一言。

 

「行ってくる」

「えぇ、行ってらっしゃい」

 

 祐貴はトボトボと玄関へと歩を進める。

 

 玄関に着くと、そこにはガールズバンド・ハロー、ハッピーワールド!のメンバーが勢ぞろいしていた。

 ハロー、ハッピーワールド!のメンバーは程度は違えど肩で呼吸しているため、走ってきたのだろう。そう祐貴は予想した。

 

「いらっしゃい。と言いたいところだけど、連絡の一つくらいはよこしてくれないかな、弦巻ちゃん?」

「ごめんなさい。こころを止められませんでした」

「あぁ、うん。大丈夫。連絡なしに誰かが来ることにはなれてるんだ。ただ、この時間が……ね?

 まぁ、弦巻ちゃんの思いつきを止めれる人なんて限られてるから仕方ないけど……」

「本当、すいません。このまま帰らせますんで」

「あぁ、いや、気にしなくてもいいよ。どうせ俺の方も休憩するところだったんだ。上がっていきなよ」

「えっ?本当にいいんですか?」

「いいって。それにここまではぐみちゃんの提案で走ってきたりとかもしたんだろう?」

 

 祐貴の問いに美咲は「あははー」と苦笑をもらすだけだった。

 そして、祐貴が家へと案内しようとしていたときだった。

 玄関に新たな人影が現れる、

 

「祐貴?いつまでそこで話しているつもりなの?」

「あぁ、すまん。今、ハロハピのメンバーあげるとこだから」

「あら、帰ってもらうんじゃなかったの?」

「いや、やりたいシナリオがあったから丁度よかったんだよ。どうせくるなら朝の内に来て欲しかったんだけどな……。夏休みなんだし」

「シナリオ?」

「ま、まさか祐貴、あれをやるのかい?」

「あー、うん。薫はあれにトラウマあるから仕方ないよな。うん。けど、今回やるのはクトゥルフじゃなくてダブルクロスの方だから」

「な、なんだ。それなら問題ない。てっきりクトゥルフの方をするかと思ったじゃないか。子猫ちゃんたちを怖がらせるわけには行かないからね」

 

 と、薫は言っているがトラウマになっている者の言うセリフではない。

 が、まぁ、薫なりの矜持があってこその言い分なのだろうが、動揺していたため、説得力が微妙に足りていない。

 今の薫るの言葉を素で信じているのはこころとはぐみのみだ。

 だが、そんなことより祐貴には気になることがあった。

 それは、

 

「なぁ、薫って昔そんなしゃべり方だっけ?去年の春休み頃は普通にしゃべってた記憶があるんだけど?」

「な、ななな、なにを言っているんだい、祐貴。私はずっとこんな口調だっただろう?」

「いや、もうちょっと女の子っぽかったと思うんだけど」

「そ、そそそ、そんな時期もあったかなぁー。ははは」

 

 薫の狼狽ぶりにこころ、はぐみ、祐貴の三人は疑問符を浮かべ、美咲、花音の二人は、「(あの薫さんが、おされてる……!?)」と思っていた。

 そんな、昔話などに花を咲かせていると、リビングに着いた。

 ハロハピメンバーの懸念としては、花音が家の中で迷子になることだったが、千聖と合流した際に、千聖が花音が彷徨いてはぐれないか監視していたため、問題無く全員揃っている。

 

「それじゃ、弦巻ちゃん。俺の用意したゲームで遊ぶけどいいよな?」

「えぇ!私たちは押しかけた側なのだから、なにをするのかは祐貴が決めて良いわよ?」

「押しかけたって自覚があるなら、連絡入れてからにすればよかったのに……」

「ハハハ、まぁ、弦巻ちゃんたちと連絡先交換してなかったし、突然の来客は慣れてるから、問題ないよ。うん。問題ない……問題……ない、から……」

「言ってて、不安にならないでくださいよ」

「だけどよ、ほら、いつの間にか作っておいたケーキがなくなってることとかよくあるんだよ。ってきり千聖が食べたものだと思ってたから、スルーしていたけど」

「祐貴?」

 

 そして、祐貴の余計な一言により、千聖は怒気を含ませた口調で、祐貴の名を呼ぶ。

 その際、千聖を除いた全員がひっ!?と悲鳴をあげたのは目に見えて明らかだ。

 

「それじゃ、私は祐貴と少しお話があるから、ここでくつろいでいてね?あぁ、それと薫。冷蔵庫にホールでケーキがあると思うから、勝手に食べてて良いわよ」

「そ、そうかい?祐貴、食べておいていいかい?」

「あ?あ、あぁ、問題ないぞ。基本来客用にワンホールは用意してるから」

 

