正反対の二人   作:やまたむ

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不良の少年

『それじゃぁ、約束ね』

 

『うん。約束』

 

『私はまっすぐげーのーかいの道を進むから』

 

『僕は君をうらから守り続ける』

 

──────────────────────

 

 

懐かしい、夢を見た。

 

この夢は、俺、弓塚祐貴(ゆみつかゆうき)が『最強』を目指す原点となった記憶だ。

 

まぁ、つまり俺は、とある幼なじみを守ると約束を今尚律儀に護ろうとしているのである。

 

不良校に通ってるのに守るとかwって思った奴もいるだろう。

 

だが、これは、俺の信念に基づいて通っているのだ。と言うのも、その幼なじみを守るために自身を鍛えるため、なのである。

 

だからこそ、その幼なじみに叢雲学園(うち)にきて欲しくないのだが……。

 

まぁ、この際そのことは置いておこう。

 

そして、

 

「おはようございます、兄貴!!」

 

休日に家にくる後輩は世間知らずだと思った俺は間違っているのだろうか?

 

「あの、兄貴?」

 

「あぁ、すまん。おはよう。それで、なんか用か?」

 

「兄貴の朝の一射のための準備は整えておきましたので、後は兄貴が着替えるだけです」

 

「おう、そうか。ありがとな」

 

「いえ、これが俺ら(舎弟)の仕事ですから」

 

そう言って、弓と矢、胴着を渡してくる。

 

ーあいつも相当変わったなぁ。

 

俺はそんな事を思いながら家にある、弓道場に足を運ぶ。

 

「あら、今起きたの?」

 

そして、弓道場に入ったとたん声をかけられた。

 

「何で居るんだよ。千聖」

 

「昨日言わなかったかしら?『お邪魔しようかしら?』って」

 

「え?それって結局来ないことで纏まったはずじゃ……?」

 

「私は『困る』とは言ったけど、『行かない』とは言ってないわよ?」

 

へ、屁理屈だ……。

 

って、そう言えば、

 

「お前、『今度』行くって言ってたろ?」

 

「『いつ』行くかは明言してないわ。なら、今日来ても良いじゃない?」

 

ぐぬぬ。

 

はぁ、来てしまったものはしょうがない。朝飯もまだだと思うし、三回ほど中るか。いつもより回数減るけど、客人をもてなさないのは流石に日本人として疑われかねないからな。

 

「んじゃ、ちょっとだけ待ってろ。すぐ終わらせるから」

 

そう言って更衣室に入り着替える。

 

 

ふぅ。

 

俺は息を吐き、的を見据える。

 

そして、弓を構えて矢を放つ。

 

パンッ。

 

と中った音が聞こえてきた。

 

その音を聞いた俺は残心をして、もう一本の矢を放つためにもう一度構え直す。

 

二度目も命中。

 

さて、最後の一射なのだが、基本家で弓道をするのは俺だけだ。そのため後輩がもう一本矢を手渡してくる。

 

正直こう言うとき、後輩が居ると助かるんだよな。

 

そして、俺は三本目も中てるため的を見据え、構える。

 

結果、三本目も命中。

 

残心をし終わると、千聖に声をかける。

 

「んで、朝飯、食ってくんだろ?」

 

「あら、私そんな事言ったかしら?」

 

「いや、今何時だと思ってんだよ?」

 

「そういえば、6時10分だったかしら?」

 

「そう。午前6時10分。って無駄に正確だな。まぁ、それはおいといて、こんな朝早くに男一人暮らしの家にくるなよな。おばさんたち心配してんじゃねぇのか?」

 

「大丈夫よ。昨日の内に『祐貴の家に行ってくる』とは伝えてあるから」

 

「おばさんそれで、OK出したの?」

 

「えぇ。『ゆうくんの所なら安心ね』って言って許可を貰ったわ」

 

ちょっと待て、何でおばさん不良の家に娘が行くことを許可してんの?いくら顔見知りで、幼い頃の俺を知っているとはいえ、俺、不良なんすよ?もうちょっと考えてくださいよ。

