正反対の二人   作:やまたむ

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速攻で片づいたよ

『こ、これはどう言うことだ!!開会式終了と同時にひとりの生徒を残して全員気絶したぞ!?』

 

『気あたり、いや、これはただの殺気か?どちらにしても素晴らしい。まさかこのご時世にこんな芸当をしてのける子がいるとはね』

 

『え、えぇっと、黒田理事長?どういうことなのでしょうか?私全然現状に付いていけないのですが……』

 

『ふむ。穴子さんはまだまだのようだ。まぁ、それも仕方がないことでしょう。そもそも、今まであんなこと出来る生徒がいませんでしたから。それでは、尺稼ぎしましょうか』

 

『そ、そうですね』

 

それは弓塚祐貴が私立叢雲学園に入学し、人生初の体育祭を迎えたときのラジオの放送だった。

 

──────────────────────

 

体育祭。それは百人に訊いて九十九人が参加したことがある。そう言った学校行事だろう。

 

だが、俺は中学時代誰しもが参加したことのある体育祭に参加したことがない。一応小学生の時に運動会と言うものを経験したが、正直あまり覚えていない。主に千聖が居なかった事が起因して。

 

因みに俺の記憶の大半は千聖ありきで構成されている。そのため、千聖が居たや、千聖のために特訓した、と言う建て前がない限り頭の中にはない。

 

そんな残念すぎる俺の頭だが、中学時代の授業内容は千聖経由で勉強していたため完全に頭の中に入っている。あ、一応今はそんな残念な頭じゃないからな?千聖が絡まなくてもちゃんと記憶できるようになってるから。

 

さて、話がずれたが、体育祭。そう、今俺は体育祭の真っ最中だ。

 

まぁ、その人生初、俺の記憶にきちんと残る体育祭も去年の開会式終了後に一瞬で終わってしまい、気落ちしたことは記憶に新しい部類だ。

 

今年こそはと意気込んで、俺は少し変わってしまった体育祭のルールを思い返す。

 

まず、武器の使用は基本指定されたもののみ。木刀やエアガンと言った当たってもあまり大怪我をしない程度のものであること。

 

次に殺しさえしなければ何でもあり。ただしその過程で町内にいる人に迷惑をかけた場合、そのものは失格とする。

 

そして、安全眼鏡を着用すること。これは目にエアガンの弾が当たり失明しないようにするための処置だろう。

 

最後に建物内での戦闘行為の全面禁止。まぁ、これはどう考えても町内の人に多大な迷惑をかけるし、下手をすると怪我人が出る。それを押さえるためのものだろう。

 

正直幾つか今になって突っ込みたいがこの際おいておこう。

 

この四つに新たに加わったのが、開会式終了後任意の地点にて開始のチャイムが鳴るまで待機すること。と言うものが加わった。

 

理由は単純で去年俺がやる気に満ちあふれていて、誰彼かまわず闘気をぶつけたからである。ちなみにその大半を教師陣は受け流していた。

 

まぁ、その結果エンターテイメント的に美味しくなくなり、こういう措置を取ることとなったそうだ。

 

「おら、くらいやがれ!!」

 

そんな事を考えているとチンピラ風の男が殴りかかってきたので、俺はそれをいなして、発剄を叩き込む。

 

「ここにいたぞ!!」

「取り囲め!!」

「幾らこいつでもエアガンに対応できる訳ねぇ!!」

「俺、こいつ倒したら、湊友希那に告白するんだ」

「今年大一番の賭けだな、おい」

「玉砕おめでとう!!」

 

そんな意味不明のやりとりを交えながら俺を取り囲んでいくチンピラ風の男子はエアガンを俺に向けてくる。

 

正直今の時間で全滅させることができたのだが、これはエンターテイメントだ。そのため魅せる必要がある。

 

その考えに至った俺は、某NINJAアニメで使われた、『あれ』を使用と思う。

 

そう決めるとあの構えをとる。

 

「おい、あのかまえってまさか……」

「いや、あり得るはずないだろ」

「いや、でもあれは体術だし」

「俺、死んだかも」

「だ、大丈夫だ。まだあれをするとは思えねぇ」

「そ、そうだ。幾ら人外の域に達しているとは言え、そう簡単にできる芸当じゃねぇよ」

 

そんなやりとりを横目に俺はゾーンに入る。ちなみにゾーンに入れるようになったのは中学時代、師匠に無人島に放り出された時からだった。あのときは死ぬかと思いました。

 

そんな事を考えながら、向かってくるゴム弾一発一発に丁寧に発剄をぶつけると、そのゴム弾は粉微塵となり宙を漂っていた。

 

これがもし、無風状態だったりしたら粉塵爆発とか危険なことを思いつくバカがいるかもしれないが、幸いにもそんな事を思いつく大バカ者は居なかった。

 