 祐貴の言葉に、突然の来客に慣れてるってこう言うことかぁ、と納得した美咲と花音だった。

 千聖があまりにもデリカシーのない発言をした祐貴を説教するためにリビングから祐貴を連れてでた後だった。

 

「あ、あの、薫さんほんとにいいんですかね?」

「いいと思うよ。祐貴は基本的にうそは付かない。というよりうそをつけないんだ。だから、ほら」

 

 そういって、薫がキッチンの冷蔵庫を開くとそこには祐貴の言ったとおり、ケーキがあった。それもワンホールだけ。

 

「あ、あの、これは流石に……」

「いや、これは多分アレだろう。ジュースとかも手作りする予定だったのだろう」

「えっ?弓塚さん全部自分で作っちゃうような人なんですか?」

「そういえば、昔無人島で家を建てたとか言っていたかな?」

「そこから!?」

 

 雑談をしながら千聖の説教が終わるのを待つハロハピメンバー。

 漸く千聖の説教が終わったのか、やつれた様子で片手に丸々と太ったビニール袋を片手で戻ってきた。

 

「はぁー、別に空き巣とか気にする必要ないと思うんだけどなぁ」

「貴方、まだそんなこと言ってるの?」

「だってよ、いきなりおそわれたら、条件反射で気絶させれるし、飯とかも自分で作れるから問題ないんだよなぁ」

「そういう問題じゃないのよ。金目のものとか今のところ取られてないだけ良いとしても、明日警察に行きましょう?」

「えー、めんどいし、来月から無人島サバイバル生活があるんだけど」

「は?」

「な、何でもないです」

 

 この瞬間、この幼なじみ三人の力関係がはっきりと判明した。

 

「それで、祐貴のにいちゃん、なにをするの?」

「TRPGだよ。時間がかかると思うから、各自家の人に連絡しといてくれ。弦巻ちゃんの家が近いから、弦巻ちゃんの家に泊まればいいだろう」

「あら、みんな家にくるの?お泊まり会とかやってみたかったの」

「おう、そうか。それならこの場にいる女子の事はよろしくな」

「あら、祐貴も来るんじゃないの?」

 

 こころの一言によりその場にいたほとんどのメンバーは咽せてしまう。

 まぁ、無理もないだろう。むしろこの発言で咽せてないはぐみがおかしいのだ。

 

「ちょっと、こころ。さすがに男の人と同じ屋根の下は」

「そもそも、俺はこの家の主なんだから、この家で寝るに決まってんじゃん」

「そうなの?それなら私たちがここに泊まったほうがいいのかしら?」

「「そういう問題じゃない!」」

「まぁ、いいじゃない。私なんて毎日ここに泊まっているようなものなのだし、そんなこと今更でしょう?」

「えっ?千聖ちゃん?さすがに男の人がいるお家に泊まるのは……」

「さすがに部屋は別だし、祐貴、九時には寝るから何の心配もないわよ?」

「それでも、だよ」

「そうそう。松原さんの言うとおりだ。俺は千聖に毎回帰れって行ってるのに、おばさんが許可するから」

「それで、毎回泊まらせてもらっているわね」

「なら安心ね。それに祐貴は自分の部屋で寝てもらって、私たちは一緒の部屋で寝ましょう?」

 

 結局、祐貴の家に全員泊まることが決定し、晩御飯はそれまでで一番多く作ることになったそうだ。

 

 

 ※※※

 

 

 それから数時間後、女子部屋は盛り上がっていた。

 

「それで、当時の薫さんってどんな感じだったんですか?」

「そうね。あの頃の薫はかわいかったわね。今とは全然違ったわ」

「そんなことはないだろう。千聖の方が変わったよ。あの頃のわがまま姫が懐かしいよ」

「千聖ちゃんがわがまま……?」

「花音?」

「う、ううん。なんか千聖ちゃんがわがまま言うところがイメージできなくて」

「そうかしら?」

「うん。なんか、こう、千聖ちゃんって、先生に言われたこととか、頼まれたらいやっていえない感じがするもん」

 

 という過去話に花を咲かせる高校二年生のグループと、

 

「はぐみ、こことか怪しくないかしら?」

「そうだね、こころん。ちょっと叩いてみよう」

「やめなって、なんで、そう隠し部屋探しに精を出すの……?ないに決まってるじゃん」

「あったわ!」

「あるの!?」

「すごい、すごいよこころん」

 

 日本家屋の隠し部屋探しに精をだす高校一年生グループに分かれていた。

 

 そして、部屋は移り、一人寂しい男部屋。

 そこにはすでに布団を敷き、布団の中で寝息を立ててぐっすりと寝ている少年の姿があった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。