 

そんなことを考えていると、千聖が声をかけてくる。

 

「それにしても貴方の家、大きすぎないかしら?何度来ても慣れないわ」

 

「それは、自覚してるけど、父さんたちが押しつけてきたからなぁ。『お前、一人暮らししたかったんだろ?丁度良い物件があるからやるよ』ってな具合に」

 

「それは、災難だったわね。それでも、貴方今の生活気に入っているのでしょう?」

 

なぜバレたし。

 

俺は内心冷や汗を流しながら、話を逸らすために話題を探す。

 

け、決して後輩に慕われることが嬉しいのがバレたくないとか(手遅れ)、千聖が家に来たことが嬉しいとか(きっとバレてない)、勘ぐられたくない、と言うのが理由ではない。ないったらない。

 

「そ、そういえば、朝、食ってないんだろ?」

 

「えぇ」

 

と、微笑みながら千聖は俺の問いに答えてくる。それは、まるで、『貴方が必死に話をそらそうとしているのは気づいているから乗ってあげるわね?』と言っているようだった。

 

「んじゃ、さっきも言ったけど食ってけよ。今から作ることになるけど」

 

「構わないわよ。私は食べさせてもらう側なのだし、文句はないわ」

 

 

「お、それならなっー」

 

「それだけは止めて」

 

とう。と言おうとしたら遮られた。

 

まあ、なぜ遮ったのかは知っているのだが、彼女の名誉の為に言わないでおこう。

 

「冗談だよ。流石に朝から納豆はないって」

 

「そ、そうよね」

 

そう言って千聖は目を逸らす。

 

そんな会話をしている内に居間についた。

 

「んじゃ、適当に腰掛けといてくれ」

 

「そう。それじゃ、お言葉に甘えさせてもらうわね」

 

と言い、千聖は畳の上に置かれた食卓につくと、その食卓にひじを突き俺を微笑みながら見ている。と言うより見守っている、と言う表現が正しいか。

 

正直その視線がむず痒いのだが、料理を作ることに集中したいので無視することにした。

 

とは言ったものの、朝食なのでそんなに時間のかかる物を作る気はない。

 

簡単に豆腐の味噌汁と、ご飯、サラダってとこで良いだろ。うん。

 

と言うわけでちゃちゃっと作り終えた俺は、千聖、後輩の下へと完成した朝食を運ぶ。

 

因みに千聖と後輩の座っているところは、俺の右隣に千聖。その対角線上に後輩。と言う風になっている。

 

まぁ、後輩は完成してお盆に乗せた直後に自分で運んでくれたのでそんなに手間はかからかった。

 

「んで、これがドレッシングな。ごま、フレンチ、ポン酢から選んでくれ」

 

「私はフレンチで」

 

「俺はポン酢をもらうっス」

 

「んじゃ、余った俺はごまだな」

 

それぞれどのドレッシングをサラダに掛けるのか決めて、そのドレッシングを手にとる。

 

うむ。平和というのは良いねぇ。まぁ、俺、平和とは無縁の学園生活をしているけど……。

 

そんな感じで朝食を食べているとふと、気になったことがあった。

 

「なあ、千聖」

 

「なにかしら?」

 

「いや、なんとなく機嫌良さそうだけど、何か良いことでもあったのか?」

 

「ふふ。やっぱりそう見えるかしら?」

 

「まぁな」

 

「実は宮川タカユキさんから出演のオファーを貰ったのよ」

 

「へぇ~そうなのか。で、誰?」

 

そう言った瞬間千聖があなたもなの?みたいな目で見てきて、後輩が、「ちょっ!それはないッスよ兄貴!?」と訴えてきた。

 

「え、そうなの?」

 

「そうッスよ。宮川タカユキって言えば業界で三本の指に入るぐらい有名な演出家ですよ!?」

 

「へぇ~。そりゃすげぇな。千聖、悩んだりしたら相談しろよ?」

 

「ふふ。貴方に演技について相談することはなさそうだけれどね」

 