「マジ……かよ……」

「やりやがった」

「やっぱこいつ人間じゃねぇ」

「八卦六四掌からの回天とかあの漫画でもしてねぇぞ」

「それして息切れしてねぇとか」

「人間やめてるな」

 

何をそんなに驚いているのだろうか?これくらい誰でもできるだろう。正直これは相当体力を消耗するけど、そんなに難しいものではなかったはずだ。だって師匠は百二八掌までできるんだし、俺が人間をやめているなら、師匠はそれ以上のはずだ。

 

まぁ、そんな事は目の前のチンピラ風の生徒たちには分からないので、俺を人外認定する事で納得しているようだが、正直不快だ。

 

そう思った俺は、取り囲んでいた生徒一人一人に手刀を落としていき気絶させていく。

 

本当期待はずれも良いとこだよな。

 

そんな事を思っていると、携帯に連絡が入る。着信音で千聖の携帯と言うことは確かなので、条件反射で対応すると、知らない男性の声が聞こえてきた。

 

『ハーロー、弓塚クンの携帯であってる?まぁ、間違えるはずなんてないんだけど、さっさと用件伝えるな。お前の大事な姫様は預かった。今から指定するところに一人で来い。さもなくば……わかるな?それじゃねぇ』

 

それを聞いた俺はその後にメールで送られてきた地点に向かう。もし、頭のいい奴がいたらGPSあんだろと指摘してくれたかも知れないが、そんな奴はこの場には居ないため、指定された地点に俺は行くしかなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

弓塚祐貴に脅迫(笑)をした男は、とある廃屋(木造)でその少女を見ていた。

 

「それにしても、こうもあっさり誘拐できるとはな」

 

ーほんと、ざるすぎだろお前等の事務所

 

そんな事を言いながら弓塚が来ることを待ち遠しそうに、口元を歪めていた。

 

「あなた、こんな事して許されると思っているの?」

 

そう言いながらその男を睨みつけるのは、白鷺千聖だった。

 

「あぁ、まぁ、別に俺はお前等のことなんか興味ないしな。取り敢えず弓塚さえきてくれりゃ良いのよ。だから、世間がどうこう言おうと俺には痛くもかゆくもないわけ。わかる?」

 

言外にお前等のことなんて眼中にないし、ただの餌と言われ、芸能人としてプライドが傷つけられたが、まぁ、襲われるよりはマシ?みたいな訳の分からない混沌とした気持ちになるも、やはり誘拐されたことに対して憤っている、白鷺千聖がそこにいた。

 

だが、白鷺千聖は安堵していた。なぜかというと、目の前の名も知らぬ誘拐犯は弓塚祐貴と言う不良を呼び出すためだけに誘拐したと言うことだからだ。

 

少なくとも、白鷺千聖の知る弓塚祐貴は目の前のチンピラのボス風の男よりも強い。

 

それは白鷺千聖の中では決定事項であるし、また、自分に何かあった場合、彼が遅くなることなんて有り得ない。

 

そんな事を考えていると扉が開く音がする。

 

「きたか」

 

そう男が言った瞬間、その男が壁を貫通して隣の部屋で寝かされていたであろうPastel*Palettsのメンバーの上を越え、廃屋(木造)の外に放り出された。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私はその光景を見て唖然としていた。

 

彼は絶対にくる。それだけは確信していたが、さすがに早すぎる。

 

なんせ、あの誘拐犯が彼に電話をして数分もたたずにここにたどり着いたのだ。

 

正直彼が人間離れしていることは何となく理解していた。けど、こう言っては何だがこんなに早く来るとは思っていなかった。

 

もともと目的地が分かっていたと言うのも起因しているのかもしれないが、さすがに早すぎる。

 

けれど、嬉しかった。私の幼なじみはあのようなチンピラ風の男に負ける程度のやわな男じゃないと言うこと、そして、私が本当に危ないときは直ぐに駆けつけてくれると言うことがわかったことが、私はとても嬉しかった。

 

そんな事を思っていると、はっ!としたように私の方に歩いてくる。

 

「千聖、無事か!?なにもされてないよな?けがは?」

 

「そんなにまくし立てなくても大丈夫よ。怪我もないから。それよりも隣の部屋の子たちなんだけど」

 

「ん?千聖だけじゃなかったのか?」

 

「えぇ。私たちが事務所をでた後に浚われたものだから……」

 

そう言うと、彼は「はいよー」と言いながら隣の部屋へと歩を進める。

 

「それにしても、ぐっすり眠ってるな。俺一人で何とかなるか?」

 

「あら、後輩の子たちは連れてきてないの?」

 

「ほら、今朝言ったろ?今日は体育祭だって。それの都合で呼ぶに呼べなかった」

 

「確か下の方にあの男の手下が居たと思うのだけど……」

 

「ん?あぁ、あの雑兵のこと?腹に一発当てるだけで寝ていったから、放置してきた」

 

そう彼が言うと私はパスパレのメンバーを起こし始める。

 

「……う、うぅん。ここは?」

 