「へいへい。どうせ俺は演技、下手くそですよー」

 

「そんなに拗ねないの。それで、祐貴」

 

「んだよ?」

 

「空き部屋借りても良いかしら?」

 

「ん?あぁ、いつものか。了解。ちょっと待ってろ」

 

俺はそう言い、後輩を呼びビデオカメラと三脚を持ってこさせる。

 

「あの、兄貴?これ使って何するんすか?」

 

「あぁ、それ?それは」

 

と言いかけた時、

 

「私が使うのよ」

 

千聖が割り込んできた。

 

「まぁ、つまり、お前が何を想像したのか知らんが、少なくとも盗撮のために使う訳じゃない」

 

「あら、元々その予定で買ってたんじゃないの?」

 

「てめっ……。てか、去年から女優としての仕事が入ったとき家にビデオカメラ持参してくるから、こっちで用意したんだろうが……」

 

「ふふ。冗談よ」

 

冗談だとしてとやめろよな。心臓に悪いわ。

 

まぁ、そんな事は多々あったが、無事空き部屋についた。

 

「それじゃ、終わったら声かけてくれよ。基本的に俺は家から出てないから」

 

「分かったわ。それと、別に休憩するときでも、声をかけても良いわよね?」

 

「おう。良いぞ。てか、それぐらい考えたら分かるだろ?」

 

「ふふ、そうね」

 

と、千聖が微笑みながら返してくる。

 

正直千聖が微笑んでいるときは何を考えているのか分からない。

 

まぁ、そんなこんなで、練習を始めた千聖をチラッと見た後、俺は後輩に声をかけ、庭に出る。

 

「おら、準備良いか?」

 

「押忍。問題ないッス」

 

「それじゃ、始めるぞ」

 

俺はそう言い、後輩と組み手をする。

 

この後輩とは、中学時代からの付き合いで、一人暮らしを始めてからは、よく家に来るようになった。

 

こいつとの出会いはそのうち語るので今は話さないでおこう。

 

「そう言えば、兄貴の言っていた『守りたい奴』って姉御の事なんですか?」

 

「……何で分かった」

 

「そんなの二人を見てたらすぐに分かりますよ。それに俺は元オタクなんですから、兄貴のキャラさえ掴めれば、心理状態なんてすぐに分かりますよ」

 

「そうかよ」

 

そう言葉を交わしながら組み手をすること一時間が経過した。

 

「よし、休憩にするか」

 

俺が後輩にそう伝えると、ハァーと思いっきり息を吐き、呼吸を整えた後輩が答える。

 

「………はい」

 

「おいおい、この程度で音を上げんなよな」

 

「い、いえ、普通一時間ぶっ続けで組み手をしたら誰だって音を上げますって」

 

「俺は音を上げてないけど?」

 

「すんません。兄貴を除く人間は、と訂正させてください」

 

「あぁん!?誰が人外だって?」

 

俺はそう言い後輩のこめかみに両拳を当てて思いっきり力を込めて、拳を捻る。

 

「い、いだい、いだい。すんません。マジずんばせん」

 

「はぁ、分かれば良いんだよ、分かれば」

 

「おぉー痛かった。それで、兄貴。さっきの話の続きなんですけど」

 

「んだよ?」

 

「兄貴って、姉御のことどう思ってるんすか?」

 

「んなもん決まってるだろ」

 

と、前置きをして、

 

「好きだよ。あいつのこと」

 

と言った。

 

だが、どうやら、こいつにとっては想定内の答えだったようで、「ま、そうッスよねー」と受け流していた。

 

「んだよ。そんなおかしい事か?」

 

「いえ、だからこそおかしいと思うんですよ。何で姉御は兄貴そんなことを言わせているのかと言うことが」

 

「あぁ、千聖が毎度毎度俺に『あれ』を言わせようする事か?」

 

「はい。そうッス。なんで姉御は兄貴に『告白』させ続けるのかが気になりまして」

 

「さぁなぁ。俺にもその真意は測りかねるけど、まぁ、少なくとも、俺らみたいな不良が千聖の恋人になるなんて不可能な話だとは思うけどな」

 

「兄貴が不良か?って聞かれたら俺は頭を捻りますけどね」

 

「それは、自覚してることだから言わなく良いんだよっ」

 

俺はそう言い手近にあった消しゴムを持ち後輩に投げつける。

 

「いつっ。それで、兄貴」

 

「どした?あ、消しゴム返してくれ」

 

「どうぞ。それで、何やってるんですか?鉛筆持って紙に何か書き込んでいるみたいですけど」

 

「あぁ、ほら朝飯の時千聖が言ってただろ?何とかって演出家の劇に出演するって」

 

「言ってましたね。それと、兄貴のやっていることは何か関係があるんですか?」

 

「まぁ、な」

 

「へぇー。そうなんすね」

 

そんな話をしていると休憩をするのか千聖が、居間にやってきた。

 

「終わったかしら?」

 

「もうちょいかかるぞ。お前は休憩か?」

 

「えぇ。流石に二時間近く続けていると喉が渇いたわ」

 

と言ったのを聞いた後輩が「俺が用意するッス。だから二人はくつろいでてください」と言い、お茶を用意する。

 

「それで、キャラは掴めてきたか?」

 

「えぇ。大分掴めてきたわ。それにしても、ここは良いわね。土地が広いおかけで演技するのにも近所の事を考えなくても良いし」

 

「そうッスよねぇ。庭も広いから組み手もやりやすいし、何より空気が澄んでいるッスから」

 

と、千聖と話している最中に後輩が入ってきた。

 

「まぁ、それについては俺も同意するけど、そう毎度毎度俺ん家に来られても困るんだよなぁ」

 

「ふふ。そう?」

 

と千聖は聞いてくるが、その真意が全く分からない。そもそも、なぜ千聖が俺の家に来るのかが分からないのでどうのしようもない。

 

「まあな。千聖は芸能人なんだし、誰かに見られたりしたら大変だろ?」

 

主にお前が。

 

まぁ、そのことについては今更な気がする。

 

だが、そんなことを気にもとめていない馬鹿が煽ってくる。

 

「とか言っちゃってぇー。本当は嬉しいんでしょ?兄貴?」

 

「てめっ、ほら、休憩は終わりだ。走ってこい。町内三周だ。ほら、行った行った」

 

俺が無理やり後輩を走らせるために外に追いやったのを見て、千聖がいつも通りの見守るような微笑みを浮かべていて、冷や汗を掻きまくった俺は、必死に言い訳を考えていた。

 

「ふふ。そう焦らなくても良いわよ?貴方の気持ちはずっと聞いてきたから」

 

「言わせ続けたの間違いだろ?」

 

「それでも、本心なんでしょ?」

 

そう訊かれた俺は、つい千聖から目を逸らしてしまう。もちろんそんな事をすれば、図星だと教えるようなもので、千聖は、ふふ。と微笑んでいた。

 

畜生。何で千聖に言葉で勝てないんだ。

 

「ほら、終わったから」

 

「ありがとう。それにしても相変わらずきれいな字ね」

 

「んだよ。お前も不良らしくない。って言いたいのか?」

 

「そんなのとうの昔から知っているわよ?でも、この字を見る限り、まだ続けているのね。『あれ』を」

 

「まあな。やることがなくなったら基本あれの続きを考えるか、若しくは弓を握っているかのどっちかだしな」

 

「完成まで楽しみにしているわ」

 

「おう。楽しみにしとけ。それじゃ、俺たちも休憩は終わりますか。昼飯も食ってくなら、あとで来てくれよ」

 

「えぇ。分かったわ。それじゃ、また後で」

 

そうして、俺達も休憩を終わらせ、俺は弓道場、千聖は、空き部屋へと向かって歩を進めた。




今回はここまでです。

楽しんでいただけたでしょうか?

この作品はこのような感じで進行していく予定です。

千聖とオり主のほのぼのとした日常の中に恋愛要素を入れていく感じになります。

それではまた次回お会いしましょう。
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