「起きた?」

 

「あ、あれっ!?千聖ちゃんっ!?って、そうだ、あの人は!?なにもされなかった!?」

 

「ふふ。そんなに焦らなくても大丈夫よ。彼が来てくれたから」

 

「彼?って、えっ!?壁に大穴があいてる!?」

 

そう彩ちゃんが反応すると、罰が悪そうに彼は目を背ける。ちなみに彩ちゃんの目には留まってないようで、私の言ったことが理解できていないようだった。

 

それが少しおかしくて吹き出してしまい、二人がどうしたのか訊いてきた。そのとき声がそろい、男性の声が聞こえてきたのか彩ちゃんは困惑していた。

 

「ほら、祐貴。そんなとこにいないでこっちに来たら?」

 

「ん?おう。それで千聖。お前の仕事仲間は全員起きたか?」

 

そう彼が聞いてくると、他の子も起き始める。

 

「うぅーん。ここ、どこぉ」

 

「ふわぁー。あれ?ここは?」

 

「……おはようございます」

 

「あ、みんな起きた?」

 

彩ちゃんが聞いたのを皮きりに自分たちの置かれていた状況を思い出し始める。

 

「そ、そうだ!あたしたち誘拐されたんだった。ってあれ?もしかしてもう終わってる?」

 

「えぇ。それなら、彼に聞けば分かると思うわよ?」

 

「千聖に聞けば良いと思うんだけど……」

 

「そんなことよりアナタ誰?千聖ちゃんの知り合いみたいだけど」

 

「あ、自己紹介がまだだったな。俺は弓塚祐貴。どこにでも居る普通の高校生だ」

 

「貴方みたいな普通の高校生は居ないと思うわよ?」

 

そう私が言うと、ニタァと言うような擬音が聞こえてきそうなくらい口元を歪めながら近づいてくる。正直怖い。誘拐されたときより怖い。

 

私は後ずさりするも、恐怖で少ししか離れられず、目の前に悪魔のような顔になった祐貴が現れる。

 

「ゆ、祐貴?」

 

「……れが」

 

れが?ってなにかしら。まぁ、何となく検討はつくのだけれど、それが外れていることを願うもその続きを彼が紡いでしまう。

 

「誰が、人外じゃああああああ!!」

 

彼はそう叫ぶと、私のこめかみに拳を当ててひねり始める。

 

「い、痛い、痛い。ごめん、ごめんなさい」

 

そう言うと彼は動かしていた拳を納め、睨みつけるように私を見る。

 

「ふ、二人とも仲良さそうだね……」

 

「これを見た後でそう言われると少し複雑だわ」

 

「そうですよね」

 

「でもお二人とも楽しそうでした」

 

「最後の子のだけ聞くと俺たちがアブノーマルな関係に聞こえてくるな」

 

私が思っていても言わなかったことを言う彼に少しきつめに目を向けると、彼はハハ、と乾いた笑いを浮かべていた。

 

「で、二人はどういう関係なの?」

 

「ただの幼なじみよ」

 

「ま、そうなるな」

 

その後に「何度も告白まがいの事させられているけど」と呟いていたのを私は聞き逃さなかった。

 

ただ、他の子は聞こえなかったようで、その呟きに対してなにもリアクションを取っていなかった。

 

そこで、彼は何か思い出したらしく、「あっ!!」と声を上げ、その後「やっぱだめだよなぁ」と落胆しており、それに気づいた他の子も頭の上にハテナマークを浮かべている。

 

「いや、さっき言ったろ?今日体育祭があるって……」

 

「あぁ、あのけが人が続出するって言う?」

 

そう言うと、彩ちゃんたちの「それ体育祭って言わないと思うよ!?」と言う突っ込みをスルーして彼は言葉を続ける。

 

「そうそう。それでさ、屋内戦闘は禁止されていてよ、ここ、一応屋内じゃん?」

 

「そうね」

 

あれが戦闘か?と聞かれると間違いなく首を傾げるけど、敢えて突っ込まないでおきましょう。

 

「まぁ、要するにルール違反で失格になってると思うんだよなぁ」

 

そう彼が言うと、どこから現れたのか、スーツ姿の男性が声を掛けてくる。

 

「弓塚祐貴。屋内における戦闘行為により失格」

 

どうやら、彼の学校の先生だったようだが、どこから入ってきたのだろうか?そんな事を考えていると、スーツ姿の男性に祐貴が「わかりました」と言っていた。

 

そして、その返答を聞いた男性は祐貴が誘拐犯をぶっ飛ばして空けた穴から飛び降りていく。ここ、二階なんですけど……。

 

男性が飛び降りたのを見て唖然としていると、祐貴が突然こういった。

 

「そう言えばお前等ほこりかぶってるな。うちでシャワー浴びていくか?そこまで遠くないし」

 

その一言により、自分たちがどういう状況に置かれていたのかをきちんと認識した。

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